ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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十五話 間違いない、あの時の少年だ。

 

 

「太平洋……私の記憶にあるのはそれだけだが」

 

 

 ”ハンドレッド”が地球で初戦闘を行うのは、オセアニア合衆国――オセアニア州の島国が作る連合国家――の近海。

 

 特に印象深いところではないが、地球での初戦闘ということもあり、ウィザードの頭には根強く残っていた。

 

 

 ゲイズチェイサの利点は、そのエネルギーが尽きることが無いこと。

 クリムゾンリアクターは半永久機関。同時に多量なエネルギーを利用しない限りは、永久に稼働し続けられる。

 

 ゆえに、幾らでも翔び放題である。

 

 

「とはいえ、いつまでもウロウロするわけにはいかない。早く見つけなければ――」

 

 

 機体は保つが、時間は無情にも過ぎていくのだ。”ハンドレッド”はここでの戦いを終えれば長旅を始めることになる。そうなれば、今度こそ再会するのは不可能だ。

 

 

「む」

 

 

 海に映る影を見て、ウィザードは機体を急速旋回させた。

 刹那、蒸発していく海水と共に放たれたのは赤々としたビーム。

 

 直後、”ペインレント”がその姿を現す。

 

 

「ほう、私を一般連盟兵だとでも思ったか? 運が悪かったな!!」

 

 

 新たな敵、侮れないはずではあるが彼は”グラドスケルト”の試運転程度にしか思っていなかった。

 

 武装はなかなか癖があるもの揃いである。

 

 片手用の実体剣、ビームライフル、ビームサブマシンガン、と割とシンプルだが、彼がもっとも使用感が気になっていたのは――。

 

 

「暴れろ、チェインテイル!!」

 

 

 鞭のように撓る、強化金属繊維製の武装――チェインテイル。

 テレビ放送時からずっと、男心をくすぐられる武装であった。

 

 

 レールガンを水面に向けて照射。

 弾ける水飛沫をスモーク代わりに、チェインテイルをしならせた。

 

 敵の腹部に巻き付いたそれは、コマンド操作一つで電気系統を焼き尽くす強力な電流を放った。

 

 複眼から光が消え、”ペインレント”は海の底へと沈んでいく。

 パイロットにも多少の負荷はかかるが、命だけは助けてやった。

 

 何故なら今の彼には時間が惜しい。

 

 

「今なら使えるな。これは」

 

 

 実戦のように入り乱れる場面では役に立たない武装だと使ってみて分かった

 

 

 バレルロールで急上昇しながら、”グラドスケルト”で再び空を駆ける。

 

 地球ではやはり、宇宙のような操作とはいかない。あまり無重力だと勘違いしていると、文字通り血反吐を吐くことになるから気をつけねばならなかった。

 

 

「ん……?」

 

 

 ウィザードは短く鳴った電子音を聞き入れて、機体のセンサを辺りに張り巡らせた。

 

 

 

「ほほう……これは良い。使わせてもらう」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「このぉぉおっ!!」

 

 

 ”アストラル”はビームセイヴァーを引き抜き、猛進してきていた”ペインレント”と刃を切り結んだ。

 

 横槍を入れてくる”マサムネ”の機体を足蹴し、頭部のビームバルカンで牽制した。

 

 

「くそっ、これじゃキリがない……なにか他に武器は――」

 

 

 アスカは思い出したように操縦桿を握り直し、操作を入力。

 

 ビームセイヴァーを納刀する”アストラル”。代わりに展開されたのは、両腕部から飛び出た半月状のビームセイヴァー――”カーリールナ”。

 

 向かってくる”マサムネ”の刀を、手刀を叩き込むような感覚で弾き返し、反撃を繰り出す。

 二度目の斬撃を避けた所で、スラスターを思い切り吹かして回転攻撃を繰り出せば、”マサムネ”の片脚がいとも容易く吹っ飛んだ。

 

 

《小賢しい動きをッ!!》

 

 

 通常のサーベルと違って直感的な攻撃が可能――アスカにはこっちのほうがしっくりきた。

 

 

 殺気を感じ、飛行形態に変形。ぐるりと翻りながら”スティング”によって降り注ぐビームの嵐を回避し、”ノーヴェ”の懐へ潜り込んだ。

 

 ”ノーヴェ”はすかさずサーベルで攻撃を受け止めてきたが、唐突に降りかかる大きな物量には耐えきれず機体ごとふっ飛ばされた。

 

 

