サイコロ男と毒女   作:スピリタス3世

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第二十八話 未来を変える一手

  side しのぶ

 

 私とサイコロステーキは裏方になった。私が医師長でサイコロステーキがその補佐。近い仕事は蝶屋敷の皆や隠がたまにやる程度。だから休みなんて被るはずがないと思ったのに…………

 

「ねえ、なんでまたアンタと休み一緒なのよ⁉︎」

「知らねえよ‼︎お館様に聞いてくれ‼︎」

 

 毎回休みが被るのだ。

 

「まさかアンタが調整してるんじゃ………」

「なわけねえだろ‼︎毎日休み希望で出してるわ‼︎」

「それはそれでダメでしょ‼︎働け‼︎」

「嫌だ‼︎」

 

 せっかく安全な裏方になったのに、さらにサボろうとするこの男。こんな奴となんでお館様は一緒にしたがるのだろうか。別にいいけどさ。私たちのことなんて考えないで、自分の身体のことを心配してほしいよ。

 

 

 

 そんなことを思っていると、

 

「そうだお前、賭け碁しに行かないか?」

 

 バカがバカなことを言い出した。

 

「博打はしないって言ったでしょ‼︎」

「賭け碁は金額が低いから、警察に見つかる可能性も低いんだ。おすすめだぞ。」

「犯罪に加担させるな‼︎それに、囲碁はもっと高尚な遊びじゃないの?」

「遊びは遊びだろ。金をかけたら立派な賭博さ!」

「よしっ、自首しようか?」

「嫌だ‼︎もっとシャバで遊びたい‼︎」

 

 コイツはどんだけお金を賭けるのが好きなのよ。本当に意味分からない。法律でダメって言われてるってことは、やっちゃいけないということ。なのにやるなんて、本当に頭おかしいと思う。

 

「それはさておき、見るだけでもいいからさ。この間のチンチロみたいに。」

「まあ、それなら………」

「よしっ、決まりだな!それじゃあ行くぞ!」

「うん!」

 

 賭けなければ面白そうな遊びなんだけどね。やったことないから分かんないけど。まあとりあえず見てみるか。

 

 

 

 

 

 しばらく歩くと、私たちは暗い雰囲気の賭場にやってきた。先日行ったチンチロの賭場と似たような雰囲気だ。薄暗い路地裏の中にある、人目につかないような場所。夜ということもあり、1人で来るにはちょっと躊躇ってしまうようなところだった。

 

「こんばんは………って誰も居ねえな。」

「そうね。」

「まあここは打ちたい奴が1人で来て、相席した人と打つって仕組みだからな。こういうこともよくある。」

「そうなんだ………」

 

 そして、中は18畳くらいの広めの部屋に碁盤が10個ぐらいあった。それ以外は碁盤のそばに箱が置いてあり、「場所代はこちらへ」と書いてあった。どうやらここは無人で営業しているみたいで、善意で場所代を入れる仕組みになっている。無人販売店みたいなものか。

 

「誰が来るまでやり方教えようか?」

「うん、お願い。」

 

 それはそうと、一つの空間にサイコロステーキと2人きり。なんだか緊張してきた。別にコイツのこと好きとかそういうのじゃないけど………

 

「よしっ、じゃあまずは………」

「此方で囲碁が………打てるのだな………」

 

 そんなことを思っていたら、誰かが入ってきた。気になったので入り口を見てみると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんと上弦の壱だった。

 

「えっ⁉︎ちょっ、アンタ⁉︎どうすんのよ⁉︎上弦の壱じゃん‼︎」

 

 マズイって‼︎こんなところで遭遇⁉︎しかも私たちだけで⁉︎一応日輪刀は予備で持ってはいるけどさ………

 

「打てるぜ!こっち来な‼︎」

「呼ぶな‼︎ソイツ鬼‼︎」

「承知した………」

「なに普通に始めようとしてんの⁉︎」

 

 コイツは普通に遊ぼうとしてるし‼︎何考えてんの⁉︎相手は鬼だよ⁉︎しかも上弦の壱だよ⁉︎この間のチンチロの時みたいに簡単に倒せる鬼じゃないんだよ⁉︎

 

「しのぶ、この前も言ったろ。俺たちは鬼殺隊と鬼である前に、囲碁の打ち手だ。」

「逆よ逆‼︎本職忘れんな‼︎」

「喚くのならば………首を斬るが………」

「はぁ⁉︎」

「それはやめてくれ。まずは囲碁を打とうや。」

「そう………だな………」

「しのぶ、とりあえず俺たちの対局を見て雰囲気を感じてくれ。ところどころやり方教えるからさ。」

「えっ、あっ、うん………」

「んじゃ、よろしくお願いします!」

「よろしく頼む………」

 

