シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-5:受け子の阻止

 ゼンヒが対応した事件は、大体軽い尋問の上その場で解決して書類を書かなくて済む職質からの話か、がっつり暴力沙汰を引き起こすようなものが多かった。

 

 無論、暴力でなくても薬物関連の話も舞い込んできて大変な思いをしたのが彼女である。

 

 今回も事件ではあったものの、比較的マシな状態で対処できたものだ。

 

 この日、ゼンヒは生活安全局からの依頼で応援に出ていた。彼女一人で。

 

 と言うのも

 

『私一人ではちょっと手に負えなくて、しかし他の人は彼女を捕まえるためだけに動くとそれもまた困るのです』

 

 なんて話がキリノから出てきたことに由来する。

 

 無論ゼンヒの仕事の範囲ではなかったが、どうやら話を聞いてみると事前にその対象の友人から彼女に相談があったようだ。

 

 ある場所に行って、モノを受け取るだけ。基本そう言った話は怪しいことが多いが、詐欺の受け子になろうとしているその生徒は大丈夫だと言われたそうだ。特に金の話をせずに、モノを受け取って運ぶだけ。当然仲間もいるし、持ち運ぶ手伝いをしてくれという短期バイトのような誘い方だった。目印が銀行だ、と言うのもあったが聞いたこともない会社、どう言ったことをしているのか明瞭でないのもあって当該者の友人は止めようとしたが、それで止めるだけの理由を見つけられなかったことに困りキリノに相談したという。

 

 ただ、キリノだけでは万が一に戦闘が起こったら不安というのもあって戦闘に長け話も通じるであろう特別暴力対策課に話が入ってきた。

 

 当然、特暴課の人間は件の調査委員会が解散し、次の仕事まで時間があったので乗り気だった。しかし、ヴァルキューレの中でも相当な扱いに注意しないといけない団体であり、それによって落ちこぼれとまで言われてる生活安全局のメンツが丸潰れになるのをおそれ上はあまりいい顔はしなかった。だが、ゼンヒはその意見を押し除けて快く引き受けたのである。彼女が見張り、売り子になりかけてる少女をキリノが保護し、仮に追ってきて襲撃する奴がいたら特暴課の人間が対処するという方針をとった。

 

 特暴課の特徴はなんと言っても外部との交流が多いため、その分金の流れがいいこと。詐欺グループが膨大だった時のことを考えゼンヒはあらかじめ公安局長のカンナに許可を取っていて、武装した上で待機させている。

 

「にしてもまあ、寒いな」

 

 該当する少女が見当たらないのであんぱんを食いながらコーヒー牛乳を飲むゼンヒ。

 

 流石に寒い中待っているというのは気が滅入る、暑い時期なら短い夜に心を踊らせるだけで済むがまだ冬だ。そうなると心にもご褒美が欲しくなるのが人間というもの。甘いものなのにも関わらずゆっくり食べているのは、彼女がどれだけ寒い思いをしつつ注意をしているかの証明でもある。

 

 そうそう来ないのではあるが、近隣の警官に見張ってもらったところそれらしき少女はいないと言われ、監視カメラを確認しても不審者も、あまり見ないような人間もいなかった。つまり、まだ来ていない。

 

「ふむ、カイロあってもまだ寒いな。二月も後半なんだからもう少しあったかくなってくれたっていいのにな。三寒四温の季節でないとも言うのか。キヴォトスは薄情だな」

 

 なんてぼやきながら、まだ待っている。

 

 周辺の人は割と少なくなっている。時計を見ると14時、つまり普通の生徒なら仕事をやってるか授業をしているかの時間。

 

「そろそろか」

 

 そう思うと、この時間からやるバイトというのは学生としてはあまり聞かない話である。

 

 その時点で警戒すべきではあるよな、と言いたくもなったが慣れてなければ判断は難しい。だが、それでも相談してくれる人がいることは感謝しなければならない。

 

 あんぱんを食べながら待っていると、左右を確認してやってくる少女が。

 

「ここ、なのかな」

 

 そう言いながら、左右を見ては銀行に近づいて行ってる。

 

 どのような姿かを写真で見せられた二人はハッキリと覚えた。そう、その姿に似ているのである。制服の傷も、髪色も、顔も全て一致していた。

 

 ゼンヒはキリノに合図を送ると、彼女はそのまま目標の人間のところまで進んできた。

 

「あのー、すみません」

「はい」

 

 ミレニアムの生徒は、そのままキリノに応じた。キリノは警察手帳を見せながら話しかける。

 

「私、警察の中務キリノって言います。近隣で色々あったので、少しお聞きしたいのですがよろしいですか?」

「はい!」

「ありがとうございます」

 

 彼女達が話してる間にゼンヒは仲間にハンドサインを送ってから、周辺を警戒させる。受け子の対応はそのままキリノに任せた。

 

「最近は闇バイトと称してあれこれやっている人がいるんです。そう言うので銀行近くの警備とかで駆り出されることも多くて。あなたは基本この近辺には来ないですよね?」

「はい……一応今回はアルバイトで来たんです。何かを運ぶ、という指示があってここが待ち合わせ場所だったんですよ」

「そうでしたか」

 

 この時点でキリノとゼンヒは確信した。

 

 近辺にはおそらくその一派がいて、警察に通報したらすぐに誘拐するだろう。電話中に気づいても脅して動きを止める可能性あり。

 

「そのやりとりを見せていただけますか?」

「え?わかりました……特に変な事はないはずですけど」

 

 ただ、受け子にさせられかけてる本人は本当に犯罪だと気づいてないようだ。バイト探しのサイトからの一連のやり取りを見たが、キリノでも警察でなければ怪しむ事はないと言う連絡。

