戦闘開始。
撃ち合いから始まるものの、威力としては圧倒的にこちらが優位。何しろ使ってる銃弾の威力は大きく、また装填数も優れているのが多いからだ。狭い場所ならば比較的個人の力が注目される環境だからか、好き勝手に生きてきただけの人間よりかは二人の方が戦術上有利である。
「この!この!」
「こいつらの仇だ!」
サブマシンガンでの制圧射撃でレストランのあちこちが傷つき破壊されていくが、幸いにも仕切りが厚いレストランであり、おまけに硬い材質で出来ているためか銃弾が一切当たることはなく二人は射撃が出来る。
「リボルバー以外に持っていませんの?」
「セラフィム弾を使っていいなら使うけど」
「ああもう実質私だけではありませんか!」
隣がろくに役立たない人間であることには違いない、と思った彼女は50BMGを相手に浴びせ続ける。
何しろどでかい弾は、相手の銃器など赤子同然の威力を誇る。相手側は早々に壁を無くし、その威力を体で味わうのだが、それがキヴォトスの人間でもえずくほどの威力である。これで安定射撃が出来るのはもはやバンリがやばいと言わざるを得ない。
ただ、そうすると相手も当然戦法を変えることになる。壁が破壊されるのならば、相手の後ろ側に回り込んで自由をなくすしか方法はないだろう。彼女らは左右に分かれて、バンリではなくカザミの方を重点的に襲うように仕掛けた。
「カザミ!」
「へっ、この程度が何だってんだ!」
一見するとやばいのはバンリであることには違いない。
だが、戦闘ができるという点では、実は仕込まれて基礎がしっかりとしているカザミの方が盤石なのだ。それもゲマトリア仕様の、人を殺せる術仕込み。
「うおりゃあ!」
なんて可愛い声を出しながらも、やっていることはインファイト。
まずは先頭の人間に滑り込むように接近し、そのまま顔を肘打ちしてから気絶させると襟を持って片手で投げ飛ばす。この一連の動作が一瞬で行われるため、相手は銃を構えて撃つ前に数人、投げられたやつに巻き込まれてダウンしてしまうのだ。
しかもそれだけでは飽き足らずに、今度は左右に分かれた方の左側の不良に接近し、顎に44口径を撃ち込む。すると頭へのとんでもない負荷に加えて、神経への負担が加わりこれもまたグロッキー状態。撃たれるのを盾にしながらリロードして、そのままもう一度近くの集団に投げ飛ばすことで時間を稼ぐことにした。
この際、バンリに人を割かなかったことがこの時いた不良のやらかしである。何せ怪物みたいな銃器しか持ってない相手に少人数で挑めば蹂躙されるのは必須であり、おまけに万里は元ティーパーティーの秘書官。そして今はフリーでカフェの経営をしているとんでもない生徒だ、自衛力という点では特殊な出立かつかなり高度な教育を受けてきたメンバーの中でも引けを取らないという才能の塊なのだ。この才能は自由を手に入れたからこそ開花したもの、才能探しという夢のあることさえ怠った不良と圧倒的な差があった。
結果としてカザミとバンリの間にいたメンバー以外は全員ダウンすることに。
「くそ、どうなってるんだ!この二人はそこまで強いわけじゃないはずだ!」
「あら〜わかりませんの?私はトリニティの元高官、そして今は自由のために生きてる乙女です。それが真面目と自由の両方の味すら知らない下衆に負けてると思っているんですの?」
「むかつくー!あいつからだ!」
しかし、この不良達が活躍することはない。
不良を倒しすぎたカザミはすでにその手の中に奪ったサブマシンガンがある。それをリロードすらせずに撃ち切っては相手に投げる蛮族スタイルで攻撃を加えると、その攻撃で足止めが出来てしまうのだ。
「うぐっ!」
「な、何だこいつら!」
そしてカザミに意識が向いてしまうと_____
今度はバンリのAKによって耐え難い衝撃に体を揺さぶられて、挙句その痛みに悲鳴を上げながら倒れてしまう。
爆発物を使った奇襲に失敗した上、こんな醜態を晒すとは仕方のない奴らである。
だが、これだけで終わりはしない。
「入口の方からも来る!」
「はぁ!?」
そう、第二波が付き物だ。まさしくやっていることはギャングであるが、それでも生き残るためには仕方ない。幸いにも弾薬はたんまり残っている、切れても倒した奴らから回収した武器を使えば問題はないだろう。
「仕方ないですわね____ほら」
「ああ、何だこれ」
「私が先ほどまで使っていた銃です。貸しますから、それで対処してください」
「マジか。自分がこれ扱えると思ってる?」
「アリウスでは機関銃の扱いを習いませんでしたか?」
「これのどこが機関じゅ」
銃弾が沢山飛んで来てしまい、急いで身を隠す二人。
バンリはスマホを持って、すでに電話を開始した。
「応援呼びますからよろしくお願いします」
「くっそ〜その役自分にやらせてよ」
「テロリストが言うよりかは信頼されると思いませんか?」
「……仕方ない」
相手の言うことの方が正しいからか、言われた方は苛立ってはいるものの攻撃を開始した。
「あわわ何だこれ!?」
とんでもない反動を連射するこのAKは、あまりにカザミの手に合わない代物だった。そもそもそんなモデルがないものを動画見て作り上げた以上反動がどうとか適切な扱い方がみたいなのはバンリしか知らない。それを不慣れな奴が任されているので、あまりに当たらない。
だが使ってる弾薬がとんでもないものは確か。建物を破壊するには十分なため、不規則にガラスや壁にあたっては破壊され、それが傾れるように相手に襲う。
その轟音のせいで相手が何を言ってようが聞こえない、攻撃をされてもまともに見えないしそもそもこっちに来る前に瓦礫の山で防がれている。
まだ助けて欲しいとユリに言い続けるバンリの横で、悪態をつくカザミ。
「くそっ、この____かった何これ!?アホほど硬いんだけどこのマガジン!外れない!」
するとマガジンリリースボタンを無言で殴りつけて外す持ち主。その荒っぽさに驚いているが、彼女はマガジンを入れ替える。
しかし今度はボルトハンドルがまともに引けない!
