シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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衝突-3

「うっへえ、なにこれ」

「ミメシスってやつか」

「どのみちここで倒すしかないってこと。準備はいい!?」

「ん、出来てる」

「了解了解、やってみせるよ!」

 

 それぞれが合図を出してから、交戦開始。

 

 いくらミメシス、つまり複製だとはいえ元々の戦力が不良ベースであればさほど高くない。むしろ頑丈でない分、カイザーの兵士の方が強いと言えるくらいだ。

 

「どけっ!」

 

 手に持った銃を持ち、各々が射撃をする。

 

 相手も勿論撃ち返してくるが、本来の姿でちゃんと銃弾に対しても耐性のあるユリ側の方が強く苦戦することはない。

 

 何よりこっちには装備も高火力で精密射撃も可能な人間が揃っていた。

 

 ユリとショウコは軍の装備を持って来ているので、高精度高火力、信頼性のある装備によって相手のことを的確に撃つことで確実に削り取る。特に後者は復活した愛銃マテバを使うがヒットストップが強い45ACP仕様を使っていて、まず足止めで使うために持ってきたサブマシンガンも45ACP仕様の為、動きが止めやすく、脆い相手に対しては高火力でもあった。

 

 ユメとシロコ*テラーはいつもの武器と変わらないものの、そもそもこの中では戦闘経験が段違いにある(それこそ数年の差がある)ため銃弾だけに頼らずとも格闘を仕掛けることでノックダウンさせてからそれを足止めにするなどの手段の差を利用して相手の陣形や戦力を思い切り分断。それだけならともかく、動きそのものが洗練されているという状態なのでそこからさらに戦力を減らすことだって造作もないこと。

 

 バンリとハクジツはそもそもの武器が大型であり、前者はいつもの50BMG仕様のAKにP-50、後者はハンドメイドのマシンガンにレールガンというもはや重火器と言えるものを使うことで相手を大幅に削っている。威力が高すぎて相手が吹っ飛び、そこから地面に叩きつけられるというコンボがあることで銃を撃つ前に霧散することだってあった。

 

「みんないいよね、そういう装備がたくさんあってさ!」

「捕まっている身分を恨むことね」

「だよね〜!」

 

 そして残ったカザミはあくまで補給役(というよりまだ身分が怪しい状態のままなのであまり装備を与えることが出来なかった)、あちこち状況を見ながら報告しつつ、自分によって来たものをリボルバーで足止めしてから味方に処理してもらうことでうまく立ち回った。

 

「ねえ、ショウコ!」

「なに!?」

「こんだけ熱烈な歓迎は嬉しいけれどちょっと数が多すぎない!?」

「少しライブ会場が狭いせいで人数の把握がしにくいってのはあるかもしれない!処理するまで進まないなんて強情なことはできないと思う!」

「そりゃそうかも!」

 

 ユリが目の前の状況に愚痴をこぼしたくなる間、ヘッドセットから報告が流れてくる。

 

『第一部隊やばい!翼と肉塊の間からビーム撃たれてる!半壊してる!』

『第二部隊はまだ軽微、相手が早いだけだが廃ビルを倒したことで翼を捥いでついでに足も折ってる!』

『第三部隊は軽微、突進しか脳がないからこっちもビルぶっ倒して当てたら混乱した!今あるだけの銃器で撃ってて効いてるからそろそろフリーになるよ!』

『第四部隊は壊滅寸前!人員の死亡はないが負傷者多数!ついでに戦車が喰われてる!』

「第四の方に予備隊当てろって言ったよね!?」

『当ててるけどあんまり効いてないよ〜!』

「第三部隊は終了後直ちに第四部隊と合流しろ!第一部隊は一度離れて態勢を立て直せ!第二部隊は早めに倒してそしたらすぐに第一部隊と合流!」

『了解!』

 

 指示を出しながらユリは、味方に作戦を提案。

 

「バンリさんとハクジツさんの武器で一点突破して一気に侵入する!前方の敵を排除しながら進みたい!」

「分かりましたわ!」

「わかった!」

「他の人たちは固まって最低限の応戦で!」

「おっけー!」

 

 皆で固まりながら、戦闘を最初に指示を出した二人にして突撃を開始。

 

 先頭の攻撃力は凄まじいもので、相手が一気に破壊されて溶けていくものだから進むスピードよりも処理の早さがリードしていて移動するのに苦労しない。

 

「このまま突撃!」

 

 そういうユリの号令のまま、皆で一気に進む。

 

 相手は止めようとするがそもそも不良であり、止め方どころかろくな集団行動もできはしないので鍛え上げられた兵士と叩き上げで強くなった少女たちを止める力などない。

 

 走って行くと案外すぐにその足止めを抜けることに成功した。火力が奏をなし、何よりも早く突破できたせいで相手の陣形はぐちゃぐちゃ、そこに加えて素早く突破したのもあってか相手は彼女達を追跡できなくなっていた。

 

 目的地まで残り200m、と言ったところか。

 

 流石に陣形を組んで一気に突破する、というようなことを不慣れな人間と一緒にやったのもあってか、少しだけ息を整える時間を取ることに。

 

「長くても3分で息を整えて」

「う、うん」

「ふぅ、はぁ____ほんとキッツイ」

「大丈夫ですハクジツさん?」

「なんであなた達は余裕そうなの」

「そりゃもと軍人で、訓練は解散しても怠ってなかったんでね。体は資本です、有効に使わなきゃ」

「だったらなんで自分はこんなに疲れてるんですかねぇ……ひぃ」

「ずっと檻の中にいたんならろくなトレーニングできないでしょ」

 

