ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
活動報告でも話したのですが、投稿頻度が落ちます。
申し訳ないです……
二十四話 どう見る? あれを
ミハイルとリアムは、互いに焼け爛れた地面に足をつく。
乾いた風が絶え間なく吹き荒ぶ中、二人は互いの顔を確認し合う。
近くで見ても変わらない。その人があの時、あの場所で出会った、自分の脳裏に深く刻まれている人物だという事実は。
「……生きていて、くれたんですね」
リアムは優しく微笑み、そう言った。
彼女の唇が微かな痙攣を見せ、出てこようとした言葉は一瞬のうちに引っ込んだ。
その柔らかな笑みは、あまりにも儚い。
つつけば壊れてしまいそうな、あまりに危うい表情。
悪逆の天を、地へ引きずり下ろした戦争が彼に齎したものの壮絶さを、彼のその表情が物語っていた。
ウィザードはそんな二人の元に臆することなく近づいた。
リアムは仮面に覆われた人物の姿を捉えると、一瞬だけ驚いたような表情を浮かべ、すぐに儚げな面立ちへそれを隠した。
「……あなたは、やはり。僕に隠し事をしていたんですね」
「騙して悪かった。だが、規則でな」
ウィザードはそう言い、上空へと視線を向けた。
”レギオン・リガド”を包囲するように展開した”ヴァリアンス”部隊が、今にもライフルを照射せんと待ち構えている。
「これもですか」
「あぁ。そうだ。我々は暗黙の存在なのでね」
冷然と言葉を紡ぐ彼だったが、内心ものすごく動揺していた。
リアムはここに来てはいけない。もっと言えば、白銀の戦士たちが討とうとしているその歴戦の勇者は、本来あるわけがない機体。
なぜ? どうして?
自分はファーストシーズンにはリアムとミラの決闘の一部始終を見ただけで、一切介入していない。
なのに、最終話で全壊し、セカンドシーズンでは破棄される”レギオン”がここにいるのか。
《総員、撃ち方止め。もう戦いは終わった。直ちに帰還せよ》
ヨハンが会話に乱入。”ヴァリアンス”部隊が帰投し、リアムを覆っていた影が消え失せる。
《ウィザード大尉。その者をブリッジに連れてこい。いろいろと、聞かねばならないことがある。ミハイル大尉も共に来てもらおうか》
「……承知した。艦長」
ヨハンの声に従い、ウィザードは動転する気を鎮めるべく、リアムの手を取り”ハンドレッド”へと案内した。
◇
ブリッジは艦長と当事者の中で最も権限のあるミハイルとウィザード、そしてリアム以外の立ち入りは禁止された。
緊迫した空気が流れる中、ヨハンが無精ひげを撫でながら深々とため息をつく。
「面倒事が増えた……」
消えかかるような語尾に、彼は続ける。
「リアム・ソナタ。私の記憶が確かなら、その者は〈ヘヴンダウン戦争〉において当時の新造艦”ゼロ”の一員で、かの”レギオン”のパイロット……のはずだが」
リアムは一切の否定をすることなく頷いた。
「……まぁ、答えはあの機体が物語っている。偽物があそこまで用意するはずもない」
元連盟軍ならばその名を知らない者は稀有だ。リアム・ソナタ――連盟軍の蒼き悪魔。たった一機で劣勢だった戦況が覆ったという、戦争の常識に反した存在。
「ウィザード大尉、彼と面識があると言ったが。どういう訳だろうか。場合によってはまた牢獄にぶち込まなくてはならなくなるのだが」
彼が呼ばれたのは艦内の重要人物であるからではなく、艦内で最も危険な人物であるからであった。また、極秘情報漏洩の罪を疑われているようだ。
「……地球に落ちた時、たまたま彼のもとに流れ着き、手当てをしてもらった。心配しなくとも私は《ラウンズ》の情報を漏らしてはいない」
「えぇ。ボクはこの人のことを「海から流れ着いた気持ち悪い人」だと認識しています」
「海ではなく空からだな」
「じゃあ「空から落ちてきた気持ち悪い人」です」
「よろしい」
「何が?」
二人の流れるような会話に、ミハイルは思わず横槍を入れた。
「さて、質問責めもよくない。ここに来たということは、君が抱く疑問もあるのだろう」
ヨハンは彼に尋ねる。初対面のようだが、どことなく、彼自身はリアムのことを内面まで見ているかのような雰囲気だ。
「あなたは、レイ・コンゴウ中佐の旧友とお聞きました――いつから、この組織はあるのですか?」
いきなり底をつつくような問いを投げかけたリアム。
ミハイルが制そうとするのを、ウィザードは止めた。
彼は悩みに悩み、ここに来たに違いない。偽りの平和が続く現状。宇宙も地球、双方の幸福を願った彼だからこそ、今の世界には異を唱えずにはいられないはずだ。
