side しのぶ
新・上弦の弐が勝手に死んだ後、私たちは珠世という鬼の住む屋敷を訪れた。といっても、家の前で戦ってたので、すぐの到着だったわけだけど。
「ごめんくださ〜い!」
「女くださ〜い!」
「アンタは黙ってて‼︎」
隣のバカはさておき、一体どんな鬼が出てくるのか………
「なんだお前ら………事後か?」*1
とんでもない失礼な鬼だった。
「「違う‼︎///」」
「嘘つけ。男女2人、顔赤い、息切れしてる。確信犯だろ、この淫乱共め‼︎珠世様に近づくな‼︎」
「さっきそこで鬼と戦ってたんだよ‼︎近くにいたから分かるだろ‼︎」
「戦ってた………?勝手に死んだだけでは?」
「それは…………否定出来ねえ。」
「だろ?じゃあ来るな。帰れ‼︎」
「うるせえ、このアホンダラ‼︎」
「なんだと⁉︎」
どうやらこの男の鬼は珠世さんに仕える部下みたいだ。主人のことを思うのは分かるんだけど、そんなにゴミを見る目で見られても困る。初対面に恐ろしいくらい失礼だし。コイツもサイコロステーキと似たような類かな?
そんな事を思っていると、
「愈史郎、失礼ですよ。客人に向かって。」
「これはこれは失礼しました、珠世様。」
どうやら珠世さん本人が来たようだ。部下の愈史郎とは打って変わって穏やかな雰囲気の女性で、とてもしっかりしているように見える。雰囲気的にはあまね様に似ているか。とりあえず、第一印象は安心だけど………
「いえいえ!それにしてもお美しい方ですね!私は鬼殺隊の賽柱・
しまった。不安材料が身内にいたの忘れてた。
「アンタ、失礼よ!珠世さんに向かって。」
「は?俺のどこが失礼なんだ、しのぶ?」
「ごめんなさい、珠世さん。彼は頭が足りないもので………」
「うるせえ‼︎脳みそギチギチだぞ俺は‼︎」
なんでお館様はコイツを連れて来るように言ったの⁉︎絶対やらかすんだからダメじゃん‼︎特に女性なら尚更‼︎家に置いてきた方がよかったのは間違いない‼︎
「大丈夫ですよ。それに私、既婚者ですから。」
「なん…………だと⁉︎」
「珠世様、それは本当でしょうか…………?」
「なんでお前も知らねえんだよ⁉︎」
「あれ、愈史郎には言ってませんでしたっけ?」
「はい…………」
「はははははは‼︎ざまあみろってんだ‼︎」
「うるせえ、この糞野郎‼︎帰れ‼︎」
「安心してください。ちゃんと帰らせますので。」
「嫌だ‼︎目の保養だけでもさせてくれ‼︎」
マジでコイツうるさいんだけど。このままじゃ埒があかないから、強引に話を切って進めよう。
「コレは置いといて、仕事の話でもしますか。」
「そうですね。こんなところで立ち話でもなんですし、奥の部屋にご案内します。」
「「ありがとうございます。」」
「珠世様、コイツらやっぱり帰らせた方が………」
「愈史郎。」
「はい、なんでもありません‼︎」
ということで、私たちは奥の部屋へと案内された。
案内されたのは、2人で暮らすには少し大きめの部屋だった。壁には本棚が立てられており、私も知ってる薬学や医学の本がずらりと並んでいた。どれも良書ばかり。中には私がまだ持ってない最新の西洋医学・薬学の本まである。その隣には、実験器具がいくつか置いてあった。私の実験室でも見るような器具だらけ。本気で医薬学をやってるからこそ分かる。この人は少なくともヤブではないだろう、と。
「それで、話というのはなんでしょう?」
「実はかくかくしかじかでして〜。」
「なるほど………鬼を人間に戻す薬ですか。それは興味深いですね。」
「それの協力を、鬼のことをよく知り、かつとても可愛らしい貴女に頼みたいんですよ〜♪」
「もっと普通に頼みなさいよ‼︎」
「私は年増ですよ………?」
「いや、まともに反応しなくていいんですよ?」
「珠世様の美しさが分かるのは素晴らしい。だが下心は認められない。出ていけ‼︎」
「話終わったら出ていくんで、それまで待ってもらえます?」
ただ、どういう鬼なのかは分からない。お館様の勘があるとはいえ、油断はできない。引き続き警戒しないと。
「私は確かに鬼舞辻無惨が憎く、殺したいと思っております。ですが私は鬼。鬼殺隊に味方してよいのですか?」
そんなことを思っていると、珠世さんが凄いことを言った。鬼舞辻無惨の名前だ。しかも言ったのに死なない。これはどういうこと?
