ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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二十三話 リアム再び

 

 

「クソッ……!! 奴ら、まだ飽き足らないのか!!」

 

 

 激昂するアズチと、冷然な顔で機体に乗り込もうとするアスカ。

 

 ウィザードはそんな二人を横目に、なんとか修復の間にあった”ヴァリアンス”へと乗り込んだ。

 

 

《……今回は一つ目だけではなく、()()()()()()もある。これでようやくはっきりした。我々の敵は、アーク連邦の残党などという単純な物だけではないようだ》

 

 

 艦長の言葉に、一同は息を呑んだ。

 彼らはここで初めて敵を知るが、ウィザードは既に知っていた。どうにもむず痒い気分だった。

 

 アーク連邦残党と、()()()()戦争の必要が無くなった世界から排斥された地球産の軍事企業 ノーベル・ダイナミクスが手を組んだ反乱軍。それが、これまで相手にしていた《プライムテラーズ》の正体。

 

 まぁ、この事実を知った所で戦いが終わるわけではないのだが。

 

 

「……艦長、ミハイル大尉は」

《私ならここにいる》

 

 

 思わぬところから飛んできた返事に、ウィザードは言葉を詰まらせる。

 サブモニターには、屹然とこちらを見据えるミハイルの姿が映っていた。

 

 てっきり居ないものだと思っていたから、艦長にあえて聞いたのだが――杞憂だったと反省する。

 

 

「平気か」

《……余計なお世話だ》

 

 

 厄介払いをするよう、ミハイルは吐き捨てる。

 まだ、その瞳には灯火のような揺らぎが見られたが。

 

 

 どうしょうもないことだ――と、ウィザードは目を瞑る。

 彼女の事だから、いくら憔悴していようと撃墜の心配はないだろうが、どうにも心配だった。

 

 

 ペダルを踏み込み、操縦桿を押し倒す。

 カタパルトデッキに置かれた”ヴァリアンス”のスラスターから蒼炎が吹き出て、滑走する白銀の戦士へ莫大な推進力を与えた。

 

 バレルロールと共に大空を仰ぐ”ヴァリアンス”。黄昏時の空を思わせる(まなこ)を輝かせながら、敵陣へと猛進していった。

 

 

 

 荒廃の大地。そこへ影を落とすいくつもの敵機の姿がモニターに映る。

 

 

「アスカ、私と来い」

《了解!!》

 

 

 飛行形態から人型へと変形した”アストラル”を脇に置き、敵部隊との戦いの火蓋を切る。

 

 ”ペインレント”が先陣を切り、ビームセイヴァーによる猛攻を仕掛けてくる。

 

 ”アストラル”の”カーリールナ”の双刃と切り結び、鮮やかな閃光を幾多も散らした。

 

 鍔迫り合いに勝った”アストラル”が黒き兵士の腸を切り裂き、爆炎に呑まれる機影を切り捨てる。

 

 ”ヴァリアンス”はビームライフルを乱射しながら、遠方の機体を攻撃。

 これ以上、廃墟と化した街を壊されるわけにはいかない。早急なる短期決戦が望まれる状況だ。

 

 

「受け取れ、アスカ!!」

《はいっ!》

 

 

 ”ヴァリアンス”が投げ捨てたライフルを”アストラル”がキャッチし、牽制代わりに猛乱射する。

 唐突な射角の変更に戸惑う敵の一瞬の隙を突き、二対のビームセイヴァーで次々と敵を斬り裂いていく。

 

 

《大尉に手出しは、させないっ!!》

 

 

 飛行形態へと変形し、二対のビーム砲で弾幕を張りながら、その高速で戦場を掻き乱した。

 

 ”ヴァグ”に乗る歴戦の兵士であろうと、その撹乱には一瞬の隙を晒してしまうらしく、瞬く間にウィザードの駆る”ヴァリアンス”の餌食となる。

 

 

 刹那――頭に電流が走る。

 

 

 ”ヴァリアンス”は無理矢理な軌道変更により、その場を緊急離脱。

 

 大空から降り注ぐは、血潮の波動を思わせる極太のビーム。

 

