サイコロ男と毒女   作:スピリタス3世

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第六話 問題児、柱になる

  side しのぶ

 

 那田蜘蛛山での任務から数日後、私はアオイを診察していた。

 

「どう、落ち着いた?」

「少しは落ち着いてきたのですが………その………」

「やっぱり鬼が怖い?」

「…………すいません。」

 

 申し訳なさそうに俯く彼女。やはり心に出来た傷は大きいな。これは隊士を引退して、隠に移行するしかないだろう。

 

「じゃあ俺と一緒だな!一緒に金だけ貰って引退するか!」

「頭の病気の人は黙っててくれる?」

「うるせえ!」

 

 一方で、堂々と汚い笑顔で言い放つサイコロステーキ。申し訳なさなど微塵も感じない。後で鬼畜な任務を処方してあげよう。

 

「でも、頑張って病気治すので………」

「精神系の病は無理に治そうとすると余計悪化するからね。鬼を殺したいって気持ちは分かるけど、隣のバカが代わりに頑張ってくれるから大丈夫。」

「俺は頑張る気はさらさらねえぞ。もう引退するし。」

「どうせすぐお金無くすんだから、大人しく続ければいいのに。」

「うるさい‼︎そんな酷い事を言うな‼︎」

「酷いのはアンタの頭よ。」

 

 このバカの頭も無理に治そうとすると悪化するのだろうか?いや、日々勝手に悪化していくだけか。こんな奴は放っておいて、アオイに寄り添った治療を考えないと…………

 

 

 そんな事を思っていると、

 

「それはさておき………アオイ、この蝶屋敷で働いてみないか?」

 

 サイコロステーキが変な事を言い始めた。

 

「「働く………?」」

「この屋敷、家事担当が足りてなくてよ。掃除や洗濯を手伝ってくれる人間がほしいんだよ。直接は鬼を殺さねえかもだけどさ、ここの仕事を頑張ることによって、より元気になった隊士たちが鬼を殺してくれるだろ?自分に引け目を感じてるかもしれねえけど、そんなのこの屋敷に入ったら無くなるぜ!絶対やりがい感じると思うから!」

 

 確かに、家事の人数が足りてないかも。今は隠の何人かに手伝ってもらってるけど、出来ることなら自分たちだけでやれるようにしたい。それに、この子も鬼狩りと関わることで間接的に鬼退治に協力できる事にやりがいを見出せるかもしれない。よくこんな事思いつくなぁ。

 

「確かに。アオイが良ければ家事を手伝って欲しいんだけど………」

「い、いいんですか………⁉︎」

「ええ。」

「ああ‼︎」

「やります‼︎全力でやらせていただきます‼︎」

 

 どうやらアオイもやる気みたいでよかった。その姿がなんだか可愛らしくて、自分に妹が出来たような感覚だった。これから同じ家族として、一緒に楽しく過ごせたらいいな。

 

「よっしゃ‼︎これで俺の後継者が出来たぜ‼︎気兼ねなく引退出来る‼︎」

「アンタを逃すわけないでしょ。」

「ざんね〜ん♪なんせ無限の給料が手に入るからな〜♪」

「しのぶさん、この人…………」

「ごめんね、アオイ。こいつ本当にろくでなしなの。厳しくしてあげて。」

「はい‼︎」

「そこは優しくしてあげて、だろうが‼︎あとアオイ、そこは返事するな‼︎」

 

 にしても、コイツ本当にクズだなぁ。ただ単に自分が博打したかっただけじゃん。まあ、それもしばらく出来ないんだけどね。

 

 

 

 

 

 その日の診療が終わった後、私たちは柱合会議に向けて準備をしていた。

 

「柱〜♪無限の給料〜♪」

「そろそろ出発するよ。」

「2人で仲良く先行ってて〜♪」

「姉さん、2人きりにしないで‼︎」

 

