シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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Case20-1:アリウス過激派集団撲滅作戦-前編

 ____ゲヘナ校区、風紀委員所有の倉庫にて。

 

「おーい!こっちにLサイズの制服あるぞー!」

「このショットガン状態がいいな。私はこれを持っていくぞ〜」

「早くこっちに弾持ってきてくれ!これだけの数のマガジンに弾入れるんだから早くしてくれないと困る!」

 

 集まったほぼ義勇軍みたいな連中が物をあれこれ持ち運びながら会議したり準備したりしている。

 

 この時はゼンヒもそこにいるが、ハットをかぶっている上に黒いスーツを着ていたからあまりにもいつもと雰囲気が違った。

 

「ボス!」

「なんだ」

 

 そんな中、ゼンヒを慕っている最初に出会った元SRT生徒が彼女とのとこへとやってきた。

 

「ありがとうボス!アタシたちにこんな機会くれて!こんだけあれば、奴らのこと見返せる!」

「仕事は絶対に完遂できるという自信があるならいいことだ。期待しているぞ、私は囮なのだからな」

「え?」

「言わなかったか?」

 

 ゼンヒは首を傾げると、後ろからイオリが。

 

「へいボスさん、まだ説明してないぞ作戦。今は準備中なんだから」

「そうだったな」

 

 よく見ると後ろには台車がある。レストラン用のサービスワゴンの中に、あれこれ武器が乗っていた。

 

「ところでそのコースメニューは誰のだ?」

「そりゃお前のだよ」

「ほう?」

 

 サービスワゴンの銃器を、二人で木の大きい作業台に出した。

 

 輝き、しっかりと加工され、まるでオンリーワンであると銃が机を埋め尽くさんと整列する姿は壮観。

 

「これだけあるなら何持って行くか悩むな」

「全部お前へのプレゼントだってさ。好きに使ってくれって」

「ありがたい」

 

 行く途中に死んではいけないからな、と頷いてから並んでいる武器を見る。

 

 一通りの武器は揃っているが、ショットガン、アサルトライフル、ハンドガンに関してはバリエーション豊かだ。

 

「これだけあると何持っていくか悩むな」

「好きなの持っていけばいいじゃないか」

「その好きなのが無いから困ってるんだ」

 

 と言いつつも、まずはレールが付いているリボルバーを手にするゼンヒ。

 

「こいつはあれか、レイジングハンターというやつだ」

「随分と大きいマグナムリボルバーだな。扱いにくそうだが、どうだ?」

「もらっていこうじゃないか。イオリさん、そこに丸まっているものを取ってくれ」

「ほら」

 

 彼女からラピッドローダーを受け取り、500S&W弾を詰めていく。入れ終わったら丸まっていたのを真っ直ぐにしてからコートの内ポケットに入れる。銃本体はホルスターに入れて、次の武器を吟味した。

 

「次はどうする?色々あるからな」

「ショットガンだな。と言っても、鹵獲したのと同じくできればセミオートがいい」

「フルオートもあるぞ」

「要らん。故障したら困る」

 

 ショットガンを見ていると、あるものが目についた。

 

 弾倉が四つくっついているアタッチメント。取り外しもできるので、暴れるにはうってつけ。

 

「これも持っていくか、一人だったらこう言うのも助かるから」

「そうだな。ほら」

 

 イオリはバッグを持ってきてそこに回転する弾倉を入れる。

 

「すまない、雑用に使って」

「お前の部下をこき使うんだからこれくらいどうってことないぞ!」

「そう言ってくれると気が楽だよ」

 

 ゼンヒは微笑んで、まだ物色を続ける。

 

「あとは、何が必要だろうか。一応使い終わった後の……そうだな、アサルトライフルも」

「じゃあこれならどうだ?」

 

 彼女に渡されたのは、かなり現代的なアサルトライフル。

 

 それこそSRTが使ってそうなものだ。ガンショップの店主はどうやら、

 

「これはまさしく歩兵自動火器だ、フォアグリップとバイポットあるから撃ち合いの時は優位になるかもな」

「射撃精度は高そうだが当たったところで私達はそれで死なんぞ」

「何言ってんだよ。しっかり狙って当て続ければダメージは蓄積される。遠距離の撃ち合いは精度の差で優劣が決まり、こっちが当てたら後の近距離戦とかで有利になるんだよ。侮らないほうがいいぞ」

「そうか。そうだな、あの地獄を生き残れたプロの言うことを信じよう」

 

 アサルトライフルとそのマガジンを確認してからバッグに入れる。

 

 これであらかた必要なものは揃ったか、と思ったゼンヒはイオリに話しかけた。

 

「あとはいらないから、どっかに保管しておきたい」

「じゃあこの倉庫の端にもワゴンこと置いておくぞ」

「助かる」

 

 とりあえずは机に出した銃をワゴンに戻してから、二人は集めた生徒たちの元へと向かう。

 

「おいこっち給弾ベルト急げ!扱い方忘れたとか言うんじゃないだろうな!?」

「こっちもー!制服早く片付けるから手が空いてる人手伝ってー!」

「こっちの機銃ガタガタじゃねえか!ボルト持って来いボルト!」

 

 彼女たちは彼女たちで準備を急いでいる。

 

「どうする?」

「作戦内容は少し聞いている、先行させる部隊は準備ができているから呼びかけてもいいと思うが」

「そうだな。おーい!」

 

 イオリは大きな声で呼びかける。

 

