シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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(ここからは最終決戦以外、Caseとは付きません)


黄昏のゼンヒ達-1

 自体は最悪な状況を辿っていた。

 

 梔子ユメは何の関係があってか、リンネに協力して敵対。

 

 また、彼女が戻ってきた時にはすでに大混乱。

 

《D.U.地区で大規模な事件発生!何か得体の知れないものが追ってきています!》

《トリニティとゲヘナでも同様の事件が発生しています、該当地区の住民は直ちに避難してください》

《現在この地区はヴァルキューレ警備局が閉鎖しています、近づかないようにお願い致します》

 

 そんなニュースが流れてきてるが、誰も憤ったりする余裕もない。

 

 ホシノは無事だが、大怪我を負ったゼンヒはぐったりしながら手当を受けていて、シャルアーも相当無理をしたのかバーのカウンターで突っ伏して寝ている。

 

「っ……」

「我慢してよ〜、おじさん医療兵じゃないんだよ」

「これでも我慢しているが、どうもな」

 

 片目を閉じて痛がっているが、堪え性はある方だ。

 

 手際がいいホシノの応急処置が終わると、少しぐるぐる巻きだが全然ゼンヒと分かるぐらい整然とした状態に。

 

「ありがとう」

「うん、どういたしまして」

「お邪魔するよ」

 

 そこに入ってくる男が一人。

 

 先生だ。

 

「先生!」

「久しぶりホシノ、ごめん遅くなった」

「大丈夫だよ〜、心強いねえ」

 

 のほほんとした彼女に安堵する他のメンバー。

 

 だが、さらに後ろから一人やってくる。

 

「先輩?」

「ハクジツ!!」

 

 驚いたゼンヒ。

 

 白鳥ハクジツ、シャーレ前の交番で頑張っているはずの後輩が先生と共にやってきた。

 

「来てくれたんだな」

「先輩の助けになるかも知れないって先生直々に打診されて、じっとしているわけには行かなかったから来ました。無論、シャーレ前交番の指揮系統を構築してから来ています、安心してください」

「そうか……!ありがとう!」

 

 嬉しそうにしているゼンヒ、あれだけのことがあってもやはり信頼できる後輩として心の中に存在しているようだ。

 

 そんな彼女の純粋さに後ろめたくなるハクジツも、その心を隠して笑う。

 

「ところで先生、どうしておじさんたちのところに?」

「色々準備をするためにね。作戦会議とかも必要でしょ?」

「と言ってもリンネがどこで待ってるかもまだ分からない、それにあれのちゃんとした戦い方も」

「確かにね、あれの元になっているのは浮浪者の少女達だと聞く」

 

 先生は、平然と避けたい事実を口にした。

 

「え……?」

「知らないと思った?ちゃんと分かってるよ」

「____」

 

 ホシノは目を逸すが、先生は微笑んだまま。

 

「大丈夫だよ、ホシノ。先生は無策で突っ込んだりはしないから」

「でも、あんなになってしまった人達が元に戻る方法なんて」

「その準備と説明のために先生が先んじてきたんだ、名前の通りね」

 

 ゼンヒが立ち上がる。

 

「あれを元に戻す方法だって!?」

「うん、あるっぽいよ」

「そんな子供騙しが」

「君、忘れてない?助け出した人達の中に、その手のものが得意な子がいるの」

「何が」

「アリウスの子達だよ。それもとびっきり、外道な手段に秀でている。ね」

 

 そう、カザミ達だ。

 

 彼女達が手段を講じているらしい。

 

「あの子達からの伝言も伝えるためにやってきたんだからね」

「何か」

「とびきりのプレゼントを用意しているから、待ってるんだな!って。んなわけでデータそのものは取ってるから、会議室を借りるよ。準備できたら呼ぶから」

 

 そう言って先生は笑顔でバーエリアを去った。

 

 残ったのはホシノとシャルアー、そしてゼンヒにハクジツだ。

 

「先生、全くダメージなさそうで安心したよ。あれを見てると流石に私も気が緩む」

「うんうん、今は緩んでた方がいいよ。勝って兜の緒を締めろ、って言うけど忙しすぎると紐のことに気をかける暇もないからねえ」

「あれは勝ったに入るのか?」

「確かに怪我したし取り逃したし、見かけの部分では負けてるけど________」

 

 ホシノは彼女の隣に座って、話を続ける。

 

「でも彼女達は私たちに喧嘩を素早く売ることが最善の行為だった。それは、実は戦闘リソースの制御が出来ないことを意味するんじゃないの?」

「……浮浪者や弱者の制御が出来ない、ってことか?」

「そうそう」

 

 彼女は続ける。

 

「喧嘩を売るには人手か、それなりの兵器、どっちにしろリソースっていうものが必要なんだよね。でも、基本的に彼女が得れるのはヘルメット団以下の少女達だけ。確かに数は多いけど、最初から投入できるリソースには限度がある。金と時間、その両方。輝薬とやらはそれをなんとか利用できるようにするための薬だけど、リソースの移動と管理はコントロールできないんじゃないかな」

 

 ゼンヒは、大まかに言いたいことは理解したようだ。

 

「人は我慢ができない。我慢した後の褒美がはっきりとしないなら、尚更ね」

「つまり"薬物依存者のコントロールが出来ない"ってことか」

「そういうこと」

 

 輝薬の依存者は、どんどん使うだろう。

 

 そのうちクロコダイル以上に自分を溶かし、それがリンネの戦争リソースとして変質し切る。

 

 ただしその管理をしているのはリンネであり、下手に増えすぎるとそれはそれで使うのに苦労する。代償がある能力とすれば体を蝕むし、普通の兵器だとしてもその保管には結局置き場や隠すのに苦心したのだろうと推察。

