side しのぶ
さて、この琵琶鬼をどうやって殺そうか………
「賽の呼吸 壱ノ目 双六‼︎」
「………」ベベン!
「なっ⁉︎」
サイコロステーキが突っ込んだ瞬間、琵琶の音が鳴った。そしてその刹那、突如空中に現れた襖の中にサイコロステーキは飛び込んでいき………
「あれ………?」
何故か私の後ろに転がり落ちてきた。前に動いていたはずなのに。まるで瞬間移動したかの如く、物理的にあり得ない動きだった。
「空間転移系の血鬼術ね。」
「それだけだと思いますか?」
「えっ?」ベベン!
次は………隣から壁が迫り出してきた‼︎襖の瞬間移動以外もできるのか!とりあえず、壁ごと壊すのは突き技じゃ無理‼︎だから早く逃げないと‼︎
「危なっ!」
「危うく落とされるところだったぜ………」
サイコロステーキも無事逃げられた模様。だが相手は思ったより強敵だ。私たちは一応柱とはいえ、騙し討ちで下弦の伍を倒しただけ。だから真っ向勝負では他の下弦どころか、十二鬼月手前の鬼にも勝てる気がしない。そして、この鬼は恐らく十二鬼月手前くらいの実力。さて、どうしよう………
「城を手足のように動かすんだな。お前の血鬼術か?」
「見れば分かるでしょう。」
今は昼。だから前みたいに日光に晒して倒したいが、城が広すぎて端に到達できない。そもそも血鬼術で端の概念があるかも分からない。更には完全に閉じ込められていて、外からの援軍も呼ぶことができない。これは結構まずい状況だな……
「なるほどな………しのぶ、しょんべんするからこっち見んなよ‼︎」
そんな事を考えてたら、バカがバカな事をし始めた。
「アンタ何してんの⁉︎」
「人前で小便を垂れ流すとか、何を考えてるんですか?」
「自分の家でしょんべんされたら追い出すだろ?」
「バカじゃないの⁉︎」
「つーかしのぶよ。お前は俺が前もしょんべんしたの知ってるんだから驚くなよ。」
「同じ愚行を二回もしたら驚くでしょ‼︎」
「前もしたんですか?」
「うん………」
「あっ、うんこの方が良かったか?」
「「そういう問題じゃない‼︎」」
城を汚して追い出してもらうとか、ホント発想がバカすぎる。もうこんなのに構ってられない‼︎
「ならば、お前の嫌いな博打をここでやるか。」
「本当に殺されたいのですか?」ベベン!ベベン!
「うわっ、めっちゃ壁飛んできた‼︎危なっ‼︎」
相手がサイコロステーキに構ってるうちに…………
「蟲の呼吸
一気に詰め寄って刺す‼︎
「なっ‼︎速っ…………‼︎」ベベン!
くそっ!ギリギリ間に合わされた。襖で元いた場所まで一気に戻される。でも剣の一部を刺すことができたから、毒は確実に注入できたはず。
「うあぁぁぁぁぁぁっ!」
良かった、ちゃんと毒は入ったみたい。だがこれでは足りない。あと一撃入れないと‼︎
「しのぶ、やっぱお前速いな。全然目で見えなかったぜ。」
「力無い分速度に特化したからね。」
「俺も負けてられねえぜ‼︎」
サイコロステーキもあんだけ集中砲火を受けておきながら、全部避け切って傷無し。やっぱり普通に強いんだから、普通に戦えばいいのに‼︎
「ここで絶対にゾロ目を出す‼︎」
「「は?」」
そんな事を思っていたら、意味わかんない事を言い始めた。まさか、こんなところで博打を………?
「博打狂いはやはり醜いです………だから殺し甲斐があります!」ベベン!
