シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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Case15-1:公安局による定期確認、そして策略の始まり 前編

 ゼンヒは交番にいた。

 

 他の生徒に任せており、自分は窓口でのんびりしながらコーヒーを飲みつつ、ネットで記事を見ながら過ごしている。

 

「先輩、お客さん来た」

「誰だ?」

「カンナ局長」

「すぐに通してくれ」

 

 パソコンを閉じてから、ゼンヒは後ろを見た。

 

 すると警官用の出入り口から、公安局の局長が出てくるのである。

 

「ゼンヒ居るか?」

「ここですよ局長」

 

 彼女も立ち上がって後ろの警官用の机に案内してから、二人して座る。

 

 後輩がしばらく窓口を変わると言ってくれたのでそれに甘え、ゼンヒとカンナは話した。

 

「お前はかなり単刀直入に言うのが好きだったな。今回訪れたのは事前告知の通りシャーレ前交番の状態確認及び記録確認、そしてゼンヒが言っていた相談についてだ」

「じゃあまず記録確認から済ませましょうか」

 

 そう言って、ゼンヒはカンナに報告書を見せる。

 

「____結構暴れているんだな。山海経の生徒に、ゲヘナにも行って……報告通りだがやはり細かく見るとすごいな」

「他の人の分はいかが?」

「今確認した限りでは怪しい点もない。うん、しっかりと巡査部長の仕事もやっているようだな」

「えへへ」

 

 ゼンヒは照れた。

 

 渡した書類に不備なしとして、カンナは自分のバッグにその書類を入れる。

 

「状況としては問題ないと判断した。あの後輩、名前をなんて言ったかな?」

「白鳥ハクジツです」

「ハクジツか、彼女と一緒に見て回ったからな」

 

 軽くではあるが、これで状況確認並びに記録確認は終わった。

 

 と、するならば最後の一つ。ゼンヒの相談である。

 

「困ったことがあると言っていたな。そのことについて、聞かせてくれないか?」

「あまり手を煩わせたくはなかったのですが……ここまで来たなら仕方ないことなので話します。SRTの件、なんですけど」

「SRTの?お前からその話が出るなんて珍しいな、ゼンヒ」

 

 特別表彰式の時には『元SRTの連中を率いるなんて無理がある』と、かなり消極的な態度をとっていたゼンヒからそれに関する話題が出てきたのか、カンナは驚いた。

 

「まだ派手に動いてないのでそんな大事ではないのですが______」

 

 そう言って、前の見回りの時のことについて話した。

 

 自分がハットを被りなまじ警察ではない覆面の動きをしていたこの前のゲヘナ外れの銃撃事件。不意打ちとはいえ一人でアリウスの一部生徒を倒してしまったことにより"警察ではないが善をなす存在がいる"とモモトーク上で話題になったこと。

 

 ヴァルキューレの警官が腐敗していたことに起因するヒーローの存在の正体が自分になってしまい、その火消しが不可能になったが、そこに付随して今まで燻っていた元SRTからの編入生達が強く祀りあげて本気でその黒ハットのヒーローに自分達を救おうとしてもらっている状態が続いていて、現在は自分の連絡先を教え次の動きまで待てと言っていること。

 

 おまけにそれが業務中に起こったことであり彼女達と直接出会ってのことであって、ここで裏切るとリスクが大きいかもしれないという懸念が強まっていることを話した。

 

「そうか、それは災難だな……とは言っても、私にできることは少ないぞ」

「私も悩んでいるんです。どうすればいいか……そう思って、案を用意してきたのでちょっとだけ聞いていただきたいと思いまして」

「ん?お前は率いたくないと、今はその時ではないと前に話していたのではないか?」

「確かに今の私では実力不足かもしれませんが、圧倒的に足りないと言うことはないでしょう。SRTのメンバーがあれに憧れていて、あの正体が私である以上きっとフォローが効く範囲のはずです。そうであるならば、むしろこれは千載一遇のチャンスだと私は考えています。局長」

 

 ゼンヒは、少しだけ自信のある表情を見せた。

 

「……話を続けてくれ」

 

 そんな彼女を見て、乗り気になってきたカンナは少しばかり口をにやつかせて続きを彼女に話すよう頼んだ。

 

「まず、SRTからの編入生は私に対しての信頼や期待があります。最初で最大の難関はこれであり、この信頼を勝ち取るまでの長い算段を私たちは共に考えながら思案してたと思います。しかし、この難題は少し強めの信仰心でスキップできたではないですか。ならばその次の段階から考えましょう。

 彼女らは自分達が罵倒されず、正当な扱いを受ける場所を望んでいます。その居場所を正式に作ってしまうのを、まずは局長に依頼したいのです」

「しかし、それがヴァルキューレだとしたら、ヴァルキューレ外の指導者を望む彼女達にとっては不都合ではないかな?」

「そう言う時の映画ですよ」

 

 ゼンヒは断りを入れてから立ち上がって、ホワイトボードを出した。

 

 大きな丸を二つ書き、その中に『ヴァルキューレ』『名称未定組織』をそれぞれに書いた。

 

「つまりですよ?その黒ハットのヒーロー率いるギャングかマフィアになってしまえばいいんですよ。必要であればまあ民間警備会社みたいにして申請もします、つまりこれは外見関係のない組織になるんです」

