side しのぶ
最終選抜。これを突破して姉さんと再会すれば、晴れて鬼殺隊に入り、鬼に復讐できる。これが悲鳴嶼さんから言い渡された条件。頑張らないと。
そんな事を思いながら、藤襲山にある木の上から鬼の配置を見張っていると…………
「俺は安全に突破するぜ‼︎」ボッ
私のいる木に火をつけた馬鹿な男が木の下にいた。
「ちょっと⁉︎上に人いるんだけど⁉︎」
「ごめん、いたのか!気つかなかったぜ〜♪」
「ぜ〜♪じゃないのよ⁉︎アンタ何してんの⁉︎」
慌てて他の木に飛び移り、馬鹿の方向を見る。そいつは黒髪ぱっつんのつり眉で、中肉中背の冴えない男。なのに、やたら自分に自信がありそうな面をしている。そして、見るからに馬鹿だ。馬鹿極まってる。
「山の木全部燃やせば、鬼の隠れるところ無くせるからな!そしたら昼になれば、鬼は全滅するだろ?」
「普通に戦いなよ!」
「雑魚ならいいんだがな。強えのには立ち向かいたくない。」
「鬼殺隊士が鬼に立ち向かわなくてどうすんの⁉︎」
「俺は安全に出世したいからな。出世すりゃ、上から貰える金も増えるだろ?そしたら博打し放題だ‼︎」
「バカじゃないの⁉︎」
しかもこの男、本当に信じられない。博打をするために楽して鬼殺隊で金を稼ごうなんて、どんな神経してるんだろう。ここには私みたいに鬼に家族を殺されて、鬼を憎んで、敵討ちをしようと努力してる人たちばかりなのに………っ‼︎今すぐその身体に毒をぶち込んでやりたい!
「俺は馬鹿じゃない………ってやべえ‼︎燃えるの速え‼︎」
しかも燃えるのが速すぎて、自分まで巻き込まれそうになっている。頭が悪いのという予想は本当に当たってしまった。
「ホントバカ‼︎早く消しなよ‼︎」
「分かった‼︎しょんべんするからこっち見んなよ‼︎」
「そんなんで消せるわけないでしょ‼︎」
この男は本当に馬鹿なの?本当にイライラする。今すぐにぶん殴ってやりたい。でも私は鬼殺隊。人間に危害を加えちゃダメ。怒りを抑えながら、早く逃げないと………
「なら逃げるぜ〜‼︎」
「消してから逃げなさいよ‼︎」
「お前も逃げた方がいいぞ?」
「アンタに指図されるほどじゃない‼︎」
ということで、私はこのバカ男と一緒に逃げることになった。
逃げている途中に、私は馬鹿男に話しかけられた。
「そういやお前、名前なんて言うんだ?」
「胡蝶しのぶ。アンタは?」
「
「何その名前⁉︎」
「親がつけてくれたんだ。最近西洋から入ってきたステーキに心奪われたんだと。」
「嘘でしょ⁉︎」
その男はとても頭のおかしい名前をしていた。いや、人の親のことを馬鹿にしちゃいけないんだけど、息子にステーキって名付ける親いる⁉︎あと苗字も変わってる。まるで博打一族みたいだ。そしてその名らしく、きちんと賭け狂い。名は体を表さなくていいのに。
「ちなみにピッチピチの12歳だ!」
「一応同い年*1なんだね。その歳で博打好きってホント呆れる………」
