side しのぶ
嘘でしょ?上弦の弐………?こんな時に、1人で………?
「………っ!」
「あっ、腰のそれ刀でしょ〜!ということは鬼狩り?わ〜、すごいな〜!こんな可愛い鬼狩りがいるなんて!」
柱3人分とも言われる上弦の鬼。しかも上から2番目。それを非力な私が単独で勝てるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ない。更に近くには誰もいない。鎹鴉が察知して私の元に来て事実確認。それから他の柱を呼ぶまで、一体どれほどの時間を稼げばいいのか………
「ねえねえ、名前教えてよ〜!」
「アンタに教える名前なんて無い。」
「え〜、つれないな〜!街の人たち襲っちゃうよ?」
「蟲柱・胡蝶しのぶ………っ!」
「わぁ、しのぶちゃんって言うんだ!可愛いね!柱には見えないけど、強いんだ!すご〜い!」
アイツだったら、一目散に逃げるんだろうな。こんな私を見て、馬鹿だなって思うんだろうな。でも私は逃げられないよ。街の人たちを守らなきゃ。もう私みたいな被害者は出さないって、決めたのだから………っ!
「遺言は終わった?それじゃあ死ね‼︎」
「え〜!ちょっと待ってよ〜!酷いな〜!」
「蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ‼︎」
強い力で踏み込み、そのまま一気に相手の喉元へ突っ込む。そしてその勢いのまま相手を突き、体内に毒を流し込んでいく。
「くはぁ!全然見えなかったよ!君速いね!」
「それはどうも。」
「これは………毒かな………っ⁉︎」
「ご名答。そのまま死になさい。」
このまま死んでくれたらいいんだけど………。上弦の弐がこんな簡単に死ぬわけない。まだまだ毒を入れないと………
「あっ、毒分解出来ちゃった♪ごめんね〜、しのぶちゃん!」
嘘でしょ⁉︎早くない⁉︎これが上弦の力なの⁉︎予想以上なんだけど………っ‼︎
「それじゃあいくね!血鬼術 粉凍り!」
そして、次は鬼の攻撃が来る‼︎扇を振って放たれる氷の霧。ただ寒いだけに思えるが………。こんな時、アイツなら絶対油断しないだろう。これが攻撃なら、何かあるはず‼︎とりあえず当たらないように、吸わないように‼︎
「おっ、吸わないんだ〜?もしかして知ってた、しのぶちゃん?」
「もちろん………ね。」
ハッタリ。だが相手は嘘をついているとは思っていない様子。あと名前を呼ぶな‼︎
「すごいね〜!これ吸った人すぐに肺胞が壊死しちゃうのに〜。」
そういうタネかよ………っ。これじゃあまともに呼吸使えないじゃん‼︎こっちは呼吸で身体強化してるのに‼︎ふざけるなし………っ‼︎
「こっちも吸った鬼の細胞を壊死させる毒を使うからね!」
「似たもの同士ってことだね!俺たちお似合いだね、しのぶちゃん!」
「うるさい‼︎死ね‼︎」
誰が鬼なんかとお似合いだっつーの‼︎ふざけるな‼︎このまま殺してやる‼︎
「蟲の呼吸 蜻蛉ノ舞 複眼六角‼︎」
六方向から大量の毒を一気に注入する。もちろんさっき調合は変えた‼︎さっきのがダメなら、これで………っ‼︎
「酷いぜしのぶちゃん!血鬼術 蓮葉氷!」
「くっそ………!」
蓮の葉の形状の氷‼︎冷気で髪が凍る!手が
「が………っは!」
少しの氷でこの威力‼︎思わず咳き込んでしまう。対して鬼は全然余裕な様子。なに、また毒分解したの⁉︎
「ごめんね〜、これも分解出来たみたい!」
「くそ………っ‼︎」
「しのぶちゃんは耐性無さそうだね。まあその身体の小ささなら、身体弱くても普通か!」
そうだよ………っ‼︎全然身体大きくならないんだよ‼︎アイツが美味しいご飯も作ってくれるのに‼︎医者の傍ら日々鍛えているのに‼︎自分にもこの鬼にも腹が立つ‼︎
「蟲の呼吸 蜈蚣ノ舞 百足蛇腹‼︎」
そして、ムカデのように蛇行して撹乱しながら相手に接近し、毒を打ち込む!調合も変えた‼︎頼む、少しくらい痛みを覚えてくれ‼︎
「ぐはっ!毒を喰らうの癖になりそう‼︎」
なんでだよ………っ‼︎全然ダメなのかよ………っ‼︎
「血鬼術 凍て曇‼︎」
くそっ!また冷気‼︎寒い、きつい‼︎もしかしたら目もヤバいかも‼︎守らないと‼︎
「しのぶちゃ〜ん、目を閉じないでおくれよ〜。せっかく凍らせようと思ったのにさ〜。」
「ごっほ………っ!」
咳に血が混じってきた。全然吸ってないのに。なんでこんなに私の身体は弱いんだ……っ‼︎しかも足まで凍った‼︎動けない………っ‼︎くそっ、これじゃあ他の柱が来るまで持たない。
「もうダメそうだから、楽にしてあげるね。血鬼術 冬ざれ氷柱。」
上から大量の氷柱。避けられない。もうダメだ。私死ぬんだな………。最期にサイコロステーキのご飯、食べたかったなぁ。アイツは今頃大当たりしてるから、多分来ないだろうなぁ。そうじゃなくても、こんな強敵のところにわざわざ来ないだろうし。こんな事になるのなら、私も一緒に博打してればよかった………
「賽の呼吸 弐ノ目 丁半‼︎」
嘘…………でしょ?
