シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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ゼンヒ捜索チーム結成/ユリサイドその2

 矯正局へやって来たユリとショウコ。

 

「あ、二人とも〜、久しぶり」

「事務員さん!」

「お久しぶりです」

 

 やって来たのはいつか、ゼンヒが書類を持って行った時に対応してくれた事務員さんだ。

 

「ゼンヒちゃんの件で局長から連絡があったんだ〜、二人を待ってたんだよ」

「そうでしたか。えっと、早速案内してもらっても?」

「任せてよ〜」

 

 そう言って、事務員は案内を始める。

 

 爆破事故が起こったと言う割には、案外道は整っているためやはり政府の主要建物は一般市民よりかは大事にされるものである。

 

「案外治るの早いですね」

「まあコンクリートとかの修復は結構早めに出来るからねえ〜今の時代」

「しかしまあ、私達に協力する人間が矯正局に居るとはまあ驚き。一体誰なんです?」

「そりゃこんな所にいるから危ない人間ではあるよ」

 

 事務員さんはそんな奴を案内するのにも関わらず笑顔を崩さないので本当に怖い。

 

「まあ、でも使えるかどうかで言えば使える人間ではあるかな。もしかしたら、ゼンヒちゃんにとっては一番聞きたくない言葉を言える人間であるかもしれないし」

「揺さぶりよりもまず確保でしょう?」

「その点でも多分、頼りになるんじゃないかな。あ、そろそろだよ」

 

 通路を抜けてやって来たのは、囚人たちが生活する部屋。

 

 ここの食堂や図書館などは、囚人たちの中でも模範囚ないし比較的軽い罪で投獄された人間が使うことを許されているスペースだ。ゼンヒもここは利用していた。

 

 そこに、見覚えのある人間がいる。

 

「お前は!」

「やあ、また会ったね」

 

 灰色の髪をした、色白の少女がいた。

 

「自分のことを覚えているかな」

「シン!」

「それは偽名。ニュース見てない?種田カザミ、そう、アリウス過激派の首魁だよ」

 

 ふふ、と言いながら手招きしている。

 

「はぁ〜、やっぱりか。こうなると思ってた」

「どういうこと?」

「そりゃ対抗できる手段持ってそうなやつと言ったら、アリウスの連中しか居ないなって。ユリもそう思わなかったか?」

「だって犯罪者を起用するなんてそんな滅茶苦茶なこと」

「私はやると思ってたよ」

「うーんいいね、君たち。とりあえず話をしようじゃないか。大丈夫、今は他の人たちは食堂には来ないようにってやってるから話そう」

 

 カザミの提案を受けて、二人は対面に座る。

 

「にしてもカザミ、でいいの?アタシたちの手伝いをしてくれるって?」

「まあねぇ。ヴァルキューレの関連施設で過激派を中心に更生手段を作ってやるから協力しろってさ」

「それで協力するのか……随分と安請け合いじゃないか?」

「君たちが協力を仰ぐかどうかは別って言ってからまだ協力すると決まったわけじゃないよ。君たちが決めるんだ」

「はあ、まずは話を聞こう」

 

 ショウコは面接することにした。

 

「お前の名前と所業については知っている、何せ戦ったから。なんでこちらに協力しようと思った?」

「さっきも言った通り自分たちはアリウスの社会的な待遇改善のために活動している。その結果が目上のたんこぶであったトリニティの爆破解体な訳なんだが」

「先に自分たちを爆破解体してしまったと」

「扱い慣れてるじゃないか、凶悪犯を仲間にするのはこれで二人目だからかな?」

 

 お互いの空気が悪化するのを、ユリは止めた。

 

「ちょっと二人とも!喧嘩してる場合じゃないでしょ!」

「喧嘩なんてそんな。トリニティ式挨拶を覚えてる彼女に自分は敬意を示しただけだよ?」

「アリウスなんて辺境の人間がそれを知ってると分校と言われるだけはある」

「ばか!」

 

 二人にビンタが飛んだ。

 

「いった!?」

「痛い!」

「ばか!ちゃんと話す!」

 

 流石に喧嘩ばかりでは話が進まない。

 

 カザミはやれやれ、と言いながら首を振る。

 

「で、当然私たちと協力するにはそれなりに手助けになる要素があるんだよな?」

「まあね。一つは神秘に関すること、アリウスはベアトリーチェの私兵だった時代の資料がある。大部分はゲマトリアに持って行かれてしまっているけど一部は残ってる。それに加えて当然自分たちが活動していた分の記録はきっちりある。だから、それを取ってきてある程度の対策を取るのも可能だ。扇皇ゼンヒを元に戻す、までに至るかは不明だけどね。どのみち役に立つはずだ。過激派の中でも急進派は全滅してるから、資料は手付かずだと思う」

「そうか……じゃあアンタはそれで役に立つってわけね?」

「死んだ奴の名前を盾にして活路を作ってくれたといっておけば感動するよ。数日なら潜んでたって言い訳もできるから」

「自分は組織に対する信仰ではなく、自分達が快適に暮らせる社会のために頑張っているんだ。だから、アリウスの誇りとかほざくやつはあまり信用していない」

 

 カザミにとっては、自分達がある程度暮らせるようになるのが大事らしい。それは、貧しい者が普通は持っているものに対する反骨精神として掲げられる"精神論"、我々には誇りと意地がある、という馬鹿げた思想で是が非でも他者を見下すための口実が欲しい奴らとは違い、今を生きるための糧を得たいという彼女なりの願いだった。

 

 その糧を得るために、今あるものを破壊して自分達が生きていくためのものを生み育てる土壌を作ろうとトリニティの破壊を目論んだのだ。

 

