シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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CaseB-19-3:矯正局襲撃/激闘

「やっぱりここを通ると思ったよ」

「随分とごついタクシーに乗り換えたね、ユメさん」

「そりゃどうも。これはキヴォトスの外、アメリカの車らしいよ?」

 

 シャルアーは車から降りて、ユメと対峙する。

 

「で、人の帰り道塞ぐには何か魂胆があると見たが一体何を?」

「端的に言えば扇皇ゼンヒ____いや、"天衣セツカ"を取り戻しに来た」

「……ほう」

 

 互いに表情を変えないまま、距離を取って相手を見る。

 

「随分と愛されてるようだが、扇皇ゼンヒは扇皇ゼンヒだ。天衣セツカという少女じゃない」

「ならゼンヒをわざわざ攫った理由は?」

「後輩ハクジツの暴走から逃すためだ」

「嘘だね」

 

 ユメは一歩も引かない。

 

「あの事件はアリウスの過激派によって引き起こされたものでしょ?それに、君が潜入してるところも見ていた」

「ほう?」

「甘凪ショウコという少女がね」

 

 マテバガールが糸を引いていたようだ。しかし、ユメと繋がっているとは手際がいいと言う他がない。

 

「君たちが狙う理由までは不明だけど、まず彼女が君が壁に穴を開けて何かを運び入れたのを見たと。それが爆発物であるのは状況証拠で判明しているとも言ってたね。そして、私と彼女はそれぞれゼンヒを追う理由がある」

「なんだい?」

「彼女はまず上から知らされていたことが一つ。殺人鬼の天衣セツカは人を殺すことで知った一つの事実から、一つの事業を動かしていたこと。その資料は薬物を売る売人一派が持っていたこと_____字が掠れてすぐには読めなかったけど売人の家宅捜査で判明した研究結果や論文、それを書いた張本人を手元に置いておくために今のゼンヒを矯正局に縛り付けておきたい、だから協力を要請してきた」

「そして、ユメさんが追ってくる理由は?」

「私が生き返った理由を明かすため」

 

 盾は展開せずともリボルバーを構えてそれをシャルアーに向ける。

 

「資料のほとんどはかなり欠落していたけど、その中には神秘を利用した再生医療の実験を謳った内容があった。無論それだけでは私と関わりがあるなんて言えないけど、それでも疑う理由は十分にあった」

「そのようなことを思いつくのはゲマトリアであり、そういった手段をしてくるであろう奴らが一切手を出さなかったから彼女が関わってくるだろうと考えたのか?」

「正解。私は一度脱水症状が祟って、一度アビドスの砂漠で朽ち果てた。有り体に言えば"一度死んでいる"んだよ。それがなぜ、時間が経って生き返っているのか?それが疑問だった。目が覚めたのは二年後、それも自宅でずっと寝っぱなしだった。アビドスの砂漠の中で倒れたのに、ね。おかしいと思わない?」

「それはおかしいな」

「そして考えた結果、その資料が書かれた時期や実験があったであろうタイミングと私が目覚めたタイミングがほぼほぼ合致している。結果が出るとしたら想定内のタイミングであるとも言えた。だから、天衣セツカという少女に問わないといけない。私に何をしたのか、何もしてないなら、それはそれで私を生き返らせたのは誰なのか。はっきりさせないといけないんだよ」

 

 ユメはもう戦う気満々だ。

 

 そもそも矯正局から人を連れ出している時点で怪しいのだから、この時点では連れ出したシャルアーも無事では済まないと思っていた。だからか、武器を手に取っている。

 

「まあ、なんというか_____流石は暁のホルスの相棒だ。尊敬するよ、ユメさん」

「君たちが今ここで引き渡せば、不問にはならないにしろ酷い扱いはされないと思う。先生だって、このような事態を望んでいるわけじゃない。だから、渡して?」

「残念だが渡せないな。私は彼女の友達だから」

「それはどっちの?」

「どっちともだよ。天衣セツカの友達が、扇皇ゼンヒの友人になってはいけないという縛りもない。まあ、その友人関係もそれぞれの利害関係の一致から始まっているけどね」

 

 二人は銃口を向け合う。

 

「私は彼女の研究結果を必要としている。まあ、何がとは言えないが_____だが必要なのは事実だ。だから協力する。一番彼女を欲しているのは、今運転手にいるヤツカだけどな。しかし舐められたものだよ」

「何が?」

「私は運転手がいて、そいつも戦えるから二人いる。だがそっちは一人しかいない。それで足止めができるかい?あの車は一応パンク防止機能を使っているが」

「なるほどそう来たか。でも、私だって一人で止める気はさらさらないよ。だって、それで止められたら苦労しないし、こんなことを企む子が一人で止まるわけないから」

 

 そろそろ言葉に用事はない。銃声によって、宣誓しよう。そう決めた時だ。

 

 シャルアーに向かって小銃の射撃が飛ぶ。彼女は腰につけた状態のアームキャノンを使って地面を破壊しつつ煙を出して車の方に下がった。

 

「……外した」

「いいや大丈夫だよシロコちゃん」

「なっ!?」

 

 車もバックするが、何より驚くのはその光景。

 

 煙が晴れて、目に見えたのは黒いドレスを着た少女。手にはアサルトライフルを持っているが、何よりその大人らしい姿はユメと一緒で育っただけの年月がある威圧感があった。

 

「随分と少女相手に酷いのを用意してくれるじゃないか」

「貴女達はここで止める」

「そう言うこと!これだけ強いパートナーがいれば、余裕だもんね!

