シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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ゼンヒ警部補編(前)
CaseB-1:のんびりゼンヒ警部補へのお祝い


 ゲヘナと連邦生徒会の領土の境目で起こったアリウス過激派による暴力事件から一週間。

 

 ゼンヒは結局4日様子見で入院して退院、皆にもみくちゃにされながらそのまま宴会に行って、そのあとは土日しっかりと休んだ上で月曜日。彼女はシャーレ前交番に復帰した。

 

「おはよう」

「おはようございます警部補!」

「ああ、今まで通りゼンヒさんで頼むよ」

 

 微笑みながら、自分のデスクの方に座る彼女。

 

 警部補は今までとは違い令状請求等、実働部隊の長としての動きをしなければならない。

 

 おまけに彼女は公安局特別暴力対策課の課長に改めて任命され、そっちの方もデスクワークを進めなければならなくなった。

 

 休んでいる間はカンナが対応してくれたが、復帰した以上はそれも無理。しばらくは手伝いはしてくれるだろうが。

 

「せんぱーい!」

「ハクジツ」

 

 自分のデスクでコーヒー飲んでると、後輩がやってきた。

 

「先輩と同じ役職につけたの、とても嬉しくて____今日からなんです、巡査部長になったの!」

「まずおはようが忘れてるぞ」

「あ、おはようございます!」

「いいだろう」

 

 ハクジツを隣に座らせて、二人は談笑を始める。

 

「怪我はどうですか?退院の時にはほぼ問題なし、とは言われてましたけど」

「土日も休みをもらってあれこれやってみたけど、後遺症は見当たらなかったよ。ただ、やっぱりカンナ局長に言われた通り髪色の深紅が増えたんだ」

 

 帽子被ってないのでそのまま見せる。

 

 ゼンヒの前髪の大体が薄紅色から、深紅色になっていた。

 

「___そうですか」

 

 呆れたような、それとも区別かつかない何かを思っているのか後輩の表情は少し呆れてるような感じがする。

 

 ただ、言った本人はそんな表情を気にせずに話を続ける。

 

「それにしばらくは後ろにすっこんでるし、だから大丈夫。何かあったらお前が助けてくれるさ」

「はあ、助けられる範囲で問題起こしてくださいね」

「へへ」

 

 照れたゼンヒは、仕事用のスマホを取り出した。

 

『新規依頼で例のアリウスの件の調査に加えて、校区を持たない田舎の方での警備依頼などが入ってきました!数部隊送ったので後で確認お願いします!』

『金の方は大丈夫なのか?』

『リン代行が気前よく出してくれましたよ!やはり先生以外でもカバーできないところを金出したら解決できる例が増えたってだけで敷居は下がったそうです。これで市民が安全に暮らせるようになったらその分の税金で回収できるって』

『それぞれのプロと責任者が社会にはまっていくような過渡期だからな、期待を裏切らないように頑張れよ!』

『はいっ!』

 

 連絡を取り終わって、背伸びするゼンヒ。

 

「そっちも大変そうですね」

「まあ、根幹を間違えなければ割と放任主義。それに、長期的になったら流石に契約で金も払ってもらうことになるから大丈夫さ。それに訓練とかもしてるし、彼女たちがそこまでの大事に巻き込まれなければ負けはしないさ」

「ならいいんですけど」

 

 ハクジツは隣でのんびり中。

 

 ゼンヒはあれこれ書類を作り始めた、請求書とか作り始める。

 

「そういえばお前は、仕事はどうだ?巡査部長の仕事」

「先輩の見てたんであまり緊張はしてないです。まあ、確認は怠りませんけど」

「いいことだ」

 

 あったかい室内で、会話が続く。

 

「ところで、あのアリウスの件は聞きましたか?」

「いや、聞いてない」

「進展があったらしいですよ」

「ほう?」

 

 ハクジツは説明する。

 

