サイコロ男と毒女   作:スピリタス3世

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第三話 自宅を守りきれ

  side しのぶ

 

 今日も今日とてサイコロステーキと一緒の任務。もう1年以上も一緒。正直うんざりだ。

 

「いつになったら私は別の人と任務できるの?」

「おそらく、俺が柱になったらか?」

「そこまでかかるの……」

 

 毎回2人で1体の鬼を倒してるから、昇格の早さも同じくらいになるはず。ちなみにこれまで倒してきた鬼は30体くらい。あと20体で一応柱だ。柱になれば、流石に合同任務ではなくなるだろう。そこまでコイツと耐えなきゃいけないのは嫌だけど。

 

「ちなみに俺は柱になったら金だけ貰って辞めるから、その時までの付き合いだな。」

 

 そんな事を思ってたら、クソがクソみたいな事を言い始めた。

 

「嘘でしょ⁉︎柱の任務はやらないの⁉︎」

「当たり前だろ。そのために続けてるんだから。」

「ホント最低………後学の育成とか十二鬼月の退治とかはどうすんのよ……」

「そんなの知らん、好きにやってくれ。俺は博打がしたいんだ!」

 

 どうやらコイツは自分のことしか考えていないみたいだ。

 

「アンタを特例で昇格させない事って出来るのかな?」

「そんなのできましぇ〜んw」

 

 何ができましぇ〜ん、だ‼︎ムカつく笑顔しやがって‼︎不幸になる暗示をかけてやる‼︎

 

「どうせなら無限の給料全部博打で溶かせばいいのに‼︎」

「おいやめろ‼︎俺の不幸を祈るな‼︎」

「すぐ博打で溶かして鬼殺隊に戻ってきそうだね!」ツンツン

「嫌だぁぁぁぁ‼︎それ聞いたら鬼殺隊辞められなくなるだろぉぉぉ‼︎」

「いつもお金が無いし、よく負けるのかな?」ツンツン

「今は下振れてるだけ‼︎下振れてるだけだから‼︎」

 

 どうせ下手くそなんだし、諦めて鬼殺隊続ければいいのに。私はバカな彼を人差し指で小突きながら、からかい続けた。

 

 

 

 

 しばらく一緒に街の中を歩いていると、ある長屋の一室の前でサイコロステーキは立ち止まった。

 

「ただいま〜♪」

「嘘でしょ⁉︎アンタの家なの⁉︎」

 

 どうやら彼の家らしい。意気揚々と扉を開け、玄関にあった藤の花のお香を焚いて寝っ転がり始めた。中に人は誰もおらず、すごい静かな雰囲気だった。こんな夜なのに、誰もいないって………

 

「そうだぜ!今は俺1人しかいないけど。」

「えっと………両親は?」

「どっちも鬼にさせられた挙句、酔っ払いの隊士に殺されたぞ?」

「そうだったんだ………なんかごめん………」

「気にすんなよ。親とのいい思い出全然ねえから、むしろ1人で気楽さ!」

「そう………」

 

 前に女好きの父親と博打好きの母親がいるって聞いてたけど、こんなに大変だったとは。普段脳天気だから、私みたいに悲しい思いを一切してないのかと思った。人は裏で大変な思いしてるんだなぁ。

 

「でも気遣ってくれるならお金ほしいぜ!」

「ふざけないで‼︎やっぱ気にしないことにする‼︎」

「くそっ!実話で泣き落とせると思ったのに!」

「アンタホントねぇ…………」

 

 まあ、コイツが糞野郎なのに変わりはないけど。嘘じゃないだけましか。

 

 それはさておき、サイコロステーキは任務中なのにもかかわらず、帰宅してくつろぎ始めた。

 

「それよりサイコロステーキ、任務は?」

「この街で目撃情報入ってるんだろ?なら夜明けまで待てばよくね?」

「なんで待つの?」

「この時間から戦ったら疲れるじゃん。」

「楽するんじゃないわよ!」

 

 やってる事は完全にサボりだ。ご丁寧に藤の花のお香まで焚いて、完全に寛ぐつもりらしい。なんなら寝過ごすんじゃないか?そんな不安さえある。自分の住む街の人が鬼に困っているというのに、呆れるくらい呑気な人だ。ホントムカつく。

 

(らく)(あく)じゃねえだろ。鬼は人間より体力あるんだから、長期戦は分が悪い。それに鬼にとって夜明けは日の出の恐怖に怯えなきゃいけない。じゃあ鬼が焦ってる夜明けに短期決戦挑むのかよくないか?」

「た、確かに………」

 

 そんな事を思ってたら、意外と真っ当な意見を言った。確かに人間は鬼に体力面で劣る。だから短期戦に持ち込み、更に日の出を利用する。納得の作戦だ。とても目の前のバカな脳みそから出た内容とは思えない。本当にこの人はサイコロステーキなの?

