シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-6:ゼンヒ警部補の武器購入

 ゼンヒはガンショップへ来ていた。

 

 いつかの店主も片眼鏡を光らせながら、彼女を迎える。

 

「お待ちしてたよゼンヒちゃーん。いやあ、ついに買う気になってくれたんだねえ」

「結構馴れ馴れしくなったな。ま、それくらいの距離感じゃないと違和感持つくらいの関係になったのは確かだからな」

 

 彼女がここに来た理由は、自分の武器を買う為だ。

 

 ゼンヒそのものは固有の武器を持つ必要はない、もっと言うならヴァルキューレの装備を拡張し、必要に応じて警官として武器を借りると言う形が一番だと思っている。それは、上司に言われた時から変わっていない。

 

 しかし、その上司と似たようなことを部下から彼女は言われたのである。

 

『リーダーは自分の武器を持つべきだ』

『結果的にリーダーになった以上自分が扱いやすいと感じた護身用の武器を持った方がいい』

『リーダーが武器貸してもらってばかりじゃ正直カッコはつかない』

 

 と、必死に説得された為である。

 

 上司の時のようにあくまでプロモーションとしての意味合いでそう言った武器の所持や広告塔的な話ではなく、単純にそれなりの責任者になったんだから良いものを使い威厳を示したほうがいいという話。そして、それを言っているのは軍隊上がりの生徒達。

 

 自分たちの部下の、少なくともおかしいところはない提案。ゼンヒとしては部下との関わりを深めるためにはせめて損はない話は受け入れたほうがいいだろうと判断して、買うに至ったのだ。

 

 そう言う成り行きか、店主と話しているのにも少し笑顔が出てきている。

 

「いつもここから買ってくれてありがとうね。どう?武器は。壊れたりしてない?」

「堅実な型を買っているし、私はともかく部下はプロフェッショナルだ。そうそう壊れはしないさ。あと、うちの部下からお礼言っておいてくれって言われたんだ」

「え、ホント!?嬉しいなあ」

「ハンドガンについてだ」

 

 市街地戦では取り回しやすさ最高のハンドガンを重宝する。無論警察が持つなら適正火力であるためか、特別暴力対策課でもかなり使われるのだが、どの銃もカスタムでマガジンの口を広げているためリロードがしやすくなっており、それがデフォルトな為好評であった。

 

「あー、まあそれが出来る型番を使っているからねえ。特殊部隊員ならそこらへんしなくても良いかなって思ったんだけど今いる組織を考えたら大体市街地だし扱いやすさ重視の方がいいかと思って。当たったみたいだね」

「おかげでメンテナンス以外で金かかる事ないから依頼の金とかでかなり儲けているよ。警察が儲けてるってのもおかしな話だけど」

 

 二人は笑いながらショーケースの方へ寄る。

 

「その用事ならわざわざ」

 

 そこから店主は銃を取り出した。

 

「今回はそうだね、個人の火力というか扱いやすいものを使ってもらおうと思ってね」

「というと?」

「まあたとえば、リボルバーはいかがかなって」

 

 長めでピカティニーレールがデフォルトでついているリボルバーがゼンヒの目の前に。

 

「これは?」

「レイジングハンターだ。まあまず、あの時の戦いからしてゲテモノから見せた方がいいかと思ってな」

 

 あの時とは、この店の前でヘルメット団と銃撃戦をした時のこと。

 

 その時は大口径大火力、取り回しが悪めのものを使ってた。

 

「使う弾は全体的にでかい。.357だったり50マグナムモデルもあったりする。一応これは命中率を安定させるために銃身を長くしてあるが、正直切り詰めたっていい」

「リボルバーか」

 

 売人逮捕に使ったのはリボルバーだが、その時もあまり慣れてたとは言い難いと彼女は考えていた。

 

「悪くはないが、他のはないか?」

「手にすらしてないのにいいのかい?」

「よくよく考えたら、できればオートマチックがいいと言われてね。あっちの方が扱い慣れてる」

「んまあそうだよなあ。でもまあ、ゼンヒちゃんなら色々試せるしいっかな。じゃ、これとかどう?VP9A1って言うんだけど」

 

 小さめのものと大きめのものの二つが、彼女の前に出てきた。

 

「これっていわゆるストライカー式のハンドガンなんだ。最近は色々な組織や軍がこれを持っていることが多い」

「フレーム内に機構を収めやすく小型化しやすいからってことか」

「そうそう。どう?これ」

 

 彼女はそのうちの大きめ、フルサイズモデルを手に取って操作をしてみた。

 

 全体的に軽くスライドを弾くのもリロードするのもスムーズに行えている。元々ゼンヒは記憶喪失してからも国家公務員試験に合格するほど頭が良く物事に慣れやすいのであったのだが、少なくともそれは警察に入って半年の警部補の動きではなかった。

 

「やっぱ様になるよね。分解してから早撃ちするのも得意なんじゃない?」

「仕組みを知っていればできるだろうが……って別に今そんな話をしに来たわけじゃない」

 

 銃を置いて、ゼンヒは言う。

 

「これに関してはフルサイズモデルの方をキープさせてもらおう。ある程度候補絞った後に、射撃訓練場で試すつもりだ」

「オッケー」

 

 店主はキープした銃を布の上に置く。

 

 ただこのペースで探しているとさすがに時間がかかりすぎる。そう思った店主は、ゼンヒに好みを聞いてみることにした。

 