 あのあと正式な契約を結んだ上でアリウス分校の調査に乗り出した調査委員会。アリウススクワッドの協力も得て調査した結果、カタコンベ近くの墓地にてそれが掘り起こされたであろうものが見つかった。ただ、見つかった場所が場所で気味悪いらしい。

 

「なにしろその墓にはベアトリーチェが眠ってたって言うんです。知ってます?首謀者の」

「ああ、それはな。で、それが?」

「何かが持ち去られた後のようで、その形とか色々精査したらあの遺物だったって話です」

「あいつらは墓荒らししたってこと?おっかないな」

「あと、幻聴を聞いたらしい」

「え?」

 

 曰く、調査した中では少女の声がこだましたようだ。

 

『女一人がガトリング振り回す方が異常だろうが!』

『だがこちらは数で押せる、その首との別れを惜しみながら足掻くがいい!』

 

 なんて戦闘してるような声が聞こえたり。

 

 ただ、そんな幻聴も調査したいことにはあまり関係ないので放っておかれたようだ。少なくともその遺物はそうやって保管されたであろうものを使っていたようだ。

 

 少なくともそんな物騒なもの、と言うよりベアトリーチェが消滅したはずなのに墓まで作られたのが不明で長期的な調査をすることになった。新設された特暴課はそもそもヴァルキューレが自治区を持たないという都合上、通常業務等もしなければならない正義実現委員会等の負担を軽減させるために大量に編入、警護業務に当たっている。

 

「わからなかったら結局切り上げるだろうし、そうなるまでに活躍できたりすると嬉しいが、一番は彼女たちが担当しているエリアが何もなく終わることだ。警備が十全、連携できてる、その上で勤務態度に問題なしだと嬉しいね」

「そうですね。でも、あんな大事に一生懸命取り組んだ人たちでしょう」

「油断しなければいいさ」

 

 ゼンヒ自身は文句を言う権利があるので、そこまで気にしてはないらしい。

 

 それはそれとして、二人でのんびり話しながら仕事していると入り口の方から呼ぶ声が。

 

「ゼンヒさーん!」

「なんだー?」

「お客様が来ましたよ!」

「そうか」

 

 書類をキリいいところで切り上げた彼女は、受付の方に行く。

 

 すると待っていたのは、いつかトリニティで一緒に強盗に立ち向かったカフェの店長だ。

 

「ごきげんよう」

「ああ!あの時の_____えっと、お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「別天 バンリと言いますわ、以後お見知り置きを」

「バンリっていうんだな、よろしく」

 

 改めてバンリと握手するゼンヒ。

 

「大事件解決して昇任したとお聞きしたので、お祝いしに来ましたの。まず先に食べ物を……と行きたいところですが、贈り物がいくつかあります」

「あのサンドイッチが食べれるのか?」

「ええ」

「わーい!」

 

 子供のようにはしゃぐゼンヒ。

 

「食べ物で一喜一憂するなんて子供みたいですね」

「む、ちょっと聞き捨てならない」

「忘れてください」

 

 客人用のテーブルにバンリを招いてから、二人は座る。そこに加わるように、ゼンヒの隣にハクジツが座る。

 

 まずは、とバンリは一つ出した。

 

「最初は高級リキッドです。かなりフルーティで、舌や口に触れる度に甘いもので満たされますがそこまでくどく無いものを選びました。役職が上がってから吸わなくなった、で無ければ良いのですけど」

「まさか!」

「ならよかった。まずこれを受け取ってください」

 

 リキッドがしっかりと保管されている箱を受け取って、まずは自分の近くに置くゼンヒ。それだけではないのか、目の前にいる少女は他の祝いの品を取り出した。

 

「あとはそうですわね、あんまり使うかは分かりませんが万年筆の形をしたボールペンをどうぞ。筆記用具にこだわら無さそうですが、これがあるとかなり嬉しいのでは、と思いまして」

 

