ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
「短い間だが、世話になった」
「いやいやいや!!」
翌朝、我が物顔で出発しようとするウィザードをリアムとアルバが全力で制する。
そうさせておきながら、当の本人は二人をあたかもおかしな物を見るような目で見つめていた。
「ま、まだ連盟に連絡すらしてませんよ!?」
「待っていられない理由を思い出してな」
「どうやって陸まで行くつもりで?」
ウィザードは振り返り、親指を突き立てながら言う。
「泳げば良い」
「良くない!!」
同じタイミングで叫ぶ二人を、レイがコーヒーを嗜みながら、幼稚園の先生かのような佇まいで眺めていた。
とはいえ、ウィザードにも譲れない物がある。
セカンドシーズンでは、物語の序盤が終了し、地球での戦いが始まるや否や、物語の本筋に前作主人公であるリアムが絡んでくる。
熱いロボット物の反逆機兵レギオンが、鬱蒼とした闇へと真っ只中に向かうようになったのは、
その要因は主に二つ。
一つは人間関係の悪化だ。
歴戦の英雄リアムの加入により、戦況は良くなった。
だが、リアムは度々怒りに身を任せて戦うアスカに対し、「それで良いのか」と尋ね彼女の反感を買うことに。
更にはアスカにとって悲劇的な出来事が起こる。
親しくなっていた
目の前でそれを見た彼女は、自らの弱さを嘆き、挙げ句は深いトラウマを想起させられる精神を完全に病むことになる。
もう自棄になり、怒りに飲まれていくアスカと悲哀を胸に抱くリアム。
アスカに妹の幻影を重ね、リアムには淡い恋心を抱くいい大人であるべきミハイルには、そんな状況をどうにかする人間的な力はない。
もう一つは、
これはセカンドシーズンの批判点でもあるのだが、リアム加入後からこれまでは二陣営であった組織関係が、
それに飽き足らずミハイルの過去の負債であったり、戦争を望む愚かな者たちの存在も露呈し、
この二つが作風を暗くさせ、悲惨なバッドエンドともとれるエンディングになった要因……のように思えていた。
少なくとも前者は、ウィザードは自分自身の力でどうにかできると思っている。
冷や汗を垂らしながらこちらを伺うリアムを一瞥した。
彼の”愛の手ほどき”で多少は気分が和らいでくれたはずだったが――その目の奥にはやはり、いつも悲哀がある。
彼を言葉でどうにかしようと言うのは、ウィザードでは不可能なことだ。
それは裏を返せば、
リアムの芯にあるものは変わらない。
それが、前大戦を生き残り、深い傷を負った青年の最大の望み。
そうなる前に――ウィザードには策があった。というか、それしか思いつかない。
「では失礼する」
「あっこら! 待て!」
リアムらの制止虚しく、仮面の男は砂浜を全力疾走し始める。
その行く先には断崖の絶壁が反り立っていた。
追いかけたふたりとも目を合わせ、まさかとは思ったが、いやいや、さすがにあんな変態でもそこまで――と勝手に安堵していた。
「さらばだ、英雄とその姫君よ!!」
あろうことか、ウィザードはその崖の目前で目下に広がる海原へと背を向けて、別れの言葉を告げた後、一切背後の様子を伺うことなく海にダイブした。
飛び散る飛沫を見て、二人は愕然とする。
心配したレイが迎えに来るまで、二人はそこを動くことができなかった。
◇
大日本共和国――
人類結束連盟基地 沖縄支部
フィリップ・ソーダスカッシュは、意気込んでいた。
何故なら彼は今宵、初めてゲイズチェイサに乗ることになるからだ。
”マスター・ルナ”の被害ゆえ、宇宙からの増援要請に応えるべく、地球からもゲイズチェイサ部隊が派遣されることに決まった。
フィリップ・ソーダスカッシュ少尉は、新米のパイロットで、誰よりも人のために働くことを望んでいる。
多くの人々が助けを求めるこの状況で、その人たちを助けるために働けるなど、こんなに嬉しいことは他にないだろう。
しかも、模擬運行でのスペシャルな戦績が認められた結果、先行試作量産機である新型を受理されたのだ。
骸骨のようにスリムで暗めな紅に塗られたボディと、一本角の兜を被ったような頭部。
もう
”グラドスケルト”。
誇らしい気持ちで一杯だった彼は、辺りが突然騒々しくなったことに気がついた。
「な、なんだ、きさまは……! 我々はこれから
「ほう。それは失礼」
「わかったら早く――」
「失礼だと言った」
口調は軍人らしいが、如何せん声音は怯えていて情けない兵士の視線の先。
そこにいたのは、前だけを見て突き進むずぶ濡れの禍々しい仮面をつけた男だった。
その風貌に怯えてしまう者も多数存在した。
雫を滴らせながら、格納庫にあるゲイズチェイサを眺めている。
一応軍服は纏っているから部外者ではないようだが……それ以前の問題だ。
「お、おいアンタ! 何してるんだ!」
「ふむ。ちょうどいい。君の機体はどれだ?」
「……? これだが」
馬鹿正直に指差すと、その仮面の男はこちらに向かって微笑みかけた。
「君の名は?」
「ふ、フィリップ・ソーダスカッシュ」
「なるほど、よく覚えておく――」
何をするかと思えば、男は足早に彼の”グラドスケルト”へと続くキャットウォークに足をつき、コックピットに飛び乗っていた。
最悪なことに、認証キーを挿しっぱなしである。
「あ!! おい!! ふざけるなよ!!」
「急用がある!! なのに機体が無いのだ。暫く借りるぞ!!」
「いや!! ふざけんなって!! おい!!」
コックピットハッチはあっという間に閉じられるが、フィリップは諦めずに叫び続けた。
《なぁ!! なぁって!! 頼むよ!! 返してくれよぉぉっ!!》
外で泣き喚く彼の声が聞こえる。
ウィザードは海水の匂いを嗅ぎながら、機体の乗り心地を確かめる。
「ふむ……”ヴァリアンス”とは大きく違うな。
《俺は2000回で、スペシャルで、模擬戦なんだよぉぉぉっ!!》
はっきり聞こえる彼の嘆きをガン無視し、モニターに映った開発コードを横目にしながら、ウィザードは操縦桿を握りしめた。
「――ミスター・ウィザード、”グラドスケルト”、推して参るっ!!」
”グラドスケルト”は容赦なく発進する。
周囲の人々は蜘蛛の子のように散っていき、吹き荒れる蒼炎の放った熱せられた風圧に吹き飛ばされないよう必死に踏ん張った。
開かれていたハッチから急速発進した”グラドスケルト”。
地球の重力が邪魔をし、無重力空間と同じような操作とはいかないがそれでも、この機体の操縦性は抜群。
余計な装甲が無いからか、ただでさえ地球でも戦闘機並みに飛び回れるゲイズチェイサの利点が浮き彫りになっている。
「私好みな機体だ。使わせてもらうとしよう!!」
ウィザードは記憶を頼りに、地球にやってきたはずの”ハンドレッド”を目指した。
早くしなければ。
でなければ、あんなにも身体を張った行為が水の泡になる。
原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)