ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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二十五話 刮目させてもらおう

 

 

「ふむ、これはどういうプレイかね」

「黙ってろ!!」

 

 

 リックとディアス、二人の大男に捕らえられ、ミハイルに鬼のような形相で睨まれている。その傍らで、リアムが申し訳無さそうにウィザードを眺めていた。

 

 

「私に嘘をついたよな」

「君も私も存在そのものが嘘――っぐ」

 

 

 ミハイルにどつかれ、ウィザードは柄にもない声を上げた。

 

 ミハイルに勘付かれて、咄嗟に捏造した嘘がついにバレてしまった。が、ここまでのツケが回ってくるとは流石に予想外である。

 

 

「じゃあ何? あの場面で嘘ついたってことは、私たちに何か隠してるってのは図星ってこと? そういう捉え方でいいのよね」

「君とてこの船の者全員に隠し――ぐはっ」

 

 

 ミハイルのアッパーで、ついにウィザードの仮面が宙を舞った。

 リアムは流石に止めに入ろうとしたが、女を怒らせた時の恐ろしさを知っていたため、迂闊に手が出せない。

 

 

「……悪いが正体そのものを隠しているような君にだけは言及されたくないものだ」

「まだ言うか」

 

 

 ゆっくりと降りてくる、ウィザードの素顔を見た時、リアムはハッとさせられた。

 

 素顔は見たことがある。しかし、まじまじとではない上に、眠っている顔だけだったから気が付かなかった。

 

 

(あの顔……もしかして)

 

 

 銀髪に翡翠の瞳。端正な顔立ち。そして、仮面でそれを隠さねばならない理由――その特徴から導き出される答えは。

 

 

「待って!! ミラさん!!」

 

 

 声を上げたリアムに、ミハイルの動きが止まった。

 

 

「……もう許してあげましょう。きっと、何か事情があるんです。ミラさんだって、同じでしょう?」

 

 

 彼に優しく問いかけられ、ミハイルは心を揺り動かされ、リックとディアスにウィザードを離すよう言った。

 

 

「君がそう言うなら……」

 

 

 しおらしく唇を尖らせるミハイルに、リックとディアスが驚いたように顔を見合わせる。

 

 殴られた箇所を擦るウィザード。

 そんな彼に、リアムは寄り添うように歩み寄った。

 

 

「大丈夫ですか。ウィザード大尉」

「凝りがほぐれた。丁度いい加減だったよ」

 

 

 ウィザードの言葉に、ミハイルは額へしわを寄せる。

 

 何故リアムが途端に口を挟んだのか――まぁ彼の性格を考えればもっともなことだが――あまり深くは考えぬまま、ミハイルと向き合う。

 

 

「嘘をついた事は謝ろう。すまなかった」

「リアムに免じて許してやるけど、今度仲間を騙すようなことしたら殺すから」

 

 

 酷いブーメランである。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「リアム・ソナタ。君は《ラウンズ》への加入を本当に望むのか? どのみちタダで帰すつもりはないが」

「僕は戸籍上、まだ結束連盟軍人のはず。《ラウンズ》加入の条件は十分満たしています」

 

 

 艦長に資料を提出するリアム。それは、彼から手渡された《ラウンズ》への加入要請の資料であった。

 データベースを探せば、リアムの情報は容易に出てくる。休職中とは書かれてあるが、一応記録上は連盟軍のパイロットである。

 

 

「君が良いのなら良い」

 

 

 ヨハンは静かに目を閉じ、その要請を受領する。

 あまりに呆気なく終わったために、リアムは彼に尋ねる。

 

 

「……止めないんですか」

「君がここに来たということは、あいつは君を止めなかったのだろう。つまりそういうことだ」

 

 

 ヨハンとレイは、古い友人だとは聞いていた。だが、ここまで深い仲とは、リアムも予想外であった。

 彼が戦艦”ゼロ”の一員であったころ、ヨハン・コンゴウなどというクルーはいなかったし、何よりその当時のレイには”ゼロ”に親しい友人がいた。

 

 

「俺とレイは……何と言えば良いのか。友人、とも言い難い関係だ」

「身体の関係だろう」

 

 

 横槍を差したウィザードに、艦長の修正が叩き込まれた。激しく吹っ飛び、作業をしていたルナの前に倒れ込み、彼女の悲鳴があがる。

 

 

「艦長! 外に投げてください!」

「……長いこと会えていない。士官学校ではそれなりの仲だったが、あいつが地球配属になってからは、もう当分」

「レイさん。度々口にしていましたよ。貴方のこと。どうしているのか、って。連絡の一つくらい、してあげても良かったのではないですか」

 

 

 ヨハンは嘆息する。窓の外の、限りなく遠くを見るように目を細めた。

 

 

「俺のことなんか、とっくに忘れただろうと思っていてな」

 

 

 リアムは彼の様子を見て、かすかに歯噛みした。

 皆が笑うこと、皆が幸せとまではいかずとも決して不幸にはならないこと。それを望む彼は、きっとどこまでも強欲と言えるだろう。

 