「君とコンゴウが軍を退いてから、すぐ。アーク連邦の残した記憶処理剤の生産ラインが整い、この偽りの平和は築かれた。確かに平和にはなったのかもしれない。だが、南東の国々には宇宙からの難民で溢れ、迫害される定めにあったし、我々のように目のつかぬ所で争いに身を投じる者もいた」
ヨハンは包み隠さず彼に告げた。
リアムの瞳に映る何かを、察した故の行動であろう。
「リアム・ソナタ。君は、また戦うのか」
彼は暫く口を閉ざしてから、ヨハンに向き直って言った。
「僕に、できることをします」
隣にいたミハイルが息を呑むのを、ウィザードは感じ取る。
この台詞――アニメ本編でも、再びミラと対面した彼が口にしていた言葉だ。ミハイルの反応も、その時と全く同じだ。
「ともかく処遇は後に考えることにしよう。
艦長の命令を聞き入れ、ミハイルは彼を連れてブリッジを出ていった。
空き部屋を使わせるとは、えらく丁重な扱いだ、とウィザードは喉を鳴らす。
ヨハン・ヤマト。本来の筋書き通りならば、ミハイルにリアムとアルバの所在地を伝えた張本人だ。明確に言えば、彼が知っているのは二人を匿うレイの居場所であり、リアムと面識があるわけではなかった。
レイとは旧友らしく、今でも内密に連絡を取り合う仲らしい。
「君は大人しくしていてもらおうか。なんだか、トラブルの香りがする」
「その心地よい香ばしさが、いずれ恋しくなる時が来るだろう。艦長」
敬礼をしながら、ウィザードはブリッジを出た。分かりやすくため息をつかれたのを、見て見ぬふりをして。
◇
「少し埃っぽいけれど、シャワーもあるから」
ぎこちなく部屋を紹介するミハイルを、リアムは訝しげな表情で見つめていた。
凝視され、目のやりどころに困ったミハイルは苦く笑った。
「……どうして、貴女が地球にいるんですか」
ずっと腹の奥に抱えていた疑問を、彼女にぶつけた。
ミハイルは嘆息の後に口を開く。
「行き場が無いの。いろいろあって」
「また戦争ですか」
「そうね。残念なことに」
リアムは何か言いたげな顔だ。彼のことだから、はっきりと物を言えないのだろう。
「君は? あんな物を掘り出してまでここに来たのには、理由があるのでしょう」
ミハイルに尋ねられ、リアムは意を決したように言葉を紡ぐ。
「あなたを笑いに来た、と言ったら?」
「別に構わないわ。笑われて当然だもの」
少し表情を和らげてから、リアムは続ける。
「さっきも言いました……僕にできることを、しにきただけです」
「それが、戦うことなの」
「もう……僕にはそれしかできませんから」
哀しそうに言う彼を見て、ミハイルの胸には複雑な気持ちが宿る。
初めて彼を見たときと、同じ感情だ。
皮肉にも、彼は悲しみに暮れる表情が似合う。その印象が強すぎるためだろうか。
「《煉獄の凶星》と《蒼き悪魔》。かつての英雄の会話に口を挟むのは蛮行……だと承知しての行動だと了承してもらいたい」
そう言いながら口を挟んだのは、もちろんウィザードだった。
二人の顔が同時にじとっ、とする。
「あなたは本当に何なんですか。怖いです」
不快の視線をぶつける彼の顎を、ウィザードは何のためらいもなく指でくいっと自らの目前へと寄せた。
「素直になるといい、リアム・ソナタ。同じ屋根の下で共に○○○○した中ではな――」
生々しい音が廊下中に響き渡り、ウィザードは壁に打ち付けられて屍と化した。
ミハイルは即座にリアムを救出し、屍に弔いを送ることもせず彼に青ざめた顔で尋ねた。
「――ねぇ、リアム。今の本当……? あ、アルバはどうしたの……」
「ご、誤解です!! この仮面が勝手に言いだしたことで」
「ああーっ!!」
途中で叫び声が混ざったかと思えば、アスカがどこからともなくすっ飛んできて、屍となったウィザードに寄り添った。
「ミハイル大尉!! またウィザード大尉に強く当たりましたね!!」
「いいえ別に。修正してやっただけよ」
冷たく言い放つミハイルと、”ハンドレッド”のノリについていけず、唖然とするリアム。ウィザードはその光景を横目にしながら、むくりと起き上がった。
「……あなたがリアムさんですか。あの、連邦軍の白い悪魔とかいう」
「連盟だし蒼だし……誰と間違ってるの?」
アスカの言い間違いを、リアムは淀みなく訂正した。
(ふふ……三人の主人公が、この場にいて、私もここにいる。ここまで幸福な事が他にあるだろうか)
夢のような話だ。
リアム、ミラ、アスカ。反逆機兵レギオンの主軸となる三人の人物と、同じ地に足をつき、同じ空気を吸っている。
