シャーレ前交番勤務のヴァルキューレ警官   作:らんかん

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決戦前夜/ユリサイドその2

 彼女達は事務所のデスクに戻ってきた。

 

 ハクジツもあまり元気そうではないものの、どのみちやらなければいけないこと、やらないと先に進まないことのために話し合いに参加する。

 

「みんな集まった?」

 

 そういうユメは集まったことを確認してから、話を始めた。

 

 大きなデスクに広がった地図には、一つの赤いマークがある。集まったメンバーは、全員その場所に目をやった。

 

「んじゃ始めるね。私達も色々なところに行ってたんだけど、戻ってくる前にセツカ達と会ったよ」

「本当ですか?」

「ん、普通に出会った。あれこれ聞き出したけど、ユメ先輩の個人的な話だったから_____ただ、調べてる時に彼女達が居座るであろう場所が判明した」

 

 それが、マップに記された赤い場所だという。

 

「ここが?」

「うん。ここには色々な建材が覆い被さっていたんだけど、その奥には何かしらの装置みたいなのがあったんだ」

「装置?」

「門みたいなのが」

 

 写真を一枚、ユメは胸ポケットから取り出した。

 

 それはシャルアーが通ってきた門と一緒のものだ、それを知っているのはリンネとセツカと先生と黒服ぐらいだが。

 

「あたりにまだ残っていた書類とかを確認した限りだと、どうやらこれは外の世界と繋がるためのものらしいんだ」

「外の世界と。と言うことは」

「おそらくシャルアーが使うためのものか」

 

 シャルアー・ドーンが外から来て、帰るためにセツカ達のところへ身を寄せている。それにはリンネの仕業なのもあって危険なところから少し遠ざかると言う目的もあったものの、結局帰るための行動をしている以上この門のことを使いたいと思うのは彼女しかいないだろうと彼女は考えていた。

 

「だから多分、もうすぐここら辺一帯を少しいじって拠点にするんじゃないかなって考えているんだ」

「リンネ達の可能性はないのか?」

「うーんどうなんだろ」

 

 仮説を立てた方は、ずっと一緒に行動している後輩の方に目を向ける。

 

「ん。多分、ないと思う」

「どうして?」

「あの場所に行った時に、少し残っていた書類を持ってきた」

 

 今度はバッグを持っていたクロコから、一つのフォルダが取り出される。

 

 それはリンネ達がシャルアーをこの世界に連れてきた後でつけていた記録。彼女が不満そうにしていながらも、帰る前にあれこれ調査に付き合っていたことが窺えるもの。

 

「この書類____そうか、最初はリンネのところにいたんだったっけ」

「ただ、これらを全く回収していない、回収するそぶりも見せないとなると、あの門のような装置そのものに執着はしていない。おそらくはセツカと私達を戦わせるために、あえて放置している可能性もある」

「アタシ達とセツカが衝突して、疲弊したところで襲ってくる可能性があると」

「そうなる可能性がある」

 

 説明していたクロコは頷いた。

 

「だから、リンネという少女が気づく前にことを片付ける必要があるのか」

「そうなるね」

 

 一応の確認のため、リンネの別荘から持ってきたセツカの居場所に関する資料、地図をショウコは出した。それを踏まえて考えてみても彼女達が普段の根城にしているであろう場所と、門のある位置。そして、矯正局の襲撃で追撃していった場所をマークしても、現実的に行き来ができそうな距離にその門があった。滅多に人が行かないエリアなので、資料がなければ彼女達が見る可能性はなかった場所になる。

 

「ユメさん達が確認した場所とも考えてみても、あんまり違和感はないかな。うん、じゃあここを襲撃したいかも」

「襲撃?」

「襲撃というか占拠かな。重要な拠点であることには変わりないし、何よりいつ来るかもわからないから、合わなければ占拠、会ったら捕獲作戦を展開する形にアタシはしたいな」

 

 ゼンヒの追跡チームとして、しっかりと責任者である発言をするユリ。

 

「だからどのみち人は集めるし、特別暴力対策課の人間の大体を集めてフォーメーションを組ませることで包囲作戦を展開したい。相手側はそこまで徒党組むとは思えないし、ちゃんとタネが割れてる状態で戦いのことを振り返っても、あなた達と一緒に戦えるならそこまで苦ではないと思うから」

「うへえ、照れるね!」

「ずっとこき使ってて申し訳ない、ユメさん」

 

 謝られた方は満更でもなさそうだ。

 

「いやいや、気にしないで。そういう時もあるからさ。でも本当に人数足りるかな?」

「ん、リンネの率いてたヤク中達は強かった」

「ああそうか、それもあるのか_____どうしよショウコ」

「それこそヒエロニムスの時みたいに兵器をたくさん持ち込むのが一番だと思う。装甲車とかは全損したのもあったけど、時間が経って他の仕事もこなしているから並行して修復や補充もしてたし」

 

 ヤツカの暴走時にはそこまで数を使わないだろうという甘い見立てによって装甲車や、戦車の一部が破壊されてしまっていた。しかし裏を返せば、それはあまり破壊されなかったと見てもいい。戦力の補充が間に合わなかったということは、その分の戦力を保存できたという考えも出来るのだから。

 

「だから_____」

 

 ユリは、作戦を立てるためにホワイトボードで軽い地図と簡単な円を描いて配置を決めることに。

 

「まず、ここ」

 

 地図の真ん中には、その門がある場所。

 

「彼女達がここに潜伏している場合、逃がさないためにも一気に雪崩れ込んで倒す。シャルアーとヤツカが厄介だけど、そこさえ超えれば鍛えた人間で取り押さえることも可能なはず」

