side 無惨
今日は実に気分がいい。長年鬱陶しいと思ってきた存在を抹消できるのだから。頭領を失った鬼狩りどもは混乱し、あっという間に私にひれ伏すだろう。そうすれば、私の平穏な暮らしの完成。さあ、死ぬがよい。
そう思いながら、産屋敷邸の中を歩いていると…………
「お久しぶりです、鬼舞辻無惨。」
憎たらしい女、珠世が目の前に現れた。この女は私のことを裏切った上、殺そうとまでしてきた野蛮な女だ。自分の夫や子供を殺したのは自分のくせに、私に逆恨みをする屑である。
「よくも裏切ってくれたな、珠世‼︎」
「それはあなたに嫌気が差したからですよ。」
「そんなちょっとした気分だけで人を裏切るとか、頭おかしいんじゃないのか⁉︎」
「貴方に言われたくない‼︎」
邪魔だ。産屋敷の前に、この女から殺してしまおう。幸い護衛は他にいないし、やりやすい。
「まあいい。ここで死ね。」
「それは私のセリフよ‼︎一緒に地獄に堕ちろ、鬼舞辻無惨‼︎」
「やれるものならやってみろ‼︎」
さてと、殺すか…………
「それはさておき…………」
ん?どういうことだ?珠世は何をさておくつもりだ?殺し合いをしないのなら何をする?まさか悪あがきか?そんなものがこの女に出来るというのか?
「いらっしゃいませいらっしゃいませ〜!ジャンジャンバリバリジャンジャンバリバリ〜!本日はお頭の悪い中、パチンコウブヤシキ・浅草店のグランドオープンにお越しくださり、誠にありがとうございます。」
は?何を言ってるんだ、この女は?パチンコウブヤシキ?頭がおかしくなったのか?
「夢のようなお時間を、あちらの台と共にお楽しみください〜!」
そう言われて右を見ると、とても派手で意味不明な遊戯台のようなもの(パチンコ)が置かれていた。なんだこれは?何がしたいんだ?何かの罠か?
「当店では椅子の回転によるブレがないよう、お客様を拘束させていただきます。」
そして珠世がそう言うと、周囲の地面から大量の黒い棘が出てきた。しまった‼︎早く棘から抜け出さないと………っ!くそっ、棘がどんどん枝分かれして抜けなくなっている……っ!
「こちら、お客様が浅草で鬼にした人の血鬼術でございます。更に当店では、博打を楽しむためのお薬まで用意しております。それではどうぞ!」
そう言って、珠世が私の身体に手を突っ込んできやがった。くそっ!全身が強張る!なんだこの薬は⁉︎
「中身は鬼を人間に戻す薬です。ですが、それ以外にも………」
珠世の奴、なんてものを作りやがったんだ‼︎くそっ!早く逃げださ………ん?金?なんだこの高揚感は?なんで私は今まで興味がなかったものに目が眩んでいる………?
「こちらのお金、そちらのパチンコと呼ばれる遊戯台を遊ぶためのものです。玉をいっぱい集めて、景品と交換してくださいね。」
何故だ?知らない言葉ばかりなのに、妙に身体が興奮してしまう。これは一体なんだ?この感情は?
