シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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ゼンヒは目が覚めず、時間は過ぎて再誕作戦の翌日の昼。

注意喚起・復興作業が進む中、クロノススクールの報道番組がいろいろな場所で流れる。

どれだけ足掻いてもゼンヒやその周りはシャーレの人間じゃない、つまりはモブだ。

その軌跡を、大人(先生)はどう捉えたのか。

生徒達は、その言葉をどう受け止めたのか。

言葉だけを保存し、それを世界の結論としよう。


世界(キヴォトス)が出した結論・前

『_____先日発生いたしました、住所不定の浮浪者少女達の集団犠牲によるミメシスの侵攻事件は、現在矯正局を始めとした連邦生徒会並びにヴァルキューレ警察学校主導での設備での保護をしています。また、被害額が兆を超えると専門家の間では予想されており、各学園の軍事費とインフラの再整備における費用が非常に大きくなるとのこと』

 

「ああ、あれ解決したんだ」

「噂によればヴァルキューレの特殊部隊主導で解決したらしいよ。シャーレの先生も居たらしいんだけど、なんでもこの事件のサポートに回ったんだとか」

「ヴァルキューレの自作自演って思いたいけどまあゲマトリア関連で実際の被害や映像見てると本当らしいからねえ」

 

『また、今回の事件の首謀者と思われる扇堂リンネ容疑者は現在矯正局の特別収容施設において集中治療を受けています。落花堂と呼ばれる反社会勢力のリーダーであることは確認出来ていますが、彼女自体がどの学園にも所属してないだけの少女であることも踏まえカイザーグループを始めとした大人が関与している案件かどうかを捜査中です。今回の件がゲマトリアやデカグラマトンと似たような規模であるため、彼女一人での犯行とは考えにくいとヴァルキューレ公安局長の尾形カンナ氏は見解を示しています』

 

『今回の事件は非常に痛ましい事件であったと思います。しかし、解決してくれた勇敢な警官、特別暴力対策課のメンバー、一度敵対したにも関わらず広い心であのミメシス擬きから人を助け出す手段を講じ、提供してくれた元アリウス過激派、何よりも互いの政治的感情をおいて協力して下さった各学園の生徒並びに統括のサポートをして下さったシャーレの先生に深く感謝しています。このような情勢でここまでの協力体制を築けたことは、今は奇跡ではありますがいつか当たり前にしたいと考えています。今回、このような行為に出たと思われる扇堂リンネ容疑者のような存在がまた出てしまう前に、この関係を発展・強化したいですね』

 

「狂犬じゃん。あんな丁寧な話草初めて見たかも」

「基本クロノスのニュース番組に出ないもんね」

「あ、見て。先生」

 

『今回の件に関しては、事件の責任者のご厚意に甘える形で先生をお呼びしています。どういう問題があったか、またどう対処していくかの説明をしてくださるとのことです。本日はよろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

 

「先生いつも同じ顔してるよね〜」

「裏で生徒食ってるって話だけど」

「いやあでも食ってたらもう少し大変なことになってたんじゃね?」

「たとえば」

「そもそも前線に出てこないとか」

「そんなバカじゃないでしょ〜」

 

『早速ですが、先生。今回の件に関しての率直な所感をお聞かせ願えますか?』

『はっきり言えば今回、自分たちは犯人に負けたと思う。対応の遅さ、政治の不備をそのまま突かれた結果、発展したところでさえ扱えない状態になったと思うね。福祉が未発達すぎて、倫理が効力を持つだけの裏付けを作れなかったのがこの事件の引き金を引いたと思う』

 

「え〜?でも勝ったんでしょ?止めたってことは問題なかったでいいんじゃないの?」

「うちもそー思うなー」

 

『負けた……どう言うことですか?』

『そもそもキヴォトスは表面化されてなかっただけで、差別が横行してもおかしくない社会だった。神秘と呼ばれる異能も然り、少女達の中で生まれた能力差を埋める、もしくはサポートするための支えがない。それは、能力の差というものを認めるに等しかったんだ。だけど、教育という概念は基本”誰でも覚えて使えるようになる知識を共有する場・行為”を指すのだから、キヴォトスは学園都市でありながら教育の理念を何一つ持ち合わせていなかったんだ。

 そこに加えて、福祉という概念が非常に薄い。学園が政治を担っていたとしても、中心は少女達。まだ夢見がちで、競争心が非常に強い。これはとても良いことだけど、政治という分野では非常によくない。誰かを置き去りにすることを是とする思想は、政治にあってはならないことだということをみんなが忘れてしまっている。いや、そもそも根付いてないことを見落としてたんだよ』

 

「何いってんのかなこれ」

「わかんねーけど、こんだけ大々的に取り上げといて説教垂れるだけはないでしょ」

 

『連邦生徒会長時代は、キヴォトスの才能と神秘という当たり前にある区別・差別の温床の世界に法をギリギリまで齎すことがおそらく軸だったと思う。各学園の元トップ、特にトリニティのユスティナやゲヘナの雷帝など、話を聞くだけに暗く恐ろしい過去を持っているものも多かった。それら”当時の大問題”を防ぐための法を制定するために彼女は力を使い果たしたんじゃないかな』

