side しのぶ
私とサイコロステーキは裏方になった。私が医師長でサイコロステーキがその補佐。近い仕事は蝶屋敷の皆や隠がたまにやる程度。だから休みなんて被るはずがないと思ったのに…………
「ねえ、なんでまたアンタと休み一緒なのよ⁉︎」
「知らねえよ‼︎お館様に聞いてくれ‼︎」
毎回休みが被るのだ。
「まさかアンタが調整してるんじゃ………」
「なわけねえだろ‼︎毎日休み希望で出してるわ‼︎」
「それはそれでダメでしょ‼︎働け‼︎」
「嫌だ‼︎」
せっかく安全な裏方になったのに、さらにサボろうとするこの男。こんな奴となんでお館様は一緒にしたがるのだろうか。別にいいけどさ。私たちのことなんて考えないで、自分の身体のことを心配してほしいよ。
そんなことを思っていると、
「そうだお前、賭け碁しに行かないか?」
バカがバカなことを言い出した。
「博打はしないって言ったでしょ‼︎」
「賭け碁は金額が低いから、警察に見つかる可能性も低いんだ。おすすめだぞ。」
「犯罪に加担させるな‼︎それに、囲碁はもっと高尚な遊びじゃないの?」
「遊びは遊びだろ。金をかけたら立派な賭博さ!」
「よしっ、自首しようか?」
「嫌だ‼︎もっとシャバで遊びたい‼︎」
コイツはどんだけお金を賭けるのが好きなのよ。本当に意味分からない。法律でダメって言われてるってことは、やっちゃいけないということ。なのにやるなんて、本当に頭おかしいと思う。
「それはさておき、見るだけでもいいからさ。この間のチンチロみたいに。」
「まあ、それなら………」
「よしっ、決まりだな!それじゃあ行くぞ!」
「うん!」
賭けなければ面白そうな遊びなんだけどね。やったことないから分かんないけど。まあとりあえず見てみるか。
しばらく歩くと、私たちは暗い雰囲気の賭場にやってきた。先日行ったチンチロの賭場と似たような雰囲気だ。薄暗い路地裏の中にある、人目につかないような場所。夜ということもあり、1人で来るにはちょっと躊躇ってしまうようなところだった。
「こんばんは………って誰も居ねえな。」
「そうね。」
「まあここは打ちたい奴が1人で来て、相席した人と打つって仕組みだからな。こういうこともよくある。」
「そうなんだ………」
そして、中は18畳くらいの広めの部屋に碁盤が10個ぐらいあった。それ以外は碁盤のそばに箱が置いてあり、「場所代はこちらへ」と書いてあった。どうやらここは無人で営業しているみたいで、善意で場所代を入れる仕組みになっている。無人販売店みたいなものか。
「誰が来るまでやり方教えようか?」
「うん、お願い。」
それはそうと、一つの空間にサイコロステーキと2人きり。なんだか緊張してきた。別にコイツのこと好きとかそういうのじゃないけど………
「よしっ、じゃあまずは………」
「此方で囲碁が………打てるのだな………」
そんなことを思っていたら、誰かが入ってきた。気になったので入り口を見てみると…………
なんと上弦の壱だった。
「えっ⁉︎ちょっ、アンタ⁉︎どうすんのよ⁉︎上弦の壱じゃん‼︎」
マズイって‼︎こんなところで遭遇⁉︎しかも私たちだけで⁉︎一応日輪刀は予備で持ってはいるけどさ………
「打てるぜ!こっち来な‼︎」
「呼ぶな‼︎ソイツ鬼‼︎」
「承知した………」
「なに普通に始めようとしてんの⁉︎」
コイツは普通に遊ぼうとしてるし‼︎何考えてんの⁉︎相手は鬼だよ⁉︎しかも上弦の壱だよ⁉︎この間のチンチロの時みたいに簡単に倒せる鬼じゃないんだよ⁉︎
「しのぶ、この前も言ったろ。俺たちは鬼殺隊と鬼である前に、囲碁の打ち手だ。」
「逆よ逆‼︎本職忘れんな‼︎」
「喚くのならば………首を斬るが………」
「はぁ⁉︎」
「それはやめてくれ。まずは囲碁を打とうや。」
「そう………だな………」
「しのぶ、とりあえず俺たちの対局を見て雰囲気を感じてくれ。ところどころやり方教えるからさ。」