「ちなみに景品を持ったお客様は、よくあちらの古物商に行かれるそうです。」
古物商………なぜそこで換金ができると肌で分かる?こんなもの見たことも聞いたこともないのに。そして、目の前の台にお金を投入せずにはいられない‼︎
「珠世、貴様何をした⁉︎」
「お客様に博打中毒になる薬を投入しました。」
「はぁ⁉︎」
この女は何を言っているんだ⁉︎博打中毒⁉︎薬でなるものではないだろう⁉︎
「これはある博打好きの鬼狩りから採れた血を用いたものです。お客様を葬るために協力してくださりました。」
そんなバカなことがあるのか⁉︎人を狂わせるほどの血液⁉︎というか博打狂いって………数々の上弦を卑怯な技で倒したあの馬鹿面じゃないか⁉︎ふざけるな‼︎私の血はそんなものに汚されるのか⁉︎
「ふざけるな⁉︎たがが人の血でそんなものになってたまるかぁぁぁぁ‼︎」
「お馬鹿様……間違えた、お客様、暴れないでください。暴れる人にはこうです。縁壱さん‼︎」
縁壱………?どこかで聞いたことあるような………?いや、気のせいだよな…………
「「「「「何が面白い?何が楽しい?命をなんだと思っている?」」」」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
気のせいではなかった⁉︎あの男生き返ったのか⁉︎嘘だろう⁉︎しかも分身の術だと⁉︎ぱっと見10人くらいいるんだが⁉︎やはり本物の化け物‼︎ここは逃げるしか…………
「お客様、パチンコから逃げるのですか?」
「くっ…………!」
くそっ、こんな機械微塵も興味ないのに‼︎身体が、身体が勝手に打ちたくなってしまう…………っ‼︎
「ではお客様、ご遊戯をお楽しみください‼︎」
こうして、私は何人もの縁壱に囲まれながらパチンコを打ち始めた。
side しのぶ
鬼舞辻がパチンコを打ち始めたあたりで、私たちも遠くでパチンコを打つことになった。私たちが打った出玉を鬼舞辻にぶつけて傷を負わせる。そして朝まで耐久で打ち続け、鬼舞辻を珠世さんごと太陽で焼く仕組みだ。
「過去に人を殺したから自分も死ぬ。筋は通ってるのね。」
「そうだな。こればかりは庇いようがないしな。」
そう真面目に言いながら、隣でパチンコを打ってるサイコロステーキ。その様はとてもこなれていて、未来の機械で遊んでいるとはとても思えないようだった。流石は博打狂い。鬼舞辻を狂わすだけの血を持っているのね。
「くそっ、また外れた‼︎誰か遠隔してんじゃねえのか⁉︎」
「何にキレてるのよ…………それなら当たり外れなんて無くせばよかったのに。」
「馬鹿野郎‼︎パチンコに運要素がなくてどうする⁉︎」
「戦いに運要素は要らないのよ‼︎」
にしても、ホント不安なんだけど。鬼殺隊全員でパチンコを打ってるけど、当たり外れがあるから攻撃力に波があるし。しかも珠世さんがどこまで持つか分からないし、あの薬も効くか分からない。鬼舞辻が恐怖していると珠世さんから聞いて大量に製造した縁壱改式も、どこまでもつかは分からない。あとめちゃくちゃうるさい。なんなの、この騒音?もう少し音量下げられないの?耳が壊れそうなんだけど。未来の人たちはどうやって耐えてるのよ?
それはさておき、鬼舞辻は大丈夫かな…………
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎また外れたぁぁぁぁぁぁ‼︎お金たちよ、私を置いて行くなぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
大丈夫そうだな。めちゃくちゃハマってるじゃん、鬼舞辻。どんだけコイツの血ヤバいのよ。性格的に博打なんか嫌いそうなのに。この調子じゃ、朝まで粘着しそうね。
数時間後、太陽は昇り、熱中していた鬼舞辻は呆気なく燃やされた。
「よもやよもやだ‼︎」
「派手にパチンコを打ってたら鬼舞辻が死んだぜ!」
「鬼の主人がこんなものだったとは………嗚呼、頭が可哀想だ………」
「サイコロステーキの血ィヤバすぎだろォ。」
「パチンコ、今後もやってみようかな………」
「俺はパチンカスじゃない。」
「いっけんなんちゃらだね♪」
「一件落着だ、甘露寺。」
「パチンコの音で耳が痛い………」
「大丈夫か、もんいつ⁉︎」
「善逸、診てもらおう。」
「ぜ・ん・い・つ・さ・ん………」
「禰豆子ちゃぁぁぁぁぁん⁉︎」
「珠世様ぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
長年追い続けてきた鬼の主人、鬼舞辻がこんな無様を晒すとは………。結局ほとんどの強敵をろくでもない技で倒してしまったな。でもまあ、それがサイコロステーキらしいか。
「流石だわ、しのぶ、サイコロステーキ!」
「鬼舞辻を倒しましたね‼︎おぉぉぉぉぉぉぉん‼︎」
「ありがとうございました………」
「「「流石です!」」」
「ありがとう、皆!」
「ありがとうございます!」
こうして、私たちはこの世から鬼を滅ぼすことに成功したのだった。
次回、最終回です!お楽しみに‼︎