 

《あの攻撃……!!》

 

 

 アスカの言葉に怒りが滲み出る。

 

 

 天から舞い降りた機体――”バハムート”の乱入により、戦況は大きく逆転する。

 

 

《久しぶりじゃない。まだ生きてたのね、お嬢ちゃん》

 

 

 ”バハムート”は大型セイヴァーを抜き取り、”アストラル”に切りかかる。

 バレルロールで翻弄しながら回避し、反撃の斬撃を叩き込むも、大型ゆえの広い守備範囲に受け止められてしまう。

 

 

《バッハ班長……!! あなたって人は!!》

《やるようになったわね、泥棒猫!!》

 

 

 レギオン同士の激しい戦闘。

 ”ヴァリアンス”がそこへ付け入る隙など、ありはしなかった。

 

 

「ミハイル……」

 

 

 だがアスカを信用している故――彼は、ミハイルのことが不安で仕方がなかった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ”ヴァグ”と”ヴィシャス”。

 

 ミハイルは、それを赤く染めてどちらにも乗ったことがあった。

 双方とも、記録上でもそうでなくとも、多くの人間を虐殺した機体だ。

 

 

 ”サウザンド”のビームブーメランが、敵機の腕を切り落とし、動きが止まった瞬間に脚部セイヴァーでコックピットごと両断する。

 

 

「お前たちが――」

 

 

 鉄箱の中、何も知らぬ少女が焼け爛れて空を見上げていた。

 

 七年前に幾度も、幾度も見てきた光景だ。

 

 いくつもの連なった培養ポッドの中に眠り、必要となったら培養液と共に外へ放出され、道具のように使われる。

 

 それなのに、初めて優しく接した人間の顔を覚え、恩返しをしようと懸命になる。

 

 道具なのに、心がある。

 

 ――疎遠になった、妹に似ている。

 

 

 その事実が、ミハイルを――ミラ・ヴァルーツを苦しめてきた。

 妹を逃がすために《煉獄の凶星》という異名を背負ったのも、涙を押し殺すための仮面も、今となっては虚空の中の存在。

 ミラ・ヴァルーツは、今この世に生きていてはならない存在。

 

 

 だから、アーク連邦の遺産を、奴らが残した傷跡を全て消してから、一人で消えようとしたのに。

 

 

「お前たちがいるからっ……!!!!」

 

 

 ヴァルーツは、居てはならなかった。

 生まれてはならなかった。

 

 その証拠が、いつまでも終わらぬ争いを繰り返す、偏見の権化たち。

 

 

 怒りのままに、”サウザンド”によって”ヴィシャス”を蹴り払う。

 憎しみのままに、二対のセイヴァーで”ヴァグ”を串刺しにした。

 

 

「私が……!! いるから……!!」

 

 

 自らのセイヴァーと切り結んできた”ヴァグ”の頭部を力業でむしり取り、制御が効かなくなった身体へ刃を突き立てる。

 

 金色の装甲が、粒子の色味が染み出した赤黒いオイルで汚された。

 

 

 《煉獄の凶星》。

 その罪深い異名を負い、更に罪を重ねてきた。

 仮面を被り、それを見まいと現実から目を背けてきた。

 

 

 彼に諭され、今はこうして自分なりに、彼が望んだであろう道を模索しているのに――もう、何が正しいことなのか分からない。

 

 いっそ、いつまでも世界が二極化するのなら、片方を滅ぼしてしまったほうが早いのではないかとまで思えてしまう。

 

 地球にいる人間、あるいは宇宙の人間を粛清すれば――。

 

 

 

 レーダーが吐き出す短い電子音に、彼女は意識を向けた。

 

 

「新手か……?」

 

 

 海側から急速接近してくる反応が一つ。

 

 ”ヴァグ”、”ヴィシャス”……にしては速すぎる。それにレーダーの示す反応は一機だけ。

 

 

 

 ――刹那、彼女の頭を刺したのは電流のような感覚。

 

 

「この感覚……」

 

 

 

 一分も経たないうちに、それは現れた。

 

 

 目の前を駆け抜ける蒼い影。

 

