side しのぶ
とある日の休暇のこと。私は温泉でゆっくりしたいと思い、刀鍛冶の里まで1人で行くことにした。いつもは隣にいるサイコロステーキも、別件の仕事があるらしく不在。少し寂しいと思いながらも、ゆっくり出来ることに安堵していた。
「胡蝶様、着きました。刀鍛冶の里です。」
「ありがとうございます。」
目の前に広がる、紅く彩る山の中に、質素でありながらどこか賑やかさを感じる里。私はここの雰囲気が好きだ。日頃の喧騒を忘れてゆっくりしながら、刀を打つ澄んだ音を楽しむ。まさに最高の休暇だ。
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そんな事を思っていたら、日頃の喧騒が目の前にいた。
「なんでアンタがここに居んのよ⁉︎」
「パチンコの新台を見に来たんだよ‼︎」
「仕事は⁉︎」
「仕事だ‼︎」
「どこにパチンコ作りを見る仕事があんのよ⁉︎」
せっかく落ち着いた気持ちでいたのに、なんでコイツと会わなきゃいけないのか。しかもなんかドキドキするし。会うと思ってなかったから、めちゃめちゃびっくりしたんだけど‼︎
「遠距離武器にしてただろ‼︎お前の頭は鶏か⁉︎」
「目的は理解したけど‼︎鳥頭はアンタの方でしょ‼︎」
「うるせえ‼︎というかお前こそなんでいるんだよ⁉︎」
「温泉旅行よ。」
「サボりじゃねえか‼︎」
「休暇よ‼︎いつもサボってる奴に言われたくない‼︎」
まあ会っちゃったら仕方ないや。コイツがサボらないように見張ってよう。決して私が一緒にいたいからじゃない。決して、うん。
「八之森さん、お待たせしてすいません!新台見に行きましょう!」
「いえいえ!私は大丈夫ですよ!」
「しのぶ、お前も見に来るか?」
「まあ、アンタの監視もしたいし………」
「ちゃんと仕事してるっつーの‼︎」
「あらあら、お2人とも仲良しですねぇ〜。」
「「違います‼︎///」」
ということで、私たちはパチンコの新台を見に行くことになった。
工房への道中、私たちは森の中で奇妙なカラクリを見た。
「すいません、あれなんですか?」
赤みがかった長い髪色に赤い着物………を模したカラクリ。この間囲碁で殺した上弦の壱にどことなく似ている雰囲気を感じる。あっちが月ならこっちは太陽……といったところか。ただ、腕が6本も生えているのが気になる。
「あれは縁壱零式といって、昔実在した最強の剣士をカラクリにしたものらしいです。本物ほどではないですが、かなりの強さだそうで……」
「最強の剣士⁉︎すげえっすね!」
「ただ、300年前に造られたものでして………しかも高度な技術が用いられていて、悔しいながら再現も難しいのですよ………」
「ちなみに、腕が6本あるのは?」
「その剣士の動きを再現するには、腕が最低6本必要だったそうで……」
腕6本も無いと再現出来ないって………。その人強すぎるでしょ。悲鳴嶼さんですらそこまでじゃないのに。本当にすごい人だったのね。
「腕6本⁉︎パチンコ6台同時に打てるじゃねえか⁉︎」
「力の無駄遣いすぎるでしょ‼︎」
「始まりの剣士は、パチンコを一日中打ち続けることが出来る呼吸を編み出した………?」
「そんなわけないでしょ‼︎」
コイツもある意味すごい人ね。しかも刀鍛冶の人まで博打打ちだし。おかしいのは私みたいな雰囲気やめてよ‼︎
「話が脱線しましたね。それではパチンコ工房へ向かいましょう。」
「ですね!」
「まだ脱線中では?」
そんな私のことはお構いなく、パチンカス2人は製造現場へと向かった。
向かった先は、至って普通の工房だった。
「現在パチンコの新台はこんな感じです!」
「おお!これはかなりいいですね!」
作ってるものを除けば。
「サイコロステーキさんがおっしゃってた、未来の夢の中の話を元に再現しました。ですが動く絵*1などはいかんせん難しく………」
「いいですよ!サンドに上皿に球抜きボタンにハンドル!完璧じゃないですか!」
「一応くじ引きも出来るので、遊戯としても楽しめます。」
「そこが出来るとは!さすがです!」
目の前にあるものはどう見ても遊び道具だ。鬼退治なんかに使えそうにない。何が仕事よ⁉︎どう考えてもふざけてるじゃない‼︎
「サイコロステーキ、アンタは一体………っ‼︎」
「そうキレんなよ、しのぶ‼︎ちゃんと鬼退治への使い方を教えるから‼︎」
「じゃあどうやって使うのよ⁉︎」
「鬼退治のときはここの天板が外れて、打ち出した日輪玉を相手の鬼めがけて当てられるようになります。」
なるほどね。上のところが取れて、打ち出した玉をそのまま鬼に向かって当てることが出来るのね。でもわざわざこんなに複雑にする必要あった?前のゴムパチンコでよかったんじゃ………?