「賽の呼吸 肆ノ目
「なっ………!壁が全部破壊され………っ⁉︎」
「お前の首もな‼︎」
「えっ…………?」
正面から来た敵の壁攻撃を、嵐を巻き起こすような連撃で全て破壊。更にはそのまま鬼の首まで吹き飛ばす威力。まさかさっきのゾロ目云々って…………
「もしかして、ゾロ目が出たから成功した的な?」
「正解!この肆ノ目はサイコロを2個*1振ってゾロ目が出たら大打撃を与える型だぜ‼︎」
「ちなみに揃わなかったら………?」
「不発‼︎」
「だいたい揃わなくない⁉︎」
「だからこそ、揃った時が強えんだよ‼︎」
「なるほどね………」
またもや運頼みの型だった。しかもゾロ目が出る確率とか、今までの1/2より低い。確か1/6なはず。それをこんなところで大博打打ってくるとか、ホントコイツは呆れた博打狂いだ。
side 鳴女
なんで博打狂いに殺されなければいけないのか………。呼吸が博打要素しかないとか、本当にイカれてる。なんで当たって私が死ななければいけないんだよ………。私の人生、博打に狂わされてばかりだ………。そんな事を思いながら、地獄の扉を開けると…………
「っしゃあ親で嵐や‼︎お前ら1万円持って集合じゃぁぁぁぁい‼︎」
「「「くそがぁぁぁぁぁぁ‼︎」」」
チンチロで勝ってはしゃいでる元夫がいたので、
「死ね。」バゴン!
「ぐえっ…………なんでお前が………っ‼︎」バタン
「「「ありがとうございます‼︎」」」
金槌で殴って殺しておいた。
side しのぶ
なんとか琵琶鬼を倒せた。後は脱出するだけ………
ゴゴゴゴゴゴ
そんな事を思ってたら、いきなり城が音を立てて崩れ始めた。
「えっ⁉︎嘘でしょ⁉︎」
「マジかよ‼︎このままだと瓦礫に押し潰される‼︎」
このままだと下敷きになる‼︎そしたら2人共々お陀仏だ‼︎鬼を倒したのに関係ないとこで死んでいる場合じゃない‼︎
「瓦礫を壊さないと………っ!」
「任せろ‼︎賽の呼吸 肆ノ目 嵐………くそっ、不発だ‼︎」
「それだいたい不発でしょ‼︎」
「連発すればいつかは当たる‼︎嵐‼︎嵐‼︎嵐‼︎」
地面が競り上がるとともに、壁や天井が音を立てて崩れていく。なんとか突き技と賽の呼吸で瓦礫を壊しているものの、間に合わない………っ‼︎
「しのぶ、俺の下に隠れろ‼︎」
そんな事を思っていたら、サイコロステーキが私の上に覆い被さった。
「サイコロステーキ?それじゃあアンタが怪我するんじゃ………」
「どうせお前が治してくれるだろ‼︎それに頑丈な俺が盾になった方がいいはずだ‼︎いいから早く‼︎」
何も躊躇わずに、私のことを庇ってくれる。それでいて私に引け目を感じさせないよう、私の特技を活かした役割を与えてくれる。本当は自分が誰よりも生き残りたいはずなのに。誰よりも危ない目に遭いたくないはずなのに。
「ありがとう………///」
普段は馬鹿な奴だけど、この時ばかりは思わず赤面してしまった。
しばらくした後、私たちはなんとか地上に脱出することができた。
「危なかった………思ったより瓦礫が少なかったからへっちゃらだぜ!」
そういうサイコロステーキの顔は血まみれ傷だらけだった。たくさんの瓦礫にぶつかりながらも、嫌な顔一つせず私を庇ってくれた。太陽に照らされてにかっと笑う彼。気がついたら胸の高鳴りが止まらなくなってしまった。
「ありがとう………とりあえず治療するから帰るよ///」
「お前、血出てないのに顔赤いな?なんで?」
「うるさい‼︎静かにしてないと傷口開くから!///」
「なるほどな〜♪やっぱお前、チョロいな♪」
「だからうるさいって‼︎///」
日頃はここで評価を下げるんだけど、今日ばかりはどうしても照れたままだった。
「ひょっひょっひょ。私は上弦の伍・玉壺と申すものなり。鳴女殿の危機を聞いて参上………って太陽がぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
そのせいで、そばで勝手に死んだ上弦のことすら、全く気付かぬまま屋敷に帰ってきたのだった。
side 無惨
俊國していたら、無限城が消滅していた。
「何をしている、鳴女ぇぇぇぇぇ‼︎」