ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
〈スピーラー〉とは、作られし者。
ゲイズチェイサの操縦を難なく熟せるだけの強靭な肉体と、人を殺めることを何ら悪だと思わず、争いを子供の遊びごとだと捉えるような幼稚な精神を兼ね備えた存在。
感覚反射を増幅する流体ナノマシンと、大量のタンパク質によって作られたその存在を、「強化人間」と揶揄するものも多いが、
アリアは崩壊したコロニーの一部に侵入していた。
内部に侵入すると、人気の無い箇所へ光学迷彩によって秘匿した”バハムート”を置く。
あらかじめ用意していた連盟軍の軍服を身に纏って、基地内部に潜入した。
正直な所、〈プライムテラーズ〉は反連盟組織を名乗っておきながら、まだ連盟に関する重要情報を何も得られてはいない。
情報統制があまりに完璧すぎるのだ。
権限のない者へ情報を軽々解禁することがないのは然ることながら、あらゆるハッキングをも防ぐネットワークが構築されていて手の施しようがない。
〈プライムテラーズ〉には連盟軍からの離反者が幾人もいるが、そのいずれも、有益な情報はこれっぽっちも持っていなかった。
「……? お前、そこで何を突っ立っている! 早く手伝え!」
切迫した様子の連盟軍人が何の疑いもなく、軍服を纏っているだけの彼に命令を下した。
連盟軍のアクセスは厳重だ。
入口等の至る所にセキュリティスキャンが実施されており、結束連盟所属のIDが無ければ即座に警報が作動する。
無論、彼は偽造用のIDなどとっくの前に用意していた。
「あぁ、すいません。少し、用がありまして」
「何を言っ――」
アリアが引き抜いた拳銃が静かに、軍人の額を撃ち抜いた。
サプレッサー付きの拳銃は、男の悲鳴は疎か、冷たくも大きな銃声すら響かせない。
「地球人を宇宙から駆除するという、ね」
アリアは邪悪に笑い、足早に目当ての場所を探す。
「地球人のクセに、偉そうな建物を作るものね」
彼の口から暇さえあれば溢れるのは、地球人を貶す言葉。
それもそうだ。彼の脳に生まれた時から刻まれているのは、「地球人は愚かで弱い劣等種」という思想が、言動の隅々にまで染み渡っているのだから。
目的の場所は、事前に受け取った施設地図で把握はしているが、問題はこの騒動に応じて何かしらのセキュリティ対策が取られているかどうかだ。
アリアが優雅に歩いていると、衝動でドアが破損した、暗闇が漏れ出しているかのような部屋への入口が目の前に現れる。
彼はそれを見て、にやり、と笑う。
「おい。ここには入るなと言われているだろう。貴様、どこの所属――」
中に残っていた二人の軍人を、まずは歯向かってきた方から撃ち殺す。
弱々しく倒れる仲間を見て怯えきったもう片方の額へ銃口を押し当て、アリアは嘲笑を溢す。
「地球人はおとなしく地に足をついてなさいよ――そう、
容赦もせず撃ち殺したアリアは、返り血に嫌悪感を抱きながら、システムが稼働したままのコンピューターに目をやる。
あと少し侵入が遅れていれば、自分は何も成果を得られず帰ってきた役立たずになるところだった――と、アリアは心から安堵する。
キーボードを操作し、表示された膨大な情報を目の当たりにして、アリアはたまらなくなり、大きな笑い声を響き渡らせた。
「ようやく、ようやく尻尾を掴んだ……! これで、宇宙人類に真なる自由が訪れる……!」
ひび割れた大型のディスプレイ。
《UBIQUITOUS BRAINS》という文字と、無数に表示された
◇
「なんで帰ってきたんだ」
尋問室で、イスに腰を掛けたヨハンがほとんどため息のような声音を漏らしながら、崩れ落ちるようにデスクへ突っ伏す。
「なかなかにストレートな悪口だな」