「ちなみに、ここのサンドっていう穴に金を入れると使えるようになるぞ‼︎」
「なんで金入れなきゃいけないのよ⁉︎」
「それは増やすためでしょう?」
「お金が飲まれるかもしれないという恐怖感と増えるかもしれないという興奮感、それを両方味わえるんだぞ?」
「戦ってる最中に味わうもんじゃない‼︎」
どう考えても退化してるし‼︎お金無くなったら使えないじゃん‼︎こんなものを作らせるなんて、コイツ本当にアホよね‼︎作る方も作る方だし‼︎
「ちなみにくじ引き要素はもちろん戦闘中にも行えます。」
「マジっすか⁉︎当たると出玉が増えたり………?」
「しますし、大当たりだと玉が赫くなり威力が増します‼︎」
「すごいです‼︎流石は俺の刀鍛冶‼︎」
「いいえ、それほどでも‼︎」
「赫刀を博打の大当たりに使うな‼︎」
大当たりがあるならずっとその状態でやればいいのに‼︎そうしたら鬼も倒しやすくなるじゃん‼︎ホント博打打ちはアホしかいないんだから‼︎
「ちなみに今日は遊べます?」
「それがまだなんですよ………すいません!」
「いえいえ!頑張ってください!」
「なので、今日はこの辺にして、お部屋に案内しますね。そこでご休憩なさってください!」
「はい!」
「ありがとうございます。」
それにしても、なんでコイツこんなに礼儀正しいのよ。普段先輩やお館様に敬意のかけらもない態度をとってるのに。こんな風に出来るのなら、普段からもっとちゃんとしなさいよ‼︎
里の道と建物の中をしばらく歩くと、案内役の刀鍛冶の人がある部屋の前で止まった。8畳くらいの綺麗な和室で、窓からは枯山水の庭園も見える。本当にいい客室だ。どうやらここが、私かサイコロステーキの部屋なのだろう。願わくば、私の部屋であってほしいなぁ………
「こちらがお2人の部屋になります!」
「「えっ⁉︎」」
両方だった。
「いやいやいやいや、コイツ女ですよ⁉︎同じ部屋はマズイでしょう⁉︎///」
「どんな言い方よ⁉︎私が男って間違われるわけないでしょ⁉︎///」
「でも、この部屋しか空いてないものでw」
「「絶対嘘ですよね⁉︎///」」
「それでは、ご休憩なさってください‼︎」
「「嫌です‼︎///」」
絶対他の部屋空いてるでしょ‼︎どうせお館様とか姉さんが余計な茶々入れたのだろう。本当に余計なお世話だ‼︎全く、にやけるんじゃないわよ‼︎ご休憩ってそういう意味だったのね⁉︎
「それでは、私はこの辺でw」
そう言って、ムカつく刀鍛冶は帰ってしまった。そして、私とサイコロステーキだけが残された。なんか気まずいんだけど‼︎コイツ最近照れるしさぁ‼︎
「と、とりあえず入るか………///」
「そうね………///」
ただ、廊下でずっと突っ立ってても仕方ないので、仕方なく中に入ることにした。