「ああもうなんだよこれ!?ふざけてる!」
「お黙りなさい」
持ち主が今度は片手で引いて戻して使えるようになった。一体この女は何者なんだろうか。と言っても、経歴がはっきりしている一般人だが。
ようやく撃てるようになった状態でカザミはまた射撃を開始。モタモタしている間に瓦礫の山は銃弾によって大幅に削られているが、結果射線が綺麗に描かれるようになって彼女の銃弾の通りが良くなった。
そのまま射撃再開すると、流石に訓練された人間は二回目である程度掴んだのだろうその感覚で相手を撃つ。
相手はモロにくらってダウンしたり吹き飛んだり、様々な反応を見せた。
「よし、これなら!」
「よくやりました、交代です」
「ようやくか」
電話をし終わったバンリに返して、もう一度サブマシンガンを持った。
しかし、相手もやられっぱなしじゃないらしい。
「ん?」
「んげっ、何だあいつ!」
そう、不良だってチームを組める程度まで成長していれば兵器の一つや二つを持っているに決まってる。
「ロケットランチャー!」
「本当ですか!?」
相手は叫ぶ。
「うちらを馬鹿にしたツケを払ってもらう!」
流石にロケランの弾をどうにかできるわけはない、挙げ句の果てには後ろで支える奴がいるため50BMGのストッピングパワーもあまり役に立たないかもしれないと判断したカザミはバッグの中を漁る。
「何をするつもりですか!?」
「つべこべ言わずに撃って!」
指示を出した人間は急いでスイングアウトして空にしたリボルバーの中に銃弾を一つ入れる。
相手は少しふらついているのと、瓦礫の山で照準を合わせるのに時間が掛かっているようだ。バンリも直接攻撃を当てるのを諦めて周りの破壊をすることで出来る限りの邪魔をする。自分の攻撃が通るまでの時間稼ぎができればいいとの判断だ。
銃弾が入ったことを確認して、カザミは立ち上がった。
「くたばれぇぇぇーっ!」
しかし、相手よりも先に引き金を引いたのがカザミだ。
彼女の撃った弾丸は、瓦礫の中を通り抜けてそのまま相手へと飛んでいく。
この銃弾は、カザミ製の"セラフィム弾"______
ロケットランチャーを持っていた不良の喉に刺さって、それがホローポイントの特性で広がっていく。血飛沫が近くにいた全員に刺さり、挙句後ろにいたうちの二人が飛んできた破片が顔などに刺さって悲鳴をあげる。
「ぎいいいいあああ」
「あがっ」
それもまた連鎖して血を流す。
「ひ、ひいっ」
「きゃあああああーっ!」
相手は大パニックになった挙句、殺された人間を置いて逃げ出した。後ろの二人は死んでないと言うのにも関わらず逃走する。
醜い、という一言に尽きるが、彼女らはそれで相手を退散させたのである。奥から何かやってきた場合、奥の手がないためどうしようもないが。
「はぁ」
机の上でぐちゃぐちゃになったカルボナーラは、机の端から垂れている。それを舌で絡め取って食べようとするカザミ。
「いけません」
「あだっ!?」
バンリのゲンコツが彼女を襲う。
「いった!?何するの!これ自分のカルボナーラ!」
「汚れたものを食べてはいけません。体を壊したいのですか?」
「だけどもったいないよ!美味しいのに!」
「あなたにとってはそうでしょうが、それを優先することによって不利益を被ることを学びなさい。水だって湧いて出たものは煮沸してから使うでしょう?」
「むぅ」
そんなやりとりをしている中で、足音が響く。
「そうだね、君。その姉さんの言うことは聞きたまえ」
「あぁ!?」
カザミはリボルバーの弾を込めて声がした方向に向けた。
「怖いな」
黒煙が晴れ、まだ無事なライトがその場を照らす。
黒いスーツに白いネクタイ、そしてメガネをかけ____薄紅色の長髪をしている。
色白で高身長、まさしくマフィアのような風貌の女がいる。
「……なん、ですって」
「どうなってんの____」
二人が驚くのも無理はなかった。それは、彼女たちが見覚えがある姿だったから。
いや、見覚えあるのはその顔か。
扇皇 ゼンヒという女に似た少女が、そこにいた。