「面倒事……それもこれまでのが全部可愛く見えるほどの……あぁ……」
ヨハン・ヤマトは前作の艦長キャラ レイ・コンゴウが我が強く、人を平気で殴るようなスパルタ上司だったのに対し、彼はどちらかと言うと部下に殴られてもおかしくない怠惰な軍人であった。
ゆえに彼は自分に素直。そんな彼がここまで嫌悪を示すのは、余っ程のことである。
「……艦長。私がやります」
痺れを切らしたミハイルが、突っ伏して動かなくなったヨハンを引きずり下ろし、代わりにイスへ腰掛けた。
ばん、と乾いた音が響くとその次にはドスの効いたミハイルの心胆が凍てつくような声音が、その部屋の空気に水を挿した。
「今回は本当におふざけじゃすまないのよ」
「……故意ではない」
「故意だろうとどうだろうと。《ラウンズ》の存在は、連盟軍相手であろうと極秘なの。それは破られてはいけないの」
《ラウンズ》。武器のいらぬ世の中、とまで考えられている現代において、それはあまりに相容れない、存在していけないものだ。
あまつさえ、そんな世界の中心的な組織である連盟軍が、事実上はこの組織の所有権を持っている。
それが外部へ漏れた時の混乱は、想像を絶するものであるだろう。
ウィザードとて、この世界(アニメ)を熟知している者。それは重々承知している。
TVアニメ本編では、《ラウンズ》の存在は四話時点で早々に世界中に漏洩する。連盟軍の重要拠点が失われ、機能が麻痺した結果、《プライムテラーズ》が全世界に同時中継をしたためである。
だが、この世界線ではコロニーは落とされず連盟は多少の機能障害は起こしているものの、テロリストにジャックされるほど弱くはなっていないように見える。
だからこそ、彼のやったことは自分の首を絞めることにもなる悪しき行為だ。
「……同じ連盟軍でよかった。記憶処理も容易だから」
「記憶処理か。噂には聞いていたが、本当に存在するとはな」
記憶処理――その技術は、かつて〈アーク連邦〉が有していたクローンの生体情報をクリアリングするための薬品を用いたもの。
その実態は人に接種すれば数秒で死に至るほどの劇薬の毒素を極限まで薄め、意図的に脳障害を引き起こすことで記憶を消去する、とお世辞にも人道的とは言えない。
「とにかく、貴方は懲罰房行きね。反省してもらわないと。いいですよね、艦長」
「面倒事……面倒事……」
屍のようになったヨハンの言質を取り、ミハイルは彼を房にぶち込むことを決定した。
そうでもしないとよほど腹の虫が治まらないのだろう。
比較的、前作と比べ穏やかになった彼女らしからぬ行動だ。
「縛ってくれるのかな?」
「口を縫ったほうがいいかしら」
「それもまた僥倖だな」
「もう黙って」
「あいにく、私は黙れと言われて黙る人間ではないのでな。無理な要望だ」
「黙れったら黙れ!! だーまーれ!!」
話を聞かない男と、亡骸のように独り言を呟く男、それを一人で捌こうとして嫌気が差してきた女。
本来厳格な空気であるべき尋問室は、あり得ないほどコミカルな空気で満たされてしまっていた。
◇
宣言通り独房にぶち込まれたウィザード。
ミハイルに引きずられて(比喩ではなく)来たために、尻や腰が痛く落ち着かない。
暫くはこのままらしい。
薄暗い部屋は、想像事をするのにぴったりな空間だ。
(考えろ。私が命を張って、アスカ・カナタに心配をかけてまで強行したあの行為を、無に帰さないようにするためには)
彼が行った原作の改変は一つだけ。
物語序盤の《プライムテラーズ》によるコロニー落としの阻止。
それは小さいようで、案外大きな影響をこの世界にもたらしている。
本来ならば、そこで明かされるべきであった《ラウンズ》の存在が、いまだ世間には秘匿されたままだ。
だが、運命が変えられても、起こるべき事象は次々発生している。
