~ side 司波達也 ~
「隣、いいか?」
「ひゃいっ?!」
一足先に入学式へ向かった深雪を見送ったあと・・・やっと見つけたベンチには、読書中の先客が居た。真新しい制服を身に着けた、やや細身の男子生徒。胸元のエンブレムを見るに、一科生か・・・同じ新入生と踏んで声をかけたのだが、どうやら驚かせてしまったらしい・・・
だが、おかしな悲鳴を上げた相手に対し、若干の申し訳なさを感じたのも束の間。顔を上げた
だかしかし。
「あぁ・・・ど、どうじょ」
予想外の緩い返答に、思わず肩の力が抜けた。なんだこいつは・・・?戦略級の眼を持ちながら、挙動不審で凡人以下の言動。全く底が見えない。一瞬、
「司波達也だ。よろしく」
「ひ、比企ぎゃや八幡だ。こちらこそよろしく・・・」
ほぅ・・・比企ぎゃや、か・・・変わった名字だな。(噛みまくり&聞き間違い)そんな感想を抱きながら、こちらも端末を開く。互いに初対面を装い、猿芝居を続けること暫し・・・そう、こいつとは初対面。どこかの二次作品で共演したことなんて、一度もない。(真顔)
最低限の会話でコミュニケーションを打ち切ると、やつは直ぐに読書を再開した。これ以上話し掛けるな、という無言のアピールなのだろう・・・
だがしかし。(2回目)
俺と深雪の平穏を脅かす可能性がある存在を、このまま放置しておくわけにはいかない。その正体を見極めるため、もう一歩踏み込んでみることにした。場合によっては、早急に抹殺する必要があるからだ。最悪、本家への報告は事後承諾になるが、先ずは目前の脅威を排除するのが最優先である。
「いまどき紙の書籍か。珍しいな」
彼が手にした単行本を話題に、会話を続ける。どんなに些細な動きや表情も見逃しはしない。敵と判断したら即座に倒す。それだけだ。が、果たしてやつは、意外なほどにまともなリアクションを見せた。
「単なる好みだ。そう言うお前もスクリーン型みたいだな」
「ああ、これがいちばんしっくり来るんでな」
考えすぎだったか・・・何気ないやり取りからは、全く不審な点は感じられなかった。どうやら、基本的には俺と同じようなタイプらしい・・・いや待て!いま、こいつはなんと名乗った?
「つかぬことを聞くが、いま
比企ぎゃや、という名字は初耳だが、八幡という名前から想像されるのは
「・・・あぁ、別に旧第八研究所の末裔とか言うオチは無いぞ?単に8月生まれだから八幡だ。隠れた特殊魔法の持ち主でもない。両親は普通の社畜だしな。ただし妹の小町は戦略級(の可愛さ)だぜ?」
「なにっ?!?」
再び緊迫する空気。まさかこいつ、俺を試しているのか?内心動揺しつつも、ポーカーフェイスを貫く。感情の起伏に乏しい自分を、これ程有り難いと思ったのは初めてだ。しかし、向こうもいきなり踏み込んできたな・・・塗り固めたウソの中に僅かな真実を混ぜて語るのは、より大きな真実を隠す時の常套手段。ならばやつはいったい、何を隠そうとしている・・・?