 

「何をする気だ、リアム!!」

 

 

 それは、”サウザンド”に斬りかからんとしていた”ヴィシャス”の首とスラスターを、恐るべき早業で斬り落とし、殺さぬまま墜落させた。

 

 

 

《下がっててください、ミラさん!!》 

 

 

 

 不意に出た言葉に、ミハイルは数泊遅れて度肝を抜かれた。

 

 どうして、その名前が出てくる。

 

 宇宙(そら)で自らを諭し、悪夢から救った少年の名前が。

 

 

「リアム……?」

 

 

 ”サウザンド”へ影を落とすのは、()()と形容するにふさわしい風貌のゲイズチェイサであった。

 

 V字のアンテナ、破損したツインアイ、フレームだけの左腕。破損した眼を補うように、何かのゲイズチェイサの内部カメラを無理矢理接続している。

 

 

 だが、満身創痍なことを除けば、その機体は確かに――。

 

 

 

「”レギオン”……」

 

 

 

 連盟軍の蒼き悪魔。

 

 

 ”ヴァグ”や”ヴィシャス”の動きが、戦慄したかのように途端に止まった。

 

 

 その機体――”レギオン”は、その体たらくにも関わらず、ビームセイヴァー一本で多勢を相手にしようとしている。

 

 普通なら止めるだろう。所属すらもわからない機体なのだ。

 だが、ミハイルは止めなかった。

 その中に乗る人間なら、可能だということをどういう訳か確信していたからだ。

 

 

 ”レギオン”は怖じけず向かって来た”ヴィシャス”の頭部を斬り落とし、目にも留まらぬ速さで左腕部と右脚を切断。

 

 機体を一蹴し、その背後から迫りくる”ヴァグ”の足を止めて、ほんの一瞬だけ生まれた隙をついてスラスターを下半身と上半身を泣き別れにする。

 

 ハルバードによる奇襲を仕掛けた”ヴィシャス”。

 普通なら一撃貰うか、セイヴァーで受け止める所を、あろうことか機体を宙返りさせることで回避し、そのまま身体を一刀両断するところまで反撃した。

 

 

 二機の”ペインレント”に囲まれた。

 

 ”ヴァグ”も”ヴィシャス”も旧世代の機体だから相手取れた。この機体ならそうはいかないだろう。

 

 だが、”レギオン”は動きを止めない。

 

 高スペックな”ペインレント”に翻弄されながらも、片方を体当たりで動きを封じ、その隙にもう片方にセイヴァーを投擲することでカメラを潰す。

 

 蹌踉めく”ペインレント”を踏み台にし跳躍することで、カメラアイに突き刺さったセイヴァーを抜き取ると同時に一機をコックピットをごと貫いた。

 

 

 すぐさま反撃に出た”ペインレント”が剣を振るう時には、もう”レギオン”はそこにはおらず、その眼が移すのは宙を舞う自らの右腕だけだった。

 

 背後から猛スピードで迫る”レギオン”が両腕を用い、渾身の力でセイヴァーを振るう。

 ”ペインレント”は隻腕でセイヴァーを引き抜き、その攻撃を受け止めた。

 

 それにより、”レギオン”のフレームだけになった腕は木っ端微塵に分解され、大きな隙を晒してしまう。

 

 しかし、乱射されるバルカン砲により動きを止められその腹へ足蹴を喰らわされた”ペインレント”。

 

 一機で化け物を相手取る自信がなかったのか、尻尾を巻いて逃げていった。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 ミハイルは息を呑み、そこから動くことができなかった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ”バハムート”の乱入により、”ヴァリアンス”と”アストラル”は劣勢に立たされていた。

 

 

《目が赤いわね、そこの一つ目ェっ!!》

 

 

 ウィザードの”ヴァリアンス”の動きが他と違うこと、”バハムート”のパイロットは分かり得ている様子だった。

 

 

《このぉぉっ!!》

 

 

 ”カーリールナ”の軌道が描かれては消えていく。その軌道の行く先は、大型セイヴァーの赤黒い残光。そこで鮮やかな閃光が打ち消されては、また生み出されていく。

 

