シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-17-1:新入生への組織紹介作り/始まり

「_____して、今回入ってくる見習いの180名の新入生に対しての挨拶は生活安全局のキリノに任せているが当然公安局も参加するわけだ。無論私も出席するわけだが、ビデオも作らなければならない。工務局からもいくつか出す」

 

 春先に会議しているのは、ヴァルキューレの新入生に向けた歓迎会や各組織の紹介ビデオのためのもの。

 

 ヴァルキューレも勿論新入生を迎えるのだが、当然警察学校なのでそれなりのアピールをしないといけない。

 

 動画サイトにも掲載する部活動紹介、と言うよりかは部署紹介は大事である。そのための会議をしている。新入りに向けての激励はキリノが担当することになっており、彼女は緊張はしているものの承諾。あとは公安局の分の紹介映像を必要としている。

 

 当然カンナとコノカも出るし、他の幹部も自分の部署を紹介する。会議ではどう言うものを求められているか、と言うものの共有がなされた。

 

 ゼンヒもそれに参加しているのだが、実はあくびを我慢するので精一杯。会議というのは暇である。しかし、一人で決めていいこととそうではないことが混在する社会においては、この煩わしさは後の面倒を避けるための手段でもある。

 

「で、当然ゼンヒにもその映像を作ってもらうんだが______」

「何か?」

 

 彼女の部下は二人いる。一応それぞれサポートという形で来ていたハクジツとユリだ。

 

 その二人は、お互いに睨みを効かせてる。

 

「お前がまず乗り気でいてくれるのは嬉しいが……」

「だって今回警察の話でしょう?まさか、紹介しなければいけない組織が二つもあるわけないし」

「ならゼンヒ、担当する場所を言ってみろ」

「もちろんシャーレ前の交番_____」

「リーダー!」

 

 ユリが彼女の右腕を掴む。

 

「そんな!そんなことを言わないでください!」

「ユリ!?いやでもこれ警官だし特別暴力対策課はちょっと話違ってこないか!?」

「そうですよユリ!先輩は!私のです!」

「いや別にお前のものでもないが!」

 

 二人に引っ張られ続けるゼンヒ。

 

「そう、お前は二つの組織の、それもどちらも注目度が高い組織の責任者なわけだ。どっちか決めてもらいたい」

「新入生に紹介してもそう簡単に入れる組織じゃないし、生活安全局に結局入る子が多いんですからシャーレ前交番の方がいいのでは……?事実今特別暴力対策課はSRTのメンバー引き入れているからすぐに新規の人を入れる必要もないし、世代交代の準備をするにしてもまだ基盤が出来てない。局長だってそれを分かって……」

「確かに明確な継承などはまだするべきではないというのは間違いないな」

「なら、尚更今回の紹介には向かないのでは?」

 

 しかし、カンナは確信を持って彼女に話す。

 

「いや、紹介したい。元SRTという話も、結局お前が企画し行動したおかげでイメージアップができたことを考えればヴァルキューレとしても大事な組織の一つだ。それに彼らは特暴課のメンバーとしての仕事が本来想定されていたことであり、その成果は申し分ない。ならば、ここで実際に活躍できてる特殊部隊としての仕事を見せることでそれを目標に頑張る新入生を増やし、モチベーションを維持させることが可能になるのではないか?」

「それで維持できますかね?仮に訓練があったとして彼女らの実力にたどり着くまでに相応の訓練が必要になりますし、何よりほぼ軍隊のようなもの、そもそも根底が違いますから来年度入る生徒からの募集でいいと思うんです。何より二つするの流石にめんどくさ」

「「それで私(アタシ)たちを見捨てるんですか!?」」

「黙ってなさい!」

 

 ゼンヒは大変だ。

 

 幹部含めカンナとかはその光景を微笑ましく見ているが、彼女を挟んでいる二人は言い合いを続ける。

 

「だいたいポット出で先輩を奪おうって言うのが気に食わない!いい!?先輩はね、あの交番に来てからずっと私の面倒を見て一緒に仕事してくれた大事な仲間なの!替えいないし、何より先輩は一人の警官であることを望んでるの!だから警官の領分としての仕事をするから、先輩はあなた達には渡さない!」

「んなこと言ったら運用方法が特殊だけどアタシらだって警官だよ!あんたにとって頼りになる人間はいくらでもいるけど、アタシらにはリーダーしかいないんだ!それこそ一緒に死線を潜り抜けた素晴らしい戦友!でしょ、リーダー!?」

「いやまあヒエロニムスの件といい教会の件といい間違い無いんだが、ハクジツとも山海経の園児助け出していたりなんなら警官として見た場合彼女にも世話になってるからどっちが大事とかは」

 

 言い合いをしてる部下二人を差し置いて、ゼンヒはカンナに質問。

 

「そもそも運用してそこ一か二ヶ月の組織ですよ?そんな人気ありますかねあの組織」

「実は結構あるぞ。対外的にはかなりの評価を得ているし、何より緊張状態が続くゲヘナとトリニティの間で仕事ができると言う点とその功績で"この組織に入りたい"と志願する人が多い。特に先生が居なくとも戦える、結果が出せた点が評価されてるからな」

