ひょんなことから、アイドル学校以外の道もあると意識しはじめて――?
【夏コミ参戦予定、冒頭のみ投稿】
原作if、あかりちゃんは原作よりダメな子なイメージ、つまりエッチです。
「本当にいいのね、大空」
「決めたことですから」
「他の学園に転校したりすることもで来ないわけじゃないのよ」
「――いいんです。普通の学校でだって、アイカツはできますから」
「そう。…………じゃあね大空。でも、これだけは忘れないで。
それは、あなたが今言ったように、スターライト学園だけがアイカツではないということ。アイカツの輝きはいつでも、あなたの未来を見守っているわ」
「大空あかりです。スターライト学園から転校してきました、よろしくお願いします!」
自分でも精一杯に挨拶したのは、地元の、家から1番近い中学校だった。『星宮いちご』じゃないのー? なんてヤジが飛んできて、私は熟れた果実みたいに赤くなることしかできなくて。それも先生がとりなしてくれて、空いていた席を指示され、足早に着席した。
悔しくて悔しくて仕方なくて、でも不思議と涙は出なくって。昨日はあんなに泣いていたけど、それで涸れてしまったように思えた。
星宮いちごちゃん。星宮先輩。まだ何者でもなかった私が、アイドルを目指すきっかけになった女の子。歩くのが可愛くて、踊る姿は綺麗で、食べるところは愛嬌があって。彼女の作るステージはまさにキラッキラ! 目を奪われないはずがなかった。
――ほ、『星宮いちご』です!
緊張しすぎて、大好きなアイドルと自己紹介がごっちゃになった。今ではいい思い出だけど、同じ席に座って1年が経ち、二回ほど席が変わって、卒業も近いというのに、未だにそれについてクラスメイトからいじられる。まあ、世間からしたら私のイメージは正に、『星宮いちご事件』のまま。それ以降の事はスターライト学園内での出来事だし、私はそこで脱落した。
仕方ないこと。これから、どうアイカツするか、だもんね。
中学三年生。あれだけ部屋を占領していたいちごちゃんグッズはいくらか姿を――押し入れの中に――消して、かわりに部屋に迎え入れられたのは理科の周期表と新しいパソコン、受験やテスト日程の書き込まれたカレンダー。いちごちゃんカレンダーももちろん持っているし毎年買っているが、いちごちゃんに注目しすぎて受験日を間違えるかもしれない、ということでリビングで有効活用されていた。
「さあて、最近のアイカツ事情は……あ、天羽まどかちゃんの新曲が出てる。CD買っとこう。……ダンシングディーヴァは相変わらず大人気だなぁ。二人とも凄い可愛いし………。ああ、卒業ライブ当落でてるかも。見とかないと」
スターライトを辞めてから、私はより一層アイドルに、アイカツ界全体にどっぷりだった。諦められなかったんだと思う。アイカツ界から、スターライト学園生から目が離せなくなってしまった。
あの時のことは今でも悔しくて、悲しくて、輝いているアイドルたちを見ると――なんとも言えない気持ちになる。あの子たちと一緒に、数ヶ月だけだけどアイカツ出来た。今はとても羨ましい。……ちょっと、暗い気持ちになることもあるけど。
今でも、クラス全員の顔と名前を思い出せる。輝きの中にいて……間違いなく、私自身も輝いていたと言えるあの頃。もちろん今も、同じくらい、いやそれ以上に情熱をもってアイカツしているつもりだけど。
環境とか色々が変わって。どうしても割く時間は短くなった。エスカレータ式のスターライトとは違って普通の中学だし。それ以外にも、色々あって。
その分質の高い努力を求めてはいるつもりだけど、設備の整ったあの環境と比べてどうなんだろうなあとも思わないでもない。
少なくとも、私の運命を決めた『あの夏』のような時間はどう頑張っても作れそうになかった。
「はぁ…………って、もうこんな時間!? 塾に遅れちゃう!」