 

 ”アストラル”を退け、次なるターゲットは暁の眼を持つ”ヴァリアンス”。

 大型セイヴァーによる奇襲は、セイヴァー二本で防いだ”ヴァリアンス”を軽々と吹き飛ばすには十分過ぎる威力であった。

 

 

「ぐっ、君の機体でも駄目だというのか……!」

 

 

 ”バハムート”。このレギオンは、他の二機とは別格だ。他の二機の援護で輝く機体と思い込んでいたが、単体でも十分過ぎるほど強い。――否、本来一機では然程強力ではないのだろう。機体のポテンシャルを、パイロットが最大限引き出している。

 

 

《愚かだ愚かだ、愚かだぁッ!! 地球人ども!! このアタシがテメェらの敗北を告げに来てやったんだよ!!》

 

 

 突如入ってくる無線通信。

 それは、暴力に塗れた荒々しい言葉ながらどこか気品さえ感じられる声音。

 

 

《地球は終わりだ!! アタシ達《プライムテラーズ》――いいや、《モードレッド》が、真なる人類が!! テメェら全てを支配してやるんだよ!!》

 

 

 ”バハムート”の巨砲が、突然、その背後にいた”ペインレント”の軍勢を根こそぎ薙ぎ払った。

 

 仕損じた一機が荒々しく突撃してくるも、大型セイヴァーの餌食にし、”ペインレント”は――地球人は全滅した。

 

 

「下衆め」

 

 

 仲間割れ、とは一言で形容できぬ惨劇を見て、ウィザードはただそう吐き捨てた。

 

 

 

 

《劣等種ども、今ここで根絶やしにしてやるよ!!》

 

 

 手が震える。

 それは怒りなどという単純な感情などではない。

 

 

「ふざけるな……!!」

 

 

 地球人類、宇宙人類。

 生まれた場所の違いだけ。同じ人間に変わりはない。そこで培える技術に、多少の差異さえあれど、大きな違いなどありはしない。

 

 なのにどうして、地球の人間が劣っていて、宇宙の人間が優れているといえる?

 

 宇宙は過酷な環境だ。そこで生き抜いてきた人々は、確かに地球の人間よりかは頑強かもしれない。

 

 でも。

 

 自分を女だからと言って庇い、死んでいった(シン・リーダム)の出自を、アスカは未だに知らない。

 

 火星には色々な境遇の人がいた。

 だけれど、皆互いの生まれた地など知らないまま、信頼し合って生きていた。

 

 彼だってそうだ。生まれが地球か宇宙かなんて、自分には分からない。

 でも、優しくしてくれた。仲良くなれた。同じ屋根の下で心を許せるようになった。

 

 

 生まれなんて関係ない。

 それが当然のはずなのに、彼は、生まれの差が招いた争いの犠牲になった。

 

 

「そんなことで、そんなことで、あの人はっ!!!!」

 

 

 ”アストラル”は竜王へと斬りかかるが、その斬撃は再三、大型の刃で防ぎ止められた。

 

 

《そんなことォ!? ほざくなよ。人類は次の段階に進まなければならない、そのために邪魔なんだよ!! お前ら地球人は、劣等種は!!》

「ふざけるなぁぁっ!!」

 

 

 距離を置き、ビームライフルを乱れ撃つ。

 

 当たりはしないが、それでも撃ち続けた。

 

 

「どうして二つに分けなきゃいけない!! どっちが優れてて劣ってるかなんて、誰にでも分かるような、単純なことじゃないはずだ!!」

《何も知らねぇクソガキが、知ったような口をッ!!》

 

 

 再び切り結ぶ二機。

 しかし、力の差は歴然。

 

 

《テメェこそ、男だ女だ、人を分断してたじゃねぇか!! それが人の本性だッ!!》

 

 

 砕かれる疑似粒子の結晶が、無機物であるゲイズチェイサの体液を模すように大空を紅く染め上げた。

 

 

「言ったはずだ、ボクが戦うのはもうそんな理由のためじゃない!!」

 

 

