side しのぶ
無惨との最終決戦、もといパチンコグランドオープンの翌日のこと。私たちは最後の柱合会議に出席していた。
「今日は来てくれてありがとう。行冥、天元、義勇、カナエ、実弥、しのぶ、サイコロステーキ、杏寿郎、無一郎、小芭内、蜜璃。」
お館様は今までの病気が嘘のように治り、とても元気な姿になっていた。鬼舞辻を倒したことが関係しているのだろうか。正直私でも分からない。
「まさか全員揃って鬼舞辻を倒せるとは思わなかったよ。本当にありがとう。」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「お頭をお上げくださいませ、お館様!」
そして、鬼殺隊の長ともあろうお方が私たちに頭を下げてくださった。本当に素晴らしいお方だ。流石のサイコロステーキも、この様子を見たら態度を改めるだろう。
「で、退職金はいくら貰えます?」
そんな事はなかった。本当にコイツは………っ!
「アンタ、ちょっとは敬うとかしなさいよ‼︎最後なんだしさ‼︎」
「誠意というのは礼儀じゃなくて金だろ?」
「なわけあるか‼︎本当に申し訳ございません、お館様‼︎」
「いいんだよ。サイコロステーキには本当にお世話になったからねぇ。」
「そうでしょうそうでしょう‼︎」
「アンタは調子に乗るな‼︎」
まるで目の前の人間を札束としか思ってないかのような態度。本当に最初から最後まで失礼な奴だな。そういうところは全く成長しなかった。お館様もこんな奴に退職金なんか渡さなくていいのに。
「ほれ、これがサイコロステーキの分の退職金だよ。」
そんな事を思っていると、お館様がサイコロステーキの退職金を封筒に入れて渡してきた…………私に。
「「えっ?」」
「しのぶは奥さんなんだから、彼のお金も管理してあげてね。」
なるほど、そういうことか!それなら納得!どうせコイツに渡しても、無駄遣いされるだけだしね‼︎
「分かりました♪」
「ちょっと待って下さいよ‼︎それは俺の金でしょう⁉︎」
「アンタの金は私の金よ♪」
「テメェふざけんな‼︎返せぇぇぇぇぇ‼︎」
「いい加減諦めろォ、サイコロステーキ。」
「貴様はどうせすぐ博打に溶かして捕まるだろう?ならばこれは合理的な采配だ。」
「確かに。」
「夫婦で仲良く財布を一つ………嗚呼、尊い………」
「派手に子育てにでも使いな‼︎」
「自分のために使うより有意義だろう‼︎‼︎」
「「2人とも仲良く、ね!」」
「…………」
「皆さんも見守ってないで取り返して下さいよぉぉぉぉぉぉ‼︎」
「ドンマイ♪」
「しのぶ、お前だけは許さねえぞ‼︎」
まあ、お小遣いとして全額渡すからいいよね。博打には使わせないけど。合法化したらいいけど、非合法なら捕まるし。犯罪はやっぱりいけないよね、うん!