「妹が戦略級(魔法師)・・・だと?」
やつの真意を図りかね、思わず言葉が漏れた。身内の秘密を、こうもあっさり暴露するとは・・・俺の存在など歯牙にもかけない、ということか?あいにくCADは持ち合わせていないが、果たして体術だけでこいつを仕留めることは出来るだろうか?見たところ比企ぎゃや(笑)は、やや猫背で隙だらけ。全く鍛えているようには見えないが・・・(大正解)しかし、全部擬態という可能性もあり得る。すると何を思ったか、やつはにわかに凄まじい勢いで捲し立て始めた。
「おう、いま中2なんだが、これが天使みたいに可愛くてな。具体的にどれくらい可愛いかと言うと、将来は俺と結婚したいと公言するほどの超ブラコンで・・・あ、いまの八幡的に超ポイント高い」(超早口)
「そうか・・・邪魔したな」
やつの恐るべき
千葉の兄妹・・・?頭に浮かんだ妙な言葉を慌てて振り払う。くっ・・・!やつの言動を分析しようとすればするほど、思考が乱れてゆくのを感じる・・・おそらくこいつは、強力な精神干渉系魔法を使っているのだろう。だが、反撃手段が見つからない。
それにしても、一見掴み所のない凡庸な兄と、戦略級の優秀な妹、か・・・どこかで見たような構図だ・・・(すっとぼけ)
取り敢えず問題を先送りにした俺は、殺気を消して読書を始めた。(現実逃避)それに合わせるかのように、やつも単行本に視線を落とす。もちろん、活字の内容など全く入って来ない。頭の中は深雪の安全と善後策のことで一杯だ。いまのうちに、何とかしなければ。入学式で深雪と接触させるのはマズい・・・
そして広い中庭の片隅で、自分の世界に没頭する男子がふたり・・・途中、何やら意味不明な叫びが聞こえた気がしたのを除けば、概ね穏やかな時間が流れ・・・
やがて、いつしか辺りには人の往来が見られるようになってきた。迷いなく行き交う様子を見るに、入学式の準備に駆り出された上級生たちだろうか。
「見て。あの子、ウィードじゃない?」
「どうせスペアなのに張り切っちゃって」
「でも、なんでブルームの子が一緒に居るんだろう?」
時折、不愉快な会話が流れてくるが、敢えて無視する。噂には聞いていたが、まさかこれ程までとはな・・・ちらりと見れば、比企ぎゃや(笑)は全く動じることなく、読書を続けていた。ほぅ・・・一科生なのに、我関せずか・・・
そう思った次の瞬間、
「新入生の方ですか?間もなく開場の時間ですよ?」
「ひゃう?!」
間近で聞こえた綺麗な声に、またしてもやつはおかしな悲鳴を上げたのだった・・・(笑)
~ side 司波達也 out ~
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「新入生の方ですか?間もなく開場の時間ですよ?」
「ひゃう?!」
頭上から降ってきた声の主は、小柄な黒髪の美少女さんだった。先ず目に付いたのは、その手首に光るブレスレット型のCAD。制服の胸には、当然のように花弁のエンブレムが輝いている。と言うことは、生徒会関係者か・・・
一見、上品な微笑みを浮かべてはいるが、俺の『
自慢じゃないが、初見で女子の危険度を察知する能力に関しちゃ、俺の右に出る者はそうそう居ないだろう。ぼっちの直感、侮るなよ?あ、念のため付け加えておくけど、さっきから言ってる『不可視の存在』とか『腐り眼』って、別に一般的な系統魔法じゃないからね?言うなれば、恥辱と汚辱に彩られた凄絶な実体験の果てに俺が獲得した
やっぱ泣ける・・・。゚(゚´Д`゚)゚。
「有り難うございます。直ぐに向かいます」
またしても俺が自らの黒歴史を召還している間に、司波は手短に答えて立ち上がり、この場を後にしようとしていた。どうやらやつも、目の前の女子生徒に感じるところがあったらしい。なかなか鋭いな。さすにい。ならばこの撤収ウェーブ、乗らせて貰おうか。(なぜか上から目線)そう判断した俺は、そそくさと後に続こうとした。何だか小物感丸出しだけど、細かいことは気にしない気にしない。(ポジティブシンキング)
だかしかし。
「感心ですね。スクリーン型ですか」
・・・やっぱりこうなった。。゚(゚´Д`゚)゚。
謎の女子生徒は、目敏く司波が手にしていた携帯情報端末に気付いたようで、それをネタに会話を続ける気満々のご様子。それじゃ、あとは若いおふたりだけでどうぞ。(他人事)あと、さっきからいちいち謎の女子生徒って呼ぶの面倒だから、もう『魔法科高校の
「当校では仮想型ディスプレイの持ち込みを認めていません。ですが残念なことに、実際には多くの生徒が仮想型を使用しています。でもあなたは、入学前からスクリーン型を使っているんですね」
ニコニコと、人懐っこい笑顔で話し掛けてくる謎の・・・じゃなくって陽乃さんもどき。柔らかい印象の中にも、有無を言わせぬ妙な圧を感じさせる。だが、二科生の司波に対する侮蔑や嘲りの感情が見られないのはなぜだ・・・?