「今やってる作業が終わったらすぐにこっちへきてくれー!軽く今回の作戦を説明する!」

「了解!」「了解!」「了解!」

 

 威勢がいい。

 

 制服を着て偵察する先行部隊はすぐに整列して集まり、後発の実際にアリウスと交戦する部隊はその5分後に集まった。様々な点検や整備をしているのにも関わらず、やはり早い。

 

 集まったところでイオリは、説明を始めた。

 

「よーし、今から説明するぞー!」

 

 大まかな概要はスマホでファイルを投げて説明しているので、これはその確認となる。

 

「まず、先行する偵察部隊は制服を着て指定した場所を周回!そこで該当するやつを見つけたらすぐに私に報告してくれ!居なければ、次の指示があるまで担当のエリアを見張っててくれ!」

「了解!」

「そして後発の交戦部隊!」

 

 制服を着ていない、大体がスーツを着た奴らの方を彼女は向く。

 

「そちらのボスの指示があるまではメールで送った場所に待機!指示があり次第、挟み撃ちする形で交戦開始してくれ!」

「了解!」

「質問あるやついるかー!」

 

 イオリが質疑応答を開始すると、先行部隊の方で手を挙げる生徒が。

 

「そこー!何だー!」

「はい!後発部隊が交戦を開始し、その時にジャミング等があって指揮系統が崩れた場合は持ち場を離れ加勢するべきでしょうか!」

「どうする?」

 

 司令塔の二人で話し合う。

 

「どうする?」

「私としては、連絡係を要求しようと思っている。この中に通信兵の教育を受けたものはいるか!」

 

 ゼンヒが問うと、ある一列が手を挙げた。親しい、と言ってもこの場合は習ってた分野での戦友とも言うべき存在で組んでいたのだろう。

 

「その一列を解体して隊に一人ずつ加入、外れた分で二チームくらい再結成して交戦部隊と偵察部隊を繋ぐ伝言部隊をやってもらう。それでアナログは何とかしよう」

「と、するとそれでボスの指令が来る訳ですね」

「来ないが」

「え」

 

 集まったメンバーは全員ゼンヒを見る。

 

「ボスが指示を出して一気に壊滅!じゃないんですか?」

「私は今回何も指示しないぞ」

「なんで!アタシたちはボスのためにやってきたんですよ!」

「恥ずかしいことに指揮官とか、そう言うのって分からないんだ。だから最初から囮のつもりで行く」

「え〜!」

 

 こほんと咳をして、ゼンヒは説明を続けた。

 

「今回は私の指示なんかより君たちが学んできた技術の方が役に立つ、それを私や、ひいては今あの不届者によって泣いている者のために役立ててほしい。君たちがそれぞれ、小隊、中隊と組織として手に入れてきた知識が奴らを必ず上回る」

「そりゃそうですよ。キヴォトスの自治区を跨いだ特殊部隊だから、ある程度は連邦生徒会長からのお流しであれこれ知ってます。それも含めれば負けるわけないでしょう、ただ知り尽くしてても油断は禁物ですけど」

「そうだな」

 

 ゼンヒは頷く。

 

「だから、今回は君たちが主体だ。よろしく頼むぞ、ただイオリさんのお願いだけは絶対聞いてくれ。彼女も猛者で、さらにここはホームグラウンド。現地人の言うことは聞いておいた方がいい」

「了解です!」

 

 ある程度説明はし終わったか。他に質問がある生徒はおらず、ならばゼンヒは次の行動を指示。

 

「他にいないようなら行動開始!先行する偵察部隊は終わったチームから出動、所定の位置のパトロールをしながら一定時間でイオリさんに報告!交戦部隊は準備急げ!」

「了解!」

「了解!偵察部隊出動します!」

 

 ゼンヒの号令と共に、皆が動き始めた。

 

 偵察部隊は武器の確認を急いで済ませ、ゼンヒとイオリに敬礼してから倉庫から出て、車に乗って目的地へと向かう。

 

「随分と勢いあるじゃないか。これだけ居るなら、腐らせておくのは勿体無いのにお宅は何をやってたんだ?」

「現場主義の公安局長はともかくとして他の奴らは仕事を奪われたり派閥争いを泥沼化させたりしたくなかった。それに元々信用が薄かったのを彼女らを悪者に仕立て上げることで獲得しようとしたのだろう、不知火カヤの件だってあった訳だから」

「そっか、それは仕方ない」

 

 イオリはゼンヒの方を向く。

 

「お前もそろそろ行くんだろ?」

「途中であのゲヘナ生を拾ってから向かうよ、指示の方は何かあったらよろしく」

「ああ!気をつけて行けよ」

 

 二人は握手をしてから、それぞれするべき事へと向かう。

 

 ゼンヒはそのまま一般車両に乗り込んでから、運転席で深呼吸する。まだ外は明るく、今から行っても暗くなる前には目的地に着くはずだ。

 

 彼女は電子タバコを取り出して吸い、吐いてから外を見る。

 

(始まるんだなあ、ようやくというかもうというか。でも楽しみじゃないか、こう言うこと経験できる時って中々ないから)

 

 タバコを一度灰皿に置いて、ハンドルに手をかけてからエンジンを入れる。

 

「よし行こう、待たせるといけないからな」

 

 彼女を乗せた車は走り出した。

 

 この日、少なくともヴァルキューレという枠組みでは大きく動き出す日となる。失敗しようが成功しようが、大規模行動による反動は必ず生まれるのだから。

 

 そんな運命の日は、ゲヘナの日暮れより始まる。




(次の更新は12時3分です)
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