現に、《プライムテラーズ》の開発した”レギオンMk-II”は、原作通り、地球に降り立った主人公らを迎撃するよう現れたのだから。
(この世界には
ウィザードは少し、息を詰まらせた。
自分一人で世界が変わるなど、自惚れてはいけないとは思っていたが――あの時、世界が混乱に導かれる出来事をこの身一つで止めた時には、
「いい気味じゃない。お似合いよ」
ふと、耳に飛び込んできた冷たい声音。
幼いながらも、その気迫にはこの船に乗っている軍人以上のものを感じさせてくる。
視線を鉄格子の外に向ければ、鉄の棒に細々とした指を絡め、不敵に笑うあの少女の姿があった。
「君は……」
「そのまま大人しくしていればいいのよ。ド変態仮面サムライ」
嘲笑うように首を傾げる少女を、ウィザードは訝しげに見つめた。
あの時といい、この者はどうもおかしい。
いや、明らかにおかしい。
「……君にも前世の記憶というものがあるのか」
「うーん、あなたと私とでは
「ほう? えらく遠回しな言い方だ」
ウィザードは立ち上がり、彼女に詰め寄った。彼ほどの体躯を持つ男を、いくら鉄格子越しとは言え目の前にすれば怖気づくものだが、この少女はそんな気配一つ見せない。
自分と同類――のようなものとして見て間違いない。
彼女は、確実に自分が知らないことを知っている。
「ならば尋ねよう。この世界の運命、それを変えることはできるのか?」
「無理ね」
少女はあっさりと答える。
「言ったでしょう? Destiny。それは、目的地に等しいの。そうねぇ、いい例えはないかしら……」
「――行き先を決めた船は、いかなる妨害を受けようが必ずそこへ辿り着こうとする、ということか?」
「あら、いい例え。まさにその通り」
少女は鉄格子から離れ、彼に背を向けた。
もう用は終わりなのだろうかと気になって尋ねようとした途端、背中にあり得ないほどの悪寒が迸った。
じっ、とこちらを見つめる少女の柔和に曲がった瞳。
それは、とても恐ろしい気迫を感じずにはいられない。
「そこまで分かってるなら、分かるでしょ?
ふふふ、と笑ってから、部外者である彼女は何食わぬ顔でカードキーが必要なドアを開き、どこかへと消えていった。
「……私は悪霊にでも取り憑かれているようだ」
かつて、よく出向いていた神社の光景を思い出し、ウィザードは渋々眠りにつこうとするのだった。
◇
「准尉」
やや賑わいのある食堂。
ハンバーガーを両手に二つ持ったミハイルが、アズチに怪訝そうな顔で尋ねた。
「なんですか」
サラダを食べるアズチは、上官に対してだが鬱陶しそうに答える。
「アスカってあんな子だった?」
何やら未知の生命体でも目の当たりにしているかのような気迫で、遠くにいるアスカを見ながら言う。
アズチは半信半疑でその方角を見てみると、確かに驚きの光景があった。
笑みを浮かべて、食事を用意しているアスカの姿がそこにはある。
和食をベースに丁寧に皿へ盛り付けているのが、遠くからでも確認できた。
「……さぁ……少なくとも俺たちが見てきたアイツとは別人みたいですね」
「私といた時とは顔が――」
絶望したように掠れた声を漏らすミハイルを、アズチはじとっと見つめる。
「何か言いました?」
「ん? 何も」
ミハイルは白を切った。
言えるはずもない。アスカと、今はもう会えない妹の姿を重ねているなどと。
妹に溺愛していたミハイルにとって、そんな存在は手放したくないものだ。
「……まぁ。イライラされて勝手な行動されるより幾分もマシでは?」
「……そうね」
ミハイルはアズチの言葉を無理矢理飲み込むよう、ハンバーガーを口いっぱいに齧り取った。
原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)