 私とサイコロステーキは先日十二鬼月を倒したので、2人揃って柱に昇格する事になった。姉さんと同じ役職になれたことが嬉しいが、正直自分の強さには全くもって自信がない。ただ柱になった以上、その任務はちゃんとこなしたい。今日はその第一歩だ。

 

「アオイ、留守番よろしくな〜!」

「カナエさん、しのぶさん、サイコロステーキ先輩、いってらっしゃいませ‼︎」

「行ってくるわ〜♪」

「任せたぜ!」

「どんな呼び方よ⁉︎」

「俺がきちんと教えておいた。」

「余計な事教えるな‼︎」

 

 隣のバカまで柱になるのが不安だけど、私は私のことを頑張るしかないな。そう思いながら、私は柱合会議に向かった。

 

 

 

 

 

 柱合会議の開催場所、お館様の屋敷に着くと、早速悲鳴嶼さんが待っていた。

 

「お久しぶりです、悲鳴嶼さん。」

「しのぶとサイコロステーキも柱になりましたわ!」

「初めまして、そしてさようなら。賽子厚切焼肉です。」

「2人仲良く柱………尊い………」

「泣かないでください‼︎あと仲良くないです‼︎」

「それはそうと……山を燃やしたのはいただけない。柱として、隊士の目標になる行動を心がけてもらいたい。」

「その件は本当に隣のバカがすいませんでした。」

「安心してください、金だけもらっていなくなるんで。」

「安心できるかぁ‼︎」

 

 柱の大先輩にもこの態度。流石の頭の悪さだ。もうちょっと礼儀というものを知った方がいいと思う。

 

 待っているうちに、次々と柱がやってきた。

 

「カナエから聞いたんだがなァ、山を燃やした馬鹿隊員ってのはそいつかィ?」

「しのぶ、鬼みたい奴が来たんだけど⁉︎逃げるぞ‼︎」

「不死川さん、お久しぶりです。彼のことは遠慮なくお叱りください。」

「俺を売るなぁぁぁぁぁ‼︎」

「安心しろォ。後でいっぱい稽古をつけてやる‼︎」

「嫌だぁぁぁぁぁぁ‼︎って、俺引退するんだった♪」

「あァ?何言ってんだテメェ?」

 

 まずは不死川さん。姉さんと仲がいい。というか姉さんが普通に気になってる人である。荒々しい見た目とは裏腹に礼儀正しく常識的で、このバカのしつけにピッタリだ。

 

「おお‼︎恋仲同士で下弦を倒すとは、派手な連中じゃねえか‼︎」

「「恋仲ではありません‼︎」」

「派手に息ピッタリだな。」

「お似合いでしょう?私のイチオシの恋人たちです!」

「「姉さん‼︎(カナエさん)‼︎」」

 

 次に宇髄さん。たまに病院に来てた人。奥さんが3人いるらしい。頼むから私とコイツのことを勘違いしないで欲しい。

 

「…………」

「姉さん、あの喋らない人は?」

「あの人は冨岡義勇くん!水柱よ!」

「………俺は柱じゃない。」

「初めて声聞いたわ!」

「柱じゃないなら私が代わりに給料もらいましょうか?」

「アンタは初対面の人に図々しくするな‼︎」

 

 そしてずっと離れたところに突っ立っている冨岡さん。とても変わった人だ。柱の皆と仲良くないのかな?

 

 

 

 

 その数分後、いよいよお館様が現れた。*1

 

「皆、待たせてすまないね。」

 

 また、その隣には奥様のあまね様がいらっしゃった。初めてお会いしたけど、2人ともとても優しそうな方だ。心が落ち着くような声をしている。私とサイコロステーキを無理矢理くっつけようとしてくる以外はとても良い人なんだろうなと、初対面ながらに思った。

 

「いえいえ。それにしても美しい奥さんですね。俺の方が先に出会っていたら、きっと全力で口説き落としていたでしょう。」

 

 だからこそ、いきなり無礼な態度を取ったサイコロステーキを殴りたくなった。

 