『つまり巷では連邦生徒会長は非常に有能であったことは、間違いであると?』

『事態はそんな単純じゃないんだ』

 

「先生いつになく真面目ですわね」

「それでも彼の言葉なら聞く価値はありますわ」

 

『彼女は無法になりかねない世界に法を作って運用させた唯一無二の存在だ。みんなが崇めるのも分かるくらいの超人だし、文明を保つための型を作って実行していた彼女は、ある意味では自分を超えているんだよ』

『……それでも解決できない問題があったと?』

『うん、法を制定しても、その格差を埋めて人々の権利を保障する方法まで彼女は作れなかった。多分、作る前に消えてしまったんだと思う』

 

「真面目な顔してる」

「……あの先生が、ねえ」

 

『だから浮浪者達や学園生活に馴染めない不良生徒が出てきてたんだよ。一度、どうしても馴染めないところでしがみついて市民権を手にした生活をしていても、心に限界が来て市民権の価値を手放してしまう。だけど本来キヴォトス市民であることは、この都市に住んでいるからそう言える。決して何かの学園に所属して、勉強と青春を送る少女”だけ”がそうじゃない。確かに信用問題の点では生徒情報などから紐付けをすることがスマートかもしれないけど、一度壊れて手放したりそもそも生まれた場所が悪くて教育やちゃんとした場所での生活が出来ない子達はそんな社会でどうやって生きていくのが良いのか。その回答どころか、選択肢すらない。これは連邦生徒会長に頼りすぎてたツケとも言えるね。無論、そこに気づいていながらも自分だって行動に移せなかったのは正直なところ悪いよ』

『先生にも落ち度があるのですか?』

『シャーレそのものも万能ではないからね。そもそもが超法規的組織ではあるんだけど、求められている仕事は”生徒のフォロー”であって市民全般のサポートじゃない。というか、出来ない』

『なぜ出来ないんです』

『シャーレの仕事は生徒のフォローであり、その問題解決を重要視しているからこそ”仕事上のトラブルに関係した越権行為”が認められているだけなんだ。シャーレの立場を利用した福祉行為の開始は出来ない、それを認めてしまったら連邦生徒会長が作り上げた法律が意味をなさなくなるし、その根源であるシャーレの先生という立場がよくない意味と力を持つ。学園間交流も含め、キヴォトスのルールを捻じ曲げることは再び自力救済至上主義を復活させてしまう』

 

「先生って自分の立場にちゃんと責任と考え持ってるんだ。素敵」

「でも言ってること難しいかも。それに、今回の被害者達を救う術はないって言ってるような気がして」

「先生はそんなことしないよ!最後まで聞いてみよう」

 

『ですが、助けないともう一度このような事件が起きると思います。何かしらの対策か、何か……現状あるのでしょうか』

『そうだねえ。正直なところ自分がこうしたら救える!というふうに言うのは無責任極まりないから言いたくはないんだけどね、一応あるにはあるよ』

『たとえば』

『今回はミメシスの大量発生と素材になってしまった少女達を保護しているわけだよね?今までは届かなかった存在だったけど、こうして自分たちの世界に入り込んだ以上はせめて人間としての礼儀を尽くすべきで、それは自分たちが受けてきた権利を分け与えることだ。たとえば、復興作業の労働力として雇いながら現代の建設における勉強をしてもらうことで建設業界の発展をするための人員を確保できるだろうし、彼女達が住んでいたところの改善にもつながる。そうでなくとも勉強をさせた上での各種アルバイトへの橋渡しを連邦生徒会が請け負う形にすれば、それもまた支援の一つになる。そう言った労働への架け橋を作ることが、現状は一番良いと思う』

『先生はその中でどのような支援を?』

『シャーレに許された行為は正直なところ下流階級の援助を直接行えるものじゃない。だけど、政策を打ち出し実行する生徒達のフォローは許されている。もちろん上に掛け合うことはこの場で言わせてもらうけど、メインはそう言った上流層の生徒の政策の実行補助ないし修正がメインになるんじゃないかな。それに時間を食うことにはなるけど、やらない事にはこのような痛ましい事件が繰り返されるだけだから』

 

「支援ねえ、連邦生徒会って不知火カヤを許すくらいどうしようもないろくでなししか居ないんだから期待できないなあ」

「でも先生の顔を立てないなんてことする?政治屋がその仕草をしないなんてまさか」

「だよねえ。でも信用出来ない」

 

『なるほど。では、先生がバックアップとなって動かすんですね』

『そうなるね』

『ヴァルキューレの責任者も各学園間の協力体制を維持したいと言う旨を言っていましたし、その機運はあると思います。ですが、上手くいくでしょうか。正直な話、統括していたヴァルキューレも含め連邦生徒会の信用問題は残っていますから_____そこに関しては?』

『残ってると思う。だから、自分が改めてその下部組織の代表として出演させてもらったんだ。あることを皆さんにお伝えするために』

『と、言いますと?』

『特番生放送なのを利用して、今から市民の皆様にお願い申し上げたいことがあります』

 

『シャーレの先生ではなく、一人の人間としてのお願いです』

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