アイドルを辞めてから、日々の放課後のサイクルがだいたい固定化されてきた。火曜、木曜は塾で二時間ほど追加の勉強がある。教科は数学・理科。……目指している学校は、○○高校。もちろんアイドル学校ではない。無論、アイドル学校の方も探してみたけれども、アイドル教育は中高一貫が一般的で、高等部編入学は学力・アイドルとしての実力ともにとてつもないものが求められるのだ。それこそ、偏差値だけでも全国レベルのものが必要だし、アイドルとしての実力も、とても今の私では届く訳もなく。それでも一時期は頑張っていたけど、もう本当にヤバいという時期になり、実力に見合った判断をするしかなかった。
月曜・水曜・金曜は習い事。ダンスが月金で、水曜は歌。当たり前だけど、アイドル学校でも音楽の学校でもない普通の学校で、ダンスレッスンや歌の授業などない。体育や音楽の授業でやることはあるけれども、それも必要なことをやればすぐ終わるものだ。スターライト学園では当たり前にできていたレッスンも、今では課外活動の一つだ。
自転車で交差点を曲がる。クロスバイクという、華奢な体の自転車はブランド『フューチャリングガール』から出ている少し古いモデルの中古のものだ。もちろん大好きなブランドは『ドリーミークラウン』だけど、それ以外を身に付けちゃいけない、という訳でもない。アイドルはどんな衣装でも、例えそれが自転車でも『着せる』ものだ。
土日は自分で立ち上げた『アイドル部』の活動をしている。ランニングなんかは毎日しているけど、体育館を使ったダンス練習や声出しなんかは学校にお願いするしかない。休日の空いた時間帯、部活動で使わないスペースを借りて色々やらせてもらっている。アイカツシステムが無いのが痛いところだけど、それも仕方ない。文句ばかりは言ってられない。
そもそも、アイドル部だって私が作ったものだ。アイドル教育は中高通して行うのが一般的。中学校にアイドル部が無いのは、アイドルにならんとする人はそもそも中学からアイドル学校に通うからだ。中学時点で退学のような例は本当に稀(というか初めて)で、転校なんかはわりとあるものの、私のような脱落者はあまりいないのだった。そういう訳で、中学にはアイドル部がなく。部を作るまでにもまた問題があったりしたけれども、それはまた別の話――、とにかく、中学ではアイカツにも相当苦労したんだ。
それも高校に入れば変わる。信号待ちが終わり、青信号をより一層の力を込めてペダルを漕ぐ。
高校ではアイドル部が存在していて、部員数もそこそこいたのをオープンキャンパスで確認している。実は中学生でアイドルやろうなんて子も、親も少数派である。しかし高校になればまた話も別になる。アイドルを目指す子がそこそこいるのだ。全国の高校で、アイドル部がそこそこの数存在する。アイカツシステムはなしだが、システムがアイカツじゃなすた学園スターライト離れて分かったが、アイカツシステムを使わないステージだってアイカツシステムのステージに負けず劣らず人気がある。
キキーッ。自転車が急停止する。絆創膏だらけの足が地面をふむ。右足を回してサドルをまたぎ、自転車を降りる。コロコロと数回タイヤを転がすと、もう一度右足を振り上げた。ガシャン。片側だけの留め具が降りる。ナンバーキーを付ける。0・7・1・6。星宮先輩と私の誕生日をちょうど合わせた数字が鍵番号だ。
大きな通りからは1、2本外れた路地。家から10分、駅まで5分、オマケに学校からは20分。なんとも微妙な位置にあるけれども、中一の頃から通っている塾なので先生達とも仲がいいし、授業内容もわかりやすい。ちょっと遠いけど、値段もお手頃だし私はここがいい。
自動ドアが開く。最近古くなってきたのか、音が少し気になる。今のはラ、いや、レかもしれない。そのうちセンサーまで悪くなったら、塾の時間におくれてしまうかも。気をつけないと。
時間は夕方頃。赤い太陽は沈みかけのままドアの隙間に消えてゆく。コンクリートに囲まれた道一本の路地に立つ細長いビルの3階にある塾がゴール。可愛い腕時計を見ると、授業開始まであと8分。良かった、間に合ったみたい。
だいぶ書き直したので別のものになっています。
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