転生!Lyrical Music Start!   作:yatayata

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第三話 覚醒(笑)

 

 

 

「いっただっきまーふ!」

 

 

手洗いうがい風邪予防!を卒なくこなした後、私はリビングのテーブルに腰を掛け、甘美なおやつと紅茶を優雅に口にする。ふむん、やはり和菓子は最高だね!

 

幼稚園の友達や先生達は、我が家が洋菓子店だということで、洋菓子が沢山食べられて羨ましいと宣っていたが、ニンゲン、幾ら美味しいものでも飽きるもは飽きるのだ。たまには違うベクトルの甘さが恋しくなる。

……ってか、折角なんだから、和菓子には緑茶を出して貰いたかったぜ、母上よ。

 

我ながら、こんな事を要求するとはなんて6才だとは思うが。

 

 

たまたま目の前にリモコンがあったので、何と無くテレビのチャンネルを回してみる。と、ちょうど夕方ワイドショーのようだった。

このドラマの詳細は知らないのだが、とりあえずぼんやりと眺めてみることにした。お行儀悪いとか言わないで下さいね。

 

 

 

 

うーむ、なかなか修羅場ってますな。そのドラマは、言って見れば泥塗れの愛憎劇のようだ。画面内では、ヒロインと思しき女性三人が1人の男を巡って醜く言い争っている。正しく修羅場だ。

その場面が切り替わると、その言い争いの原因である主人公らしき人物は、また別の女と夜の密会を開いているようだ。

ふむ、このイケメン、なかなかのやりティンである。一体何人の女を泣かせ孕ませにかかってるのか。幾らフィクションの中の話とはいえ、全くドン引きだな~。このままだとnice boatされちゃうんじゃね?

 

 

「これほど『誠○ね』が似合うようなシチュもなかなか……」

 

 

ってあれ?私は何を言っているんだろう。

 

 

 

……またこれだ。ついこの頃。今まで耳にしたことも目にしたこともないような言葉を無意識に口にしてしまうことがある。

それは決まってアニメや漫画、映画などの娯楽作品を楽しんでいる最中に起こる。当初は些細なデジャヴだろうと気にも留めていなかったが、最近その数が異様に増えてきており、どうやら只事ではないと思い始めてきたところだ。

 

 

その事が気にかかってドラマになかなか集中できず、気晴らしにチャンネルをまた回してみる。

 

 

すると、今度は子供向けのアニメのようだ。

私はこの通りヘンテコなオナゴだが、アニメは並の子ども以上に好きだ。

子どもから大きなお友達向けの、あの日曜の朝放映の戦闘少女の物語も勿論欠かさずチェックしてる。そのおかげで、幼稚園のお友達ともごっこ遊びができて楽しいからというのもあるが。

 

そのアニメのあらすじを少し齧ってみると、モンスターを小さな球体に封じ込め服従させ、彼等を使役し戦わせながら、全国を旅する少年とその仲間たち……という、また何ともありがちなストーリーのようだ。

 

だがなんだか分からないが、妙に親近感を覚える。

主人公の相棒である黄色ネズミなんかも、なんかどっかでしょっちゅう見たことがある。

このアニメ、つい先週始まったばかりなのにも関わらずだ。

それに、なんて言うんだろうか……。

 

『パケモン!GETだぜー!』

 

そんな決まり文句と共にOPが始まる。

なんだろう。途轍もない「コレジャナイ」感が拭えない。なんか違う、「惜しい!」と隣で誰かが大声でさけんでいる気分。

 

 

 

 

これもさっきと同じような感覚。

 

 

 

 

眉毛を八の字にしつつ、更にチャンネルを回す。

 

どうやら今度は地域ニュース番組のようだ。 テレビ局のスタジオで、何人かの可愛らしい衣装を纏った中高生がインタビューを受けている。

何々?テロップには、『先駆けブーム!今、スクールアイドルが熱い!』とある。

なんだろう、初めて聞くワードだ。でも、その筈なのに……。

 

 

『さて、今日は今話題になりつつあるスクールアイドルの皆さんにお集まり頂きました!』

 

 

『みんなー!ラブリーニコっ!音ノ木坂学園1年の、矢澤えみです!えっとー、今はまだまだだけど、いつの日か日本一アイドルになれるのを夢見る女の子です!みんな、応援宜しくね~!』

 

 

 

スクールアイドル?