 

「だからギリギリまで待って今日仕掛けるつもりだった。どこでどう会ったかは分からないけど、その準備をしている段階でユメ先輩に会ったんじゃないかな」

「そういう経緯か」

「これで相手側も準備万端!ってわけでもないだろうけど、喧嘩売った以上はニュースのような惨状をノリで引き起こすのが一番だったんだねえ。実際おじさん達も、これで出遅れた訳だし。先生と協力している生徒がどうするか、なんて説明されないと分からないし」

「でも、先生は信じるに値するんじゃないか」

「シャルアー」

 

 起き抜けが一人。

 

「いつ」

「そろそろ説明会があるから起きろと、お前の後輩に言われて起きたばっかだ。ふぁあ……ふ」

「眠そうだねえ」

「起き抜けだって言ったばっかだろ。でも、この緊急事態に態々時間を設けるの意味を知らない男じゃないはずだ。それにカザミのサポートに徹している以上は、きっとアシスタント以外でやることはないんじゃないか」

 

 そのサポートが的確で迅速、故に実力派の生徒ですら心酔する。

 

「それだけカザミちゃんの策が面白いって話なんでしょ。楽しみにしておこうよ」

「そうだな」

 

 話は終わり。

 

 全員のんびりしようと思っていたが、ここでまた誰かが部屋に入ってくる。

 

「失礼しまーす」

「ショウコ!」

 

 甘凪ショウコ、ゼンヒの部下がエントリー。

 

「おお、いるじゃないですか。どうです?休めてます?」

「色々あってまだ全然休まってない。が、それはそれとしてユリは?」

「今別のところで会議してます、カザミはすぐに戻ってきますよ。あと10分くらいで」

「そうか」

「張り切ってましたよ〜、ちゃんと役に立てる時が来るとはしゃいじゃうんだから」

「そんな部下を持てた私は幸せ者だな」

「全くです」

 

 そんな彼女は、今度はハクジツを見る。

 

「ハクジツさんもいらっしゃったんですね。こんばんは」

「ええ、こんばんは」

「今回の作戦、ちゃんと参加してくれるとは思ってたんですけど……本当に大丈夫なんですか。最悪死にますよ?」

 

 ショウコは臆せず聞いた。

 

 ハクジツがどうして居るか、と言われればゼンヒとリンネを繋ぐ重要参考人であり、いわば餌に近い役割を要求されることになる。

 

「私が覚悟もなしに来たと思っているの?」

「それは全く」

「あの人は私にとって唯一無二、私だけの青春だった。ああして私から離れたのを、赦すつもりは無い」

「ハクジツさん」

「そのためにはどんなことだってやる。命一つで彼女を連れて来れるなら安いものなの、それくらいの恋心があったからあの時彼女を選んだ。先輩の中に彼女がいないかを探し回って失望した、今更ここでやめたりしない」

 

 彼女の顔は真面目だった、そして本気に満ち溢れていた。

 

 それは、幾場の修羅を潜り抜けたゼンヒにとっても、ずっと精鋭として鍛えられてきたショウコにもわかるもの。

 

 目の前にいる少女は、笑う。

 

「_____じゃあ、なんの心配もないですね。死ぬこともなさそうだ」

「どうしてそう言えるの?」

「綺麗事に殉じる人間ほど、死ぬのが早い。なぜか知っていますか?」

 

 問われたハクジツは、首を傾げる。

 

 そこに、答えが注がれた。

 

「死に際、死にそうになった時、その綺麗事を果たせなかった無念から逃れるために止める人間さえ振り切って綺麗事で飾ってしまう。そういう人間そのものは何も果たせないまま死ぬだけ。しかし、この世で一番必要なのは生きる意思、そして野望。野望という風と聞こえが悪そうに見えますが、何かを変えたいと強く願う意志というのは実力も何もかも成長させる良い種になりますからね」

 

 見たくないものを遠ざけるのは簡単だが、それを見つめるのは簡単ではない。

 

 しかし野望というものは嫌なものを見るめるハードルを簡単にできてしまう、これが大きな原動力になるとショウコは説く。

 

「ハクジツさんがある程度、司法と欲望に折り合いをつけれたからここにいる。この折り合いをつけて、納得し、全力を出せる状態に自分で持ってきた。そんな人間は生き残ります、確実に」

「そう」

「だからまあ、気を張らずに頑張りましょ〜」

 

 雑っぽく、それでいて確証を持った励まし。

 

 ハクジツも愛想笑いして、それに応えた。

 

 そろそろだろうか。

 

「おーい!みんなできたよー!」

 

 そんな声がした。

 

「お、先生準備できたって」

「じゃあカザミも会議室にいるのか」

「秘策とやらを聞きに行こうじゃないか」

「おー!」

 

 みんな立ち上がり、廊下に出る。

 

 会議室の方は明るくなっており、エージェント会議のような雰囲気を醸し出している。

 

 そこに入ると、プレゼンするところに二人。それ以外は空。

 

「カザミ!」

「おお、ゼンヒ」

 

 当然そこには今回の秘策を作った奴もいる。

 

「無事でよかった」

「まあ遠かったからね、それよりもさっさと座って」

「ああ」

 

 カザミに促されるまま、全員座る。

 

「うーん、良いかな」

「始めちゃおう」

「オッケー」

 

 先生も着席。

 

 全員問題なし、誰もがすでに映っているプロジェクターの画面を注視。

 

「今から化け物を元に戻す作戦説明をするよ!」

 

 カザミは、作戦会議を始めることにした。

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