「氷柱を返された………?」
「鬼さんよぉ、人が博打で大当たりしてる時は大人しくしててくれよ。せっかくの稼ぎ時が台無しだぜ‼︎」
サイコロステーキ……?
「アンタ、なんでここに………?」
「お前に貸しを作るためだよ‼︎」
絶対嘘だ………。いつもなら強い鬼と当たりたくないだの、博打したいだの言うのに………。こんな私を助けに来てくれた………。自分は絶対来たくないだろうに………
「ありが………とう………///」
「とりあえずお前は隠と一緒に自分の手当てしてろ。」
「でも私、足が凍って………」
「ほい、火。これで溶けたか?」
「うん…………///」
「じゃ、いってら。」
「氷の粉、吸わないでね………」
「おうよ。」
それでも私を助けてくれた。今日ばかりは、本当に惚れてしまいそうだった。
side 童磨
しのぶちゃんが下がって代わりに男か〜。しかも博打狂い。どうやら俺の知らない呼吸を使っているし。これは今までにない情報。とりあえず様子見しておくか………
「にしても、一発で丁半が成功するとは………っ!今日はやっぱりツイてるな‼︎」
「博打絡みの呼吸かい?変わったのを使うね。」
「これしか出来ねえからな‼︎」
今の発言からするに、技が成功するには確率が絡んでいる様子。しかしそんな不確定な技しか出来ないのに、こんなに自信満々。さてはこの男、頭が悪いのか?
「まあ、最近新しいのも取り入れたんだけどな!」
「新しいの?」
「いけ、日輪パチンコ‼︎」
そういうと彼は小さな鉄の球を、Y字型の竿に糸がついている武器を使って飛ばしてきた。どうやら糸を引いて球を飛ばしているみたい。変わった武器だな。
「パチンコ………?」
「お前知らねえのか‼︎100年後の日本で流行っている有名な博打、その原型だぞ‼︎」
「絶対違うと思うけど………」
「それを今から俺が作るんだ‼︎」
そして、予想通り彼は頭も悪い様子。かわいそうに、未来がわかる人間なんて存在しないんだよ。それにただ球を飛ばしてるだけなのに、これが博打になるわけないだろう。
「くそっ、にしても全然当たんねえ‼︎お前さては釘調整したな⁉︎」
「いや、当たってるけど。首を斬るほどの威力は無いけどね〜。」
「そうじゃねえって‼︎まず確変すら引かねえじゃねえか⁉︎演出も全然無いし………。お前本当にパチンコか?」
「そんなわけないよ。」
「嘘…………だろっ⁉︎」
ただ、これはこれで遠距離攻撃として成立している。しのぶちゃんよりも力が強いから、普通に氷を弾き飛ばされるし、扇も破壊される。更には彼は着火剤を持っていた。もしや下弦の伍が住む山が燃えたのって、彼のせいか…………?
「そんな、完成にはまだ程遠いのか…………」
「一生完成しないと思うよ。お前の頭じゃ。」
「黙れ‼︎俺は頭がいいんだ‼︎そして顔もいい‼︎」
「そんなに良く見えないけどなぁ〜。」
「あぁ⁉︎」
火をつけられるなら、俺の血鬼術と相性が悪い。なぜなら氷を溶かされるから。さて、ここはどう出るべきか…………
「サイコロステーキ先輩………助けに来ました………」
「カナヲ、ありがとう‼︎」
「しのぶを虐めた鬼はあれかしら〜?」
「そうです、カナエさん!」
そんな事を思ってたら、援軍が到着してしまった。人数は2人。でも女の子だぁ〜♪
「おっ、可愛い子が2人も!今夜はいい夜だ!」
「残念だったな!この2人は俺の嫁だ‼︎」
「違うわよ〜♪」
「違います…………」
「だろうね。」
「なんでだ⁉︎」
これはいいご馳走になりそうだなぁ〜♪