 

 

奇妙な違和感だ。

 

 

なんだろう。

 

 

「俺」はこれを知っている……?

 

 

ん?「俺」?

 

 

いやいや、「私」はなのは。とある洋菓子店の娘で、ちょっとお茶目な一幼稚園児の高町なのはだ。

 

 

……え?ちょっと待て、洋菓子店の娘で、『高町なのは』?それって管理局の白い悪魔の……?

 

 

え?何白い悪魔って?私そんなおどろおどろしい存在になった覚えはないんですが?

 

 

いや、今は違くとも、将来的にはそうなるんだよ!挙句の果てにゃ、『管理局の白い魔王』だぜ?

 

 

何それ怖い。

 

 

いやいや、待て。落ち着こう。

 

 

 

そう思って、ひとまず深呼吸をしようとするが、上手く息を吸い込めない。

 

混乱の波が、そして私とは違うもう一つの意識の奔流が、私の脳内を駆けずり回る。

 

一度溢れ出したら止まることはない。

眠っていた、本来在るべき魂が胎動する。

 

 

 

―――一体何が引き金となったのかどうかは定かではないが、急に目の前の景色が揺らいだ。

 

 

 

*****************

 

 

 

うーんむにゃむにゃ、もう食べられないよ。

 

 

 

「―――は!―――のは!!」

 

 

 

徐々に意識が覚醒し始める。耳元で俺のことをしきり呼ぶ声がする。なんだよ人が気持ち良く寝てるのに。うるさいなあ。

 

 

「なのは!なのは!しっかりしなさい!」

 

 

仕方ないので、うっすらと眼を開く。すると、目の前にはボロボロと涙を流しながら、必死になって俺の安否を確認する我が母上の姿があった。

 

 

 

ここで俺は『異常』に気付く。

 

 

 

「どう……したの……。おかあ……さん……」

 

俺が目を覚ましたことに気付いた母上は、表情を変えて俺の肩を微かに揺さぶってきた。

 

「なのは!?大丈夫なの?何処か痛い所はない!?」

 

俺は訳も分からずこくこく、と首を振ると、心底安堵したのだろう。母は仕切りに俺を自分の胸に抱き寄せた。

 

「え、えっと……。どうしたの?マジで。そんなに大慌てして……」

 

「どうしたもこうしたも!リビングで食器が割れた音がしたから来てみれば、なのはが顔から思い切り倒れてるじゃない!!それから何度呼びかけても、揺さぶってもピクリともしなくて……。

もう、気が気じゃ無かったわよ!」

 

母上はよっぽど慌てていたのだろう。何故だがエプロンが半脱げ状態になっていた。スリッパも散乱しとるし。って、それより。

 

 

……なん、だと?

俺が、倒れた?

 

 

まてまて、冷静になって現状を整理しよう。急にそんなこと言われたって、自分にそんな覚えはないのだ。焦る。

とりあえず、先ほどまでの行動を思い返してみることにした。

 

 

「えっと、確か俺は幼稚園から帰ってきて、リビングで優雅にほむらのお饅頭を味わってて……そうだ、テレビを観てたんだ。そしたら色んな記憶がフラッシュバックしきてて……」

 

 

「ちょ、ちょっとなのは……。本当に大丈夫?」

 

 

 

……ん?『俺』?

 

そうだ!あの日あの時、俺は確かに死んだ。

 

俺の儚い命は無残にも散り去って、気付いたら真っ白な空間に立っていて、いきなりよく分からんパッキンのチャンネーに脅されて、そして……って、

 

 

 

 

……お、お、お――

 

 

 

 

「思い出したああああああああああ!」

 

 

 

母が突然の娘の絶叫に、ビクン、と驚いているようだが、今はそんなことにかまっていられない!

 

 

そうだよ!確かに俺は転生したんだ。今でははっきり、かつての自分の本名、自宅の住所、家族や友人の顔や名前、好きだった漫画やアニメ、その他それまでの「俺」を形づくってきたありとあらゆるコトを思い出すことができる。

 

それと同時に、「私」の記憶をまさぐる。

どうやら、これまで『高町なのは』として生活してきた人格は、「俺」と独立はしておらず、「俺」の意識の一部としていつの間にやら既に共存しているようだ。

 

それというのも、彼女としての記憶も現在進行形でばっちりと把握できているのだ。

まあ、人格の元となるベースが、どうやら「俺」のものらしいかったから、特に何の障害もなく、すんなりと同化できたのであろう。

 