「お前もやってみるか?楽しいぞ〜?」
「やらないわよ‼︎」
「といいながら、負けてキレ打ちしそうなんだよな〜。雰囲気的に。」
「馬鹿にしてんの⁉︎」
「してないしてないw」
「してるでしょ‼︎」
本当に酷い男だ。私と同い年なのに大人と同じように博打にハマり、挙げ句の果てに人のことを馬鹿にしてくる。コイツが鬼の間違いなんじゃ?時々そう思う。
そんな事を思っていると、私たちは鬼に遭遇した。
「ガキ2人かぁ………いい飯になりそうだぜぇ‼︎」
背丈は小さいものの、鬼である以上強いはずだ。今まで沢山の人間を殺し、食ってきたのだろう。本当に腹が立つ。このまま毒をぶち込んで………
「下がってろ、しのぶ‼︎」
そんな事を思ってたら、サイコロステーキが守ってくれるみたい。一応この人にも鬼殺隊らしいところはあるのかな?まあ私は守られるだけの存在じゃないけど………
「いや、私は大丈夫………」
「この鬼、めちゃくちゃ弱そうだぞ‼︎だから俺がやる‼︎」
「「は?」」
期待して損した。この男はとんだクソ野郎だ。
「単に自分の手柄が欲しいだけじゃん‼︎」
「だって鬼50体殺せば柱だろ?無限の給料だろ?だったら雑魚50匹狩る方がいいじゃねえか‼︎だからよ、しのぶ。俺の手柄を取るんじゃねえぞ?」
「どこまでクズなのよ、アンタは⁉︎」
自分の金欲しさに雑魚狩りだけをする。しかも用途は博打。本当に呆れた。あまりにも心が醜すぎる。頼むから鬼殺隊に入らないでほしい。
「さっきから黙って聞いてれば雑魚呼びしやがって………っ!ガキのくせに舐めるな‼︎」
「すまんな。今はお前がお金にしか見えねえんだ。」
「死ね‼︎血鬼術………」
どうやら相手は血鬼術を使う強めの鬼みたい。どうやら相手の力を見誤ったみたいだけど、大丈夫かな?
「
「えっ⁉︎」スパン!
嘘でしょ⁉︎刀を抜きながら高速で前進して、あっという間に倒しちゃったんだけど⁉︎コイツ強いの⁉︎なんか知らない呼吸まで使ってるし‼︎
「えっ………嘘でしょ?」
「まさか俺が負けると思った?あんな雑魚に?」
「うん。」
「こう見えても俺、そこそこ強いんだぜ!」
「自信あるなら強い鬼にも挑みなよ‼︎」
「嫌に決まってんだろ♪」
それだけの実力があるなら、ちゃんと戦えばいいのに‼︎わざわざ雑魚狙いする必要ないじゃん‼︎こちとら首が斬れないから毒でなんとかしようとしてるのに‼︎ホント腹立つ‼︎
「でもよかったぜ。出目が低かったら距離が足りなくて攻撃を受けるところだった〜!」
「は?」
しかも言ってる事が意味分からない。出目が低かったら?距離が足りない?どういうこと?
「お前には分かんねえかw」
「うるさい‼︎腹立つんだけど!」
「まあまあ落ち着いて聞け。この壱ノ目はサイコロの出目でどれだけ進めるかが決まるんだ。大きい出目ほど進むぜ!」
サイコロの出目で攻撃が決まる………?