 スラスターで立て直した”ノーヴェ”の背中に、何処からともなく飛来した複数のミサイルが着弾し、その脚を止めた。

 

 

 ”ノーヴェ”に接近する赤い”ヴァリアンス”と、海上を突き進んでいく漆黒の鯨”ハンドレッド”。

 

 増援の到来に、アスカは脱力する気分を覚えた。

 

 

《もうっ! こいつらうざーい!》

《数じゃこっちが圧倒しているはずなのに……!!》

 

 

 窮地に立たされた”ノーヴェ”と”マサムネ”は、黒船から発進していく新手の”ヴァリアンス”を見据えて、尻込みしている様子だった。

 

 

 アズチの乗り込む”ヴァリアンス”が、脚部と肩部に備わったミサイルポッドから艦体規模のミサイルを吐き出し、敵部隊を翻弄。

 

 それに続いて、”ハンドレッド”が迎撃態勢に入る。

 

 

《”ニードルブラスト”、”パンツァークラスタ”起動。ブリッジ閉鎖、撃ちぃ方はじめ!!》

 

 

 ”ハンドレッド”に備わった対空砲とミサイルポッドが全門起動。

 眩いマズルフラッシュと弾け飛ぶミサイルの外殻が、もはや青々とした水面すら気にならない群像が、その空域に作り上げられていた。

 

 

 しかし”ペインレント”は次々海中から、あるいは何処か遠くから飛翔してきてその数を増すばかり。

 

 

 ミハイルが遠方に視線を配れば、無数の小型輸送艦が迫ってきていた。水面に映る影から、海中には潜水艇もいくつかあることが伺える。

 

 

「こんな規模とは……」

 

 

 ――やはりこいつらは、アーク連邦の……。

 

 

 ウィザードが先に知っていた事実を、ミハイル(原作キャラ)も認知し始めた。

 こうなってくると、彼の行動の怪しさが浮き彫りになるのも時間の問題となる。

 

 

 

 とはいえ、こちらは味方の回収が主な任務。敵襲を受けた《ラウンズ》の船は、なんとかこの海域から脱出できたようだ。

 隙さえ見つけて、こちらも脱出できれば良いのだが――この包囲網を見るに、それはどうも難しそうである。

 

 ()()()()()のだ。奴らはここまでして《ラウンズ》を殺るつもりだ。

 

 

《各ゲイズチェイサパイロットに伝達。これより、”ギャラルグランダ”で遠方の敵艦ごと薙ぎ払う》

 

 

 艦長たるヨハンの指令の後、味方のゲイズチェイサ部隊が一斉に一定高度までの上昇を始めた。

 何となく事態を察したアスカもそれに追随し、なるべく船に接近させないようにビームライフルで相手を牽制する。

 

 ごうん、と言うくぐもった音とともに”ハンドレッド”の艦首に変化が起こる。

 

 装甲が割れるように展開され、内部に備わっていた大型砲台がその姿を見せた。

 

 フェーズゼロ圧縮破城砲”ギャラルグランダ”。この平和な世で、一体何に使う必要があるのかという巨大砲台に、赤々としたエネルギーが充填されていく。

 

 敵は寸刻先の事象を悟ったのか、散り散りになって後退しようとした。

 どのみちターゲットは遠方に潜む艦隊。取りこぼしは艦長も想定内のはず。

 

 

 

《”ギャラルグランダ”、()ぇぇぇぇっ!!》

 

 

 

 艦長の雄々しい合図で、赤き閃光が刹那の間、その場にいた者の網膜を覆い尽くした。

 

 

 灼熱が海を支配するかと思われた――が。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 天空から降り注いだ一縷の光線。

 

 

 その一撃は、”ギャラルグランダ”の中に孕んでいた膨大なエネルギーを誘爆させるには、十分過ぎる攻撃であった。

 

 

 空域にいた誰もが天を見上げた。

 

 

 

《”レギオン”……!?》

 

 

 

 舞い降りてくるのは――ミハイルにとっては息が詰まる思いを抱かせる、一体の()()

 

 

 二対のツインアイ、ヒロイックながらも今となってはシンプルなデザインは、まさに()()()()()()()

 

 されど、ミハイルの目には色濃く残る白青緑(トリコロール)のカラーリングではなく、薄汚れた金属を思わせる青銅色。

 

 

 その場にいる者は、かの機体が”連盟の蒼き悪魔”と呼ばれた初代レギオン――それの正式量産機”レギオンMk-II(マークツー)”であるとは誰も知らない。

 

 

 

《ふ、ファウスト様っ!?》

《ああ、ありがとうございます! お頭!》 

 

