シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-19-2:矯正局襲撃/脱出

「シャルアー!」

「助けに来た!」

「助けに来たって……!?」

「後で説明する!とにかく脱出しよう!」

「わかんないよ!なんで助けるの!?私は何から狙われてるの!」

「お前の後輩が暴れているから大変なことになってる!どのみちここにいたら殺されるぞ!」

 

 ハクジツがこうする、ということにはまだ若干の疑問があったが自分のピンチの時に助けてくれたのは事実の相手の言うことは信じるゼンヒはそのまま出ようとするが扉には鍵が。

 

「今開ける!」

 

 シャルアーは腰に付けたビーム砲のようなもので鍵穴を壊して開ける。

 

「何それ」

「私の武器は特別製でね。ともかく出るぞ、忘れ物はないかい?」

「ないよ。何も」

「なら行こう」

「____騒ぎを起こしたの、シャルアーじゃないよね?」

「まさか。だが、お前がここにいるのは知っていた」

「王子様みたい」

「ま、私も少女だけどね。行こう!」

「うん」

 

 二人は部屋から出て走り出す。

 

 警告音が鳴り止まないが、少なくともこの階の廊下には誰もいないようだ。

 

「ねえ」

「なんだい?」

「どうして私の明確な場所までわかったの?」

「さあね。でも、なんとなく今行けば会える気がした。そう思っただけだ」

「変なの」

「でも運命はそう簡単に降りてこないからそう言われるんじゃないか?形がないだけで一つの命だ」

「そうだね」

 

 エレベーターは使えないから階段から降りることにする二人。

 

 急いで降ろうとするがやはり人がいる。

 

「少し待とう」

「いや、あの人たちは____」

「いいから」

 

 そのまま、彼女はゼンヒを止めた。

 

 階段から五階へと抜けていった人間たちを見送ってから、急いで扉を閉めつつ階段を下る。

 

 降りたら一階、そのまま階段から出た。

 

 しかし、空いている扉、エントランスの方からは特に人の声がする。部屋には鍵がかかっているが、階段で足踏みしていたら人が来るだろう。近くの空き部屋、会議室に潜り込んでから様子見をすることにした。

 

 そこは偶然、ゼンヒが事務員さんとお茶をしたところだ。

 

「懐かしいな。ここで話したっけ」

「何か?」

「仕事でここに来たんだ、その時に世話になった人と話したんだよ」

「いいじゃないか。無事を祈ろう、その子だってもう逃げ仰せてるさ」

 

 安心させるようなことを言ったシャルアーは、そのまま部屋の中で出るタイミングを待った。

 

 流石にエントランス付近は人が固まっているため、今はまだ出れない。

 

「そういえば人が居るとダメって言ってたのってどう言うこと?」

「さっきも言っただろ、ゼンヒの後輩が暴れてるって。だからなんとか逃がさないといけないからやってきた。けれどもあいつらは基本収容した人間を動かさない方針をとっている。それは安全上の理由があるんだが_____まあ、でもお前だけは別だよゼンヒ」

「ハクジツが暴れてるって本当なの?」

「わざわざ見に行きたくはないが見てしまったものは仕方ない」

 

 また部屋が爆発音と共に揺れる。

 

「この震源地に行きたいか?」

「ううん。でも___やっぱり信じられないかも」

 

 自分が傷ついたのは本当、だけどそんなことを好んでするような人間だとは思っていない。

 

 だから暴れている、それも爆発音が出るほどのものだとは信じられないようだった。事実、その姿を見ていないのも彼女が疑問に思うポイントである。

 

 しかし、自分のことを救ってくれる人間を疑うわけにもいかない。

 

「そりゃ信じられないよな。自分の後輩が急に暴走してみんなを巻き込んで傷つけようとしているなんて。しかし、それでもゼンヒを行かせるわけにはいかない」

 

 シャルアーはゼンヒの肩を掴んで、諭すように説明する。

 

「いいかい、今は逃げることが一番だ。確かに後輩が心配だと思うし、ゼンヒは今も自分が囮になるなら行こうとするかもしれない。だけどハクジツちゃんだっけか、彼女がもし君を殺してしまったらその傷こそ耐えられないものになると思う。それだけはダメだ」

 

 彼女は相手に寄り添った言い方をした。

 

 それは多分、本来のゼンヒも同じような相手がいたら言うであろう言葉だ。テロリストの脅しに屈せずとも、味方を逃して安全確保をするような少女ならそう言う。

 

「そうだね……分かった。局長とかは強いし大丈夫だと思う」

「その意気だ」

 

 爆発音が止まない中で、扉が開く音がする。

 

「シャルアー!」

 

 彼女の名前を叫んでやって来たのは、また見知らぬ少女。ヘルメット団の姿をしているが多分変装だろう。

 

「いつ来たんだ?」

「ついさっきよ。全く連絡を寄越さない急にこんなことするで着いていく身にもなって欲しいわ」

「この人は……?」

「神間ヤツカって言うんだ。まあ、そうだな。私の仲間だよ」

「ヤブ医者を仲間って言って恥ずかしくないの?」

「じゃあ本物の医者になってくれ」

「軽口はそこまで」

 

 取り敢えず、と言ってゼンヒの方を向く。

 

