シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-17-2:新入生への組織紹介作り/シャーレ前交番の紹介

 交番にやってきたのは11時、準備が終わったのはそこからある程度の話し合いをして12時。演出考えて一時間程度で出せる辺り、アイデアがパッと浮かんでいたのかもしれない。

 

 ハクジツとゼンヒは、撮影の準備をした。

 

 ゼンヒ本来のデスクはかなり奥まったところにあるため、市民の写り込みはなくまた邪魔にはならないだろう。木製のいいデスクで、カメラと反対側を向きながらスタンバイしたゼンヒ。

 

「いいですか〜!先輩!」

「ああ、いつでも」

 

 二人はそれぞれ合図を出した。

 

「んじゃ行きますよ!3,2,1____はい!」

 

 時間が惜しいと言うので、二人は撮影を開始した。とんでもないスピード感である。

 

 ハクジツの合図から二拍おいて、温かいコーヒーを持って向きながらゼンヒは挨拶から入った。

 

「新入生の皆さん、こんばんは。私は扇皇ゼンヒ、このシャーレ前交番のハコ長……と言ったら分かりにくいね。いわゆるその交番の担当者だ。ちなみに階級は警部補なので、君たちの中で総合公務員の資格を持っているメンバーは私と同じ立ち位置になるね」

 

 まずは大事な自己紹介。忍者もあいさつは忘れない。

 

 コーヒーを飲んでから、彼女は話を続けた。

 

「公安局のビデオを見るのはこれで三つ目か四つ目になると思うけど、実は公安局でも生活安全局の人たちと一緒にパトロールをしたりするんだ。新人はみんなそれをするものだが、特に公安局では政治施設に近い場所でのパトロールをやることになっているんだよ。シャーレはみんな知っていると思うが、私は先生の近くの保安を担当している」

 

 カメラが少し移動して、署全体を映す角度になってから口をひらく。

 

「ここにいる人たちは結構いろんなところから来ているんだ。連邦生徒会関連施設では色々なところから来ている。例えば今、このカメラを持っているハクジツと言う私の後輩は交通局から来ているし、今受付をやっている子は生活安全局で、その隣で色々やっているのは情報通信局の子だ。ん?警備局の人はって?残念、その人達は割と独立した部隊になっていてこう言うところには来ない。ファミレスにフルコース料理はないだろう?それと同じだよ」

 

 装備といい部隊持ってるのに到着が遅いことで有名な警備局をイジる。

 

 ハクジツが頭を抱えているが、それはカメラの後ろ側。見えることはないだろう。

 

「そうそう、警部補は基本後ろで色んな書類の仕事したり、たまに巡査達と一緒にパトロールや指導をしたりするんだ。こう言う私も結構書類が溜まってる。ん?内容が知りたい?ダメだよ、機密書類だからね。と言う感じの仕事が、中間管理職の警部補の仕事なんだ。もし君たちが研修を終え、その配属先がシャーレ前交番だったら、もしかしたら私と出会えるかもな。それまでは真面目に、外されないように頑張るよ」

 

 とりあえず自分で話したいことは終えて、あとはハクジツの持つ指示の通りの質問に答えていく。

 

「ここからはよくある質問に答えていくよ。まずは_____」

 

 質問その1のカンペ、この仕事に就いた理由は?

 

「えっとね、私自身は特に警察になろうと考えていたわけじゃないんだ。ただ、その前に公務員試験に合格しててね。その影響でどうしようか悩んでいたところ、ヴァルキューレの中途採用があったから応募して試験したら合格して____って感じかな」

 

 馬鹿正直に話す内容ではなかったので、ある程度の事実を混ぜて言う。

 

 二つ目の質問は、この仕事の楽しさについて教えて欲しいとのこと。

 

「この仕事の楽しさ?それは勿論市民に直接貢献できるのを実感できるところかな。やりがい搾取みたいなこと言ってるからあまり信ぴょう性はないように見えるけど、これ結構重要なことなんだよ」

 

 一旦コーヒーを飲んでから落ち着いて、言いたいことをまとめるゼンヒ。

 

「例えば我々警官は市民の安全を確保する仕事をしている。それは何よりも大事なことであるのは入学前からわかっている事だが、基本仕事というのはエンドユーザー……という言い方はアレだが、いわゆるお客様の良かった、という反応が聞きにくい。飲食店などでもお礼を言うお客様はいるだろうが、そうそう見るものではないだろう?公務員になったら尚更で、対応するのが当たり前、救うのが当たり前だから役所とかは結構やる気を無くしがち。しかし警察は厳しくあるが、何より人を助けられた時の感謝がダイレクトに伝わってきやすい職種なんだ」

 

 微笑んでゼンヒは続ける。

 

「無論、事件が起こらないことが最善なのは頭に入れておいてほしい。ある漫画の言う通り、警察の仕事というのは基本手遅れだから。だけど、その手遅れをなんとかして広がらないように、深くならないようにする。ひったくり犯を捕まえて全部被害者の手元に戻せたら喜ばれるだろ?だから警察にいる間は、誰かのマイナスをゼロにすることを目標に頑張って欲しい。たとえゼロにならなくても、ゼロに近ければ近いほどいいからね」

 

 実際ゼンヒはゼロにすることを目標に頑張っている。

 

