ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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十六話 センチメンタリズムな気持ちを抱かずにはいられない

 

 

 ”アストラル”の”カーリールナ”が、執拗にウィザードを狙う”マサムネ”を切り裂かんと、煌々と輝いて空を裂いていき、赤々とした軌道で青空を彩ってゆく。

 

 

 サブマシンガンを乱射する”グラドスケルト”。

 牽制にばら撒いた光弾は意外にも効果的だったらしく、敵の分散に成功。

 

 

 散り散りになった敵機を、連盟軍の”グラドスケルト”が逃がさんとばかりに追撃した。

 

 

 彼に接近していた”ペインレント”。ビームセイヴァーが間近に迫った途端に、青い”ヴァリアンス”がそれを撃ち抜いた。

 

 爆散を見届けてから、その機体に乗っている者の素顔を想像し、すぐに察知する。

 

 

「いい腕ではないか、フィリップ・ソーダサイダー」

《フィリップ・ソーダスカッシュだっ!!》

 

 

 一人だけ”グラドスケルト”が無いため、一昔前の”ヴァリアンス”で我慢しているところに、ウィザードは涙を流さずにはいられない。

 

 

《……俺は模擬戦じゃいつもトップだったんだよ!! 戦争なんか、もうないから役に立たないと思ってたけどなぁっ!!》

 

 

 蒼き”ヴァリアンス”はビームライフルを乱射しながら、黒船を追撃しようとする機体を執拗に狙い撃っていた。

 

 新米の兵とは言え、今の連盟軍はエリート揃いだ。新米の育成は七年前とは訳が違う。

 とは言え、彼らは戦闘訓練は殆ど最小限で被災地や宇宙での局地操縦に対応する訓練を積んできているはずだが。

 

 

 その”ヴァリアンス”はビームを宙返りするように避け、反撃でビームを放つ。

 ビームは、コックピットは狙っていなかった。赤々とした爆炎が”ペインレント”の下腹部を貫き、爆散させぬまま海へと落とした。

 

 

 やはり戦闘には慣れていない。操縦技術で、この激戦区をなんとか生き残れているだけだ。

 

 

「私の責務。それは私一人で背負うことにしよう」

《大尉!!》

 

 

 ”グラドスケルト”を包囲する”スティング”。

 瞬時に飛翔してきた”アストラル”が、彼の機体を突き飛ばして、降り注ぐ光線の包囲網を潜り抜けた。

 

 

「アスカ・カナタ……?」

《ボクが守ってみせる……!! もう、あんな事にはさせない!!》

 

 

 煌めく光刃を、文字通り自らの手脚のように構える”アストラル”の背中は、とてもあのか弱い少女が乗っているとは思えなかった。

 

 

 ――主人公。

 

 

 やはり、彼女はこの物語における主人公なのだと確信させられた。

 

 

 ウィザードはコックピット内で、にぃ、と笑う。

 その怒りに塗れていない、あまりに典型的すぎる台詞はアスカらしくない――とは思ったが、それもまた一興。

 

 

「私に惚れた、連盟軍諸君に通達する」

《惚れてねぇ!!》

 

 

 フィリップの一喝をフルシカトで、ウィザードは続けた。

 

 

「君たちは”ハンドレッド”と共にこの空域を離脱せよ! この場は我々が引き受ける!」

《だ、大丈夫なのかよ!? ――うぐっ!!》

 

 

 青い”ヴァリアンス”が”マサムネ”の一太刀を受けて、左腕を斬り飛ばされる。

 ”グラドスケルト”でウィザードが横槍を入れていなければ、おそらくは落とされていたに違いない。

 

 

「案ずるな、早く行け!」

 

 

 ”グラドスケルト”がチェインテイルで翡翠の武士を抑えつけている間に、彼を追ってきた連盟軍部隊は”ハンドレッド”の方向へと飛翔していく。

 

 

 ”サウザンド”と斬り合っていた”Mk-II”はその様子を見て追撃しようとする。

 だが、ビームブーメランが織り成す白昼の円月如くの光によって阻害され、ターゲットを再び彼女へと向けた。

 

 

 赤い”ヴァリアンス”はミサイルを撃ち尽くしたのか、大型ビームランチャーで敵を確実に落としていく。

 だが、”ノーヴェ”に目をつけられて一気に劣勢に立たされる。

 

 

 ”マサムネ”を軽くいなしてから、アズチの援護に向かおうとする。

 

 

《てめっ!! 舐めるなぁぁっ!!》

《あなたの相手はボクだっ!!》

 

 

