シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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衝突-2

《みんな元気にしてたんだね〜お姉さん嬉しいよ!覚えているかな〜!?》

「セツカァ!」

 

 叫んだのはハクジツだ。

 

《おお怖い怖い。あ、君恋人のハクジツちゃんなんだね。いやあ凄いね?私に恨みを持っている人大集合しているじゃん》

「どこに居るんだよっ!」

《吠えないでいいじゃ〜んなんか知らないけど君のセフレは復活したんだよ?わざわざゼンヒの事なんて構わなくても〜》

 

 彼女は声が響いてくる方へマシンガンを向けて撃つ。

 

「きゃっ!?」

「ちょっといきなり!?びっくりしたあ!」

《マジでなんだこいつ。あ、もしかして〜、もう一人キープしておきたいとか〜?中々隅に置けませぬな〜。そういうアバズレを仲間に入れて〜、大丈夫?》

「大丈夫だ、それを共有した上で私達は一緒にいる」

 

 キレて言葉が出て来ないハクジツの代わりに、今度はショウコが答える。

 

《へえ、しょうもない話聞いたんだ》

「おかげで喧嘩になって仲裁したら血を拭いて気絶するくらい痛かったけど。それでもちゃんと話したんだ」

《ゼンヒの話は聞かなかったのに?》

「それをするためにも今ここに居る。本来は門を押さえる事で誘き寄せる作戦だったが、どうせお前はそこに居るんだろ?」

 

 うーん、と考える声を上げてからセツカは答えた。

 

《ぴんぽーん!だいせいかーい!》

「やっぱりか」

《情報収集はしてるだろうと思ったけれど、案外ちゃんとしてたんだね。褒めてあげよう》

「一度お前達の底の知れない隠し札によってボコボコにされてしまったが、私達だってチャンスがある以上しっかり作戦を組めるのであれば私達だって負けはしない。あの時は奇襲という点もあったからな」

《それでまた隠し札に負けたらどうする?》

「あったとしても準備はそこまで出来ていないはずだ。びっくりするようなものがあったとしても、負けるまでには至らない。こっちにはちゃんと作戦があるからな。それでも上回ってきたら……逃げるしかないか」

《そっかあ……ま、できる限りの事をしてきたならその自信が最後の砦だね。うん、流石に君は面白い。どこぞの遊び人と違ってね》

「ハクジツさんは協力者だ、煽るのはやめろ」

《怖いねぇ〜》

 

 楽しそうに話をしているセツカだが、一度咳をしてから話を変える。

 

《まあ、そういうわけで煽るのには色々事情があるわけだが、改めて宣戦布告するとしよう》

 

 全員が身構えた。

 

《私はこれから門を開け、新たな世界に旅立つ準備をする。というよりはもうしている。枠組みとある程度のプログラムや組み立てを済ませているから、あとは出力がちゃんと定格になるまで耐えきればいいという事だ。当然君たちは止めに来るだろうが、それでも私達は止まらない。止まる予定もない》

 

 セツカは、言葉を続けた。

 

《止めに来るのであれば早く来たほうがいいが、我々とて全く準備をしていないというわけではない。君たちが知らない間に、準備していたものを出すとしよう》

『こちら第一部隊、大きい化け物に遭遇しました!』

『こちら第二部隊!なんか巨大なやつが見える!』

『第三部隊、羊のようなツノを持ったものが見える!』

『第四部隊はなんか翼が生えた丸っこいのがいるー!』

 

 ヘッドセットから聞こえてくる情報を元に、ユリは指示を出す。

 

「出来る限り中心から剥がすような戦い方を心がけて!一斉射撃で足止めしながらできるだけ時間稼ぐように!」

『了解!』

 

 急いで指示を出したら、それを見ているかのように敵からの煽りが飛んできた。

 

《お、隠し札で驚いてくれているようだねえ。お姉さん嬉しいよ》

「やっぱりな!」

《ただまあ、四体程度では驚いてても逃げ出さないか。だいぶ人数そろえたものだよ。あ、そうそう。折角だから教えてあげよう》

 

 今出したバケモノについて、彼女は話す。

 

《これらはねえ、今日頑張って集めた不良達の生贄で作ったバケモノなんだよね。キヴォトスの外、中国ってところには山海経なる書物があって、そこに書かれているモンスター達なんだ。四凶と言ったかな?》

 

 四凶。

 

 中国で伝えられる、四匹の悪神のことである。

 

 それぞれが窮奇、檮杌、混沌、饕餮の名をもつもの。

 

 セツカはどこかでその存在を知ったのか、それらを敵を溶かして作った様子。それらをけしかけて、時間を測ろうとしているようだ。

 

《一応満腹だから人は食わないと思うけど、仲間を殺されたくなかったら急いでやってくることだね〜》

「ああ、言われなくても今すぐいく!」

《じゃあねえ》

 

 それ以降、セツカが煽りを入れることはない。

 

 彼女からすればここで死ねばそれまで、死なないで辿り着けば面白いことが起きる。その間で楽しみなことはない。

 

「よし!みんな!今から突入部隊は行動開始!急いで門のある場所に向かって、確実にぶっ倒す!」

 

 一斉に了解の合図を出して、予定したルートから侵攻開始。

 

 道は少し狭めだったが、数人程度がまとまって行動するには問題ない広さだった。

 

 全員自分の武器を持って走り、早急な到着を目指す。

 