 そのためには自分の命を捨てる覚悟で挑んだりして、その結果が様々な平穏である。それを踏まえれば、自分も実行できてる信念として胸張って言えることだろうと彼女は笑った。

 

 さて、最後の質問がやってきた。新入生に伝えたいこと。

 

 無論彼女は、今はシャーレ前の警官としての立場だ。だからそこからの応援メッセージを考えないといけない。

 

「それこそさっき言ったことが望みではあるんだけどね……ただそんな堅苦しい話ばかりしすぎると疲れちゃうのも事実だ。だからまあ、励ましの言葉くらいはガチガチじゃなくてもいいかな」

 

 ちょっと悩む動作を入れてから、ゼンヒは言う。

 

「君たちは今、警察という大変な仕事に入ろうとしている。それをまず誇ってほしい。守られる側ではなく、守る側になろうとした意志は褒め称えられるべきだ。試験をするときも、今こうして話を聞いている間も、目の前のことに集中したいのにその先の仕事が出来るかどうかを悩んでいるのが君たちだ。それは尊い、私もそうだったから。だから、どうかその気持ちを忘れないで。君たちが守ろうとした人は、必ず君たちのことを応援しているよ」

 

 そう言って、新入生へのメッセージを締めた。

 

「という感じだね、じゃ、警察ってのも大事だけど学園生活、掛け替えのない仲間たちと楽しんでね」

 

 手を振り、これで終わりだとハクジツに伝える。

 

 ハクジツが録画ボタンを押した後、数秒だけ待機してからしっかり保存された後にゼンヒは動く。

 

「……これでいいかな?」

「おお、凄いじゃないですか。まるで全部先ほど考えついたとは思えない内容。実は全部用意してたとか?」

「いやいや、それほど器用じゃないよ。書類仕事はいつまで経っても素早く終わらせられないし。でもこう言うのってわざわざそれ用に考えてるよりも、いつもやっていること、信念にしていることをちゃんと知ってもらう方がいいと思ったからこうしてるんだ」

「なるほどなあ」

 

 動画を見直してみても特に異常はない。

 

「まあ、それでも恥ずかしいけどね。何しろ自分は仕事をやっているだけで、仕事を通じて何をしようかまでは考えているわけじゃないからさ。かと言って趣味があるわけでもないし、本当に仕事のための人生になっちゃってる」

「それでも良いじゃないですか。今はそうであっても、いつかはそうじゃなくなるかもしれない。望もうと望むまいと、記憶を取り戻すかこのまま過ごしているうちか、いずれにせよ趣味は生まれるんです。それが人生ですから」

「そう言うもんか」

 

 ゼンヒは後輩の発言に納得した。

 

 さて、作った映像はそのまま編集をしなければならない。どうしても無理なら請け負ってくれる人間がいるらしいのでそっちに送れば良い。

 

「で、この映像はそのまま編集してくれる人に流す感じか?」

「いいや、あっちもそう言うので溢れかえったら大変なので私が編集しときます」

「映像編集出来るのか!?」

 

 驚くゼンヒ。

 

「もちろん出来ますよ。安全講習の映像作ってましたし、こういう内部向けのビデオも作ってましたからいけます」

「それ初耳なんだけど。え、じゃあ私が中途で交通に関する条例学んでた時の動画って」

「私の作ったやつですね」

「……すごいなハクジツ」

「でしょ〜?」

 

 後輩の得意げな顔が可愛らしい。

 

「そんな感じなので、こっちの事についてはあまり考えなくても大丈夫です。この映像さえあれば後は何とかなりますよ」

「そうか……分かった、ありがとう」

 

 これで一つ目はクリア。後は、特別暴力対策課の紹介映像だ。

 

 しかし、撮って12:45分。まだ彼女達はご飯を食べていない。

 

「じゃあ、今から何か食べに行くか?」

「良いんですか?」

「手伝ってくれた礼でまた奢るよ」

「やったあ!」

 

 二人はご飯を食べるために、一度交番の外へ出た。

 

 外は綺麗だ。何度見ても桜が美しい。

 

「ところで先輩」

「なんだ?」

「ユリちゃん結構先輩に執着してたみたいですけど、どんな風に接したらあんな感じになるんですか?」

 

 SRTメンバーの信頼が厚い事を改めて知ったハクジツは、それを向けられてる当人に話を聞きたいらしい。

 

 とは言え、特段面白い返しが思いつかないゼンヒは素直に話す。

 

「単純に彼女達がやりたかったことをやらせれるだけの環境を作り上げたってだけでも信頼度は上がるもんだなって私も思ってるよ。ただ、それだけ元SRTがヴァルキューレに来てから苦境に立たされていたってことでもあるからね。お労しい話だ」

「あのまま放置されていたら、RABBIT小隊の人達みたいに活動していた方がまだマシだったかもしれない、自分たちもあれ以上の反抗を起こそうと思っていたかもしれないですね」

「それを抑えるだけではいずれ破綻するからな。救えたのは良いことだ」

「その分寂しいですよ、私は」

「いずれハクジツもそう思われる日が来るってことさ」

「えー先輩は私と離れて寂しくないんですか!」

「とんでもない!寂しい時はある!ほら、飯屋についたし早く入ろう!」

 

 話を逸らすように、ゼンヒは飲食店を指差して二人で入っていく。

 

 立場が変わっても、共に楽しめる仲間は貴重なものだ。その出会いも、春の風物詩である。

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