 ”マサムネ”渾身の斬撃は、”アストラル”の右腕セイヴァーによって難なく防がれる。

 赤い軌道が数多も描かれるほど、二機は至近距離で幾多も切り結び合った。

 

 

 激しい攻防戦を横目に、”ノーヴェ”を撃墜せんと斬りかかるが、その刃は割って入ってきた青銅の悪魔に阻まれた。

 

 

《余計な真似をする……!》  

 

 

 ”Mk-II”のパイロットが怒りを口から滲み出させた。

 ファウスト・シューベル――ウィザードにとってはかなり印象深いキャラクター。声を聞けただけでも僥倖であった。

 

 

 ”Mk-II”のセイヴァーを退け、剛剣を悪魔に叩き込もうとするも、素早い一太刀で防がれて反撃に蹴りをもらった。

 激しく吹き飛ばされる”グラドスケルト”の姿勢を、スラスターを全力噴射することで何とか持ち堪え、その推力を猛進へと変換した。

 

 バレルロールと共に敵を翻弄しつつ、”Mk-II”の懐に潜り込み、剣を装甲に叩きつけた。

 発せられた高周波により、肉など安々断ち切れそうな剣は更にその威力を増す。されど、”Mk-II”の装甲には傷がつくだけで、破損には至らない。

 

 

「分が悪いかっ……! この機体では」

 

 

 ”グラドスケルト”。連盟軍の新型ではあるが、万一の戦闘に備え基礎スペックは高いものの本来は宇宙や局地での作業用という面が強い。

 

 彼お得意の高機動は、この機体の好みではないらしい。関節や駆動系統から拒絶の声が散見できる。

 

 

「だが、そんな道理を無理でこじ開けるのが私の武士道だっ!!」

 

 

 スラスターを吹かし、乱射されるビームライフルの弾道を軽やかに躱す。

 止んだ途端にチェインテイルを振るうが、”Mk-II”もそれに引っかかるほど馬鹿ではなく、ビームセイヴァーで刃の半分を斬り落とす。

 

 

「隙ありィィィィっ!!!!」

 

 

 ”Mk-II”の矛先が武装に向いた、その一瞬の隙をウィザードは突く。

 チェインテイルを放り投げ、機体のスペックを凌駕していると言わんばかりの超高速機動で、奴との間合いを詰める。

 

 機体の全体重を刃に乗せ、体当たりのような斬撃を叩き込む。

 奴が咄嗟に構えたシールドを玉砕し、矛先が”Mk-II”のメインカメラを破損させる。

 

 小爆発を起こす”Mk-II”は、ビームライフルを投げ捨てると、頭部に備わったバルカンでそれを爆破させ後退していった。

 

  

「我が武士道にひれ伏したか」

 

 

 日本人に怒られた方が良い。

 

 

 

 

《この、クソガキがっ!!》

《ボクはもう、あなたの知ってるボクじゃない!!》

 

 

 ”マサムネ”と”アストラル”が水面にその様を映しながら、勇ましく激突し合う。

 

 飛散するクレナイ粒子が、水面に抱かれては、海の藻屑となりて溶け込んでいく。

 

 大太刀による”マサムネ”の力技は、じりじりと”アストラル”を追い込んでいた。

 しかし、”アストラル”はスラスターを自らを焼き焦がす覚悟で逆噴射することで、その間合いから一瞬のうちに離脱。

 

 熱気に包まれるコックピットで、アスカは雄々しい叫びをあげた。

 

 

《うおぉぉぉぉっ!!》

 

 

 ぐぃ、っと上空で身体を捻った”アストラル”が水面を爪先で突き破る。

 その最中振るわれた斬撃は、赤き軌道をくっきりと残しながら、”マサムネ”の左腕部を斬り落とし、深海へと沈むただのジャンク品へと成り代わらせた。

 

 

 ”マサムネ”と”Mk-II”を劣勢に陥れるほどの相手を二人も見て、もう限界かと悟ったのか、敵は一斉に撤退を始めた。

 

 追撃しようとする”サウザンド”と赤い”ヴァリアンス”を、”スティング”が捨て身で妨害。

 

 その間に、敵はその海域から姿を消してしまったのだった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 格納庫に戻っても、ウィザードはなかなか機体から降りることができずにいた。

 

 ミハイルやアズチなら、自分のことを殴りかねない。

 意図的であろうとなかろうと、連目軍の大半には秘密裏にすべき《ラウンズ》の存在を漏らした挙げ句、窃盗まがいなことまでしでかしたのだ。

 

 

「腹をくくれ。殴られた時の痛みなぞ、私には痒いものだ」

 

 