「えっ、あっ、うん………」
「んじゃ、よろしくお願いします!」
「よろしく頼む………」
私がおかしいみたいな雰囲気やめてくれない⁉︎鬼と鬼殺隊がなんで仲良く囲碁打ってるのよ⁉︎鬼も鬼でよろしく頼むなし‼︎普通に食おうとしろ‼︎
「まずはニギリだな。俺が白を持つぜ」ガバッ
「では私は黒を………1つ。」
「それじゃあ白の数は………13個。奇数だからアンタが黒な‼︎」
「碁石はこのままだな………」
「しのぶ、ちなみに今のは白番か黒番かを決めるためのニギリって言ってな、丁半みたいなもんだ。」
「他の博打で例えるな‼︎」
確か偶数か奇数かを当てるやつよね‼︎コイツの話聞きすぎて覚えちゃったんだけど‼︎最悪‼︎
「じゃあおっさん。コミ*1は6目半、1目につき1円*2で投了は30円。いいか?」
「いいだろう………」
「しれっと金賭けてるんじゃないわよ‼︎」
「あっ、やり方もっと詳しく教えたほうがいいか?」
「いいよ、別に‼︎」
ということで、サイコロステーキと上弦の壱の囲碁が幕を開けた。
囲碁開始から数分が経過した。
「なるほど、オオゲイマガカリか!」
「私の中の流行りでな………」
「あんまり打たれたことなかったから、新鮮だなぁ!」
なんと信じられないことに、コイツらは普通に囲碁やっている。なんならちゃんとじっくり考えている。サイコロステーキも上弦の壱も普通に床に刀を置いてるし。これで上弦の壱の目が2つだったら、ただの人間同士の対局にしか見えない。
「しのぶ、解説するとな………」
「いいよ、どうせ今は頭に入んないから。絵面が凄すぎて。」
「真面目に聞こうという姿勢はねえのか⁉︎」
「アンタが真面目に働きなさいよ‼︎」
こんなに集中してるんだったら、今のうちに鬼に毒を入れようか?いや、やめといた方が良さそうだ。上弦の弐ですら毒を分解できるのに、ましてや壱に通用するわけがない。新しい毒は開発したものの、それが効くかも分からないし。
「そういやしのぶ、そろそろ便所行かなくていいのか?漏れるだろ。」
「変なこと言わないで‼︎///」
「女性には………紳士であるべきだ………」
「上弦にたしなめられてどうすんのよ⁉︎」
「えっ?俺は紳士だが………」
「「どこが⁉︎」」
しかもコイツは変なことを………ん、真剣な目。まさか………そういうことか。コイツと長くいすぎて、言いたいことが分かるようになってきてしまった。
「まあいい!恥ずかしいけどお手洗い行ってくる‼︎」
「ついでに足も洗っておけ。」
「それはお前‼︎博打から足を洗え‼︎」
「上手いな………流石だ………」
「褒められても嬉しくないんだけど⁉︎」
ということで、私はお手洗いに行った。アイツがあんなことを言った目的………それは援軍を呼ぶためだ。囲碁打っている後ろで鎹鴉を呼んで話しかけたら、上弦の壱に勘付かれる可能性が高い。しかしお手洗いから呼ぶならば、バレることもないだろう。
お手洗いから戻ると、
「うむ………難しいな…………」
さっきと盤面が全く変わってなかった。
「あれ、進んだ?」
「いや、進んでないけど。まだ3分も経ってなくね?」
「いや、3分も経ったじゃん。」
「お前なぁ………囲碁は30分からが長考だぞ?本当に長いと1手に1時間以上かけることだってある。」
「長すぎるでしょ⁉︎一体全部で何時間かかるのよ⁉︎」
「この人上手そうだし、多分5〜6時間くらいじゃね?」
「よく飽きずに出来るわね⁉︎」
そんなに考えて次の一手を打つの⁉︎本当に真剣じゃん‼︎しかもそんなに長かったら、集中力持たないって‼︎多分打ち終わる前に柱たちが到着するよねぇ‼︎
「もしあれなら寝てていいぞ。」
「いや、流石に寝るのはダメでしょ。」
「俺がいるから大丈夫だろ。」
「本当かなぁ?」
「うむ………これはあれだが………あれがなぁ………」
