『表彰・扇皇ゼンヒ殿
貴殿は先日の浮浪者暴走事件に際し
迅速かつ勇気ある対応で
容疑者逮捕と被害の拡大防止に貢献されました。
敬意を表しここに表彰いたします』
『おめでとう、ゼンヒ。今日から私と同じ公安局の幹部だ』
『実感が湧かないな』
『私は、お前を保護したあの時にこうなるとは思ってなくて____ああ、とても嬉しいぞ!』
『局長!』
『やったあ!リーダーが偉くなった!』
『表彰式は終わっても場だからあまりはしゃがないようにね』
『そろそろゼンヒ警部補も交番と_____いえ、今は警視でしたね。うわあ、ハクジツさんもいなくなって寂しいですよ』
『警視と言っても現場査察はあるし、特別暴力対策課の仕事などでシャーレとかに寄る時にはここに来る。だから心配するなって』
『約束ですよ〜!?』
シャーレ前交番近く。
全体的に薄紅色だが、一部が紅い髪のかなり特徴ある警官の一人が________
「おーい!」
「あ」
トラックの運転手に話しかけられていた。
「お前は!」
「久しぶりだな〜お巡りさん!仕事かい!?」
かつてこの交番前で、荷物のはみ出しで注意されてたゲヘナで働いてるジャンク屋の姿。
「仕事、と言えば仕事だな」
「煮え切らねえの」
「いや、仕事だ」
「どっちだよ」
「お巡りさんとしての最後の仕事だ」
「えぇ!?」
ジャンク屋は口にする。
「お前辞めんの!?」
「いやいや、私今日から警視になって本校勤務になったんだ。いろんなお巡りさんの管理に回ることになったんだ。現場監督を束ねる監督、みたいな」
「うへえ、トリニティのあの一件からずいぶん偉くなったんだなあ!おめでとう!」
「ありがとう。そういうお前は変わってないな」
「相変わらず……と言いたいところなんだが、こっちも変化があってよ」
「ほう」
「めちゃくちゃ稼ぎが増えたんだ!」
運転手は笑う。
彼女曰く、今回の事件で使えなくなった素材を分解して再利用するために色々なジャンクを運んでいるようだ。ある種の災害特需か、彼女が所属するところではこれまでに類を見ないほど儲かり、臨時ボーナスで七桁台突破したとのこと。
「そりゃすごいな」
「だろだろ!?この仕事をちゃんとこなせばいろんなところから認められて、もっと稼ぎ先が増えるってもんよ!こう言った後片付けの仕事の重要さが分かれば、バイトからでも第二次産業の入り口がもっと広がっていくし、今保護されてる奴らも雇えばもっと大規模事業も可能になる!くぅ〜もう明日明後日が楽しみでしかたねえ!仕事しててこんなに楽しいのは初めてだぞ!」
「よかったな」
「なんでそんな他人事なんだよ、先生言ってたぜ?お前の尽力が非常に大きかったって」
「自分の仕事じゃないからそりゃ他人事にもなるだろ」
ゼンヒは苦笑いしながら、電子タバコを蒸す。
「あ、それは変わんねえのな」
「警部補になってからというもの、吸う機会がめっきり減った。吸おうと思っても時間も余裕もなかったからな、精神的に参りすぎてこいつの存在自体頭からすっぽ抜けてた時期あった。
だが、やっぱり落ち着いて吸うとこう、あまりにも美味しくてな」
「なんだか、あの時の方が少し様になってるような気がする」
「なんでだよ。私偉くなったんだぞ」
「あの時はこう、大人びた……いや、ギャング的なかっこよさがあったんだ。演者みたいにな……それがこう、今話しているとすげえ人間臭くて、アイコンである以上似合ってるんだが、かっこよさは少し薄れた気がする」
「人を競馬場の中年みたいに言ってくれるな」
「もしかしてそう自分が見えてんの?」
「見えてねえよ!」
恥ずかしさにより反論する彼女だが、タバコはやめられない。
精神安定剤でもあり、自分の象徴であるからだ。
「ともかく警視ねえ、いやほんと時の流れは早いな。あん時から一年は経ってるんだろ?感慨深いなあ」
「昇進スピードは時の流れよりも早くて目眩が起きそうだ。一年後、急にお巡りさんじゃなくてそれらを統括する立場になります!ってお告げが来ても困惑するしずっとそれに縛られて不安になるだけだろう?毎日の勤務がどう影響するかわからない、それが仕事人の未来みたいなものだ」