 ウィザードは覚悟を決めてコックピットから降りる。

 

 格納庫は妙にしん、としている。

 

 そんな空間だから、自分が降りてきた瞬間に鳴り響き始めた、誰かがキャットウォークに繋がる階段を駆け上がる音が明瞭に聞こえた。

 

 

(ふむ、この軽い音は走っているな。慣性に従って殴られるタイプと見た)

 

 

 その誰かが殴りやすいよう、左頬を前方に晒していた。

 

 

 彼の予想通り、何者かの拳がウィザードの頬の形をぐにゃりと歪め、激しく波打たせた。

 ウィザードは少し仰け反る程度だったが、殴った張本人の方は大きく蹌踉めき、荒々しく肩で息をしていた。

 

 

「ウィザード大尉っ!! あなたみたいな大人は嫌いだぁっ!!」

 

 

 涙を堪えたアスカが、枯れた声で怒号を突きつけてきた。

 彼の予想は大方当たっていた。大人しそうに見えてまっすぐすぎる彼女の性格なら、殴りかかってきてもおかしくない。

 

 

「……私はこうして生きているぞ」

「そういう問題じゃあるもんか!! ボクは、ボクは……ずっと――」

 

 

 堪えきれなくなった涙を溢す彼女を見て、ウィザードの心がひどく痛んだ。

 

 心に触れるような事をしておきながら、安々目の前で戦死するような真似をすれば、年端もいかない少女が、深く傷つくのも必然だ。

 

 アスカは、ウィザードの身体に顔を押し当てて、自分の声を押し殺す。

 

 

「アスカ・カナタ……?」

 

 

 ウィザードは困惑する。

 どうして彼女が真っ先に飛び込んでくるのだろう?

 

 彼女は黙ったまま、言葉一つ発しない。

 その意思を聞きたかったが、身動きができなかった。

 

 

「……心配しました」

 

 

 ぽつ、と呟いたのはそんな言葉だった。

 儚くて消えてしまいそうな、そんな声音で。

 

 

「……何処かにいっちゃったと思って……ボクのこと、置いていったと思って」

 

 

 その様は彼の目からすると、とてもアスカ・カナタには見えなかった。中身がごっそり入れ替わっている、そんな嘘を言われても信じてしまいそうだ。

 

 こんなに乙女らしいアスカを、ウィザードは二次創作以外で初めて見た。

 

 

(な、なんという麗しさだ……!!)

「……心配をかけたのは重々承知している。だが、軍人たるもの責務を――」

「うるさいっ!」

 

 

 ぽか、と胸を殴られウィザードは言葉を引っ込める。

 

 アスカは啜り泣いていた。

 

 ――その胸の内をゆっくりと聞いてやりたい。

 

 ウィザードは人付き合いは苦手な方だ。彼女の心の内を察するなんて器用な事ができる男ではない。

 だからこそ、小さな体に秘める思いを受け入れてやりたいのだ。

 

 

「礼を言うのが遅れたな、ありがとう。君の助けが無ければ、私は五体満足ではなかったかもしれん。宇宙(そら)での時も、この鮮やかな大海原での時も」

 

 

 そう言って、頭を撫でてやるとアスカは泣き声を止めた。

 

 怒りに身を任せず、自分の信念、己の心を貫いて戦いに望む彼女の姿。

 液晶画面の外側で見ていた未熟で子供っぽい、されどどこまでも情熱的な彼女も魅力的だったが。

 

 

「――君は”主人公”だったよ」

 

 

 アスカの身体が、小動物のように縮こまる。顔を埋めたのは、照れ隠しのつもりだろうか。

 

 

 

「ウィザード大尉、再会を喜びたいところだけれど少し話が――」

 

 

 上がってきたミハイルとアズチが、その光景を見て絶句する。

 

 変態(彼女たちの中では共通認識)が年端もいかない少女を公然と抱きしめている。

 

 二人ともホルスターから拳銃を引き抜いて、迷いなく安全装置を外した。

 

 

「は、離れてアスカぁぁっ!!」

「貴様――戻ってきて早々!!」

 

 

 ミハイルの悲鳴にも近い声と、アズチの怒号を聞き入れたのか、周辺にいたメカニックたちが集まってくる。

 アスカはそれが恥ずかしく思えてきて、渋々ウィザードから離れる。

 

 

「――話とは何だろうか、バジーナ大尉」

「「無かったことにするなぁぁぁぁっ!!」」

 

 

 二人して怒号を響かせ、静まっていた格納庫は一気に騒々しくなり、アスカは頬を真っ赤にしてずっと俯いていたのだった。

 

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