シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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衝突-5

「カザミ!」

「なんだいお嬢様!」

「あなたがセツカのところへお行きなさい!」

「なんで急に!」

 

 カザミは叫んできたバンリに驚いて聞き返す。

 

「いいから!私がここに残ったほうが効率的でしょう!?」

「んなわけ!誰が残っても変わりはしないんだから、愛してるって伝えにいけよっ!」

「愛などいくらでも伝えられます!ですが、彼女の!ゼンヒの心を現実に繋ぎ止める鍵はあなたしか持っていないのです!世の中は愛だけで回らない、彼女からして純粋な敵だったあなたがどれだけの力と意志を持って敵対したか!その現実こそ、彼女をもう一度引き戻す術なのですから!」

 

 バンリは、託す少女がどれだけゼンヒによって人生が狂ったかを理解していた。

 

 だからその仕返しのチャンスをあげて、仕返しによってどれだけ周りの人間に影響を与え、自分の生き様を刻んできたか再確認させる必要があると考え、彼女に託そうとしたのだ。

 

「はぁ!?それこそいつでも伝えられる事実だろう!?気持ちは今言わないと伝えられないって!」

「愛しか囁かれてこなかったのなら、冷たい現実を浴びせれば本当の愛、自分がそうして欲しかったと言う願いを知るはずです!あなたと私がどちらかが欠けてても敵わない、だけれど私が先ではダメなのです!」

「言ったな!?分かったよどうしてもって言うなら自分が最初にゼンヒを繋ぎ止める役をやってやるよ!だけど自分だって仕事でちゃんと向き合ってるんだ、バンリが受け止めるの失敗したら未来永劫弄ってやるからな!」

 

 カザミは何度も敵を撃ち殺して、その合間に了承した。

 

 先生達の援護によってそれなりに会話する余裕ができたのか、それぞれが送り出す人間を決める。

 

「ユメさん!クロコさん!自分たちでここを受け持つのでセツカの捕獲へ行ってください!」

「ダメだよショウコちゃん!君が行かなきゃ!」

「セツカは自分たちで止められるかどうか……!」

 

 ショウコは当初の作戦通りに行くように二人に頼むが、その二人が断っている。

 

「どうして____!」

「簡単なこと。ゼンヒの仲間はあなただから」

「セツカから戻す方法も確立されてないのにそんなこと言われても!」

「その戻す方法に多分そっちが必要なんだよ!大丈夫、私たちは君たちより強いからすぐに間に合わせる!」

「だけど……!」

「多分気持ちの方が勝つ!」

 

 ユメの激励の中には、確信があった。

 

 自身がホシノに伝えられなかったこと、ホシノが自分に伝えられなかったことがある。

 

 いつまでも続くとは思わなくても、別れそのもののタイミングは分からない世界で、彼女達はちょっとしたすれ違いで永別してしまった。

 

 生き返ってまで相手を歪ませることはしたくなかったユメはその別れの是非をあの世まで持っていくつもりでいる。

 

 だけれどもユリ達とゼンヒは違う。普通ではないけれど、まだどちらも生きている。

 

 いつか会える、蟠りが解けるという考えで理性だけに徹することは彼女は間違いだと、はっきり言えた。

 

「セツカにも、ゼンヒちゃんにも、届くのはあなた達しかいないから!」

「……わかりました、自分が絶対に彼女達を捕まえて、出来なくても足止めします。リーダーともう一度話し合うために」

「ん、頑張って」

 

 ある程度銃を収めてから対応しつつ、ショウコも突入態勢を作る。

 

 そして後一人。

 

「……行って、ユリ」

「ハクジツさん……?」

 

 ハクジツは、ユリにセツカの元へ行くよう言う。

 

「何言って……あなたが一番リーダーと関わりあるでしょう!?」

「彼女にとっては、私はもう裏切り者。言葉は永遠に交わせない。だから行って」

「話せば分かってくれるはずです!そう思うからあなたは」

「______もう少しだけ時間が欲しいの。殺される覚悟と、話す言葉を整理する時間が」

 

 目を伏せて、自分がどうしたいかさえも分かんなくなってしまった現状を悔やみながら、心の奥底ではどうして欲しいかが明確になっているであろうユリに託そうとしている。

 

「私はもう、彼女の近くにはいられない。だから、せめてあなたの願いは邪魔したくないんだ」

「ハクジツさん」

「行って。こんな、ひ弱で自分の感情も整理できない女に構っている暇はない。

 ゼンヒはそうじゃないから」

「……」

 

 彼女の言うことを否定したかったものの、その背景にはリンネとの愛と代替をゼンヒに求めたであろう罪の意識が見えてしまっているために何も言えなかったユリ。

 

「_____分かりました、私が向かいます。ですけどハクジツさん」

「何」

「あなただって、彼女の一番近くにいた仲間です。そう思ってなければ、裏切るなんて言葉を使わないでしょうから」

 

 励ましにもならないだろうが、それでも言わないよりはマシだ。その言葉をもって、二人は会話を終える。

 

「話し終えたな!?」

「はいっ!」

「このマコト様が道を拓いてやろう!」

 

 マコトはもう一回砲撃支援を要請。

 

 門の方へ向かう道に絨毯爆撃を披露し、その道にいた兵士たちを全員殺す勢いで爆発させていく。

 

 彼女は先生に、状況確認をさせた。

 