「そこはジャンク屋だろうが警察だろうが変わんねえのな」
二人は笑う。
あの時は普通に雑談して、警察の愚痴を聞かせてバイバイだったが色々あった後の振り返りだとどうしてもにこやかになってしまう。
区切りの魔法、とも言うべきか。
ひとしきり微笑みあった後、ジャンク屋が話を切り出す
「そうだ、ゼンヒに伝言預かってんだ」
「伝言?」
「シャルアー・ドーンって女から」
「シャルアーが?」
彼女は怪我をして、退院して、ハクジツとの別れも含めて色々なイベントがあったが_____その中にはシャルアーの姿は一回も見てない。
別れの言葉もないし、シャーレの協力者になっている以上どこかで会えると思って気にも留めてなかった。
「一体シャルアーとお前がどうやって」
「ああ?街を破壊して暴れ回ったお詫びに彼女今ブラックマーケットにいる不良達を改めて統率してマシなところにしようと町長代わりやっててよ。その際に仕事を依頼してくれた依頼主なんだ」
再誕作戦の後、ブラックマーケットはあの神殿と肉塊の奔流によって大規模な被害を受けていた。
シャルアーはその近辺に住んでいたのもあったが、リンネもセツカも消えた今従えて復興するには今のところ自分が最適だとして退院後から近所のメンバーと集まって復興作業に注力しているらしい。
その結果、このジャンク屋と知り合った。
「警察にも行く予定があるなら扇皇ゼンヒに伝言よろしくってさ」
「何か?」
ジャンク屋の少女は、口調も真似しながら伝える。
「『警視就任おめでとうゼンヒ。ささやかなプレゼントも今すぐには用意できなくて申し訳ないが、プレゼント代はバンリに渡しているから彼女からの豪華プレゼントを楽しみにしておいてくれ。ああ、あとお見舞いに来れなくてすまない。復興作業が一区切りしたらお前を家に招いて盛大なパーティーをしようじゃないか。あと、セツカやヤツカに手を合わせて欲しいからな。また連絡するからお互い元気に再会しよう!』_____てさ」
「シャルアー」
ほっこりした笑みを、ゼンヒは浮かべた。
「そのシャルアーってのと知り合いなのかい?」
「あの事件で一緒に戦った戦友だからな、跳弾のプロなんだ。後近接も強い」
「そりゃ随分と強いこった。
ともかく伝えたぜ」
「またあったら『元気な状態で再会しよう、体調に気をつけて』と言っておいてくれ。スマホが壊れて連絡こっちから出来なくなってることもな。新調した際にデータがどこにも残ってなかったから」
シャルアーへの伝言もしっかり残したゼンヒ。
互いに話し合いたいことも終わったか、と言うところで新しい音。
その新調したスマホに、電話が来る。
「ごめん出る」
「ああ」
ゼンヒは電話に出る。
「もしもし」
『もしもし、カンナだ』
「局長」
尾刃カンナからだ。
『表彰式が終わって交番への挨拶も終わったところだと思うが、どうだ』
「ええ、今まさにその通りで。歩きで本校に戻ってる途中です」
『今日はもうあっちに行かなくてもいいぞ』
「どうして」
『ユリ達が大はしゃぎで退院+昇格のお祝いパーティーをやると言って聞かないんだ』
彼女の後ろにいるのだろう特暴課のメンバーがはしゃぐ声が聞こえる。
『お聞きの通りの有様だ。だから、もう今日は本校に寄らずに特暴課の事務所に来てくれ』
「分かりました」
『ああ、それとゼンヒ』
「なんです?」
電話越しに、カンナは申し訳なさそうに言う。
『今まで……お前のことについて隠してて済まなかった。
お前が幸せに暮らせるようにと、いろんな奴に相談はしたがどうしても前例がないと怯んだ。
ずっと謝りたかったが、事件が重なるのをいいことに遅れて_____申し訳ない』
「局長」
返事するゼンヒの声は明るかった。
「今更それは言いっこなしですよ。あの時の政治や、保安の観点でそう言った判断を下すのは間違ってなかった。私に傷が出来るのは納得が行ってませんけど、感情だけを優先するような警官であったなら、多分私は局長のことを信用できなかったから」
『ゼンヒ』
「だからこの話は終わりです。
パーティーするんでしょう?笑わないと」