 私がおかしいみたいな雰囲気やめてくれない⁉︎鬼と鬼殺隊がなんで仲良く囲碁打ってるのよ⁉︎鬼も鬼でよろしく頼むなし‼︎普通に食おうとしろ‼︎

 

「まずはニギリだな。俺が白を持つぜ」ガバッ

「では私は黒を………1つ。」

「それじゃあ白の数は………13個。奇数だからアンタが黒な‼︎」

「碁石はこのままだな………」

「しのぶ、ちなみに今のは白番か黒番かを決めるためのニギリって言ってな、丁半みたいなもんだ。」

「他の博打で例えるな‼︎」

 

 確か偶数か奇数かを当てるやつよね‼︎コイツの話聞きすぎて覚えちゃったんだけど‼︎最悪‼︎

 

「じゃあおっさん。コミ*1は6目半、1目につき1円*2で投了は30円。いいか?」

「いいだろう………」

「しれっと金賭けてるんじゃないわよ‼︎」

「あっ、やり方もっと詳しく教えたほうがいいか?」

「いいよ、別に‼︎」

 

 ということで、サイコロステーキと上弦の壱の囲碁が幕を開けた。

 

 

 

 囲碁開始から数分が経過した。

 

「なるほど、オオゲイマガカリか!」

「私の中の流行りでな………」

「あんまり打たれたことなかったから、新鮮だなぁ!」

 

 なんと信じられないことに、コイツらは普通に囲碁やっている。なんならちゃんとじっくり考えている。サイコロステーキも上弦の壱も普通に床に刀を置いてるし。これで上弦の壱の目が2つだったら、ただの人間同士の対局にしか見えない。

 

「しのぶ、解説するとな………」

「いいよ、どうせ今は頭に入んないから。絵面が凄すぎて。」

「真面目に聞こうという姿勢はねえのか⁉︎」

「アンタが真面目に働きなさいよ‼︎」

 

 こんなに集中してるんだったら、今のうちに鬼に毒を入れようか?いや、やめといた方が良さそうだ。上弦の弐ですら毒を分解できるのに、ましてや壱に通用するわけがない。新しい毒は開発したものの、それが効くかも分からないし。

 

「そういやしのぶ、そろそろ便所行かなくていいのか?漏れるだろ。」

「変なこと言わないで‼︎///」

「女性には………紳士であるべきだ………」

「上弦にたしなめられてどうすんのよ⁉︎」

「えっ?俺は紳士だが………」

「「どこが⁉︎」」

 

 しかもコイツは変なことを………ん、真剣な目。まさか………そういうことか。コイツと長くいすぎて、言いたいことが分かるようになってきてしまった。

 

「まあいい!恥ずかしいけどお手洗い行ってくる‼︎」

「ついでに足も洗っておけ。」

「それはお前‼︎博打から足を洗え‼︎」

「上手いな………流石だ………」

「褒められても嬉しくないんだけど⁉︎」

 

 ということで、私はお手洗いに行った。アイツがあんなことを言った目的………それは援軍を呼ぶためだ。囲碁打っている後ろで鎹鴉を呼んで話しかけたら、上弦の壱に勘付かれる可能性が高い。しかしお手洗いから呼ぶならば、バレることもないだろう。

 

 

 

 

 お手洗いから戻ると、

 

「うむ………難しいな…………」

 

 さっきと盤面が全く変わってなかった。

 

「あれ、進んだ?」

「いや、進んでないけど。まだ3分も経ってなくね?」

「いや、3分も経ったじゃん。」

「お前なぁ………囲碁は30分からが長考だぞ?本当に長いと1手に1時間以上かけることだってある。」

「長すぎるでしょ⁉︎一体全部で何時間かかるのよ⁉︎」

「この人上手そうだし、多分5〜6時間くらいじゃね?」

「よく飽きずに出来るわね⁉︎」

 

 そんなに考えて次の一手を打つの⁉︎本当に真剣じゃん‼︎しかもそんなに長かったら、集中力持たないって‼︎多分打ち終わる前に柱たちが到着するよねぇ‼︎

 

「もしあれなら寝てていいぞ。」

「いや、流石に寝るのはダメでしょ。」

「俺がいるから大丈夫だろ。」

「本当かなぁ?」

「うむ………これはあれだが………あれがなぁ………」

 

 流石に上弦の壱の前で寝る勇気は私には無い。それに、私がいなくなったら囲碁を止めて殺しにくるかもしれないし。なんにせよ注意して見張ってないと…………

 