さて、ここまで面と向かって上級生、それも生徒会関係者と思われる美少女に絡まれたら、さすがに逃走は不可能。どうやら、ロックオンされた司波は足を止め、真っ正面からの
「仮想型は読書に不向きですので」
「まあ!動画ではなく読書ですか?ますます珍しいですね。何を読んでいるのかしら?」
何がそんなに嬉しいのか、両手を胸の前で組んで司波へと駆け寄る魔法科高校の陽乃さん(仮)。一気に言葉遣いが砕け、距離感もおかしくなっている。その様子はまるで、新しいおもちゃを見つけた子供のようだ。強く生きろよ、達也・・・ボソッ
「あっ申し遅れました。私は第一高校の生徒会長を務めています、七草真由美です。ななくさ、と書いて、さえぐさと読みます。よろしくね」
どっかのいろはすも真っ青な、あざとさ全開の笑みで自己紹介する会長さん・・・つか、生徒会長?!学生サイドのトップじゃねえか?!しかも
ところでいつも思うんだけど、七草って書いたら普通はナナクサって読むよね?そもそも、サエグサなんて読み方あるの?国語学年3位の俺でも、初めて聞いたんですけど・・・え?じゃあ比企谷って書いたら普通はどう読むのか、だって?そんなの、ヒキタニって読んじゃうに決まってるだろ?!あ・・・(自爆)
目前で微笑む生徒会長さんに、俺と同じような感想を抱いたのだろう。司波も僅かに表情を改めてから、慇懃無礼に名乗った。
「俺、いえ、自分は司波達也です」
「司波達也君・・・そう、あなたが、あの司波君ね・・・」
目を丸くして驚いたあと、何やら意味ありげに頷く七草真由美。(唐突な呼び捨て)悪意や他意は一切感じられないが、この仕草、やっぱり陽乃さんそっくりだわ・・・
て言うか司波君?お前さんってそんなに有名人だったの?まさか世界的な天才魔工技師だったり、国防軍の特殊部隊所属だったり、アンタッチャブルな一族出身だったりとかする?(原作知識オープン)
「先生方の間では、あなたの噂で持ち切りよ」
キラキラしながら続ける七草会長。こりゃ、司波に一目惚れしたか・・・だけどそいつ、たぶん彼女持ちですよ?(修羅場確定)
「入学試験、7教科平均、100点満点中96点。特に圧巻だったのは魔法理論と魔法工学。両教科とも文句なしの満点よ。前代未聞の高得点だって」
ほーん・・・(予想大外れ)確かに凄いけど、ならなんでこいつは二科生なのかしらん?
「ペーパーテストの成績です。情報システムの中だけの話ですよ」
苦笑を浮かべながら、やつは自らの左胸を指差した。いちいち、やることなすこと気障というか、まるで嫌味のない葉山みたいだよな・・・あれ?それってもう葉山は関係なくね?つーか、背が高くてイケメンで超絶美少女の彼女が居てしかも天才でなおかつ謙虚・・・ええい、砕け散れ!!
「ううん、そんな凄い点数、私には真似出来ないわよ?」
対する会長さんは笑顔のまま、首を横に振って答えた。どうやら本心のようだ。しかし、間違いなくエリートの彼女が、どうして初対面の二科生相手にこうもフレンドリーなのか・・・
そこまで考えて、俺は思考を放棄した。やめておけ、比企谷八幡。悪い癖だ・・・必要以上に他人と関わるべきではない。散々痛い目に遭ってきたじゃないか。どうせ司波や生徒会長とも、この場限りの付き合いなのだから。行き掛かり上、なんとなく傍観してはいたが、そろそろ潮時だな・・・
入学式の会場へ向かうべく、足音を立てないように注意しながらゆっくりと離脱を開始する。抜き足、差し足、忍び足・・・まぁ、どうせあっちからは見えてないだろうけど。何しろ、ずっとステルスヒッキーを最大出力で発動し続けていたんだから・・・でもこれ使うと、精神的疲労がハンパないのよね。おかげで、元々たいしたことがない俺のサイオン量はもうゼロよ?!