「リンネは!?」

「もうどっか行ったよ!だけど他のところからの指示だと、伏兵の可能性は低いって!」

「先行部隊を編成したならさっさと行け!シャーレはこの残存兵力を壊滅させてから向かう!」

 

 ゼンヒを取り返す、というただ一つのイベントにこれだけの人間が集まった。

 

 それぞれには思惑はあるだろう、立場からの視点ならこのことは一つの事件程度だろう。

 

 だが集まった者達は一つの結末にたどり着くまでに力を貸してくれている。

 

「分かりました!マコトさん、この場はお任せします!」

「行けッ!」

「はい!」

 

 彼女の激励をもらって、3人は走り出した。

 

「必ずゼンヒを取り戻すのですわ!」

「セツカをちゃんと懲らしめて!」

「ん、がんばれ」

「_____死なないで」

 

 ここで二手に分かれ、手も振らずに3人は走り出した。

 

 道は広くて邪魔者はいない、いても道には炎が上がっていてまともに入れない。

 

「どうやら無理やり押し出されたようだね二人とも!面白いじゃないか、ハクジツがいないの」

「ハクジツさんはどうしても心の準備が出来てないから、その準備が必要な出来事が来るように頑張らないといけない。そのためにも必ず決着をつける」

「いいね、そういうの。面白いじゃん」

「面白がらないでくれ、これでも本当に対処できるかどうか不安なんだよ」

「大丈夫、ヤツカさえどうにかなればどれだけ刃物を振ろうがこっちが勝てるよ」

 

 相手を舐め腐っているような言い草をしているカザミだが、それにはちゃんと根拠があった。

 

「全くお気楽なのはいいことだけど、緊張感って大事だよ」

「自分は考えてモノを言っている。いい?よく聞いてくれ」

 

 彼女は、特別暴力対策課という大事な繋がりを持つ二人に諭すように走りながらも言った。

 

「君たちはSRTの人間だったことは誰もが知っていることだし、セツカが刃物を扱うのが得意な人間だったのも事実。だけどね、ただの不良と君たちは全くと言っていいほど違う。君たちが上なんだよ」

「その証拠は?」

「訓練をしていることを言う時、一般の人間は実践で役に立たないとか、そんなもんが出来ていたら実際の事件で被害が出てないとかほざくだろう?だけれども、訓練というのは知っての通り体に方法を馴染ませるモノなんだ」

 

 事実ベアトリーチェ支配下のアリウスでやっていた訓練のことが身についているカザミは、それのおかげで生き延びることができている。

 

「その方法が使う日が一生来ないことを願いながら、訓練して鍛え上げている力は自然と体に染み付いている。確かに相手は実践をしているかもしれないけど、ちゃんとした訓練や、勉学による基礎の理解や組み合わせはちゃんとした環境が用意されてこそ出来上がるもの。その差が必ず君たちを救ってくれるよ」

「それがセツカとの差?」

「ま、自分は持っていないから死ぬかもしれないけど」

「目の前で死ぬのだけはやめて」

「そんなヘマはしないさ、かっこよくないし」

 

 彼女の冗談が冗談か知っている奴はバンリしかいない。

 

 そして、本当にそうなるかどうかは、神様だけしか知らないのだ。

 

「ところで、この3人で本当にヤツカのアレに勝てる?」

「そのためのセラフィム弾だ。ほら」

 

 カザミは、二人にマガジンをいくつか投げ渡す。

 

「ありがとう」

「助かる、けどこれ本当に効くの?」

「効く、と思いたいね」

「そう言うには理由があるのか?」

「うん」

 

 セラフィム弾の件で彼女は確信した。

 

 普通の銃弾に対しての耐性などを防ぐバリアは、人間の形を確定させる器でもあることを。

 

 ヤツカのそれもちゃんと器の拡張でそうなることも。

 

「もし自分の信じていることが正しければ、これで思い切り削ることができると思う。そうじゃなかったら仲良く死ぬけど、それでも一応自分の命と引き換えにゼンヒを取り返す手段は持ってきた」

「_____そう言うの、ナシって」

「自分の生存は仲間の待遇改善に影響はない。だからフルに使って彼女を意地でも生き返らせるんだ、勝ち逃げはさせない」

 

 カザミの声は本気だった。

 

 自分たちのことをちゃんとした確信と思想で止めて、中途半端な善意を持たずに対応したゼンヒにやられるなら後悔もなかったが______今の彼女はただの弱虫、このまま逃げられたらただのヒーローごっこにやられただけになってしまう。

 

 もしそうなった、そう言われるようになったら確実に社会復帰に影響をきたす。それだけは認められない。

 

「確実に、あの女を取り戻す」

 

 そう、彼女が呟いて、3人の会話は終わった。

 

「やあ、みんな」

 

 声が響いて、彼女達は足を止めた。

 

 ある研究所の廃墟で、中央には門がある。その門、いや、機械的なゲートはその中央の空間に少しだけ水色の渦。

 

「ようやく来たけど____半数死んじゃったね?」

 

 渦の前には、まだ変身していないヤツカ。

 

 そして声の主は、門の上の通路にいる。

 

「先に行かせてもらった、リンネの兵士の対処をさせてる」

「3人で勝てるつもりでいるのかしら?」

「そのためにここに来た」

 

 ショウコは煽りにしっかりと返事をした。

 

 そう、深紅の髪色をして、漢服を着こなした少女。

 

 天衣 セツカとの再会である。

 

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