シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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シャルアーのプレリュード

 ここはバンリの経営しているカフェ。

 

 ようやく営業再開したのはいいが、その復活の勢いが凄まじく朝の営業から14時のランチタイムまではずっと満席、持ち帰りを含めたら相当数の売り上げを誇っていた。それこそ一日の売り上げが300万を超えるほど。

 

 それでもパンクせずに経営できるのは順序立てて行動できるバンリの経験もあるが_______

 

「おいこっち早くしろよ!」

「今やってるってば!」

 

 一部アリウス過激派や、その学園内で特に仕事が無かった、警察での仕事に適さなかった人材を雇うことで余裕のある動きを実現。警察の仕事に向いていなかっただけで、それ以上にミスが許されないことを生業にしてきた子達にとっては余裕な仕事であり、これをやっていくのが本来彼女達が選んだ日常なのである。

 

 バンリは彼女達を救う、と言うことをやり遂げた人材としてかなり影響力を持っていたのだろう。この日はゼンヒも手伝いとして頑張っている。

 

「ゼンヒー!」

「わかってる!」

 

 三角巾とエプロンをして、髪を後ろに一つ結ったシンプルなヘアスタイルのゼンヒは、二人の美人から生まれた以上当然人気の出る状態。ただいつものイケメンスタイル、と言うよりかは恋人といるのか可愛さが全面に出ていたのもあって客からも人気を博していた。

 

 そんな様々な要素から生まれたピークが過ぎ、人がまだいる15時ほど。花壇近くの外の席でゆっくりしている少女が一人。

 

「案外嫌な顔するかと思ったけど、しなかったな」

 

 そう、シャルアー・ドーン。異邦人である。

 

 カツサンドを3個にLサイズのコーヒーを頼みながらゆっくりしていた。

 

「案外先に恋人の方が出来るかもな、と言うのが本当になろうとは思いもしなかったが、こうして見るといいカップルじゃないか」

「ああ、ほんとにね」

「ん?」

 

 シャルアーが声のする方向を見ると、そこにはショウコが。

 

「ショウコじゃん」

「いやあ、近辺に用事があったからついでに寄ったんだ。相席いいかい?」

「ゼンヒが友と認めた女だ、改めて話をしてみたい」

「妙な持ち上げ方は勘弁してくれ」

 

 照れながら、相手は対面に座る。持って来たのはチーズケーキとレモンティーだ。

 

「シャルアーは一体何か用が?」

「いや、私はない。ただ改めて自由の身になったからキヴォトスを散策しようって思っただけだ。ずっとブラックマーケットとか不良しか寄り付かないところに居たからな」

「お嬢様には声をかけられたりした?」

「誘いは受けたが断った」

 

 シャルアーはロシア人、しかも顔面偏差値も身長も高い。あるTRPG風に言うのであればAPP18。つまり、女性として最高峰の見た目なのだ。

 

「話しただろう、私にはフォルテという王子様が居ると。私は彼のものだ」

「ラブラブだね」

「当たり前だ。そうでないと生きていくのが辛かったんだから」

 

 世間話をしていると、ショウコはまた別で話を切り出した。

 

「ところでシャルアー」

「なんだ」

「黒服との云々は上手くいってるの?武器の譲渡がって言ってたけど」

 

 細かい内容は知らない彼女は相手に聞く。

 

「コキュートスアームズが必要になる場面になるにはまあリンネの排除が必要だからな。だからリンネを排除するまでは持っておく、って契約の時に言ってた。しかし、あの戦いの後ヤツカと戦い特別なゼンヒが振るったせいか少し面白いことが起こってね」

「面白いこと?」

「ほら」

 

 シャルアーが指を鳴らしてから手を広げると、そこに現れるように紺色のクリスタルを削り取って作られたような刃とそれにくっついている機械的な銃の部品が合わさったものが。

 

「なんだこれ」

「コキュートスアームズ、と言うかあの冒険の最後に出て来た氷剣コキュートスがなんかガンブレードと呼ばれる武器種に変化した。ここからいつもの四つに切り替えることも可能だ、苦しむことはないさ」

「弾は?」

「神秘を使う螺旋状の高出力弾だ。ここでは撃てない」

「なら仕方ないか」

 

 シャルアーがもう一度指を鳴らすと、武器が消える。

 

「元々はただ結晶を削ってカッコよく仕立てたような剣だったのが、キヴォトスに来てからこの世界の要素を受けたのか面白いものになった。これはこれで私は好きだ、結局武器をこうやって持ち運び、隠すことが出来るんだからな」

「犯罪だけはやめてね?私達はこれからリンネのことをなんとかしないといけないんだから」

「分かってるよ」

 

 二人は互いに頼んだものを食べてから、また話をした。

 

「しかしまあ、理解はしていたがショウコに対してもちゃんと心を開いてるあたりゼンヒも割と冷静になって来たのか?」

「冷静になってるかは怪しいと思う、結局ハクジツさんとか見て暴走する可能性だってあるだろうし。それでも自分はちゃんと思ってることを話したから、リーダーと仲直りできたよ」

「素直に、か」

「意外だった?」

「いや、そう出来る人間だから送り出した甲斐があったと思ってる」

 

 決戦前夜、あったことを軽くシャルアーは話した。それを聞いたショウコは少し驚いて聞き返す。

 