しかも、アニメ本編のような険悪な空気ではなく、このような和やかな(?)雰囲気のまま。
「……もう少し話がしたいです。ミラさん。静かなところで」
「……ミラ?」
リアムの言葉に、アスカが首を傾げた。
しまった、とミハイルが表情を変えたのを察して、ウィザードはアスカを連れてこの場を去る。
(アスカが彼女の正体を知ったら、どうなるか分からない……)
「大尉離してくださぁい!!」
「アスカ。訓練の時間であることを忘れているだろう」
「そんなの言われた覚えありませーん!!」
二人の主人公が、同じ部屋へと消えた。
やらしい冗談は抜きにして。二人だけで話せる空間を設けた彼女らが、一体何を話すのかは見物であったが、介入する余地はないのが現実だ。
(ここから先、この世界がどう動くのか。私にはもはや予測がつかない)
予定よりも早まった”ティターン・レギオン”の撃破に、リアムとミラの再会。そうすることで、色々と元のシナリオとの辻褄が合わなくなってくる。
最も問題なのは、何故自分が直接手を下していないにも関わらず、”レギオン”のリペア機などというものが存在するのか、だ。
あの少女なら何か教えてくれるだろうか――いや、たぶんまた、Destinyだなんだと言ってはぐらかすだけだろう。
気になるのなら、自分で確かめるしか無い。
そのためには、生き残らなくては。
◇
ホコリ被った部屋で二人、静かな空気に身を委ねていた。
リアムはそういう空間のほうが落ち着くらしく、先程より幾分も穏やかな表情になっている。
ミラは椅子に腰掛け、脱力した。
あの男の相手をしているとすこぶる体力が奪われるのを感じる。
埃が目に入りそうになり、サングラスをかけた。
思えば、彼の前で素顔を晒すのはあの時以来かもしれない。
その前にも幾度か顔は合わせたが、いずれも彼女は仮面を着けていた。
「いまは、ミハイル・バジーナ大尉。なんですね」
「そうね。そう呼んでくれると助かるわ」
ミハイル・バジーナという名前は、前大戦で戦っていた地球軍人の戸籍から借りたものだ。もしかしたら、彼は顔を合わせているかもしれない。もしくは自分が、直接この手で落としたのかもしれない。
「……ミラさんはどう思いますか。あの人のこ――」
「断固拒否。生理的に受け付けない」
出鼻をくじかれたリアムは、自分に非があったと訂正する。
「そうでなくて……あの人、〈アルカナ〉だと思いますか?」
訂正された問いかけに、ミラは眉をつり上げた。
あの男が〈アルカナ〉……?
〈アルカナ〉同士は、互いに何となく気配を感じ取る事ができる。現に二人は、顔を見たわけでもないのに、機体の中にいることを互いに察知できた。
だが、ウィザードはどうだろう。
向こうがこちらの位置を察知しているような素振りもないし、何より、ミラ自身は彼の思考を覗き込むことはできない。
〈アルカナ〉というのは謎多き分野だが、確かなのは
「……確かにあの男は、妙に勘が鋭い時がある。何より、あのシステムを発動できたのが〈アルカナ〉である何よりの証拠になるのかもしれない」
でも、とミラは続ける。
「私はあの男の気配が分からない。〈アルカナ〉同士であれば、何かしらの察知はできるはずなのに」
「……ですよね。僕もそうです」
「アスカは――あのレギオンのパイロットの気配は、今でも分かる。あの子はおそらく、戦いの中で〈アルカナ〉として覚醒したんだと思うけれど」
アスカは先の戦いで、〈フォースレヴ〉を起動させた。初対面の頃から不思議な子だとは何となく察してはいたが、まさか〈アルカナ〉の素質があったとは。
「……
「私の父、グラン・ヴァルーツは公開文書に”来たるべき対話”……としか記していなかった。普通に考えれば、宇宙と地球、異なる故郷を持つ人類の架け橋となる存在……という意味だとは思う」
ミラは椅子から立ち、彼に微笑みかける。
「あの男と一緒に見たんでしょう。父の論文を。まだ大切に取っていてくれたのね」
「えっ?」
リアムの素っ頓狂な声を聞いて、ミラは目を丸くした。
「な、何の話ですか?」
「え……いや。私があげた〈アルカナ〉に関する公開文書。あの男に見せたんでしょ?」
「確かに持ってますけど……なんであんな人に見せようと思うんですか」
ミラはサングラスを外し、血走った目を明後日の方向へ向けながら虚空に言い放つ。
「あの仮面野郎……!!」
原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)