 さ、返してもらうよ!」

 

 流石に劣勢にも程がある。数で同等なら質がものをいうが、その質は田舎娘と猛者二人では話にならないほどの差があった。

 

 しかし策がないわけじゃない。

 

「ヤツカ!」

「何!?」

「私が二人の足を止める!お前はそのまま逃げろ!」

「はぁ!?見殺しにしろって!?」

「死なないさ」

 

 流石に二人相手は厳しいが、やりたいことのためには仕方ない。

 

 車は走り出し、それを追いかけようとした二人を止めるように銃撃。

 

「やれるだけのことはやるさ……!」

 

 自分の実力を信じ、シャルアーは二人の相手を始めた。

 

 真っ当な武器は今のところ55口径拳銃と腰につけるモードのアームキャノン。

 

 シロコの攻撃を避けつつ、ユメの攻撃も軽くいなそうとするシャルアー。前者の射撃をうまいことステップして避けてから、ユメの精密射撃を避ける。狙いは腰のアームキャノンなのは分かったが、一人で切り抜けるにはあまりにも技量の差がある。

 

 盾の打突を避け、射撃も横に飛んで回避、リボルバーの跳弾も避けるがその後に来るシロコの飛び蹴りは流石に避けれず腕をクロスしてガード。

 

「ぐっ!」

 

 しかし追い討ちしようとしたユメの方には腰のアームキャノンを撃つことでそのまま後ろに下がらせることに成功する。アームキャノンが腰に付けれて撃てるのは字面としてはおかしいが中々高機能で、高火力をハンズフリーで撃てるのは二人を相手取るには便利なものだ。

 

 ただそれでも不利なものは不利で、プレナパテスの生徒唯一の生き残りと暁のホルスの相棒を相手取るのは流石に一人では厳しい。それも武器の機能が本体の人間では尚更。

 

 しばらくはユメとシロコ*テラーの波状攻撃で彼女の体力を削ろうとするが、流石にそれは対応。蹴る殴るが当たり前なため、真っ当に手に持った2丁拳銃は撃てていないことを除けば彼女はやれている。

 

「くそっ手強い!」

「降参しないならこれを続ける」

「手加減してくれよ……!」

「出来ないね!」

 

 射撃と格闘のタイミングが混ざっており、彼女十八番の跳弾が使えない。

 

 流石に二人の攻撃は体力を持っていかれる。銃弾に当たればそれだけ衝撃で力が持っていかれるし、殴る蹴るなどの行為も防ぐだけで相当に消耗する。

 

 流石に拉致が開かないと思ったシャルアーは一度大きく下がってから、銃弾を数発撃つ。

 

(当たってくれよ……!)

 

 なんて願いながら、下がって出来た距離を保とうとした。

 

 当然相手二人がそれを許すわけはない。おおきく振りかぶってユメは盾で殴りつけようとするが_____

 

 シャルアーの跳弾五発がその盾の裏にガン!と言う音と共に当たる。

 

「きゃっ!?」

 

 55口径の跳弾、そのストッピングパワーは異常。ユメの攻撃は弾かれたが_____

 

 その裏から急速に迫ってくるシロコには対応できない。銃弾を撃って構えようとするタイミングには既にシャルアーの顔面に跳び回し蹴りが入っていた。

 

「べっ!?」

 

 しかもあまりに強い一撃だ。

 

 顔に蹴りを入れられた、どころかそのまま吹っ飛んでは近くの電柱に激突する。

 

「かはっ」

 

 流石に痛みに声を上げることもできず、挙句頭からぶつかって血を流す。それだけの相手だ。

 

「ぐ、か……こりゃ……やってくれたな……!」

「さあ、分かってくれたならそのまま大人しく武装解除して投降してね」

「くっ」

 

 舌打ちもしながら、ゆっくり立つシャルアー。今の一撃を与えるまでの時間を考えるなら車であれば相当遠くに逃げていることだろう。

 

 そう思った彼女は、さっさと逃げることにした。幸いここはまだ街だ。使えるものはたくさんある。電柱が剥き出しなくらいには。

 

「くっそ、もう絶対お前らとは戦わないからな……!」

「と言うことは……降参?」

「ん。多分逃げる気」

「させない!」

 

 意識が戻って来たシャルアーは上へ銃弾を放つ。すると電柱の近くなのが幸いして、電線に当たる。急いで彼女は転がって下がると、互いの間には暴れる電線と、その電圧や熱によって引火して爆発したりする車が。

 

 これを機に急いで逃げることにしたシャルアーは、激しい頭痛と傷に悩まされながらも走り続けることに。

 

「逃がさない!」

「ん、やめといた方がいい。万が一あれに当たったら」

「じゃあどうする!?」

「追いかける」

 

 まだ彼女らが乗っていた車は無事である。急いで乗ると急発進して、地図を頼りに相手の行く先に回り込むことにした。

 

 一方シャルアーはこの近辺が基地の一つである。頭の痛みに耐えながら、一つの店へと足を運んだ。

 

「いったい……くっそ。やりやがったな」

「大丈夫かよ!?」

 

 不良の仲間に助けられて、彼女はベッドに転がる。

 

「作戦は上手くいきそうだ。はあ、処置もしてたからもうそろそろで目覚めるはずだ」

「目覚めるって……あいつが?」

「ああ」

 

 得意げなことを言うシャルアーだが、怪我には勝てない。

 

「だから後はうまくいくことを願って……私の治療をしてくれ」

「しょうがねえな」

 

 彼女はここでリタイア。

 

 さあ、ゼンヒを連れた方はどうなるか。

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