『______そうだな』
電話の向こうから、不敵な笑み。
『ありがとう、ゼンヒ。
では特暴課の事務所で待ってる。気をつけてくれ』
「はい、すぐに向かいます」
そうして通話は切れた。
「お呼ばれしたようだな、ゼンヒ」
「ああ、どうもいい人間に恵まれたらしい」
「それだけのことをしてきたんだ、胸張りな!」
「ああ」
ジャンク屋の少女に激励されて、笑顔で彼女は胸を張る。
「じゃ、私もそろそろ行くぜ」
「ああ、気をつけて」
「そっちこそなー!」
二人は別れた。
片方はトラックに乗り込んで、処理場へと向かって走っていった。
「素晴らしいものだな」
そんな日常にある幸福が、風の冷たさを感じさせないくらい暖かい。
ゼンヒは、枯れ木が並ぶ歩道を幸せそうな顔して歩く。
睦月。
彼女が、警官としての物語を歩み始めた時の月はそう名乗っていた。
この物語は幕を閉じる。
彼女の人生は続く、他の人間の人生も続く。
だが、彼女は”シャーレ前交番の警官”では無くなった。
そうあった時から、色々な事件の解決と己の宿命との訣別を果たした結果、キヴォトスに______いや、もう少し限定した言い方をすれば”このキヴォトス”に大きな影響を与えた少女となった。
扇皇ゼンヒと言う存在は、もうその枠には居られない。
彼女はもっと大きなところに飛び立って、SRTの概念を受け継いだ組織の経営とそれを続けるための後進の育成や社会的な改革に”警察”と言う立場からアプローチしていく権力者として頑張っていくことになるだろう。
しかしそれはハッピーエンドの後、ずっとずっと続く日常。
故にこの物語は締めるべきだ。
新しい人生を迎えるためか、それとも過去の思い出と共にかつての仲間と人生の舞台に向けてゼンヒは優しい声で告げる。
「さよならだ」
と。
《後書》
どうも、みなさんこんにちは。らんかんです。
シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官、これにて完結です。
長かったですね〜!えー文字数にして69万4697文字です!あ、もう少しで70万だ!と思っても特に入れ込みたい話も現状なかったので、これでいいかな。
評価数は今(1/16 10:25時点)だとお気に入り653、評価は8.23の評価人数57人、感想は34です。ブルアカの二次創作にしては非常に地味とは思いますね。ですが、応援があったからこそ物語を完結まで描くことができました!ありがとうございます!これでニフイヴィンテを周回しまくれるぜ!
まず、この作品の振り返りを。
ある程度リンネとセツカの設定は最初から固めていたのもあって匂わせてたりしましたが、輝薬とかはその場のノリで生まれたものです。そのため色々な創作物を取り込んで考えた結果最終決戦は”忍者と極道をメタルギアで希釈した”みたいな感じなりました(主人公一刀流vsラスボス二刀流は雷電vsソリダスを思い出すような)。その前のぱっと見はモンハン。ブルアカの絵面じゃない。
ただ、ここら辺をもういっそ割り切って突っ走ることができたのもあって、中ダレはなかったと思いたいです。事実、政治関係とかちゃんと考えての効果とか課題とかも話できたので、納得感はある終わり方だったのではないでしょうか。
あと、作ってる側も書いてて辛いのが一番味がするのもありますが、その作り方をしているとこういう精神安定剤が欲しいなって言うのもあってキャラ造形に役立ちました。甘凪ショウコに種田カザミがそのポジションです。彼女達がサポートしてくれたり軽口を叩けるような状態だと、登場人物もそうですが自分も救われます。ありがとう二人とも。特にカザミ、お前たまに読んでくれた人の感想を見てたら名前出てくるし人気キャラらしいよ。
全体的に『モブの無力感』を演出しながら『じゃあどうやって解決して安定する土台を作っていくのか』と言う政治的なシムシティっぽさをエリート軍人や才能ある警官視点という刺激的なところから出来たのはこの作品の魅力です。これだけははっきり宣言します!らんかんさんはそこが上手い!