「出目を調整とかしてるの?」
「お前バカか?サイコロの出目が調整出来るわけねえだろ。」
「アンタにバカって言われたくない‼︎それに、それじゃあ攻撃が届くか届かないかが運次第じゃない⁉︎」
「そうだが?」
「頭おかしいんじゃないの⁉︎」
型の性能が運で決まるって、頭おかしすぎるでしょ⁉︎鬼との戦いを運で決めてるってこと⁉︎強敵との戦いにそんなん持ち込むんじゃないわよ‼︎
「でも運頼みなら確実に勝てるわけないだろ?だから俺は弱い鬼だけを狙って確実に生き延びるんだ。」
「まずその運頼みの呼吸をやめたら?」
「無理。これしか出来ない。」
「雑魚じゃん‼︎」
「雑魚言うな‼︎」
こんな雑魚が金目当てで弱い鬼だけを倒していく。復讐心も忠誠心も無い。本当に呆れた男だ。こんなのが入隊できるようじゃ、鬼殺隊も終わりだな。
その後もサイコロステーキは雑魚鬼をひたすら殺していたんだけど、ある鬼を見た途端逃げ始めた。
「鱗滝………鱗滝………」
「何あれ、強そう‼︎俺は逃げるぜ!」
手がいっぱいついた、ガタイのいい異形の鬼だ。確かにさっきまで戦ってきた鬼なんかとは比べ物にならないくらい、強い気配を感じる。でも見つけた以上、戦わなければいけない………
「お前は逃げなくていいの?」
「鬼だもの、殺さなきゃ………」
「1人じゃ無理じゃね?諦めて逃げようぜ!」
「そんな情けないこと言ってんじゃないわよ‼︎」
「うるせえ‼︎」
それなのに、コイツは逃げ出そうとする。さっきまでの雑魚鬼相手にしていた威勢はどこにもない。本当にカス………
「いたぁ、獲物が2人‼︎」
そんな事で喧嘩をしていると、鬼に気づかれてしまった。どのみち戦うつもりだったからいいか………
「おいしのぶ‼︎お前が騒ぐから気づかれたじゃねえか‼︎」
「いちいちうるさいね、アンタは‼︎さっさと戦えばいいでしょ‼︎」
「嫌だ‼︎俺は強い奴と戦いたくない‼︎」
「ふざけないでよ‼︎」
あぁ、本当に鬱陶しい‼︎こんな奴無視しよ‼︎
「死ねぇ‼︎」
「蟲の呼吸………」
鬼が沢山の手を伸ばしてくる。私に向かって。だけどそれが都合いい‼︎だってその手に毒を入れられるんだもの‼︎
「あぁもう、危ねえっつーの‼︎ 賽の呼吸 弐ノ目
「くっそ………っ‼︎攻撃を全部ぶっ壊されただとっ⁉︎」
そんな事を思ってたら、サイコロステーキが私の前に出てきて攻撃を全部跳ね返してくれた。逃げるんじゃなかったんだ。私を助けてくれるなんて………意外とこの人、勇気あるのかな?
「丁が出たからなんとか反撃出来たぜ……」
「反撃も運試しなの⁉︎」
「もちろん‼︎」
「はぁ⁉︎」
ただのバカだった。外したらただ怪我するだけじゃん‼︎
「助かったんだからいいだろ。さぁ、逃げるぞ‼︎」
「いや、倒しなさいよ‼︎」
「お前ら、俺をコケにしやがって………っ‼︎許さねえ………っ‼︎」
「ヤバイぜ、しのぶ‼︎アイツめちゃくちゃキレてるし‼︎」
それにしても、本当に情けない人ね。強敵相手に怯みすぎよ。まあいいわ。私が助けられるだけの存在じゃないってこと、教えてあげる‼︎
「蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ」
「ぐぁぁぁぁ‼︎くっそ、毒か‼︎」
私は鬼に向かって跳躍した後剣を突き、その体内に毒を注入した。
「お前すげえな‼︎毒使えんのか‼︎天才じゃん‼︎」
「そう?見ての通り小柄で力の無い女だからこうするしかないのよ。」
「でもすげえって‼︎」
「そう………かな?」
そして、それを見たサイコロステーキが手放しに褒めてくる。さっきまで軽くバカにしてきたのに、急にそうやって褒められるとなんだか照れくさくなる………
「くそっ………!痛え………っ!」
「念の為俺が首斬っとくか………賽の呼吸 壱ノ目 双六」
「くそっ…………」
更に、彼は念の為に首を斬ってとどめを刺してくれた。この人、助けてくれるし褒めてくれるし、意外といいところあるのかな………?
「これで手柄は俺のもんだな‼︎」
「ふざけんじゃないわよ‼︎」
前言撤回。どうしようもない屑だった。
こうして私は最終選抜をこの糞野郎と一緒に乗り切ったのだった。