「そのセツカを抑える役は?」

「悔しいけど、取り押さえた上ですぐに離脱できる二人に任せたいかも」

 

 そう、セツカを捕まえて離脱する役はクロコかユメ、もしくは両方に任せたいと考えていた。

 

「君たちじゃなくていいの?」

「囲んで取り押さえるならできるかもしれないけど、個人の戦闘だとどうしても不利がつく可能性があるからアタシ達で抑えると最悪逃げられる可能性がある。だけどアタシ達は集団戦が得意だから、一騎当千での対処の仕方も学んでる。シャルアーだってどれくらい強いかは分からないけど_____それでも、少ない人数である程度情報のないという過程もプラスした上で考えたらヤツカを抑えられたから大丈夫なはず」

 

 先生との連携もあまり取れていない状態なので、やはり不安が漂う。

 

 事態はその実いい方向にも転がっているのだが、下手に言いふらすと相手に対策を取られる可能性があったのか先生もシャルアーも言いふらしていない。

 

「なるほどね」

「それに対話は、そんな急ぐものでもないです。だから、とりあえず確保して、ゆっくり話せるようになってからリーダーに謝ったり、セツカに話を聞いたりしてみたい」

「_____ん、わかった」

 

 やりたいことを考えた上で、本当の目的を達成するためにも適材適所を徹底する。その意思が先生がいなくても自分たちのように出来てる人間には、それ相応に協力したいと思う善性がクロコにあった。

 

「私とユメ先輩で確保する。場合によってはシャルアーは私が相手する、そしたらヤツカを倒した後にみんなで追いかければいい」

「いいですねそれ、そうしましょう」

「いいじゃんシロコちゃ____クロコちゃん!」

「ん」

 

 先輩に褒められてドヤ顔のシロコ*テラー。

 

「でも、もし途中で大軍が襲ってきた時はどうする?リンネだって襲ってくる可能性があるんでしょ?」

「あ、そうだった_____」

 

 ユメに指摘されて、頭を抱えるユリ。

 

 ただ、これはしばらく話し合いを黙って聞いていたカザミが対処法を持っているらしい。

 

「それだったら自分に対策があるよ」

「何?」

「これだよ」

 

 自分が地下室にずっと閉じこもっていた間に、作っていたものを取り出す。

 

「ん?これホローポイント弾?」

「あ、もしかしてこれって!」

「気づいた?」

 

 提案した方は、笑って説明する。

 

「自分が食らった時の感触をできる限り思い出しながら作ったセラフィム弾だよ。だけど本家本元には到底届かないほどの切れ味でその分を火力で補っているから抉る力だけは強くなっているね」

「いつの間に____!でもそれ勝手に作らないで欲しかったな!」

「ちゃんと言い訳は考えているよ。セツカに関する情報を調べていたら見つかった、って」

 

 そう、最初に彼女達が調べていた、マコトからもらった資料。そして、カザミがあちこちにいって確保してきた資料。

 

 その中には当然、事件でセラフィム弾を知るに至った大まかな資料がある。それを基準にして調べて、被害者本人が勝手に作ったというつもりらしい。

 

「これをある程度量産しているから、兵隊が来たらこれで思い切って撃ち抜くことで黙らせる。あの本物でも相当だけど、自分で試してみた限りだとそれより出血量は尋常じゃないから、すぐに行動不能にしてそれで相手の列を崩して壁を作ることもできるね」

「だけど一人で作っててみんなの分行き渡るの?」

「勝手に機械を動かして製造しているよ、そうでもしないと間に合わないからね。遅めのご飯をバンリと食べにいった時にはすでに製造してたし。まあ今日の10時からだからあんまり補充はされないと思うけどね。だからできれば来ないことを祈るばかりだ、出てきても大丈夫なようにするのが大事だけど」

 

 そこにあるペットボトルのジュースを飲みながら、彼女はやっていたことを伝えた。

 

「じゃあ、それはメインで哨戒部隊に渡して、一部は突入部隊が持つ方向で。シャルアーに時間が掛かったとしてもヤツカのあれなら多分すぐに破壊できると思うから」

「そうそう、そのために自分が作ったんだよ。感謝してよ〜?」

「勝手に行動したことについては咎める」

「くぅーん」

 

 犬の鳴き真似をして落ち込むカザミ。

 

 一同そんな真似をする彼女に呆れつつ、ホワイトボードの方を見た。

 

「……よし、これでいいかな」

 

 改めて情報を確認したユリは、作戦を復唱する。

 

「では、次の作戦の確認をする!」

 

 それぞれが、彼女の方を向いた。

 

「哨戒部隊で円形の陣を組み、その内部で突入部隊を編成して門の遺物の確保に向かう!もしセツカ達がいなければそのまま速やかに確保してセキュリティ体制を構築、遭遇した場合はそのままセツカ捕獲作戦に移行する!特別暴力課はセツカの腹心であるシャルアー・ドーン並びに神間ヤツカの捕獲を行い、捕まえるのに時間を要するであろうセツカ本人は協力者である梔子ユメと別のところからやってきた砂狼シロコに一任、仮にリンネの兵が奇襲してきた場合は哨戒部隊が対応、セラフィム弾の使用を許可するので速やかに排除するように!

 質問はあるか!」

 

 一気に説明したユリの方を向く皆に、疑問の視線はなかった。

 

「では、以下の作戦を明日の19:00より実行する。それまでは準備、及び休息をしっかり取るように!」

「はっ!」

「わかった!」

「ん」

「了解!」

 

 ショウコとカザミは敬礼し、ユメとクロコは頷いた。

 

「解散!」

 

 そうして、作戦会議は終わりを告げたのである。

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