 アスカの頭に、何者でもない、誰かの声が聞こえてくる。

 その声に惑わされず、アスカは強い信念を口にした。

 

 

「ボクみたいに人を二分して、勝手に苦しむような人間を作らない、そのために!! ボクは!!」

 

 

 赤いボタンを覆うプラスチックのカバーを手際良く外す。

 そこに嵌め込まれた赤いボタンを、彼女は躊躇すること無く押し込んだ。

 

 モニターにカウントダウンが表示されたかと思えば、別のウィンドウがそれを覆い隠すように埋め尽くした。

 

 

「ボクは、あなたを超える!!」

 

 

 

 

 ”FORCE LEB SYSTEM STANDBY”

 

 

 

 

 

「ゆけ、主人公(英雄)よ!!」

 

 

 

 トドメとばかりに剣を振るった”バハムート”は、赤い粒子を残して消えた”アストラル”の行方を探す。

 

 

《何っ……!? どこだっ!?》

 

 

 ”バハムート”の周囲を、赤い何かが動き回っている。

 ビームバルカンによる牽制が全く意味をなさない。その弾道は、気づいたときには虚空を薙いでいた。

 

 

 赤い何かが”バハムート”を襲う。

 凄まじい慣性を効いた体当たりは、いくら”バハムート”であれど、軽々と吹き飛ばされるほどには強烈であった。

 

 

《ちっ、てめぇもそれか……!!》

 

 

 猛る焔の如く粒子を迸らせる”カーリールナ”の双刃を携え、”アストラル”は太陽を背にようやくその姿を現した。

 

 変形した胸部装甲から漏れ出す、あり得んばかりの量のクレナイ粒子。それが”アストラル”の首元からスカーフが靡くかのように流れ出ている。

 翡翠に輝いていたツインアイは真っ赤に染まり、漏れ出る粒子が稲妻のように迸っていた。

 

 

「フフ……ハハハ!! これは傑作だ!!」

 

 

 ウィザードは高らかに笑った。

 

 主人公 アスカ・カナタの覚醒――それは、本編では見ていられないシーンだった。

 自らの失態からアズチを失い、哀しみに暮れ、彼に抱いていた愛を果てしない憎しみと怒りに変換し、悲痛の絶叫をしながらシステムを発動させる。

 

 

 だかどうだろう、そうなるはずだった彼女が怒りに溺れること無く、自らの信念を貫き通すべくその力を使っている。

 

 

 ――すべては、自分が変えた運命に従って。

 

 

「やはり!! 私と主人公(英雄)は、運命の赤い糸で結ばれた存在!! ならば、この赤い糸、もう二度と途切れぬよう、固く屈強な戦士の肉体の如きの鎖へと変えてみせよう!! この昂ぶる気持ちを何といえば良いか――」

 

 

 ”FORCE LEB SYSTEM STANDBY”

 

 

 

「この気持ち、まさしく愛だ!!――」

 

 

 

 ”ヴァリアンス”のフォースレヴを発動させたウィザードは、昂ぶる気持ちに身を預け、静かなる怒りを、信念へと変えた誇り高き英雄の元へ特攻する。

 

 

《その言葉遣いは……!! 生きてたのか……!!》

 

 

 ”バハムート”は追い込まれるがままに、レーザーを放出。

 しかし、残像を残して消えた二機を捉えることはできなかった。

 

 

《どんな手品か知らねぇがっ!!》

 

 

 大型セイヴァーを我武者羅に振るう。しかしそのリーチをもってしても、縦横無尽に駆け回る二機を捉えることは不可能だった。

 

 ”バハムート”の両肩のアーマーが中を舞い、爆散。

 

 もうその眼が紅く輝く二つ流星を視認することはできない。

 

 

 ”ヴァリアンス”と”アストラル”、双方のバレルロールから繰り出される赤刃の回転斬が、”バハムート”の大型セイヴァーを細切れに大破させた。

 

 クールタイムが終わるや否や、”バハムート”はビーム砲で全方位を薙ぎ払った。

 

 それでも当たらない。

 

 幻影にでも踊らされているようだった。

 

 