あと小道具関連の用意と理論もこの作品の強みだったと思います。アリウス関連は特に顕著で、刃物で怪我することを前提にそれを遠距離攻撃に使えるよう弾丸を研いでホローポイント弾として作ったセラフィム弾に、ヘイロー破壊爆弾の理論を作りそこからヘイロー探知して肉体を再生したりできる爆弾型の救助装置であるヘイローAEDとか。
思い入れと褒めるところは沢山ありますね!
ただ、当然いいところだけでなく反省点も存在。
ストーリーの点では、まず最終盤は非常に駆け足だったと思います。
別れにしろ決着にしろ、4000文字ワンシーンでやっていたのもあって結構駆け足気味だったんじゃないでしょうか。もっと深く書きたかったのですが、どうしても思いつかないで萎えるのが嫌だったので必要なこととちょっとしたエッセンスで書き切りました。本当はCaseC-10から色々付け足したかったですが、ダレる要因になりかねないと泣く泣く断念。ユメ先輩が敵に回ることそのものはちゃんと理由がありますが、あっさりしすぎたなと反省。
キャラに関してはシャルアー関連が大きいですね。
異世界のキャラだ!と言うものですが、彼女自体は実は昔の名義でやっていた二次創作のオリキャラをそのまま持ってきちゃったんですね。セツカの仲間が思い浮かばねえ!って切羽詰まった結果何も考えず、改変せずに持ってきてしまいました。驚く要素でもあったのか、割と低評価がついていたのを見るとどうしてもごめんなさいと言うしかないです。
あとバンリがよくわかんない押しかけ女房感があったのもちょっとやらかしです。設定上はあったのですがうまく描写できませんでした。甘やかしてくれる天使のお姉さんで惹かれて住み着くのは分かりやすいですが、彼女側の描写が非常に足りないのも気になるポイントですね。バブみを感じれても裏付けがないのは私のミス……
と言う感じでしょうか。
ともかく私が頑張って書いた作品の中では、一番思い入れある作品になりましたね。
今年もこのような作品が作れるといいなあ。人気にもなりたいなあ。チヤホヤされたい。
邪念を抱えつつ、最後の挨拶です。
まず、現在僕は色々な作品を書いています。
現在だとこの作品の前日譚でありゼンヒのことを口外禁止になるまでの事件の収束までを描いた『ヒルドルの唄に踊る』、最近更新止まってるけどキャラごちゃ混ぜでアリス中心に楽しむ『はい!アリスは戦い方を学びます!ゲームから!』、この感想でも言われていたかっこいいマコト様をもっと吸ってもらうために頑張ってる『ここだけ少しかっこいいマコト様』、最後に知ってる作品全部突っ込みキャラは当然出てきてクロスオーバー当たり前の状態で二次元と三次元の境界で戦いまくる無法者達の物語である『Never Says「Good by…」』の四作品。
この中のどれかを見ていただけると嬉しいです。感想評価するかどうかはお任せします。
この作品にもお気に入り登録や高評価、感想に読了報告をもらえるととてもうれしいです。いろんな作品のやる気の糧になります。完結記念なので、ちょっとしたおねだりです。目指せ☆9とかのゲージに色がつくやつ!
また、感想やハーメルンのメッセージ、私のXなどで良ければ『このキャラが一番好き/嫌い!』『この話が一番面白かったよ!』みたいな参考意見をくださるととてもうれしいです。これも後発作品に活かせるようになりますし、ある程度今受け入れやすいもの、そうでないものの指標の一つになりますので、よろしければご協力のほどよろしくお願い致します。
以上でお伝えしたいことは終わりです。
改めまして『シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官』はおしまいです。
モブのままで終わるか、そうでなくても悪役として命を落としかねない過去を持っていた主人公ゼンヒは幸せを自ら作り出し、手に入れて広めることでハッピーエンドにたどり着く事ができました。
辿り着くまで応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!
他の作品でも頑張っていきますので、これからも応援よろしくお願いします!
それでは、まだまだ寒い日が続きますが気をつけてお過ごしください!
らんかんでしたーっ!