「申し訳ございません、お館様。このバカには後できっちり指導をしておきます。」

「いや、構わないよ。あまねは私自慢の奥さんだからね。」

「ありがとうございます///」

 

 そんな無礼な男に微笑みかけ、更には自分の奥さんすら照れさせる素晴らしいお方。本当に隣のバカとは器の大きさが天と地ほど違う。本当に同じ人間なのだろうか、はたまた疑問に思う。

 

「君もしのぶを幸せにしておやり。」

「なんでですか⁉︎」

「それは全力で断らせていただきます。」

「それはそれでムカつく‼︎」

 

 ただ、私とコイツをくっつけるのだけはやめて欲しい。本当に。

 

 そんな事を思っていると、

 

「早速なのですが、給料の申請をさせていただきたく。」

 

 バカが余計な事を言い始めた。

 

「会議始まっていきなりそれはないでしょ‼︎」

「でもよぉしのぶ。金もらったら引退するんだから、会議は関係なくないか?」

「「「引退⁉︎」」」

 

 周りの皆も驚く。それはそうだ。柱になってすぐに金だけ貰って辞める奴なんて、普通は居ないから。存在自体が失礼と言わんばかりの糞野郎以外は。だが、コイツの思い通りになんてさせない。

 

「それなんだけどね………君、2回山火事を起こしたでしょ?」

「鬼を倒すためには仕方がなかったので‼︎」

「それの賠償金や修繕費やらで、君の給料の分はしばらく無いんだよ。だから少なくとも半年間は、柱として働いてね。」

「は?」

 

 私は事前にお館様に手紙を送り、コイツの減給や罰を提案していた。こんだけ好き勝手やって金だけ貰うとか、流石に許せない。鬼を狩る上でどうしても回避できなかった損害とかはまだいいけど、自分から壊しにいくのは論外だ。あとコイツが出てったら美味しいご飯が食べられないし。

 

「ふざけないでくださいよ‼︎なんで金が貰えないんですか⁉︎無限の給料は⁉︎」

「しのぶの提案でね。自分の給料も減らしていいからとお願いされたんだ。」

 

 だから自分の身を削っても、コイツを巻き込んだ。少しは反省しろ‼︎

 

「やはり好きな人には出ていって欲しくないんだね。」

「それは違います。」

「私もその気持ち、分かります。」

「同情しなくてもいいんですよ、あまね様?」

「なるほど、派手な理由ですげえぜ‼︎」

「尊い………これが恋仲の絆………」

「だから違いますって‼︎」

「そうでしょう?私の自慢の妹とお義弟です♪」

「姉さん、勝手に結婚させないで‼︎」

「大丈夫なのかァ、しのぶ*2?」

「大丈夫じゃないです。」

「……………」

「何か言ったらどうなのですか、冨岡さん?」

 

 ただ、周りの反応は地獄だった。どうしてそんなに私とコイツをくっつけたがるのか。おおかたからかっているのだろう。冨岡さんは我関せずだし。頼りになるのは不死川さんだけだ。

 

「おいクソ女‼︎お前ふざけるなよ‼︎俺の博打計画はどうなるんだ⁉︎」

「どうせ貰った給料全額溶かすんだからいいでしょ。」

「そんなわけねえだろ‼︎倍増させるんだよ、倍増‼︎」

「そう言って上手くいった事、今まであったっけw」

「うるせえ‼︎今は下ブレが長いだけっつーの‼︎」

 

 そして、コイツはちゃんと反省するのだろうか?そんな事を思った1日だった。

 

 

 

 

 

  side ??

 

 博打好きの鬼殺隊士………本当に許せません。反吐が出ます。私が殺してあげましょう。

*1
しのぶは原作より少し早い時期に柱になった。そのため、煉獄・伊黒・甘露寺・無一郎はまだ柱になっていない。

*2
原作と異なり姉妹健在のため、区別用に下の名前で呼んでる




 しのぶさんに「ざぁこ♡ざぁこ♡」って言わせようとしたけど、流石にやめました。
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