 

 タンパク質と疑似血液たるナノマシンの塊である〈スピーラー〉の二人が、舞い降りた主を目にし困惑する。

 

 ”Mk-II”は、ビームライフルとシールドのみというシンプルな武装ながら、その威圧感は尻込みする程だ。

 

 

 コックピットに乗り込むのは、パイロットスーツではなく、貴族の装束のような衣服を纏う茶髪の男。

 淡い桃の色彩を持つ三白眼を更にきりりと尖らせた。

 

 

「――この感覚。まさか、本当に……」

 

 

 男――ファウストは、頭を突き刺すような異様な感覚に、戸惑いを隠せていない。

 

 その視線の先には、黄金に輝くゲイズチェイサの姿があった。

 

 

「ミラ……?」

 

 

 

 

「今の声……」

 

 

 コックピットのミハイルは、頭に走る電流のような感覚の後に、微かに聞こえた声に聞き覚えがあった。

 

 

 棒立ちな上、目立つ色の機体を敵が逃すはずもなく、放たれたビームを肩に掠めてしまう。

 コックピットが揺れ、ミハイルは現実に引き戻される。

 

 

 頭が痛い――とは違う。脳に血液が巡らなくなった時の感覚によく似ている。

 

 

「嘘……そんな、事が」

 

 

 

 混乱を胸に抱いたミハイルの”サウザンド”が途端に動きが鈍るのを見据え、アスカは彼女を訝しむ。

 

 

「……この気持ち悪いカンジ、何?」

 

 

 アスカは頭に広がる不思議な感覚に眉はひそめるが、いまだ慣れない戦闘に身体が反応しているだけだと、ミハイルほど気にしてはいなかった。

 

 

 刹那――メインモニターを覆い尽くす、青銅色の悪魔。

 

 

「くっ!」

 

 

 右腕を振るい、セイヴァーで攻撃を受け止めたが、距離を詰められすぎた弊害で押し負けてしまい、激しく吹き飛ばされる。

 

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

 

 宇宙での失態とは訳が違った。

 身体がねじ曲がり、臓物が捻り出されそうになるような重圧。

 慣性制御が無ければ、とっくの前に破裂してそうなGが、アスカの小柄な体躯に襲いかかる。

 

 

《下がれ!!》

 

 

 アズチの”ヴァリアンス”が彼女を庇うように先行し、サーベルを引き抜きながら果敢に”Mk-II”と切り結ぶ。

 

 ”Mk-II”は後退しながら、頭部のビームバルカンをばら撒くように乱射しつつ、”マサムネ”とポジションを変更。

 大太刀に苦戦する”ヴァリアンス”を、”ノーヴェ”の”スティング”が容赦を知らず追撃する。

 

 

「准尉!!」

《くそっ……!! どうして、どうしてこんな事にっ!!》

 

 

 ”アストラル”の体勢を立て直したアスカは、血の気が引くような事実に気がつく。

 

 ”ハンドレッド”からのシグナルが切断されている。繋ごうとしても繋がらない。

 

 艦首に近い”ギャラルグランダ”が爆破されたのだ。ブリッジにまで被害が出ていたって、何らおかしくは――。

 

 

 アスカは視界が狭まった。

 呼吸が浅くなって、頭が回らなくなる。

 

 たださえ狭いコックピットが、暗くなってゆく視界も相まって、こちらを押し潰してくるかのような空間かと思わせてくる。

 

 

 もっと自分が戦えていれば。

 

 あの機体の接近に気づけていれば。

 

 

 こんな事になんかならなかったはず。

 

 

 また身体に、冷え切った彼の重みがのしかかってきた。

 

 もう何もかも投げ出してしまいたいと思ったとき、

 

 

「こんなところで――こんなところで、ボクはぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

 

 何かが、彼女の中で弾けた。

 衝動的に振り上げた拳の影が、プラスチックケースに包まれた自爆用のボタンを覆い尽くす。

 

 どうしてはわからない。

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 それはもはや人ではない――頭に直接語りかけてくる()()()、このボタンを押せと言っているような気がしたのだ。

 

 

 一秒も刻まぬうちに、彼女がそれを叩き割ろうとした、その時だった。

 

 

 

《切り捨て――》

 

 

 

 唐突に通信回線に乱入してきたのは、勇ましく雄々しい、時代錯誤も甚だしいと思わずにはいられない声。

 

 

 それを聞き、”ハンドレッド”のクルーは誰もが息を呑んだ。

 

 