 

「それに、家帰ってきたら遊びたくなるからな‼︎」

「それが本当の理由でしょ‼︎」

 

 サイコロステーキだった。

 

 

 

 しばらくすると、彼は棚からあるものを取り出した。

 

「サイコロ………?」

「呼んだか?」

「いや、アンタの手に持ってる方よ。」

「ああ、これか。」

 

 名字の賽子と物体のサイコロが紛らわしいのはさておき、彼はサイコロ3つとお椀を取り出した。これはもしや…………

 

「これはチンチロ用のやつだ。」

「家にあるの⁉︎」

「当たり前だろ。」

 

 やっぱり‼︎このバカ、家でも博打やってるのか‼︎

 

「ところでしのぶ、お前今いくら持ってる?」

「私はやらないから‼︎」

「は?お前賭け事を断る失礼な奴だったのか?」

「失礼はアンタだよ‼︎それに今は任務中でしょ‼︎どこに仕事サボって博打やるバカがいるのよ⁉︎」

「ここにいるぞ。」

 

 しかも私を誘うつもりだったの⁉︎博打なんかやるわけないのに‼︎さもやるのが当然みたいに誘いやがって!仕事中だし、ホント最悪な男………。こんな奴は無視しよう‼︎

 

「あぁ、もう‼︎ホント呆れた‼︎私1人で鬼を狩ってくるから‼︎アンタは好きにしてたら?」

「そう怒る事ないのに………」

「怒る事だよ‼︎」

「あっ、鬼を瀕死の状態にして玄関に置いといてな。最後は俺がやるから。」

「元気な状態で送りつけてやる‼︎」

「はぁ⁉︎お前ふざけてんのか⁉︎俺が博打できなくなったらどうするんだ⁉︎」

「悪い癖がなくなって最高‼︎」

「ホント性格の悪い女だな………っ‼︎」

「アンタにだけは言われたくない‼︎」

 

 ということで、私はろくでなしを置いて家を出る事にした…………

 

 

 

 

 

 

ガシャァァァァン‼︎

 

 

 

 

 

 のだったが、なんと爆音で家に鞠が突っ込んできて、あっという間に屋根を吹き飛ばしてしまった。

 

「「えっ?」」

 

 あまりの一瞬の出来事に、思わず私もサイコロステーキも固まってしまった。鞠が家を壊した?そんな威力になることってあるの?

 

「おっ、俺の家がぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 サイコロステーキが時間差で絶望しているのはさておき、こんな威力の鞠を人間が蹴ることが出来るだろうか?いや、無理だ。だとすると、目撃情報のあった鬼がくる…………っ‼︎

 

「おお!こんなところに鬼狩りがおったか‼︎面白いのぅ‼︎返り討ちにして食ってやるのじゃ!」

 

 きた‼︎通路側から女の無邪気な声‼︎発言からして、間違いなく鬼‼︎ここで仕留めにいく‼︎

 

「サイコロステーキ、鬼だよ‼︎行くよ‼︎」

「待て、しのぶ‼︎今は玄関にお香が置いてある。だからしばらく中から覗いて、敵の様子を見よう。」

「藤の花のお香じゃと?こんなものは、鞠で蹴飛ばしてしまえ‼︎」ガシャァァァァン‼︎

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 様子見する間もなく破壊されるお香。絶望するサイコロステーキ。藤の花が玄関に散らばり、余計に入りにくくなってはいるが、この鬼に通用するのだろうか?恐らく壁を破壊してそこから入ってくる事を選ぶだろう。

 

「ぬっ⁉︎お香が散らばって入りにくいのぅ‼︎どうすればよいのじゃ⁉︎」

 

 アンタもバカなんかい‼︎お香ごと消し飛ばせるわけないでしょうが‼︎

 

「今のうちに裏口から逃げるぞ、しのぶ‼︎」

「逃げてどうすんのよ⁉︎ここで仕留めなかったら街の人に迷惑でしょ‼︎アンタの知り合いとかいるでしょ‼︎」

「うちの家は親があんなだから腫れ物扱いされてたんだ‼︎だから街の奴らに情なんか無い‼︎」

「でも、鬼を狩るのが鬼殺隊の仕事でしょ‼︎」

「柱とか強い奴呼べばいいだろ‼︎俺は雑魚狩りしかやらん‼︎」

「こんの…………っ‼︎」

 