 黒を基調として金色のラインが入った万年筆風のボールペン。今すぐに書き心地を確認はできないが、手に持った重さや質感から安いものではないだろうと実感。そもそも品格なるものを重んじるトリニティの生徒がそんなガサツなプレゼントはしないだろうと思っていたからこそ、彼女はその重さに祝いの気持ちをしっかりと感じ取った。

 

「それは新たな席にでも飾っておいてください。特暴課の席にでも」

「いや、ここに置いておこう。市民とのつながりが感じられる場所に置いておいた方が、価値はある」

「なんて嬉しいことを言うのでしょう!まるで狡知に口説かれたかのよう」

「_____褒め言葉として受け取っておこう」

 

 釈然としない褒め言葉だが、ゼンヒは意見を飲み込んだ。

 

 それはそれで、と最後に彼女はプレゼントを取り出す。

 

「あと、これ。時計です。デジタルウォッチ」

「えっそんなのくれるの!?」

「まあ!私と貴女はあの時一緒に戦って、夜を共にした友人でしょう?」

 

 うふふ、と微笑む彼女。4枚の羽と長い金髪が揺れて、その高揚感を振り撒くようだ。

 

「これはまあ説明書を見てください」

「セッティングとかもあとで見ることにするよ。ありがたく貰おう」

「ふふ」

 

 プレゼントは以上の三つのようだ。どれもバンリが『ゼンヒが頑張る上で役立って、その上で見劣りしないような必要のある品位を』との心遣いで選んだもの。銃をプレゼントしないあたりにも、彼女がゼンヒをよく見てたことが窺える。

 

 とりあえずはプレゼントを端に置いてから、ゼンヒお待ちかねのサンドイッチを彼女は取り出した。

 

「美味しそう!」

「これ待ってたんだよ、あれ以降食えてなかったらマジで嬉しい!」

「母親のような気分になりますわね」

 

 サンドイッチはあの時と一緒だ。

 

 バタールを真っ二つにしてレタスとエビやブリ、鯛のような海鮮に辛めのソースとマスタードを掛けて作った海鮮のサンドイッチ。後輩もいるのを知っていたのか、二人分を用意してくれたのだった。

 

「では、召し上がれ。後でココアも淹れてあげます」

「やったー!」

 

 いただきますを言って、二人は食べ始める。

 

 やはり美味しい。サンドイッチはかくあるべき、という食感だが魚がソースと合わさって中々に辛く、みずみずしい。やさいの風味さえ辛さで引き出されるそれに、二人は頬を抑える。

 

「ん〜!美味い!」

「本当に美味しいですね!えー、この前の密造酒の一件で折角なら寄れば良かったじゃないですか!」

「あん時は全然遠かったから寄れなかったんだよなあ……寄れてたら寄ってた」

「今度様子を見に行く口実でいらっしゃい?」

「行きます!」

 

 三人で楽しく会話しながら、遅めの朝食は過ぎていく。

 

 ゼンヒは警部補に上がって、そのお祝いを貰った。ならば、今まで以上に市民の為にと力を入れて頑張らなければならない。

 

 そんな日は、陽は落ちるまで空は明るい晴れ模様である。




《後書挨拶》
こんにちは、らんかんです!

いつもこの作品を読んでいただき、ありがとうございます。

第二部、ゼンヒ警部補編が始まりました!一週間か二週間くらい待とうかな、とは思っていましたがゼンヒ警部補編を望む声がかなり多くてひっくり返る可能性が低いのでスタートしちゃいました。

ここからはゼンヒの行動範囲も広がりますが、書類仕事等でシャーレとかにも行き始めたりします。シャーレ前、という土地をもっと行き来するような感じで話を考えてますので、よろしくお願いします。

ただ、ちょっと前みたいに毎日投稿ってわけにはいかなくなってですね。

寒い中毎日投稿して睡眠削って……みたいなことしててストレスかつ疲労で蕁麻疹出ちゃって……今大変なんですよね。なのでペースを落としながらやります。一週間に1か2話出すようなペースで頑張りたいです。

急にペースを落として申し訳ありませんが、これからもよろしくお願いします。

らんかんより
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