シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-10-5:教会調査/地下水路の戦い

 水路では、混戦を極めていた。

 

 格闘戦をするだけの広さはない。水路は基本想像される通り、中央に水路があって両端に人が行き来する通路があるのだ。

 

 その中での射撃戦なんてとんでもなくうるさいし眩しいのは当たり前だ。だが、その眩しさは相手にとっては不都合もいいところ。

 

 タクティカルライトもそうなのだが、面射撃する前提なら基本精密射撃は二の次でいい。弾の数が優位な方が制するのだから。そういう意味では取り回しの良い大きさになって射撃を繰り返しやすくなったオブレズのマズルフラッシュはあまりにも眩しく、またその奥からPDWのP90のサイドアームとして特暴課のメンバーが持ってたFive-seveNもまた火力の一助になっている。

 

「撃て!撃て!とにかく撃って後退させて、前進するんだ!水に落ちても下水道じゃないから、勢いを優先しろ!だけど落ちるなよ!」

「わかってる!そういうそっちも火力援護怠るなよ!」

「みなさん!こっちが近いです!早く来て下さい!」

「了解!」

 

 一応入ってこれないようにするためにまだ教会側の方を塞ぐ工作をしながら連絡員を決めて、地下壕と水路を行き来するメンバーから情報を聞きつつ、ゼンヒとマリーは細かい行動を決める。

 

「つまり今、こちらはS-39方面に進行中とのことですね?そこの中央にある出口から来てるのでしょうか」

「この地図を見るに南北から来てるっぽいです。おそらく相手も迷ってるのではないかと踏んでいますが、ともかく相手を押し返すことに専念させてます」

「ありがとう。じゃ、兵の位置が伸び切らないうちにさっさとこっちも片付けて必要なもん持ち出しながら行くとするか」

「お願いしますぜリーダー、あとマリーさんも」

「はい」

 

 状況を聞いた二人は、方針をもう少し具体的に固める。

 

「とりあえず脱出を最優先、押し返したら近くから脱出しても追わずに指定の場所へ移動しましょう。何を持ち出すか分からないので」

「そうしようか」

 

 階段側の工作も終わったところで、二人のところに来る特暴課のメンバーが。

 

「出来る限りやりました!あと適当に壁突っついて破壊してその瓦礫で周辺少し埋めたので見つかっても早々入ってこれないようになっています!」

「ガラス片を流すなんて小細工も効かない、音に気付いても地下に爆弾なんて仕掛けたらとんでもないことになる。相手の動きは封じてるな」

「そうなりますね。あ、そうだ。リーダー、これを」

 

 渡されたのはピダーセンデバイスをつけたスプリングフィールド・オブレズピストル。マガジンにはセラフィム弾が入っている。

 

「使うことはないと信じたいですが、少なくともこれで使えるようになりました。他の奴らには持たせてないですが、少なくとも動作不良は起こらないと思います」

「ありがとう。使う時が来たら、君に感謝するよ」

「じゃ。自分はこれで〜」

 

 射撃の音が遠くなりつつあるが、少なくとも順調に押し返してるようだ。怪我人が出た、などの話はまだ聞いてない。

 

「行きましょうか!」

「ああ」

 

 二人も他の側近に用意させた台車に武装や資料を載せて、地下壕から水路に出る。

 

 水路に出ると、後ろにはチェーンと看板が。

 

《この先、非管理域によって立ち入り禁止》

 

(とんでもない所から出て来たんだな、私達は)

 

 そう思いながら、先に行ったメンバー達の元へ急いだ。

 

 走っていくにつれて、銃声が響くようになってくる。かなり激しいようだが、武器弾薬は古めとはいえ補充されたものを使い倒すのはトリニティの秘密警察の末裔と連邦生徒会長直々に編成されていた特殊部隊員。確かにアリウスもベアトリーチェによって拷問に等しい訓練をされていたが、それとは比にならないほど最適化された知識と訓練の賜物で、銃器の時代差など気にも止めることはないほどに効果を出し続けていた。

 

「随分やってくれるじゃないか!流石だ!」

「このままだったら早く出れそうですね。私の示したルートであればトリニティの近くに出るので、そのまま兵を連れて引き返すことも容易に出来そうです!」

「そもそもあれだけの騒ぎだからな、兵がいるってことは射撃後にすぐ隠れれたってことだからだいぶ用意周到じゃないか。だが、それもここまでだ!」

 

 二人は走り続ける。

 

 現在の戦況は、こちらの有利が続いていた。

 

 相手は複数の箇所から侵入して来ているものの、こちらの方が人数によって一度に撃てる数が多いのか、相手は一斉射撃を喰らって血を流すほどの火力差を叩き出している。

 

 安心させ、ついでに心に傷を負わせたままに放置することにしたマリーは目的地に向かっての進軍を続行。出入り口の方で待機するであろう人間に射撃を加え、追ってくるようなら足元を撃って滑らせて水路に落とす方法を取っているため、相手の行動を遅らせることが出来た。それを繰り返し、追手を撒きつつ進んだ。

 

「こっちの方が有利だぞ!」

「オラーはやくどけー!」

「罪を重ねないうちにどうかお引きになって!」

 

 銃弾が切れてマガジンも無くなったら交代しつつ進む。そんな動きを織り込んでいても進行速度が落ちないあたりに練度を感じる。

 

 地図を見つつある程度指示を出したマリーは、ゼンヒと話し合う。

 