 そして、慌てて逃げようとするサイコロステーキ。私を置いてくつもりがないのは感心するけど、逆にそれ以外はダメダメだ。

 

「私は十二鬼月だから藤の花もいけるはず………ぎゃぁぁぁぁぁ‼︎やっぱやめとくのぅ‼︎」

「おいしのぶ‼︎相手は十二鬼月だって‼︎俺たちじゃ敵うわけないだろ‼︎だから逃げるぞ‼︎」

 

 前門のバカと後門のバカ。本当にイライラする。もうどうにでもなってしまえ‼︎

 

「蟲の呼吸 蜂牙ノ舞 真靡き‼︎」

「ぎゃぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 こうして私は、玄関から外にいた鬼に向かって高速で踏み込んでいき、そのまま突いて毒を注入し倒した。相手は十二鬼月とは名乗っていたものの、それほどの強さは全く無く、瞳にもその証拠は見られなかった。

 

「ほら、鬼倒したから。安心して。」

「賽の呼吸 壱ノ目 双六!」

 

 ただ、サイコロステーキは私に手柄を取られたのが悔しかったのか、いきなり剣を持って私に向かって突っ込んできた。嘘でしょ………流石に仲間を殺すほど酷い人間じゃないと思ってたのに………。仲間の命だけは見捨てないような人だと思ってたのに………

 

 

 

 

 

 

 

「ぐわぁぁぁぁ‼︎」

 

 そんな事を思ってたら、私の上から鬼の悲鳴が聞こえた。どういう事?

 

「えっ?」

「お前の上から黙って襲いかかってきた鬼がいたぞ。お前は気づいてなかったけど。」

「あっ…………」

 

 そう言われて後ろを見ると、確かに別の鬼が死にゆく様子が見られた。鞠鬼を倒してこれで全部だと思っていた。

 

「ごめん、油断してた………」

「そういう時はありがとうだろ!」

「あり………がとう………///」

 

 なんだかんだ私のことを助けてくれる。本当は逃げ出したいはずなのに。なんなら私を見捨ててもおかしくないのに。9割悪いところだらけなのに、残り1割に意外といいところがある。

 

「あと、そういう時は金だろ‼︎」

「ごめん、油断してた。アンタはそういう奴よね。」

「うるせえ‼︎あと、他に鬼がいないか探すぞ。」

「うん!」

 

 そんな男に、私は毎回振り回されている。

 

 

 

 任務後、私たちのところに姉さんがやってきた。

 

「しのぶ〜、サイコロステーキ〜、聞いて!私柱になったわ!」

「ホント⁉︎姉さん凄い!」

「流石です、カナエさん!俺が見込んだ女なだけあります!」

「アンタは何様のつもりよ‼︎」

 

 どうやら柱になったらしい。入隊してたった一年で柱。本当にすごい人だ。隣のバカとは違って、本当に尊敬できる。

 

「それでね、私の屋敷を建てる事になったんだけど……また家族で住まない?」

「ホント………いいの?」

「いいわよ!」

「ありが………とう………」

「しのぶ⁉︎そんな泣かなくていいのに〜!」

 

 そして、姉さんとまた一つ屋根の下で暮らせる。同じ家族として。その事実が本当に嬉しくて、つい涙が出てしまった。

 

「それじゃあよろしくね、しのぶ、サイコロステーキ!」

「「えっ?」」

 

 そんなのも束の間、姉さんのあり得ない発言で涙が引っ込んだ。

 

「俺も………ですか?」

「姉さん、コイツは要らないでしょ‼︎」

「だってさっきお家が壊れちゃったんでしょ?そしたら住むとこ無いわよね?」

「いや、まあそうですけど………それはこれから探そうと思ってましたし……」

「なら一緒に住もうよ!しのぶも喜ぶし!」

「喜ばないから‼︎姉さん、こんな奴捨てた方がいいって‼︎」

「本当ですか………?俺、カナエさんと同棲出来るんですか⁉︎」

「こらそこ、はしゃぐな‼︎」

 

 コイツと同棲⁉︎あり得ないあり得ない‼︎私の大好きな胡蝶家に、こんな金に汚い博打狂いは要らない‼︎

 

「ということで、しのぶとサイコロステーキ、同棲決定〜!」

「カナエさんと住めるなら………しのぶのことは我慢しましょう‼︎」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 こうして、私はサイコロステーキと同棲するハメになってしまったのだった………

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