「セツカの復活と逆のことが起こったのか?」

「そうなるな。で、その結果ゼンヒが一時的に復活したから話し相手になったんだ。その時にも同じようなことを言ったよ。『素直に自分の気持ちに従って話をしてみろ』って、そうしないとろくに伝わらないぞって」

「その結果が実ったわけだ」

「相手が受け止めてくれること前提だけどな。でもショウコは受け入れてくれた、それが素直に嬉しいよ。セツカも喜んでいると思う」

 

 なんて話をし続ける彼女は、安らかな笑顔が見えていた。

 

「あとからゼンヒに聞いた話なんだが、花束を贈ろうって話をしたのはお前なんだって?」

「ああ。そう、こっちからリーダーに提案して受け入れられたからそのままやってたんだ。花の数とかはさりげなーく覚えているやつに誘導したりしたから、おかげで大成功ってわけ。恋のキューピットになったのは嬉しいけど、私は恋人いないんだな」

「それだけのことができるなら出来そうなものだけど」

「自分の人生とかと考えて、それを投げうる価値がある人と出会えてないからなあ。この人生と引き換えに……って子には出会えてない」

「そうだよなあ……まあ普通はそんなもんか」

 

 シャルアーもゼンヒも“極限状態”で頑張ってる時に支えてくれた子を恋人として迎え入れている状態なので、本来の恋を知っているわけでもない。ショウコのような状態が、普通である。

 

 そんな話も進みながら、最後にショウコは話をまた一つ。

 

「そう言えばリンネの処理が終わるまでって話をしていたが、リンネは見つかったかい?」

「いいや全く。これと言っていいほど見つかってない。どこにも痕跡がないとかいう、頭を悩ませる状態だ。カイザーも調べてる私も調べてる黒服も別ルートで調べているが見つからない。全くもって厄介極まりないものだ」

 

 聞かれた方は困ったように答え、カツサンドを食べる。

 

「麻薬の流通ルートだってはっきりしてないから困っているし、セツカのお得意様だった奴らにコンタクトとって片っ端から調べているけどなんにもひっかからないんだ。輝薬の話とかも持ち出してこういう奴いなかったか?と聞いてもなんの返事もなかったんだからな」

 

 シャルアーは首を振る。

 

 その苦労は想像に難くないものだ。リアルであった厄災のような存在が、霧の如く消えて足取りが掴めないとあっては流石に相手の動きの方が上だと言わざるを得ない。

 

「結局こうしてキヴォトスほっつき歩きながらそう言った奴が居ないかどうか調べるのに終始してたら時間が経ってしまってさ。腹を空かせてしまったからこうして食べているというわけだ。上手いから近辺寄った時はここに来ることにはしてるが」

「私もここのチーズケーキをかなり気に入っているよ。とても美味しいし、このクリームチーズケーキのクリーム感がとてもいい。癖になってしまうね」

「今度私もそれを頼んでみようか」

 

 二人が笑って話していると、食べ終えたショウコがトレーを持って立つ。

 

「もう行くのか?」

「いつも通り、いや、いつも以上に忙しくてね。カザミ率いたアリウス過激派の話も解決しないといけないし、結局捜索は続くしであんまりにも休みがない。それでも明日は休みになってるけど……まあ一日で疲れが取れるとは到底思わないかな」

「そりゃそうだ」

「シャルアーはこの後なんか予定あるの?」

 

 聞かれた方は残っている僅かなものを全部胃の中へと押し込んでから答える。

 

「いいや、全く予定はない。だけどそうだな……また特別暴力対策課事務所に顔を出してもいいかもしれないな」

「そんな部外者がほいほい入ってくる場所じゃないよあそこは」

「いいじゃないか。それに、もう一人話してみたい人がいる」

「カザミと?」

「ああ」

 

 シャルアーは、カザミにも興味を持っていた。

 

 ゼンヒと真正面から言い合って、その中でも彼女の気持ちを汲んだ行動ができるやつ。そう言ったやつがなぜテロリストなどをやっていたのか気になるのだ。話を聞いてみるのは今しかない、とも考えているのだろうか。

 

「私はあいつに興味がある。だけどまあ、もう少しだけゆっくりしてから行くよ」

「そっか。じゃあ、また今度」

「ああ」

 

 お互いに手を振ってから、シャルアーはショウコを見送った。

 

 揺れる茶髪に、スーツの姿。可愛い系なのに、余裕を崩さない態度はクール系。そんな仲間の後ろ姿を見ると、なんとなく安心感を覚える。

 

「ああ、お前はこういう姿を他人に惜しげもなく見せれるほど強い生き方をして来たのか。ショウコ自身の強さが、私の友達を受け入れてくれた、か。嬉しいことだ」

 

 そう言いながら、背伸びをして一度空を見上げる。

 

 空は綺麗に晴れていて、それでいながら梅雨の影響からか、若干水の匂いが。この景色に、彼女は肩の力を抜いてリラックス。

 

(心地いいこの瞬間がずっと続けば良いのだが)

 

 そうやって少しのんびりして、ショウコが店から出て行って5分後くらいに彼女も立ち上がった。

 

「よし、言った通り遊びにいこっかな」

 

 そう言ってトレーを持って片付けに行くシャルアー。

 

 この日は、特別暴力対策課で、少しだけ集まったメンバーでプチお祭りを開催したらしい。

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