「うーん、身体の方は特に問題無さそうだけど精神が少し幼い?」

「色々あって少しだけ幼児退行してるんだ。精神やられてるだけだ、少ししたら戻る」

「なるほどねえ」

「で何でここに来たんだ」

「どうしたもこうしたも突っ込んでいったバカが捕まったら面倒になるから助けに来たんじゃない。さっき階段の方溶断して裏道まで開けておいたから急いで行くよ」

「よくそんなところまで手を回した。わかった」

 

 三人は移動を開始した。

 

 部屋を出てから階段のほうに行くがやはり誰もいない。爆破は起こってはいるものの、やはり彼女らの近くでは起こっていないようだ。ならばただの通路を見張る理由もない。

 

 廊下を走っては一度階段に戻り、そこから空いてある穴から矯正局を出た。道路の方には誰もいない。

 

「ほら」

「ああ、うん」

 

 ゼンヒは彼女らを疑ってない。

 

 と言うよりも、ずっとぼうっとしているようだ。疲れが増したのだろうか?精神が幼いどころか、そもそも意識があまりはっきりしてないように見える。

 

 そんな彼女も連れて行けば、やってきたのは高めの車。後ろで起こってる爆発に気を取られてたら酷い目を見そうなので、急いで乗って出発。彼女らの跡をついていく奴はいないようだ。

 

 後ろの席に乗っているゼンヒは、もう言葉を発してない。ずうっとぼうっとする。本当に子供みたいだ、それも起きかけ、夜中起きてしまった子のような。

 

「大丈夫か?ゼンヒ」

「うん」

「ならいいんだ。今後のことについては考えなくていい、なんとかする」

「わかった」

 

 ゼンヒは目を瞑った。

 

 この彼女は本当にゼンヒであるかであるか、疑いたくなるような行動であった。かつて、いろいろな場所で戦い、少なくとも社会のあるべき正義を体現した彼女は、もはや自我さえもなくなっている。いや、自我であろうか。自我によって正義が摩耗しているのかもしれない。

 

 車は走っている中で、やはり追ってくる人間はいない。

 

 するとある場所で一度止まった。人があまりいない自然豊かなエリアだ。この場所まで来るとどうやら騒ぎも広がってないようだ。

 

「一度ここで休憩するか」

「そうね。ゼンヒは外に出る?」

「ううん。私はここにいる」

「じゃあ、私もここにいよう。すまないヤツカ、色々買ってきてくれないか?」

「仕方ないわねえ」

 

 仲間に買い出しに行かせてから、一旦シャルアーはゼンヒの隣に座る。

 

 彼女はもはや死に体であった。

 

 目の色は混濁した翡翠と青色の中間のものであり、髪の色も彩度が落ちている。幽霊のことすらも最早見えているのか不明だ。

 

「おーい」

「……」

 

 後部座席に移ってからゆすってみたりはするもののやはり返事がない。

 

「そろそろってところか?しかしまあ、セツカのやつ随分と中で弱っているな。いや、弱っているというか____出れないのか?随分とゼンヒの殻は硬いんだろう。まあ、それでもいいが」

 

 何をするかなんて分かりきったことだ、とシャルアーは呟いてあるものを取り出した。

 

 医療用の針だろうか?それにしては形がバッジらしいが。

 

「まさか血のバッジみたいなのを使うとはな」

 

 針の長さ的には内臓まで届くこともないだろうが、それをゼンヒ胸の辺りに刺しこんだ。

 

「……」

 

 もはや刺さっても声も出さない。悪い熱に浮かされて感覚がおかしくなっているのか。

 

 しかし針が刺さったことによって彼女の目の光がはっきり翡翠色になってきている。

 

「ま、これでしばらく様子を見るしかないか」

 

 後部座席からまた助手席に戻ると同時に、ヤツカなる少女が戻ってきた。

 

「ただいま〜、ってなんか血生臭いわね」

「今ブッ刺した」

「何してんのよ。これ車なのよ?」

「大丈夫だ、軽くタオルとかを巻きつけておいたしそこまで深くは刺してない。出血も少ないはずだ」

「それで蘇るわけ?」

「さあな」

 

 車はまた走り始めた。

 

 二人は自然エリアを走り抜けて、アビドス近郊へと向かう。

 

 カーステレオのラジオを押して、彼女らは事態の状況を知る。

 

『只今の情報によりますと矯正局の襲撃におきましては元アリウス過激派の首謀の種田カザミを中心とした暴徒が暴れております。また、その影響で警部補である扇皇ゼンヒも行方不明になっているとのこと。また、アリウス過激派が持ち出した爆弾は高威力であり______』

「ふぅん、あいつらってやるじゃん?」

「まあ、話をつけにいった首謀者は全員自爆したから問題ないだろう。しかしまあ、ヘイロー破壊爆弾なんて届けるために牢屋に穴開ける羽目になるとは思いもしなかったけどな」

「どうやって開けたの?」

「トロメアで溶断した」

「バカの所業じゃん」

「なーにカメラとかもちゃんと止めているから安心してくれ」

 

 二人は、そんな内容の会話を軽々しく話しながら街を駆け抜けた。

 

 しばらく走っているからかもうここには喧騒がない。騒がしいのはカーラジオただ一つ。

 

「そろそろアビドス近郊か」

「ええ」

 

 砂嵐こそ見えてこないが、あまり人がいない都市ビルの近く。

 

 通る車もないところからさらに入り組んだ場所に行こうとしたその時だ。

 

「ん?」

「どうやら先回りされてたらしいな」

「それも_____」

 

 目の前にはオフロードカーと、一人の少女がいる。

 

 水色の髪を揺らす少女。

 

 梔子 ユメが。

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