「その一点はそんなに重要ですかね?」

「先生が指示したグループとそうでないグループは数が不利でも先生が居た方が勝つからな。特にあのヒエロニムスの一件では先生が基本対処していたのを、ガチガチに訓練されていたとはいえ普通の武力組織で跳ね除けた。それだけでも注目を集めたが、先の一件はそこからさらにテロリストを確実に捕まえて被害を抑えて終わらせると言う綺麗な成果まで残している。それのSNSの反響は結構大きい、トリニティにもある程度支持者がいる、と言えばその影響力は分かるだろう」

 

 ゼンヒはそれだけのことをやっていた。

 

 事実元SRTをちゃんとした運用をした、それはある種、特定の分野においては連邦生徒会長のやりたかったことをしていると言うことになる。その為特別暴力対策課やそのメンバーの地位向上、名誉についてはもちろんのことゼンヒ自身もある程度の人望があるという。

 

 そしてわかりやすくヒーローらしいことをやっているのは、実際に社会システムの維持と改善を任された政治家_____連邦生徒会のメンバーよりかは目立っていた。シャーレよりかは影が薄いが、それでも先生のように知略で物事を進めるよりも純粋に力が必要な場合は頼りにできる存在という社会的地位はそうそう脅かせるものではない。それに身分は警官、事情で筋が通っていれば彼女らは全力で手助けする上、全員特殊部隊出身である。それがどれほどありがたい存在か、大衆的にも上層的にも無視できないほど大きくなりつつあった。

 

 ならば入学式にモチベーション維持のために大々的な紹介などをして、新入生も含め改革をしたい。

 

 流石に対外アピールをも考えないといけない時期である春、しかも入学式ではそういったアピールなどをあまり考えない現場主義であるカンナもそう言ったものに頭を悩ませる。

 

 だが、ゼンヒは一人しかいない上、あまり時間がない。なので彼女にはどちらを撮るか決めてもらいたいようだ。ハクジツとユリはそれを知って、自分の居る部署のためでもあるが、何よりもゼンヒに大切だと宣言してもらいたいという心づもりである。

 

「リーダーは見捨てませんよね!?」

「先輩は私に来ますよね?」

「あー、えっと」

 

 迫られるゼンヒは悩んでいた。

 

 何しろ書類は全然片付いてない上に、新入生のやつについては無視できるものじゃない。だから、カンナの言う通りどちらかを取りたい。

 

 しかし二人にあーだこーだ言われていると、どちらかを捨ててしまうということが難しくなっている。

 

 片方を取ったらもう片方が泣きかねない、と言うレベルの威圧感に負けたゼンヒは自分が一番地獄を見る提案をした。

 

「ならいっそ一日で全部撮ってしまいます?」

「え」

 

 今度はカンナが困惑した。

 

「いいのかゼンヒ?お前の負担ハンパないことになると思うぞ。資料準備からして、話す内容を決めるのを二本分。休めるのか?」

「ああ全然、資料準備くらいこの二人がやってくれるから問題ないですよ。喋る内容もまあいつも通りかつ、当日思いついた適当な演出で誤魔化せばOKです」

「それなら問題ないな?」

「でしょう?」

 

 言い合いしてた二人も資料準備や撮影準備は手伝えるからか、嫌な顔もせず素直に下がった。

 

「決まりだな。じゃあ、ゼンヒ。頼むぞ」

「任せてくださいよ。少しくらい面白くできたら褒めてくださいね」

「ああ、勿論だ」

 

 話がまとまったので、カンナは改めて発言する。

 

「と言うわけだ、それぞれ少ない時間での制作になると思うが、頑張ってくれ。以上」

「了解しました。失礼します」

 

 そう言って、会議は終わった。関係のある幹部たちで固まって軽く話を合わせているのが数分あって、終わったところから解散。

 

 幹部やカンナが出てからは、三人で話し合う。

 

「しかし、随分な強硬手段に出たねリーダー」

「それができるだけってことさ。ちなみに、その1日というのは今日だ」

 

 二人はいきなりの発言に絶句した。

 

「えっちょっ今11時ですよ!?」

「だからさっさとユリには基地の方に戻ってもらって撮影準備、特別暴力対策課は夕方に撮影する。シャーレ前交番は今から戻って準備だ!」

「あいよリーダー!待ってるから!」

 

 ユリは要望を通してもらった以上は道理を弁えているようで、準備をするために廊下を駆け出していった。

 

 自身の先輩はだいぶ無茶振りをするようだ……と困惑していたハクジツも流石にやる気で色々考えているゼンヒを見れば、気力も湧いてくるというもの。

 

「じゃあ、先に済ませちゃいましょっか。行きますよ先輩」

「ああ」

 

 二人もまた急いでヴァルキューレの校舎を走って車へと向かう。

 

 事実この日を逃せばまた書類の山が来てしまうのだから仕方ない。そのまま二人とも車に乗って発進することにした。

 

 桜並木を車が通り抜ける。

 

 入学準備で色々買っている生徒、新学期のためにあれこれ買ったり準備をしている生徒、そもそも年度初めだからと色々忙しい人達の間を潜り抜け、シャーレ前交番へと急いだ。

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