「逸れないようにお願い!」

「はーい!」

 

 常にムードメーカーであり続けるユメのおかげで、あまり緊張しないままみんなペースを保ち続ける。

 

『第三部隊、被害軽微。装甲車一個破壊されましたが、まだ戦えます』

『第二部隊も軽微!翼の生えた虎だかわからないものでも、動きを抑えることに成功しています!』

『第一部隊、なんか犬か猪みたいなのがずっと突撃してきて少し被害が増えてきた!直線的な動きしかしないからあんまり不安がる必要はないけどこっちの動きが鈍くなってきたらまずい!』

『第四部隊は割とやばいかもー!素早いしなんか二足歩行で殴ってくるー!予備隊をこっちに回して欲しいかもー!』

「予備隊は第四部隊との合流急げ!」

『全部回してもよろしいので!?』

「敵の本気が分かんない時は全力対応するしかないでしょ!?それですぐ対処したら他の場所に第四部隊を分割して回す!」

了解(ラジャー)

 

 的確な指示を出しながら、ユリは道の通りに進む。

 

「ねえ、ショウコ」

「どうしたんです、ハクジツさん」

 

 暗い表情のまま、ハクジツはショウコに走りつつ話しかける。

 

「ユリってずっとあんな感じなの?」

「仕事の時はどんなメンタルの時でもあんな感じですよ、まあSRTの中でも珍しい方ですけどそれでも完全じゃない」

「そう?」

「FOX小隊とかメンタル絶不調でもめちゃくちゃ戦えるってことを考えれば最高値にはまだまだと思ったほうがいいかもしれないですね。まあ、今はそんな軍隊という枠組みも消えたんで加点式で褒めるべきでしょ」

「私はまだまだ、ってこと」

「そう自省できるうちはすごいですよ。本当は会いたくないんでしょ、リーダーと」

 

 走りながらも見抜かれていることに気づいたハクジツは、本心を悟られないように目を逸らすがもう遅い。

 

「気づいてますよ〜」

「人の心を覗くなんて、プライバシーっていう概念ないのね」

「ありますって。でもまあ、得意なんですよ。拷問の経験も実はあるのでね」

「されたほう?」

「したほうです」

 

 一年生はかなり訓練に終始した方だが、そのうちでもスパイ活動として割と動いてたショウコ。その実務経験があったから、あまり実力を疑うこともせず、やりたいことが出来たと納得して彼女はヴァルキューレで働いていたようだ。

 

「へえ」

「まあ、あまり語ることでもないでしょ。それにセツカを捕まえてもそんなことしませんよ。ああいう気儘な少女は、拗ねたらそれから戻すのが難しい。リーダーだってそうだし」

「先輩____いえ、もうゼンヒでいいのかしら。うん、ゼンヒもそうなのかもね」

 

 そうさせた自分が原因なので他責思考を自覚して嫌になってしまうが、全てがハクジツの責任でもない。状況を知らないまま決めつけて暴走する方も少しは悪い、ケアの仕方が最悪というかケアがほぼ無かったのが大体悪いが。

 

「だからまあ、気にすることなくまた会えたら好き勝手に言い合えばいい。でも手伝ったからには先に私からですよ」

「____好きにしたら」

 

 でしゃばりに若干辟易してるように見えて、時間稼ぎをしてくれることに感謝したハクジツ。本心からの笑みを見せたのは、これで3人目だろうか。

 

 指示を出しつつ走るユリの後ろでは、また話しているのが二人。

 

「うーん、いいね。こういう仲間同士で協力して攻略に向かうってシチュエーションありえないほど大好きなんだ」

「初めての割にはやったことがあるという口癖」

「基本戦闘っていうのは攻める側振りだからねえ。攻めないといけないから質量で先に出し抜いてからなかなかこういうことはできないよ」

「そうやって夢見がちなことしか言わないから_____」

「『革命を求めてテロリズムしかしない』でしょ?」

 

 笑いながら、カザミは相手の言いたそうなことを先回して口に出す。

 

「分かっているよ、そういう生き方しかしてこなかったから」

「出来なかったから、とは言わないのですか?」

「前までだったら言ってたよ。でも」

「でも?」

 

 首魁だったものは、笑顔のまま答えた。

 

「ショウコやユリ、あとカンナ局長の計らいで自分たちの学んだことを生かして世の一つを救うなんて大役と報酬で待遇向上を図ってくれるなんて言われたら、張り切るに決まっているでしょ。そういう道が開かれた、自分たちの行動でその結果を掴んだなら、運命なんて言葉に踊らされるような言葉は選ばないよ」

「運命というものがあるのであれば自分たちだけは捨てられて死ぬだけだった。だから、選んだというのですね」

「いいじゃん、自分たちは結構仲良くなれそう。

 ま、ずっと隣には入れないけど」

「なぜです?」

 

 天使の問い。

 

「そりゃそうでしょ。君には、トリニティの外からやってきた面白い子がいる。その子が面白いから、楽しくも愛しい存在だから少しずつ関わろうとしてきた。

 今その子が大変な状態にあるから、なりふり構わずこうして一緒に走っているわけで」

「お見通しですか」

「まあねえ」

「無駄話はそこまで!」

 

 ユリが叫ぶ。

 

 突入部隊は、接敵した。

 

 目の前には、不良の形をした何かがいる。

 

 

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