流石に上弦の壱の前で寝る勇気は私には無い。それに、私がいなくなったら囲碁を止めて殺しにくるかもしれないし。なんにせよ注意して見張ってないと…………
そんなことを考えながら5時間が経過した。
「全然終わってないじゃん‼︎」
「真剣なんだから仕方ねえだろ。」
「碁の趣を………分からぬ女め………」
「もう、なんなの⁉︎」
盤面は割と埋まってるものの、終局までは少し遠そうな雰囲気を出していた。建物の外には普通に柱たちが到着して様子を伺ってるのに、そんなのお構いなく打ち続ける2人。お金どころか命でも賭けてるのかっていう雰囲気だ。いや、実際に賭けてるんだけど。
「このヨセをしくじったら大変なことになるからな。」
「少しでも敵陣を削り取り………自陣を増やす………」
「そこで俺のサルスベリ!」
「しまった………失念、していた………」
「っしゃあ‼︎」
そして、どっちが勝つのかは正直分からない。何故ならやり方を知らないから。確か広い方が勝ちらしいんだけど、同じくらいに見えるし………。まあいいや。どっちが勝とうが負けようが。早く終わってくれないかな………
そんな事を思った時から1時間後………
「終わりだな………」
「じゃあ、数えっか!」
ようやく終わった。やっとこの長い戦いから解放された。私が。
「白は67目………」
「黒は72目だから、6目半のコミを考えると、俺の1目半勝ち‼︎」
「見事であった………」
「それじゃあ、お金を貰いたいんだけど………」
「そのことなんだが………」
さてと、ここからお金のやり取り、ではなく命のやり取りになるんだけど………相手はどう出てくる?
「見なよ………あの太陽を。」
「あっ………」スナァ…
そんな事を思ってたら、朝になってた。嘘でしょ⁉︎そんな事ある⁉︎囲碁が長過ぎて夜が明けたんだけど⁉︎気づけよ、外が明るくなってることぐらい‼︎どんだけ集中してたのよ⁉︎
「よっしゃあ‼︎上弦の壱討伐完了だ‼︎」
「そんな事ある⁉︎」
「正直俺も集中し過ぎて、さっきまで夜明けに気づいてなかった。」
「アホか‼︎」
本人も気づかなかったとか、ホントアホじゃん‼︎もし夜だったらどうするつもりだったの⁉︎まあ援軍は呼んでたけどさ‼︎今も外で呆れているし‼︎
「本当に頭の悪い倒し方だな。遊んでいただけではないか。こんな男が柱だったのか?聞いて呆れる。」
「だが見事に上弦の壱を倒してみせた‼︎‼︎流石だ、サイコロステーキ‼︎‼︎」
「地味な戦いで派手に結果を残したな。」
「心臓に毛が生えすぎだろうがァ。ホントイカれた野郎だぜェ。」
「囲碁、やってみようかな………」
「……………」
あまりにも試合時間が長過ぎて、柱が全員到着してしまった。しかもみんなはずっと囲碁を見守るしかなかった。よく耐えたよね。私が言うのもなんだけどさ。
「しのぶちゃんを守るために頑張ったのね‼︎すごいわ〜!」
「そうよ〜、蜜璃〜♪あの子はしのぶのことが大大大大大好きなの♪」
「嗚呼、尊い………」
「こらそこ、勘違いしない‼︎///」
それと恋愛脳たちには勘違いされた。絶対違うって‼︎コイツはただ遊びたかっただけだから‼︎絶対私を守りたいだなんて………
「半分合ってます………///」
「照れんなぁぁぁぁぁ‼︎///」
思ってたの⁉︎いや、仲間思いだけど‼︎にしても赤面しなくていいのに‼︎ああもう、皆揃ってなんなのよぉぉぉぉぉ⁉︎
side 無惨
黒死牟が囲碁に夢中になって死んだんだが………ふざけるなよ………猗窩座は自害するし、童磨は運が悪くて死ぬし、半天狗と妓夫太郎達はうっかり死ぬし、獪岳は普通にやられるし、玉壺は後追いするし、………なんでこんなんで上弦が全滅するんだよ⁉︎鳴女も死んでるし‼︎本当に誰も彼も役に立たなかった‼︎こうなったら、私が鬼狩りを全滅させてやる‼︎
4月から社畜のため投稿が遅れます。すまんぬ。