「珠世さん、なんで死んでないのですか?」
「鬼舞辻の名前を言ったのに‼︎」
「それは鬼舞辻の呪いを解いたからです。あの臆病者は自分のことが知られたくないので、呼んだら自死する呪いをかけてました。」
「自分で解いた⁉︎それは凄いですね‼︎」
「たまたまなんですけどね。」
自力で呪いを解いた。確かにそんな鬼は今までいなかったはず。にわかには信じがたい事実。だけど、珠世さんは今こうして目の前で生き続けている。だから信じざるを得ないのだ。
「ちなみに、俺にかけられた不運な呪いは解けますか?最近博打が調子悪くて………」
「それは呪いじゃない‼︎」
「それは………無理ですね。」
「嘘…………だろ⁉︎」
アンタのは呪いじゃなくて頭の病気。いいから脱線しないで‼︎
「話を戻しますが、私たちはあなた方が鬼でも構わないと思っております。」
「ええ?良いのですか?」
「人を食わない鬼を実験的に飼ってるんで、大丈夫っす!」
「人を食わない鬼………?まさか愈史郎以外に?」
「いますよ!」
本題に戻ると、鬼と協力するのは、特別な鬼ならばいいと思っている。禰豆子さん然り、鬼舞辻無惨に敵対しているという絶対的な証拠が必要だが、それもさっきの名前呼びで大丈夫だろう。
「めちゃくちゃ可愛い女の子でね、今度俺の嫁になるんですよ!」
「適当なことを言うんじゃないわよ‼︎」
「お嫁さんがいるのに求婚を………?」
「一夫多妻制ですよ!俺だからこそ許される‼︎」
「ええ…………」
「珠世様、こんな屑野郎の味方になってはいけません‼︎」
「安心してください。彼はあなた方と関わらせないようにしますので。」
「なんでだよしのぶ⁉︎まさか嫉妬してるのか⁉︎」
「はぁ⁉︎してるわけないでしょ⁉︎誰がアンタなんかに‼︎///」
「おっ、図星かな?ごめんね〜、モテ男で〜♪」
マジで………っ!コイツ………っ‼︎なんなの………っ⁉︎
「珠世さん、愈史郎さん、一緒にこの女の敵を殺す薬を作りませんか?」
「わかった。協力しよう。」
「えっと………その………仲間割れは良くないと思いますよ………?」
「珠世さんの言うとおりです‼︎このカッコいい俺と手を組まないとか、人生大負け確定です‼︎」
「黙れ。もういい。アンタは喋るな。」
「酷い‼︎」
全く、酷いのはどっちだって話よ。あとでお館様に言って給料抜きにしてもらおう。そうでもしないと反省しないだろうし。
「冗談はさておき、珠世さん、よろしくお願いします。」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「それじゃあまた会いましょね〜♪珠世さん♪あっ、愈史郎は無しで!」
「死ね、貴様‼︎」
「あぁん⁉︎お前が死ねや‼︎」
「コイツは私が処分しておきますので。それではまた。」
「痛たたた‼︎おいこらしのぶ‼︎耳を引っ張るな‼︎ちぎれるぅぅぅぅ‼︎」
「頼んだぞ。」
「お、お気をつけて………」
ということで、私たちは珠世さんと共同研究をすることになったのだった。そして、私たちは家を後にした。
家を出た瞬間………
「「消えた⁉︎」」
さっきまであったはずの珠世さんの家が消えた。どういうこと⁉︎
「ま、まあいいや。帰るぞ。」
「うん。」
あとでお館様にでも聞いてみよう。
帰り道、私はサイコロステーキを説教していた。
「全くアンタは‼︎すぐに女性にちょっかい出すんだから‼︎破談になったらどうするつもりだったの⁉︎」
「そうなるわけないだろ。だって俺はカッコいいんだから。」
「いくら顔が良くてもダメなものはダメ‼︎いい、分かった⁉︎」
「分かんない♪」
「分かれ‼︎」
本当に、この自信はどこから来るのやら………。いつか痛い目に遭えばいいのに。そんなことを思いながら、もう6年が経ってしまった。これから先もコイツは一生後悔することはないと思うと、思わず頭を抱えてしまう。
「話は変わるけどさ、お前に提案があるんだ。」
「提案?」
そんな事を思っていると、サイコロステーキから変なことを言われた。提案?一体何を言うつもりなんだろう…………?
「俺たちさ、柱辞めないか?」
それはなんと、とんでもないことだった。
珠世さんの肉体年齢19は嘘では?35くらいに見えるんですが……