「とりあえず今はいい感じに進んでいますね。どうですか?そちらは」

「こっちのメンバーも怪我したやつはいない。どうやら索敵能力に関してはこちらの方が上らしい、人数揃えているが閉所かつ暗所でも感覚が鈍ることはないようだ」

「ふふっ、頼もしいですね」

「ああ」

 

 銃声は、この時にはもう響かなくなっていた。別の道に行って逃げたり、出入り口の方に戻って相手は撤退してるせいでどうやら兵が尽きて来たらしい。思ったよりも早かったので、恐らくは先に捕まったメンバーの分だけ減っていたのかもしれない。

 

 そんな会話をしながらも割と急いで動いていたら、前の方から連絡役がやって来た。

 

「マリー様!目の前に貯水庫が見えました!近くから行けば前に出ます!」

「本当ですか!?」

「ええ!」

 

 走って、後ろの方も前の方に追いつくように移動する。

 

 すると、そこには。

 

「ああ、ここです!」

 

 真円の、貯水庫エリアに来た。

 

 真ん中には貯水庫があり、そこに水が落ちていくようだ。淵の方に一周するように少し広めのコンクリートの足場があって、1/4も歩けば出入り口がある。

 

「やりました!ここです!」

「なるほど、急いで行くしかないな!」

 

 先行した人間のうち一部が戻って来て、ここは安全だ!というハンドサインを出す。上に行っても問題なし、ならば急ぐしかないだろう。

 

 二人は頷き指示を出し、上へ急ごうとした。

 

 その時だ。

 

 ______ひゅん、と銃弾を掠める音がする。

 

「誰です!?」

 

 自分の銃を構え、飛んできた方向に銃を向けるマリー。

 

「いやあ、今の一発でよく気付いたなぁ。まあ、気付かないならあの時死んでるか」

 

 わざとらしい、一つ言えばバカにしたような口調で話す奴がいる。

 

 シスターフッドの服を着ているが、そこには首筋に番号がついていて、何より灰色の髪をした赤目の少女。

 

「……首魁、か?」

 

 ゼンヒも、自分の銃を手に取った。

 

「どうもどうも、私の仲間をなんとも思わず傷つけてくれたようで、構ってくれてありがとう。しかしまあ、よく生きて帰れたよねえ?あそこ地下室と水路が全く繋がってないのに、どうしたんだい?」

「面白いことだが、丁度棚のところに過激派が使ったペンダントみたいなのがあってな?それが急に曇り出して、いつのまにか地下に居たってわけだ」

「ふぅん?」

 

 灰色の少女は、どういうことかはあまり理解しない気でいるのか適当な相槌を打った。しかし、それとは別に無視出来ないものを、手に持っている。

 

「起爆用スイッチか」

「せいか〜い。責任者のうちどっちかがここに残らないなら、爆破しちゃうよ?君たちの通った場所にはないけど、この近くにはいくつか置いてあるんだよね」

「人質を取る気か?」

「そうそう。ま、リラックスしてね、ここに居てくれればいいから」

 

 ゼンヒは、迷わずマリーに申し出た。

 

「マリーさん。ここは私が」

「何を言ってるのですか!?手伝わせておいて、あなたを置いて逃げるなんて!」

「状況を説明して、協力を仰げるのは多分私じゃなくてマリーさんだ。大丈夫、私は一人慣れてる。何よりも……」

 

 そこにいる、過激派の長を見てゼンヒは言った。

 

「私はあいつを撃てる。自信はある」

「しかし______いえ、そうですか」

 

 流石にハッキリと、自分が残った方がいいと力説されれば下手に話を長引かせるよりいいと判断したマリーは、ゼンヒを信じることにした。

 

「では、私は急いで上にあがり状況説明と増援を読んできます。ですが、ゼンヒさん」

 

 彼女はハッキリと、ゼンヒに言う。

 

「無理はしないでください」

「分かってる。狙えないと思ったら素直に待つさ」

「お願いします。では」

 

 マリーはそのまま階段を使って上に行く。それを見送ってから、ゼンヒは相手に叫んだ。

 

「私が残る!」

「おお〜、いい判断だね。外交問題に発展しそうな方が残るなんて。流石は特別暴力対策課長の扇皇ゼンヒだ、相手の感情も思いやれる人質ってところかな?」

「どうだか」

 

 適当にはぐらかしながら、ゼンヒは周りを見た。

 

 青白く光るライト、真ん中は穴が空いてて貯水庫になっている。その貯水庫を囲むような道と、落ちるのを防ぐために鉄柵がある。柵には隙間があるから、狙い撃つ時にも使えそうだ。

 

 だが、今の段階は何よりも相手から必要な情報を聞き出したい。武器を手に持たず、ゼンヒは相手と向き合うことにした。

 

「私が残ったんだ、先にお前の名前から聞こうじゃないか」

「いいとも。だが、私にはしっかりとした名前がない。ただの実験体だからね、だからまあ……罪という意味でシンと名乗ろう」

「じゃあ、シン。こうやって残ってる以上私は痛い目に合うわけだが、その代価として色々聞こうじゃないか」

「もちろん。自分の同志を突破して、脱出させた手際に免じて教えてあげる」

 

 シンの笑顔は純粋無垢、天使のようである。だが、やって来たことの邪悪さが彼女の影を濃くした。

 

 片や既に敗色濃厚のテロリスト、もう片方もそのテロリストの爆発物による脅しによって居残った半ば人質。

 

 音を立てて貯水庫に流れていく水を挟み、最後の問答が始まろうとしていた。

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