シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-17-3:新入生への組織紹介作り/特別暴力対策課紹介

 ゼンヒは特別暴力対策課事務所へやってきた。

 

「リーダー!」

「ユリ!」

 

 彼女の部屋はプライベートエリア以外出入り自由、仕事部屋の方にはマテバガールもいた。

 

 時刻は16時、夕方に差し掛かってる時間である。

 

「いやあ、リーダー大変ですね。しっかり飯は食べれましたか?」

「あっちの撮影は素早く終わったからな、こっちだって軽く打ち合わせすればすぐに撮影が出来る」

「ほんと?それはすごいな、さすがリーダー組み立てるスピードが速い」

「それくらいしないとお前らに置いていかれるからな。じゃあ、軽い打ち合わせだけするから____そこの!」

「はーい!」

「紅茶一杯よろしく!ストレートティーで!」

「レモンとアールグレイどっちがいいですか!」

「アールグレイ!」

「オッケーです!」

 

 部下に指示を出してから、中央のデスクにある大きめの社長椅子に座るゼンヒ。

 

 座ったままでマテバガールとユリと話し合う。

 

「とりあえずは軽く、5分くらい話をしたらいい感じになるかな」

「何を話すんですか?」

「軽く自己紹介して、組織の概要を話して、実績を話して____あとは質問に答える感じ。一応カンペは使い回しだから、特に考えなくていいかな。ここに関することを言えばいいからね」

「リーダー!紅茶どうぞ!」

「デスクに」

 

 カメラの位置をデスクの裏にしてから、それからそっぽ向く形で座る。

 

「じゃあやろう」

「わかりました!行きますよリーダー!」

「ああ」

 

 ユリは合図する。

 

「さん、に、いち____アクション!」

 

 録画が開始された。

 

 数秒してから、ゼンヒは振り返る。

 

「どうも。公安局直轄特別暴力課責任者の扇皇ゼンヒだ」

 

 少しだけ首を傾げてから、話を続ける。

 

「ん?ああ、わかっているぞ。だってさっきの映像では、私はシャーレ前交番の警部補として紹介されていたからな。だけど事実、そのゼンヒが私だ。異例な話ではあるんだが私は二つの役職を持っている。どっちも重いものだが要になるものだ、頑張ってやっているよ。そうそう、さっき言ってた書類仕事が大変っていうのは、実はこっちの方が多かったりするね。やばい書類がゴロゴロ転がってる」

 

 紅茶を飲もうとするが、ティーバッグが入っていた。それを一度、適当に敷いたハンカチの上に置いて概要を説明。

 

「この特別暴力対策課は紹介こそ必要だと思ってされてはいるんだが、実のところまだ外部の募集が掛けられない状態にある。無論功績が必要なのもあるが、何よりも今居るメンバーは全員SRTの出身でね。彼女達のレベルで今動いてるし、前提がそもそも警察とはちょっと違うから新興部署として紹介してるけど君たちが入るのにはだいぶ後になりそうだ。だから君たちが警察としてのスキルを上げている間に育成訓練などが出来上がるんじゃないかな。気ままに待っててね」

 

 一旦紅茶で口を潤すゼンヒ。

 

「ここでは様々な学園の高官と話をつけて護衛任務をしたり、また治安維持のために部隊を派遣したり、それ以外にも政治的に危険なものの処理や調査に中立的な立場で協力するという本来SRTがするべきだった業務をやっているんだ。笑いあり涙ありの物語がたくさんあったが、まあそれは置いておこう。仕事内容はこの通りだが、最近はもっぱらアリウス過激派との戦いに明け暮れていた。私もそこそこ役に立ったが一番役立ったのは部下とシスターさん達だ。今は一件落着して、最初に言った通り連邦生徒会やその周辺の護衛任務をやっていたりするよ。あ、スパイ活動とかはないからね」

 

 彼女は笑って映画じゃないから!と言う。

 

 さて、そんな彼女は質問コーナーに移った。最初の質問は、立ち上げ時の話についてだ。

 

「この組織がどうして立ち上がったか、ね。簡単に言うなら有望な人材を集めてヴァルキューレが長年出来ていなかったキヴォトスの治安を守るための組織、その中でも強い特殊部隊を作ることで自治体や地域に左右されずに、この都市の市民の安全を確保するために立ち上がったんだ。自治区がある学園が真面目にやってないと言うわけではないが、それでも限度はあるし結果的には領土となってる以上は同じ都市にいるのに福利厚生に差がありすぎるのが問題になってる。警察がそれら全てを解決できないし、それをするのが連邦生徒会の役目だが、治安というインフラ、あるべきものについてはヴァルキューレが担うことになっている。その担う中でも難しい話を請け負うのがこの部署だ」

 

 ゼンヒはまた一杯、紅茶を飲む。

 

「ただヴァルキューレもしばらく混乱に陥っていたから、SRTから入った優秀な人材が宙ぶらりんになっていた。私が入った頃は特に話題にもなっていなかったが、ある時にその過激派と私が戦うことになってね。当然キヴォトスの安全を守る以上は私一人でそれに立ち向かうこともできないし、というので立ち上がったのがこの組織というわけだ。警察もあまり動けない状態だったから、SRTの人たちを入れて今の組織になっているっていう。その結果はニュースで見聞きした通りだ。本音はああいう事件が起こってほしくはないっていうのには違いないんだが、あんな事件が起こっても大丈夫なようにするのが公務員の役目だからね。今も仲良く、そしてしっかりやってるよ」

 

 一つ目の質問はこれで終わった。

 