 各々に会話しながら、息を整えて少しだけストレッチする。

 

「ユメさんとクロコさんは大丈夫?」

「ん、全然平気。毎日サイクリングしてるから」

「いやあ、私はちょっときついかも。やっぱ盾が重い」

 

 盾を置いて、少しばかり準備体操をするユメ。

 

 ただ、それでも割と余裕そうなのは、一回死ぬ前からかなり鍛えられていた分もあるのだろう。それにタクシー運転手になってからも、自営業のために身の安全を守るような訓練はやっていたのかもしれない。

 

「とりあえずもうすぐって言った感じだね。そうだ、一応民間の協力者であるバンリさんは?」

「大丈夫、ですわ」

 

 ちょっと息が切れているが、笑顔で答えた。

 

「最悪蹴る殴るでなんとかしますから」

「そんなでかい武器持ってるからだよ」

「持ってないのに息切れしてる人がいるそうですけど?」

「むぅ」

 

 言い合いをしているが、それだけ元気があって精神的にも余裕があるというのはいいことだ。

 

『第二部隊、第一部隊と合流。第一部隊は全滅、死傷者は幸いなし。負傷者収容の上、一度撤退する』

『第四部隊は第三部隊が合流して現在押し返し気味、半壊から立て直したことで相手は一気に増えた火力によって両手足の破壊を確認、もうそろそろでこちらも終了』

『予備隊は現在使っていない人間を第一部隊へと合流させている最中です!』

『こちら対策本部。第一部隊以外のバケモノは全員破壊されました』

「ナイス!じゃあ、そのまま対策し終わったらそのまま第三部隊」

「そろそろ、準備はいい?」

 

 それぞれが返事をすると、また動き出そうとする。

 

 その時だ。

 

 彼女達がいた通路には、八方ほど通路が不規則にある。

 

 道の向こうから、沢山の人型の存在が飛びかかってきた。

 

「来るっ!」

「また!?」

「いや、これは!」

 

 ユメとクロコは慣れた手つきで殴り倒してから投げることで相手をダウンさせ、その投げた方向は味方のいた場所。壁を作るように相手が傾れ込んできたものの、今までのそれとは動きが違うものに、特別暴力対策課ならびに対処した二人以外の協力者は焦った。

 

「本気を出したってこと!?」

「____やっぱり来るよね、あいつらも!」

 

 対処の先駆者の動きを見てから、一人、カザミは理解した。

 

 彼女はリボルバーを取り出して、シリンダーの弾を全交換。

 

 交換したものを撃つと、相手の頭にめり込んで粉砕する。

 

「え、なに!?」

「やっぱりくるか、あいつらも!」

 

 やって来た奴らは、目の色が星空のように輝いていて、それでいながら無気力と焦点があっていないような表情が目立つ。

 

 そう、アビドスの二人は理解していたもの。

 

 扇堂リンネの兵隊だ。

 

「来ちゃったか〜!ねえ、カザミちゃん!」

「持って来てよかった、やっぱり必要だよねセラフィム弾!」

「偵察部隊!こっちにリンネの兵がやって来てるんだけどそっちには何もなかったの!?」

『こちら偵察部隊全くと言っていいほど動きなし、建物の裏とかも人つかって探していましたがやっぱり何も騒ぎはなかったです』

「なら突入部隊への合流を急いで!こっちにその兵士がいるから、なんとしてでもセラフィム弾が必要になる!」

『急行しますが、四凶なるものが暴れた後なので到着が遅れる可能性があります。なんとか耐えてください』

「わかってる!」

『互いにキツい訓練を受けた身。信頼してますよ!』

 

 激励をもらって通信は終わる。

 

 ユメが盾で殴って飛ばして壁を作り、その隙間からハクジツとバンリが火力支援。サブマシンガンをもらっては用意していた弾倉に変えてからセラフィム弾で痛みも感じないしただ快楽に身を任せる死に損ないの肉を抉り飛ばす勢いで乱射して相手の血肉を削っていく。

 

 そろそろ青春の色さえ無くなってきた社会の一角にある殺し合いが始まっている。

 

「くっそ思ったより人が多い!」

「うへぇー!殴っても殴っても気絶しないよー!」

「その軽い口調で言うのやめて怖いから!」

「喋ってないでさっさと銃弾を渡す!」

「人一人が持つのには限界があるってのー!先に渡した分はあるでしょー!」

「ん、普通に足りない。作るのが遅い方が悪い」

「悪かったですねえ!ろくな機械が用意されてれば自分だって苦労してないよーだ!」

「喧嘩はそこまで!今ここで仲間割れしていたも仕方ない!」

 

 皆がそれぞれできることをやって、突破口を探している。

 

 その中に一つ、また新しい声がした。

 

「みんな頑張ってるな」

「ああ来ちゃった!」

「歓迎してくれても良くないか?」

 

 上の方からだ。

 

 兵士たちは突撃するが、壁ができてしまっているせいで登らないといけない上、人を適当に投げて出来た山だから崩れるのに巻き込まれて圧壊。建物の上から声をかける人間には関係のないことだが。

 

「ああ……」

「流石に今顔を出すのはまずかったかな、ハクジツ」

 

 そういう口調をするのは、今一人しかいない。

 

 建物や、巻き上がる遠くの爆炎の光が届いて声の主を照らす。

 

 薄紅色の髪に、スーツ姿。その佇まいは、まさしく悪者。

 

 扇堂リンネである。

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