「この声って……」

《――ごめぇぇぇぇぇぇぇぇんっ!!!!》

 

 

 彼女の視界に飛び込んでくる赤い影。

 

 鋼色に輝く実体剣を、かろやかでありながら重々しい剣捌きを駆使し、”Mk-II”にほぼ体当たりにも等しい斬撃を繰り出した。

 

 至近距離で防御した”Mk-II”は、そのあまりの気迫に後退せざるを得ず、荒々と火花が舞い散った。

 

 

 その火花を纏うかのように宙へ屹立する、一機のゲイズチェイサ。

 

 

《どこの所属か知らんが危険だ、下がれっ!》

 

 

 アズチが忠告すると、そのパイロットは声高々と笑った。

 

 

《危険か。あいにく、私は命知らず――つまりは、その忠告を聞かないような大馬鹿者だ》

 

 

 お節介が過ぎる言動、気持ちの悪い言い回し――。

 

 

 それだけで、その通信を聞いた”ハンドレッド”のクルー達は()()()()()()()()()()()()実感することができた。

 

 

《ウィザード大尉……!?》

《な、なぜ生きている!?》

 

 

 ミハイルとアズチが驚く傍ら、アスカは放心状態に陥っていた。

 

 

「大尉……」

 

 

 

 

「”レギオンMk-II”……そうか。第四話はそういう展開だったな」

 

 

 青銅色の機体を見据え、ウィザードは武者震いする。

 

 ”レギオンMk-II”に乗り込んでいるのは、正真正銘アーク連邦の残党であるファウスト・シューベル。

 

 《プライムテラーズ》はアーク連邦の残党と、人類結束連盟へ異議を反する者たちの組織。

 だが、そのバックにはかつて人類地球連盟を支えた大型軍需企業”ノーベル・ダイナミクス”の存在がある。

 

 戦争が無くなるのが不都合であるだけのノーベル社と、アーク連邦の再建を望む残党の意見は次第に食い違ってくる。

 

 彼は、そんな背景を持つ敵組織のキーマンとなりうるキャラなのだ。

 

 

「多勢に無勢……戦況はこちらの劣勢――だが、心配するな”ハンドレッド”の船員達よ!! これは私からの手向けだ!!」

 

 

 ”グラドスケルト”の剣が天を貫く。

 

 

 刹那、ゲイズチェイサの部隊が飛来する。

 

 

《連盟軍だとっ!?》

《なんてことを……!!》

 

 

 アズチとミハイルが驚いているうちに、飛来した”グラドスケルト”と一機だけ混じる、連盟軍仕様の蒼き”ヴァリアンス”が、空域に乱入し戦闘を開始した。

 

 

 連盟軍――《ラウンズ》の情報を安々流すのは、おそらくは禁止行為ではあるが、これは彼が意図的に流したわけではない。

 彼らが勝手についてきた――つまりはミス。終わってしまったいまにおいては、しょうがないことである。

 

 

《その剣捌き……! 間違いねぇ、あの時の変態だなぁっ!?》

 

 

 猛進してきた”マサムネ”の大太刀を、”グランドスケルト”の剣で防ぐ。

 飛び散る火花と、耳を劈く金属音。同じ実体剣同士、相性の有利不利はもはや存在しない。

 

 

「その太刀捌き、間違いない。あの時の少年か!!」

《黙れぇぇぇっ!! ぶっ殺す!!》

 

 

 ”マサムネ”との激しい斬り合い。

 

 動きに感情の乗った剣捌きを、ウィザードは冷静に対処していた。

 だがその戦いは、他の追随を一切許さない。飛び散る火花はゲイズチェイサの装甲すら焼き焦がす勢いだ。

 

 

 連盟軍は《ラウンズ》のように闘うことを想定されてはいないが、それでも、そのほとんどは七年前の激闘を生き残った歴戦のパイロット。情け無用のテロリスト相手に対しても、難なく生き残ることができている。

 

 

「”ハンドレッド”! 後退しろ! この場は私が引き受ける!」

《……わか――》

《駄目です!! 大尉!!》

 

 

 その身一つで事態を受け止めようとしたウィザードを、アスカが悲鳴のような声で制する。

 

 彼の駆る”グラドスケルト”の隣に、”アストラル”が飛来し、肩を並べた。

 

 

《ボクも……戦います》

 

 

 血を吐くよう言った、サブモニターに映る赤毛の少女――主人公を、ウィザードは複雑な心境で一瞥した。

 

 

「――期待しているぞ」

 

 

 

 

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

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