 二つ目は、この仕事をやってて楽しいと思う瞬間らしい。

 

「この仕事は基本楽しいとは思いづらいかも。警察、それも市民を守るとはちょっと遠いからね。例えばシャーレ前交番の時に言った市民とのコンタクトから反応が伝わるっていうのが全くないんだよな。だけどそうだな、楽しいところがあるとするならばそれこそいろんな学園の人と関われるってことかな。それも上下関係なく、だ。話せる人が誰かは仕事の種類によるが、トリニティやゲヘナ、ミレニアムの人たちと関われるのはとても楽しい。あとは、泊まりの時のホテルとか……まあそれ以上に大変だけどな。私の部下はなんとも思っていないが、私自身は結構ついていくのに苦労している。それでも、もっと根本的に、たくさんの人を救える仕事だからこの部署も大好きだ」

 

 笑顔でやりがいを語った彼女は嘘を言ってない。それも分かっているからか、カメラの後ろのユリも笑ってる。

 

 最後、三つ目は新入生に向けてのメッセージだ。これに関しては交番と変わるところはそんなにないが、それじゃ味気ないだろうと考えたゼンヒは少し考えてから話す。

 

「新入生へのメッセージか。困ったな、この立場から言えることは特に……ないからな。存在しているし今活躍の部署だからっていうので紹介してるが、新入生と関わらないという一点が足を引っ張る」

 

 うーん、と言いながら悩んでいる彼女。ただ、少ししたら思いついたのか、ゆっくりと言葉にした。

 

「もしこの課に何かしらの思い入れや憧れがあるなら、聞いてほしい。特別暴力対策課というのは、確かに他に換えが効かない組織かもしれない。それは、ヴァルキューレが……いや、各学園の自治に介入し、もっと沢山の人を守れるという価値そのものがあまりに特異で、ヒーローらしい事に見えるかもしれないだろう。だけど、それは違う。特別なのは君たちだ」

 

 姿勢を変えて、話し続ける。

 

「あくまで私達はそう言った大仰なこと、言ってしまえば高官という人材のインフラと、政治という枠組み、社会の骨格を維持するための仕事だ。無論それらは軽んじられるものはないが、街というのは人が住んで、安心して楽しく暮らせて初めて価値のあるものだ。それを守るのは君たち警官の……いや、私もシャーレ前の交番勤務の警察だからな。私達の役目だ。しっかりと市民を守ることこと何よりも尊い。だから、そうだな……」

 

 頬をかき、ちょっとだけ恥ずかしそうにしながらゼンヒは言った。

 

「お巡りさんにも余裕が出来て、もっと社会全体に寄与出来るようになったらこの組織への門は開かれる。その時期が来れるように、こっちも頑張る。だから、君たちも一緒に頑張ってほしいな。それだけ社会は良くなるからね。研修して、実際に交番で働いて、一人一人のその行動が社会がよくなる事に繋がるから」

 

 伝えたいことは言い切った。

 

 目線を送ると、最後の挨拶をよろしくとユリがカンペを出す。

 

「という感じかな。うん、言いたいことは基本シャーレ前の交番で言ったし大丈夫だと思う。じゃあ、みんな。もう一度言うけど、学園生活楽しんでくれ!」

 

 そう言って手を振り、終わったと合図を出す。

 

 ユリが録画ボタンを押して、保存し終わったら合図するとゼンヒは手を振るのをやめてそのまま深呼吸した。

 

「よし、これで良いかな」

「凄いですリーダー!やっぱアタシ達のリーダーは一味違う!」

「そこまで褒めることじゃない」

 

 照れながらゼンヒは残りの紅茶を全部飲んで、今後のことを話す。

 

「後はまあこの映像をそのまま投げるかそれなりに編集して相手側の負担を減らすかになるんだが、どうする?」

「それだったら自分がします?」

 

 手を挙げたのはマテバガール。

 

「良いのか?映像の編集とかってかなり大変だって聞くが。それなりに見せれるようにしないといけないんだぞ」

「まあ任せてくださいよ。これでもサボってる時には色々勉強してたんで」

「動画編集も?」

「今は生産者よりもインフルエンサーが表面的には強い時代じゃないですか。流石に公務員なんで内職する訳にはいかなかったけど、自分はそれでも潰しが効くようにちゃんと勉強してるんですよ休みの日とか」

 

 この課が出来るまでは冷遇されてたSRT、マテバガールはその中でも渡りの上手さで何とかしていたがある程度のスキルと実績が出来たら見切りをつけるつもりだった。

 

 ゼンヒのおかげでその心配が無くなったが、やはり何度もやって来たこと、練習して来たことは嘘をつかない。それらが役に立つのなら、と彼女は自分のリーダーに言う。

 

「じゃあ、頼んでも良いか?」

「わかりました。確認はどうします?」

「出来たら一度確認して、終わったら教えてくれ」

「わかりました〜、じゃ」

 

 そう言って彼女は部屋から出た。ユリも『自分も話し合いがあるから』と、挨拶して部屋を出る。

 

 部屋にはゼンヒが一人、ぽつんといた。

 

「……はぁ」

 

 思いつきでやれる事はやった。反応は軽く聞けば良いだけだが、それよりも終わった事に安堵して眠くなっている。

 

「……ねる、か」

 

 そう、つぶやいてゼンヒは目を閉じる。

 

 夕方の日差しが暖かく、窓から降り注ぐそれに彼女は眠気を膨らまされて、そのまま深い眠りに落ちた。

 

 16:50分の、静かなひと時。

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