《このアタシがァァっ!!》

 

 

 ようやく奴の目前に二機が姿を現した。

 

 

 しかし燃え滾る焔で作られたかのような刃を振り上げた瞬間、一秒も経たないうちに振り下ろされ、”バハムート”の両腕と大型ビーム砲が爆散する。

 

 

 目眩ましの黒煙に紛れ、”バハムート”は即座に退散した。

 

 

 

 竜王を追おうとする”アストラル”だったが、限界稼働時間に達したのか力無く倒れ、地面に墜落していった。

 

 

「アスカ!!」

 

 

 ”ヴァリアンス”でそれを受け止めたが、彼の機体にも限界が来て、共に緩やかに墜落してしまった。

 

 散々かき回され、敵機は敢え無く退散していくようだ。

 後先考えずに行動してしまったことを、ウィザードは酷く後悔するのだった。

 

 

《た、大尉……これ……やばいですね……》

「まだまだ鍛錬が足りないようだ」

 

 

 目を回すアスカに、ウィザードは微笑みかけてやった。

 

 よく、ここまで成長してくれた。

 

 

「君には、感謝してもしきれないな」

《うぇぇぇ? 何かいいましたぁ?》

「なんでもない。グレード准尉、お迎えを頼めるか?」

《張り倒されたいのか!!》

 

 

 

 ◇

 

 

 

 アズチとリックの機体に運ばれる二人は、一難去って安堵していたところ、地上に見えた”サウザンド”と見慣れない機体を見て、顔色を変えた。

 

 

「何……!?」

 

 

 特に驚いていたのはウィザードだ。

 

 

 ”サウザンド”と向き合うように屹立する満身創痍の機体。

 ボロボロだが、確かにそれはファーストシーズンで主人公 リアム・ソナタが初めに乗り込んだ原点の機体――”レギオン”以外の何物でもなかった。

 

 だが、”レギオン”はファーストシーズンのラストで使い物にならないほど壊れ、そのままセカンドシーズンに姿を現すことはないはずだ。

 

 

 それが半壊の状態でとは言え、アスカが活躍するこの時代の大地に足をついている。

 

 

 ウィザードは鳥肌が立つのを覚えた。

 

 

 自分は一体、どこまでこの世界を変えてしまったのだ、と。

 

 

 

 

 ”サウザンド”のコックピットハッチを開くミハイル。

 すぐに降りることはせず、向こう側にあるゲイズチェイサから、パイロットがその姿を現すのを淡々と待った。

 

 

 半壊した機体のコックピットが開かれた。

 

 

 中から姿を見せるのは、パイロットスーツすら纏っていない青年。

 風によって黒いロングコートと、女性顔負けの綺麗な茶髪が靡く。

 

 

「……間違いない、リアム・ソナタだ……」

 

 

 ミハイルは瞳を揺るがしながら、そう呟いた。

 

 

 

 

 久々の戦闘の高揚が未だ収まらぬ中、リアムは衝撃的な再会を果たしてしまった。

 

 空色の髪。一度だけしか見たことのない、仮面の下の整った顔立ち。髪は伸び、その可憐さの残る風貌に、数年前のアルバの影が重なった。

 

 

「ミラ……僕は確かに、そう言った」

 

 

 

 

 

 無理を言って着陸させてもらったウィザードは、二人の邂逅を、アスカと共に傍観していた。

 

「誰……あの人。不思議なカンジがする……」

 

 アスカはミハイルと向き合う青年が何者なのか、分かっていない様子だ。

 

 

 二人は本編でも確かに再会する。

 だがそれはミハイルが艦長から情報を得て、彼女自身で会いに行くという展開であり、リアムがここに現れるという展開はあり得ない。

 

 

 本来あり得ないアスカの、パイロットとしての覚醒。

 

 そして、本来あり得ない”レギオン・リガド”という機体と、旧主人公と旧ライバル同士の邂逅。

 

 

 いくつもの運命が歪められ、もうここは自分の知る「反逆機兵レギオン」の世界ではないことを、ウィザードは悟った。




前半終了。
しばらくお休みする……かも?

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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