 そう考えればテロリストなぞに身をやつすような人間ではないはずだが、彼女はその過ちを犯した。それは彼女が困っていたからである。今なんとかしないとどうしようもない、と言う不安に駆られて、彼女は社会から否定されて然るべき行動を取ってしまった。

 

「理念は間違っていないにしろ行動が間違っていたのは事実だった。そうするしかなかったとその時は思っていたし、それを否定したことはない。当然それにより発生した罪状も否定しない。社会にはすでに生きている人間がいた、だがそれを肯定して自分たちの明日は拓けるものではなかった」

「その明日のために私たちに協力する、か」

「さっきも言った通り、本当に協力するかどうかは君たち次第だ。自分にはそこら辺決める権利はないからね。だが、協力関係になると言うなら少なくとも資料関係は集まると思うし、なんだったら捨て駒として扱ってもいい。私が居ようが居なかろうが、自分の仲間が少しでも真っ当な社会に放り込まれると言うなら自分は文句は言わないよ」

「じゃあアタシたちの駒になってくれる?」

 

 ユリは相手に言う。

 

「アタシ達は今結構な危機に直面しているの。ヴァルキューレや世論は今でこそ安定しているけど、それがいつまで続くか分からない。この問題が長引き過ぎたらこの組織そのものが危険分子か不良債権になるかで結局崩壊する、それは私達は望んでない。先生の力を解決まで借り続ける訳にも行かないけど、相手が何か大きな事をしでかす前に捕まえないと。そうでしょ?ショウコ」

「そうだ。どの道危険人物は放っておけないから、仮にリーダーが戻らなくても見つけ出して捕まえる必要がある。その観点でも相手に喰いつけるような知識があれば、脅して焦らせることも可能。そこからミスを誘発させて、足跡を残させれば追跡は可能だけど、その1回目はそっちの力が必要だ。だから、私達は協力を要請したい」

 

 二人は素直に協力を頼んだ。

 

 確かに相手は危険人物であるのだが、もしかしたら自分達が挑もうとしている少女はそれを超えるかもしれない。そう思うと少しでも対抗策を集めたい。

 

 その意味でもカザミの存在は大きい。

 

 だが、言われたカザミも相手の重要度は理解していた。

 

 彼女にとっては二度も対峙した過激派の相手が自分さえも使おうとする余裕の無さは、自分らが仮に自由であったとしても何かしらのやばい状態に追い込まれるだろうと言う不安を煽った。そう思うとこの提案は成功すれば自分達の地位が安定すると言う報酬だけでもやりがいはある。その上で仲間に真っ当な教育環境でしっかりと出来上がった兵士が入ると思うと、相手が未知数なのを除けば良い条件なのには違いない。

 

「分かった。じゃあ、自分は今から君達の協力者だ。これからは気軽にカザミって呼んで」

「ありがとう。アタシはユリ、こっちは」

「甘凪ショウコ、よろしく」

「うん」

 

 三人は握手した。挨拶くらいはちゃんとしたほうが、世の中はうまく行くことぐらいは知っている。

 

 さて、協力関係が成立したところで次は動きを決めないといけない。タイムリミットさえ分からないなら、準備くらいは早急にしなければ。

 

「で、これからどうする?アタシ達は結局アンタを待ってないといけないの?」

「当然自分はあっちへ行くが、そのうちにやっておいて貰いたい事がある」

「なに?」

「自分達のことを載せているリストはある?」

 

 それはいつかゼンヒが、羽沼マコトから貰ったアリウス過激派のリスト。

 

「自分の名前を使って良いから、それで上手いこと神秘の研究に関するデータがあれば貰ってきてね。あ、貰えなくても話しかけるくらいはよろしく」

「何するの?」

「そこらへんのデータがあればもしかしたら神秘と肉体、もしくは人格に対するデータが残っているかも。それらがあれば少なくとも比較して、奴らの動きを鈍らせるくらいの脅しネタが出来る。武器まで作れるかは別にしてね……ともかく情報収集は大事。これくらいなら今からでも出来るから」

「なるほどね。分かった、すぐに取り掛かろう。連絡とかはこっちでやっておくから、急いで戻れる?」

「勿論。収監されてからずっとこの服だし、適当に軽い物羽織って出掛けることにする」

「戻ってくるのはいつぐらいになりそうなの?」

「めちゃくちゃ早くてそこ3日。情報の精査をするなら一週間、そして自分が帰ってくるのに不信感を抱かれ殺されたら帰ってこない。オーケー?」

「わかった」

 

 互いにやるべきことは決めた。

 

 一人で行ったほうがいいと判断したカザミは二人に手を振ってからアリウスに向けて出発するため食堂から出ようとした。

 

「待って!」

「何?」

 

 ショウコは彼女を止めて、食堂のロボットに金を払って鯖のおにぎりを二個作ってもらう。

 

 それをラップで包んでもらったら、そのままカザミに投げ渡した。

 

「道中は腹減るからそれでも食っていって。端金は事務員さんからせびってくれ、あとで私が彼女に補填しておくから。あと適当な服装も貰って行って」

「ありがとう、補填よろしく!」

「うん」

 

 彼女の支援に感謝しながら、彼女は外に出ていった。

 

 さて、残ったユリとショウコ。

 

「アタシは責任者としてちょっと色々用意してからマコトさんに話をしにいくよ。ショウコはどうするかの予定を局長に入れておいて」

「分かった。じゃあ、そう言うことで。気をつけて」

「もちろん!行ってくる!」

 

 二人も別れた。

 

 ゼンヒを取り返すための戦いは、まず準備をして未知の扱いを知るところから。

 

 最初にやるべきことがはっきりすれば、自ずと道は見えてくる。

 

 それは、誰もがそうだ。

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