「それを望んでいるのだろう?」

「しかしですよ、当然そんな組織っていうのは鼻に付く連中もいるでしょう。特にこのままやっては、純ヴァルキューレの生徒からすれば餌か恐怖の対象かの二択。なのでここで、警察としての身分も与えるわけです。例えば_____」

 

 名称未定組織の下に括弧書きで《公安局特別暴力対策課》と書いた。

 

「まあこんな感じの身分"も"持っている形になりますね。つまり警察でもあるのだから、暴れたところで正当であれば当然罪にも問われないし、この組織が自由に、そして彼女達の思い描くヒーローとしての活躍を保護する。当然疑問に思うでしょうが、これは私が『君たちを虐げたサツをちょっと脅して権力を手に入れただけだ』とでも言えば心酔してるなら言い訳として十分です。実際突拍子もないこと言って困らせてるので、脅しなのには違いないですが」

「なるほどな……つまり警察でもありながらギャングでもある。本当に裏社会を牛耳る組織みたいになりそうじゃないか」

「犯罪行為は当然咎めますがね。ヒーローに憧れたんならヒーローをやり通せ、みたいなのは言って聞かせておきます」

 

 軽い概要をゼンヒは説明し、その内容を飲み込んでからカンナは考える。

 

(とはいえこれは私も言い訳が欲しいところだな。どうしようか……いや、そもそも元SRTを集める時点では逆に私のやり方は非難されないか。どう足掻いたところで邪魔なものにとっては都合よく解釈されて言いふらされるだけだからな。逆に私が『SRTに鉄槌を下した!』などと酷い賞賛を受ける場合もあるのだろうか。あまり嬉しくはないがな)

 

「分かった。では、その名前で申請してみることにしよう。ただ、他の幹部も納得させないといけないという点でもしかしたら今の彼女達に不利益を与えることになるかもしれない。そのフォローだけは頼むぞ」

「本当に対応してくれるんですか?」

「そちらから頼んでおいてその反応はないだろう」

 

 カンナは苦笑い。

 

「なるほど、警察の権利を持ちながらも実態は別組織の強い軍団_____ロマンあるじゃないか」

「当然こうなれば私も逃げてられないので、責任は負うつもりです」

「……それでも、しばらく交番勤務なのには変わらないぞ」

「本当ですか?」

 

 給与や立場が上がる、ということよりも嬉しいことを聞いたゼンヒは局長に向かって聞き返す。

 

「ああ、本当だ。これは単純にお前の保護も含んでいる。名前を借りてそうだな、特暴課。この組織のお目付役としてお前を推進する形でやるから、あっちこっちへ行きつつも交番勤務として働いてもらうぞ。当然手当は出せる範囲で出す」

「わーい」

「しかし、質問がある。何をするんだ?」

 

 居場所作りをしたからには、今度はどんな仕事をやるのか決めないといけない。結局集めるだけ集めて何もしないというのは結局飼い殺しになるだろう。

 

 だがそこもゼンヒは抜かりない。なぜなら抜かっていたら、危ない状況だからだ。

 

「実は私はこれでも狙われている可能性がありましてね」

「やはりアリウスの件か?」

「ええ」

 

 彼女は頷く。

 

「私のことが知れ渡った以上、そしてそれがアリウスの過激派であった以上見せしめとして私を狙ってくるでしょう。それに関してはすでにメッセージを送っています」

 

 ゼンヒは自分のスマホのメッセージを見せる。

 

『この前の襲撃ではアリウス残党に狙われている可能性が高い。あれからあの依頼者と連絡を取っているが、まだ居残っているようだ。流石に君たちの力が必要になるかもしれないが、装備に関して不足しているので今は待機でよろしく』

『了解!』

『装備整ったら絶対呼んでくれよ!』

 

「本当に望まれているんだな」

「これをいいことにするための相談だったんですよ」

 

 順番に仕事をするための思案をしてきたが、ここで行き詰まる。

 

 そう、ヴァルキューレはそもそも予算の関係上か武器が満足に配備されてない。改善しようと色々な人間が頑張っているが、やはり一番の財源である連邦生徒会からは流れてこない。

 

「人が揃っていても武器がないのではな」

「それさえなんとかなればいいんですけどね……」

 

 カンナのポケットマネーで賄えるものでもないし、結果を完全に残すとは限らないものに個人の財産を使うわけにもいかない。とは言え、武器がなければ仕事はできない。どれだけこちらにやる気があってもだ。

 

 悩んでいると、窓口にいる後輩が声をかけてきた。

 

「先輩ー!」

「なんだ」

 

 窓口の方を見ると、そこには世話になった風紀委員と依頼してきたゲヘナの生徒が。

 

「この人たちが用事あるって」

「分かった。局長、少し外しても?」

「勿論、大事だからな」

 

 ゼンヒはそのままカウンターの方へ行く。

 

「この前の生徒さんに、イオリさんか。お久しぶりです、と言ってもそこ数日も経っていないんですけど」

「なぁに知らない仲じゃないだろ、だけどイオリさんってのは悪くないな!」

「なんのご用件で?」

「アリウス過激派の件だ」

 

 イオリは一度ため息をついてから話し始める。

 




(次回までCase15は続きます、17:04更新予定)
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