 

 しかし、やはり引っかかる。物を運ぶ、詳細は後で伝える。最初に仕事の概要は予め伝えておくべきで、少なくとも運ぶ物・手段・目的地は明示しておくべきだ。それをしないと言う事は、やはり隠したいものがあると言うこと。おまけに集合場所が銀行、怪しいものだ。

 

「うーん……ちょっとこれは、怪しいですね」

「え?」

 

 職質されてる少女は怯え出した。

 

「いや、あなたは悪くないですよ。でもこのままだと犯罪に手を染めてしまうかもしれません」

「そんな、え?でも怪しい内容は」

「仕事をする上で個人情報を渡したからには、相応に情報を開示しないといけません。仕事の概要すらまともに話さないのは、ハッキリ言って危険です。警察としても、これは見過ごせないので……」

 

 キリノがどうするかを言おうとした瞬間、銃弾が彼女の髪を掠めた。

 

「きゃっ!?」

「野郎やっぱり撃ちやがったか!キリノさん!」

「ごめんゼンヒさん!銀行の方まで下がります!」

「任せろ!」

 

 撃ってきた方角は二方向、車の向こうにカイザーらしい奴らがいる。

 

 ゼンヒは影に隠れていた仲間から機関銃を受け取って、背後を任せつつ向いた方向に乱射する。

 

 いつか、ヘルメット団を機関銃で壊滅させた時と同じ光景だ。車は爆ぜるよりも先に穴だらけになり、相手もカケラになるくらい一発が重い。通行人がいないことを仲間から情報をもらった彼女は、そのまま弾が空になるまで撃ち続けた。

 

 それでもまだ遮蔽物はあって、人がいるのか相手は抵抗してきている。

 

「くそっしぶといな」

「リーダー!」

 

 投げ渡されたマガジンをキャッチしてからリロードし、空になったマガジンを投げて回収させてからまた乱射する。周辺は少なくともサイレンがなる大騒ぎになっているが彼女は気にせず撃ち続けた。

 

「くそっ!お前らはなんだ!警察と手を組んでいる組織なんて聞いたことないぞ!」

「残念だったな、私らも警察の一種だよ」

「自警団は警察とは言わんぞ!」

「聞いたことないだろうがな!元特殊部隊員で構成されたヴァルキューレきっての軍団だ!」

 

 ゼンヒの反対側で起こっている戦いも収束しつつある。

 

 なにしろゼンヒは一人で中機関銃を撃ち続けているためとんでもなく雑でも被害が大きくなっているが、反対側はしっかり軍用のライフルを持った警官が培った技術の精密射撃を浴びせ続けるのだ。いくら機械で強いとは言っても所詮は一企業、公的な軍隊には敵わない。

 

 生徒を誘拐しようとしていたやつをあらかた片付けると、装甲車が二両到着。運転してるのはもちろん、ゼンヒの仲間。

 

「ボス!やってきました!」

「でかした!」

 

 彼女は銀行の方で待機しているキリノ達にいう。

 

「二人とも!準備が出来た、急いで乗って!」

「は、はい!行きます!」

 

 そうして二人を誘導してから車に乗せ、キリノ達と同じ車両の助手席に乗ってから車は発進。まだ残ってはいたものの、車で通り過ぎる時には他のメンバーの射撃によって破壊され機能停止、一気に駆け抜けて安全地帯へと入ったのであった。

 

 改めて落ち着いた車内で、3人は話す。特に被害者であった生徒は怯えている。

 

「はあ、まさかこんなことになるなんてな。武器まで持って戦いが発生するレベルで固まっていたとは思いもしなかった」

「私、え、そんな____なんで」

「今回は悪くないですよ。大丈夫です、私たちはなんとかしますから」

「そうだな。友人に感謝しろ、二度とこうなりたくなければな」

 

 怯えていた生徒は、助手席にいるゼンヒの方を向く。

 

「____え?」

「今回私達が動いたのは君の友人から相談があったからなんだ。特殊詐欺に遭うんじゃないか、と言う心配でな。そうでしょ?キリノさん」

「はい。でも、まさかあんなことになるとは思いませんでしたね」

「金はついでであそこまで行けばおそらく誘拐が目的だったんだろう。誘拐された後どうなるかは分からないからな。良かったな?」

 

 自分の友人が、自分をどうしても見捨てられなくて警察にまで相談した。藁にも縋る思いだった、と言うのには違いない。それを理解した生徒は、静かに泣き出した。

 

「ごめんなさい……」

「謝るのは友人にしろ。私達は自分のやるべきことをやっただけだ」

「はい……わかりました____」

「大丈夫です。謝るのが怖いなら、一緒に謝りますから。状況説明もしなければいけませんし、ね?ゼンヒさん」

「私も居なきゃダメか?」

「戦ったのはゼンヒさんですから」

 

 自分の書類仕事があるので断りたかったが、謝るなら二人、三人居た方がいいというのはある。

 

「わかった、一緒に行こう」

「ありがとうございます」

 

 キリノの純粋な笑顔は、人を魅了する。

 

 そのまま二人は、一旦ヴァルキューレ警察学校に向かうことになった。

 

 

 

 その後。

 

 友人と再会した今回の被害者は、二人と一緒に謝った。

 

 今回の犯人はすぐには分からないが、とりあえずはしばらく私服警官が登下校などに同行する形を取るようだ。

 

 また、この件でキリノとゼンヒは賞をまた一つ得ることに。二人はまた、新聞に載ることになったのである。

 

 この日からしばらく、カンナの表情が少し柔らかくなっていたらしい。

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