 

 

 そんなことを考えながら5時間が経過した。

 

「全然終わってないじゃん‼︎」

「真剣なんだから仕方ねえだろ。」

「碁の趣を………分からぬ女め………」

「もう、なんなの⁉︎」

 

 盤面は割と埋まってるものの、終局までは少し遠そうな雰囲気を出していた。建物の外には普通に柱たちが到着して様子を伺ってるのに、そんなのお構いなく打ち続ける2人。お金どころか命でも賭けてるのかっていう雰囲気だ。いや、実際に賭けてるんだけど。

 

「このヨセをしくじったら大変なことになるからな。」

「少しでも敵陣を削り取り………自陣を増やす………」

「そこで俺のサルスベリ!」

「しまった………失念、していた………」

「っしゃあ‼︎」

 

 そして、どっちが勝つのかは正直分からない。何故ならやり方を知らないから。確か広い方が勝ちらしいんだけど、同じくらいに見えるし………。まあいいや。どっちが勝とうが負けようが。早く終わってくれないかな………

 

 

 

 

 そんな事を思った時から1時間後………

 

「終わりだな………」

「じゃあ、数えっか!」

 

 ようやく終わった。やっとこの長い戦いから解放された。私が。

 

「白は67目………」

「黒は72目だから、6目半のコミを考えると、俺の1目半勝ち‼︎」

「見事であった………」

「それじゃあ、お金を貰いたいんだけど………」

「そのことなんだが………」

 

 さてと、ここからお金のやり取り、ではなく命のやり取りになるんだけど………相手はどう出てくる?

 

「見なよ………あの太陽を。」

「あっ………」スナァ…

 

 そんな事を思ってたら、朝になってた。嘘でしょ⁉︎そんな事ある⁉︎囲碁が長過ぎて夜が明けたんだけど⁉︎気づけよ、外が明るくなってることぐらい‼︎どんだけ集中してたのよ⁉︎

 

「よっしゃあ‼︎上弦の壱討伐完了だ‼︎」

「そんな事ある⁉︎」

「正直俺も集中し過ぎて、さっきまで夜明けに気づいてなかった。」

「アホか‼︎」

 

 本人も気づかなかったとか、ホントアホじゃん‼︎もし夜だったらどうするつもりだったの⁉︎まあ援軍は呼んでたけどさ‼︎今も外で呆れているし‼︎

 

「本当に頭の悪い倒し方だな。遊んでいただけではないか。こんな男が柱だったのか?聞いて呆れる。」

「だが見事に上弦の壱を倒してみせた‼︎‼︎流石だ、サイコロステーキ‼︎‼︎」

「地味な戦いで派手に結果を残したな。」

「心臓に毛が生えすぎだろうがァ。ホントイカれた野郎だぜェ。」

「囲碁、やってみようかな………」

「……………」

 

 あまりにも試合時間が長過ぎて、柱が全員到着してしまった。しかもみんなはずっと囲碁を見守るしかなかった。よく耐えたよね。私が言うのもなんだけどさ。

 

「しのぶちゃんを守るために頑張ったのね‼︎すごいわ〜!」

「そうよ〜、蜜璃〜♪あの子はしのぶのことが大大大大大好きなの♪」

「嗚呼、尊い………」

「こらそこ、勘違いしない‼︎///」

 

 それと恋愛脳たちには勘違いされた。絶対違うって‼︎コイツはただ遊びたかっただけだから‼︎絶対私を守りたいだなんて………

 

「半分合ってます………///」

「照れんなぁぁぁぁぁ‼︎///」

 

 思ってたの⁉︎いや、仲間思いだけど‼︎にしても赤面しなくていいのに‼︎ああもう、皆揃ってなんなのよぉぉぉぉぉ⁉︎

 

 

 

 

 

  side 無惨

 

 黒死牟が囲碁に夢中になって死んだんだが………ふざけるなよ………猗窩座は自害するし、童磨は運が悪くて死ぬし、半天狗と妓夫太郎達はうっかり死ぬし、獪岳は普通にやられるし、玉壺は後追いするし、………なんでこんなんで上弦が全滅するんだよ⁉︎鳴女も死んでるし‼︎本当に誰も彼も役に立たなかった‼︎こうなったら、私が鬼狩りを全滅させてやる‼︎

*1
ハンデのこと。囲碁は先攻の黒番が優位なゲームのため、白番に与えるもの。

*2
現代の1,000円




4月から社畜のため投稿が遅れます。すまんぬ。
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