「ゼンヒちゃんはさ、どう言う銃がいいってある?」

「どう言う銃?か。まあ、そうだな。タバコ代食わない範囲で維持できて、できる限り精密な射撃が出来る拳銃が欲しいな。反動が抑えられて、銃を撃ってるときに照準があんまりぶれないものがいい」

「あー、随分ひどいこと言うね。拳銃以外に要望は?」

「いや、ないな。本気で怪我させようと思ったら普通に殴る」

「簡単な人間だ」

 

 片眼鏡の店主は困った顔をするが、その2秒後には何かを思い出したようだ。

 

「えーと、反動を抑えて精密な射撃ができる拳銃だね?うーん、まず金の話からしよう。これは出せる?初期費用とメンテナンス費用だよ」

「急に?」

「これがクリアできたなら間違いなく気にいると思う銃がある」

 

 出された見積書の初期費用は全然ゼンヒの貯金で出せる範囲、尚且つ定期的なメンテナンス費用も給料を考えれば何も圧迫しないどころか特別暴力対策課の分の給料からすれば少ないと言える範囲だ。

 

「この条件ならクリアできる」

「よし来た。じゃ、見せたいものがある」

 

 そう言われると、店主はゼンヒを連れて下の射撃場へと連れて行く。

 

 室内射撃場は青白いライトでコンクリートを照らしていた。そこに置いてあった新品の銃を取り出すと、店主はそれをゼンヒに渡す。

 

「これは?」

「新作の拳銃だよ。名前をエイリアンピストルって言うんだ」

「ああ……?」

 

 スライドは上の方が固定されていて、左右のパーツが動く為照準器がぶれにくい。全体的にシャープなデザインというべきか、精巧なデザインの拳銃。銃口が手に非常に近い位置にあり、反動がかなり抑えられている設計のようだ。

 

「これか。パッと見面白いデザインだなとしか思わないが」

「撃ってリロードするまでやってみてくれ。後悔はしないはず」

「ならするか」

 

 言われた通りに、射撃とリロードまでをやってみることにした。

 

 ゼンヒは射撃を開始したが、まず分かりやすく反動が抑えられている。昨今のストライカー式拳銃のような扱いやすさを兼ね備えているが、スコープがスライドと一緒に動かないためか構えて撃ち続ける時のブレがなく安定して狙い撃てる。

 

 射撃でちゃんと胴体部に全弾当てているが、収束率が高い。大体中央に寄っているため、警察で訓練したという土台からしても非常に射撃精度が良いということになる。

 

 そして、リロードを開始する。

 

 普通に動かしているだけだが、やはり慣れた手つきでしっかりとマガジンを入れ替えてスライドをリリースする。

 

 構えたら5秒ほどして姿勢を解いた。

 

「どうかな?その銃」

「割と気に入った。デザインもカッコいいし、これなら満足する射撃が出来そうだ」

「そう言えばゼンヒちゃんはスライドを引かないんだね」

「あんまり雑に弾くと壊されるし片手で操作できるならそっちの方がいいからな」

 

 持たされたエイリアンピストルを置いて、彼女は話す。

 

「これがエイリアンピストルか。これはどこで作られたんだ?」

「キヴォトスの外からやってきたものだよ。一応その企業とは話をして、私はライセンス生産できるようになったから今進めようってなったわけ」

「そうだったのか」

「ただまあ、最近の大口は信頼性のあるものが前提な場合が多くてね。私は冒険好きだからあれこれ仕入れたりはして見てるんだけど買われてないのが現状だ」

「この銃の欠点は?」

「単純にパーツの互換性が低くて維持費用が嵩むってことかな」

「なら問題はないわけだ」

 

 ゼンヒはいつのまにか役職持ちになった。警部補というだけならさして変わりはしないが、何より元SRT集団のリーダーになったからにはそれなりに金が入るようになっていた。

 

 その給料から考えれば、全然大丈夫な範囲である。

 

「じゃあ、これを買う?」

「ああ、そうしてくれ」

「分かった」

 

 そうして、彼女の武器は一つ決まったのである。

 

 その銃を持ったままカウンターまでやってきて、手続きを軽くした後でクレジットを払い、ゼンヒは武器を手に入れた。一年も記憶のない彼女にとってこの銃は、初めてで、カッコいい思い入れのある銃だ。

 

 最新式で、少しクセがあるが精密射撃をしやすい銃。近未来のようなデザインで、持っているだけでも気分が上がるエイリアンピストルを彼女は手に入れたのだった。

 

「毎度あり。色々な人が使ってきた備品と違ってそのゼンヒちゃんだけの銃は新品、慣らしが必要だから、ある程度訓練してから使ってね」

「ありがとう。丁度今のもう一つの職場の地下には射撃訓練場がある、そこで使ってからにするよ」

 

 二人は店の入り口までやって来た。

 

「それじゃ、気をつけて。その銃との生活を楽しんでね、ゼンヒちゃん」

「ああ。また必要になったらここに来るよ」

「また来てね」

 

 そう挨拶して、手を振っては彼女達は別れる。

 

 まだ風は寒さを持っていたが、少しずつ緩くなっては心地よい風になっていた。

 

 別れのシーズンではあるが、そんな時が来るかも分からないこの街では、ただ“春の産声”のような時期が、3月なのである。

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