最後の柱合会議後、私たちは蝶屋敷へと戻ってきた。
「しのぶ、お金ちょうだい♪」
「博打に使わないならいいよ?」
「なんでそういう縛りを課す?お前は俺をいじめたいのか?」
「別にそういうわけじゃないよ。ただ博打は犯罪だからな〜♪」
「法律如きで俺を縛れると思うなよ?」
「縛られろ‼︎」
そこではカナヲたちが炭治郎君たちと談笑しながら待っていた。
「「「「「おかえりなさい!」」」」」
「ただいま帰ったわ!」
「世界一カッコいい男が帰ってきたぜ。」
「ごめんね、皆。最後までサイコロステーキがこんな感じで。」
「「「慣れました!」」」
「ごめんね。」
カナヲとアオイ。拾った時は本当に弱っていたけど、ここまで回復した上に、立派になるとは………。成長したね。なんだか涙が出てきそうだ…………
「師範、泣かないでください……!」
「大丈夫ですか⁉︎」
「いや、その………感動してるだけだから………」
「サイコロステーキ、しのぶを慰める番よ!心も身体も!」
「一言余計ですよ、カナエさん⁉︎///」
鬼殺隊を辞めた後は、この病院を民間用に転用する。だから皆とお別れするわけじゃないけど、一緒にいる時間は短くなる。アオイとカナヲはここで働きながら、2人とも炭治郎君の家で善逸君や伊之助君たちと暮らすから。すみ・きよ・なほも結婚相手が見つかったので引越すし、姉さんも不死川さんの家で暮らしながら通うことになるし。みんながそれぞれの人生を歩み始めるのだ。
「そういや愈史郎、お前はどうするんだ?」
「俺か?俺は引きこもって珠世様の絵を描き続けるが………」
「それはいい………いいんだが、ついでにで病院で働かないか?俺の顔を見ていれば寂しさも紛れるだろ?」
「お前が一番要らねえよ‼︎」
「なんだと⁉︎」
そんな中、唯一私とずっと一緒に暮らすことになるサイコロステーキ。なんだかんだ色んな人を気遣ってくれる。これで博打好きな性格が無ければ良かったんだけどな。まあ、それも個性だから仕方ないか。鬼舞辻すら狂わせるほどの血の持ち主だもんね。
しばらく準備やらでドタバタした後、とうとう皆が引越してしまい、2人きりで過ごす最初の夜がやってきた。
「なんだか寂しくなったね。」
「だな。2人だけだと、随分と広いな。」
「そうね………」
この静けさ、刀鍛冶の里でのことを思い出す。あの時も2人同じ部屋で泊まったな。今日からはそれがずっと続く。そう思うと、なんだか不思議な気持ちになった。
「しのぶ、そういや名前なんだけどさ………」
「名前?」
「胡蝶ステーキとサイコロしのぶ、どっちがいいと思う?」
「なにその芸人みたいな名前。」
「結婚したらどっちの苗字にするか、だよ。」
そういや考えてなかった。でも、答えは決まってるな。私たちの思い出は、この蝶屋敷で作られたものだから………
「ならアンタが良ければ………胡蝶でいいかな?」
「いいぜ‼︎よろしくな‼︎」
「うん!」
やはりこっちだろう。それに、彼は実家にあまりいい思い出がないし。いい思い出がある胡蝶の方が本人にとっても嬉しいかな?
「それからよ、夫婦の役割分担の話なんだが………」
「ん?役割分担?」
「お前が金を稼ぐ係で俺が金を使う係な。」
「そんなの認められるかぁ‼︎」
「間違えた、俺は金を賭ける係な。」
「もっとダメでしょ‼︎」
にしても、相変わらず博打する気マンマンね。確か八之森さんとパチンコ屋を共同経営するって言ってたけど、客としても普通に行きそうよね。しかも三店方式という変な手法で法律の目を掻い潜るらしい。カナヲも副業で絡む*1とのこと。まあ私としては、捕まらなければ打たせてもいいかな。別に好きなものを規制したいわけじゃないし。
「でもまあ、法律に引っかからなければやってもいいよ。」
「ありがとう。その言葉を待ってたぜ!」
「ホント好きよね。」
「お前と同じくらいにな///」
「えっ…………///」
ちょっと‼︎急に言うのやめてよ‼︎ドキッとするじゃん‼︎今までそんな直接的に言われたことなかったから、緊張しちゃうって‼︎ああ、もう、言っちゃえ〜‼︎
「わ、私も好き………///」
「そうか………///」
「これからも、よろしくね………///」
「こちらこそ、よろしくな………///」
最終選抜で会った、木に火をつけた馬鹿な男。まさかその男と結婚するなんて。あの時は思ってもいなかった。博打が大好きなサイコロ男と、薬づくりが得意な毒女。こんな数奇な2人でどんな家庭を作っていくのか、それが楽しみに感じた日だった。
これにて「サイコロ男と毒女」は完結です!2人の物語は如何だったでしょうか⁉︎今まで読んでくださり、ありがとうございました‼︎