 

それにしても、マジで転生とかしちゃってたのか俺……。あの一連の出来事は、もしかしたら俺の臨死体験が生み出した幻だったのでは、とか思ってもいたもんだが。なんというか、ビックリだね。うん。

 

 

 

しかも、今の俺の姿って……。どう考えても、あのお方にクリソツですよね。そう思いながら、壁に立てかけてある小鏡に、自分の姿を映す。

 

 

 

明るい栗色の髪をゴムでとめた、チャーミングなツインテール。思わず両手で掴んでぴょんぴょこしてしまう。

 

更に、6歳児とはいえ既に将来の美貌を約束されたも同然のような、可愛らしく整った顔立ち。

いや、今のははナルシスト発言になるのだろうか。なんとも気難しい話だ。

 

それに加えて、二次元オタクの界隈に入った事のある者ならば1度は耳にした事があるであろう、今現在の俺の名前。

 

 

 

 

……どうみても『リリカルなのは』です。本当にry――。

 

 

 

 

って、ウェイウェイウェイ!

そんなんたまったもんじゃないぜ!確かに二次創作のテンプレでも、アニメのキャラクターに転生とか色々あったけどもさ!まさかあの下りでなのはちゃんに転生?憑依?するとか思わないでしょ!

 

それに、こちとら元善良な一般市民でなんですけど!

不滅の魂とか持ち合わせていませんし、アニメのような大規模な空中大合戦で生き残れる筈ないわ!?あんな高層ビルの合間をビュンビュン飛び交って、魔法弾撃ちまくりのマジバトルとか、俺の命が幾つあっても足りないだろう。

しかも、アニメでは割とすんなり描写されていたが、どのパートの戦闘でも初期の方からだいぶ危険だったよな!?

そのうえ、最初に出くわすJS事件自体が、いきなり地球滅亡の危機とか……。幾ら何でもハードモードすぐる!?あんなの全然リリカルじゃないわ!

いかんこのままじゃ『理離狩る魔砲少女』の仲間入りだ……。

な、何か行動を起こさねば……!

 

 

 

「あわわ、わわ。やばい、やばいよお母さん。このままじゃとんでもないことになる。い、今すぐにでもここから引っ越そう!いや、だめだ。それじゃあユーノ君を見殺しにすることに……。いやいや、ユーノ君どころか、下手したらこの星が吹っ飛ぶことに……。えーと、なんとかそれを阻止するには。管理局が来るのを待つのは遅すぎる。フェイトにジュエルシードを奪われ過ぎたら、プレシアの計画の実行が早まって、結局地球が巻き込まれてしまう!ならばあれか、やっぱりなのはが原作通りに行動を起こさないといけないのか。いやいや、待てよそれだと……」

 

 

 

この時の俺は随分と錯乱していたことだろう。

突然の前世の記憶の想起に加え、自分が生前、本編に限らず二次創作にまで手を出した程入れ込んだアニメの、主人公になり変わってしまっていたかもしれないという事実。

それらは、俺を混乱させるのに十分衝撃的なものだったのだ。

 

そして、そんな訳のわからない俺の状態に、流石の母上も痺れを切らしたようで、

 

 

「だまらっしゃーーい!」

 

「ぶへぁ!?」

 

 

その無駄に無駄の無いモーションから繰り出されるビンタにより、突然俺の右頬にダメージが襲う。

流石に六歳児相手に手加減はしてくれたのだろうが、母上のビンタは物理的にではない不思議な痛みがあるから怖いのだ。

 

「どう?少しは落ち着いたかしら?……全く、娘がぶっ倒れてたと思ったら、ピンピンしてて。起きたらいきなり叫び出すわ、訳の分からないことを気味悪くブツブツ言い出すわ……。やっぱりすぐさま病院に連れてくべきかしらね」

 

「す、すんまそん……」

 

 

腕を組み、こちらがちびりそうになる位の母上のオーラ。ヒリヒリする頬をさすりながら思わず、正座の姿勢をとってしまう。ここは頭を冷やそう。

「それで?」

 

「それで、とは?」

 

「一体何があったのか?詳しく話してみましょうね、なのはちゃん♪」

 

 

……こ、こんな途轍もない母上のプレッシャー、父さんの浮気疑惑以来やで。

 

え、「笑顔」とは本来——ry

 

 

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