「それで、あなたは?」
「ひゃふっ?!」
不意に、彼女の赤い瞳がこちらを向いた。条件反射で、またまた変な声が漏れる。(お約束)はい、しっかり見えてましたね分かってましたごめんなさい。ならば、ここはさっさと自己紹介して逃げるに限るぜ。てか、やっぱステルスヒッキー、使えねぇ・・・
「ひ、比企谷八幡です」
か、噛まずに言えた・・・俺が何とも情けない達成感に浸っていると、生徒会長さんは目を丸くして驚いたあと、何やら気まずげに視線を逸らした。ぐはっ?!やっぱ女子にそういう態度とられると八幡、メンタルが超傷付いちゃうんですけど。つーか、そっちから声をかけてきといてその態度はどうなのさ、日向。おかげで俺のライフはもう・・・あ、だからとっくにゼロでしたね。
「比企谷八幡君・・・そう、あなたが、あの比企谷君だったのね・・・」
ええ、確かに俺がその比企谷君ですが何か?全教科50点に揃えたりした覚えはありませんけど?
「入学試験。文系科目は文句なしの好成績で、特に国語と社会は圧巻の100点満点。だけど理系科目が軒並み平均点以下で、特に数学はまさかの0点。こちらも前代未聞の得点だって。結果、入試順位は200人中100位。ギリギリで一科生に滑り込んだ、文字通り最後のひとり・・・」
ふぁっ?!ちょ、ちょま?!いきなり何を口走ってんのよ、このポンコツ会長さん?!個人情報保護に関するコンプライアンスはどこ行った?つか、なんでこのひとが俺らの入試結果を知ってるのかな?(白目)
「ペーパーテストの成績です。情報システムの中だけの話ですよ」
苦笑を浮かべながら、俺は自らの左胸を指差した。(支離滅裂)あ、あれ?なぜだろう?司波と全く同じ返しをしているはずなのに、俺が言うと馬鹿が開き直っているようにしか聞こえねぇ・・・
「ううん、むしろあの程度の問題で0点を取るなんて、私には真似出来ないわよ?」
がはっ?!くっころ!このお姉さん超怖い!八幡、もうお家帰ってもいい?いいよね?誰かいいと言って!!(おめめぐるぐる)(@_@)
「そうよっ!そうだわ!」
「ひゃん?!」
またもや不意に、嬉々として明るい声を上げる生徒会長。深く傷付いた俺のメンタルなど、一切お構い無しのようだ。(乙女)
「ねえ八幡君、生徒会に興味はないかしら?」
「ないですね」
「まさかの即答?!」
二次創作お決まりの展開を知っている俺は、森崎一族も真っ青なクイックドロウ(笑)で流れを断ち切った。はちまん的に、入学早々生徒会入りなんて超ポイント低い。何かとおもちゃにされ、トラブルに巻き込まれ続ける3年間なんて、まっぴらごめんである。ま、最大の理由は他にあるんだがな。そもそも、そのポジションは司波の指定席だろ?
「・・・一応、理由を聞かせてもらってもいいかしら」
「俺の帰宅時間が遅くなると、妹が悲しみますので」(キリッ(真顔)
「「えっ??」」(*゜д゜*) ( ゚д゚) ポカーン
目の前のふたりが仲良く、プリキュア・ハピネス・ハリケーンを喰らったような顔をした。(見間違い)
「・・・そろそろ時間ですので・・・失礼します」
「そ、そうね・・・」
そして、なぜか若干の憐れみを含んだ司波と会長の会話を最後に、今度こそ俺たちは講堂へ足を向けたのだった・・・
やはり解せぬ。
次回第3話:やっと入学式・・・(おっそ~い!!)隣の席に来るのは、もちろんあのふたり組・・・