 

「艦長。次の目的地は?」

「いやぁぁあっ! 大尉! 血! 血!」

 

 

 純白の服へ赤い斑点を作りながら、ウィザードは艦長に尋ねた。

 

 

「この先のアラスカ基地で補給を受ける。そこでゲイズチェイサの調達も行う。リアム大尉の機体も、用意してやらなくては」

「僕はありますが」

「あれを仮に直したところで、二世代も前の機体だ。そんな物には乗せられない」

 

 

 いくら”レギオン”とて、時代の流れには逆らえない。大量に配備される”ヴァリアンス”ですら、今の”レギオン”に対面で勝てるだけの性能は秘めているだろう。――彼が乗っていたら、あまり信憑性はないが。

 

 

「……ウィザード大尉。どうやら、君の新たな機体も用意されているようだ」

「ほう? 聞いていないが」

「今言ったからな」

 

 

 ウィザードはその言葉に心を躍らせた。長らく”ヴァリアンス”で、少し辟易していたところだ。

 

 

「アスカ少尉が設計データを手配してくれたらしい。君の今までの戦闘データを元に、最適な設計を施した……と彼女が言っていた」

「アスカが……」

 

 

 彼は胸元をぎゅっと、何かを押し殺すように握る。

 胸の高鳴りを感じた。

 主人公から機体を授かる――こんなにも、こんなにもアニメオタクにとって嬉しいことはあるだろうか。いや、こんなに嬉しいことはない。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「アルバ。冷えるから入れ」

 

 

 もう日が沈みそうな頃。

 アルバは冷え込んでくる砂浜で、風に揺られながら空を見上げていた。特に何をするわけでもなく、ただ、ずっと空を見上げる。

 

 リアムがここを発ってから、早数日が経とうとしている。

 

 アルバはあれ以降、気が気ではない様子だ。

 

 

 レイは彼女の隣に立ち、同じように空を見上げてみた。

 

 綺麗な星空が、ただそこには広がるだけだった。都会の人工的な光から隔てられたここは、どこよりも美しい星空を伺うことができる。

 藍色の海へミルクを零したかのような、儚ささえ感じるその景色を、アルバは見惚れるかのように凝視している。

 

 

「……お前も〈アルカナ〉だから、あいつのことがわかるのか」

 

 

 レイの問いに、アルバは深々と頷く。

 

 〈アルカナ〉同士は、理論は不明であるがお互いの思考を読み合い、真の意味での対話を行うことができる。

 だが、それは”殺意”を読み取ることにも転用可能。アーク連邦も地球連盟も、〈アルカナ〉を戦争の道具としてしか捉えなかった。

 

 

「リアムはいつも泣いてる。戦争なんてしたら駄目なのに……」

「不思議だな。あいつの心が直接読めるわけじゃないが、それには共感できる」

 

 

 アルバは飛ばされそうになる麦わら帽を押さえ込みながら、その影に瞳を落とした。

 

 

 ふと、彼女は何かを感じ取り、その何かに酷く怯えた。

 

 

「……どうした?」

「誰か、いる……お姉ちゃん……?」

 

 

 アルバの言葉に、レイは警戒した。

 

 拳銃は家の中にある。が、長らく軍職から退いていた自分に銃があったところでどうにかなるのか、と疑問に思った。

 

 

 凄まじい風が吹き荒れたかと思えば、二人を大きな影が覆い尽くす。

 

 

「ゲイズチェイサ……!?」

 

 

 その砂浜の上空。

 そこにあったのは巨大な人型。緋色の装甲に包まれ、腰部から伸びるスラスターから、かの日本に伝わる化物――九尾を彷彿とさせた。

 

 

 ゲイズチェイサが着陸し、二人が生身の人間であるにも関わらずビームライフルの銃口を突きつけた。

 

 

 コックピットハッチが開くと、中から一人の青年が出てくる。

 

 青年とは言ったが、その風格は壮年の男を思わせ、身に纏っている衣服は貴族のそれかのような華美なものだった。

 

 

「アルバ様。お迎えにあがりました」

 

 

 その青年の風貌に、レイはまったく心当たりがなかったが、どうやらアルバの方は違うようであった。

 だが、どこかあやふやな、消えかかった記憶の中にある人物像らしく、アルバは激しく困惑していた。

 

 

「アークの残党か。こいつで何をしようって言うんだ」

「地球人にしては勘が良いらしい。アルバ様をここまで保護した恩はある。手荒な真似はしたくない」

 

 

 地球の人間を蔑むような口ぶりから、レイは真っ先に彼が宇宙の人間――それも、アーク連邦の思想に塗れた者だと即座に判断した。

 

 

(なぜここが分かった……!?)

 

 

 ここは事実上連盟軍の土地のはず。今や国とすら認められない奴らが、安易に手に入れられる情報ではないだろうに。

 アルバを安々手渡しては、リアムに合わせる顔がなくなる。

 

 アルバ・ヴァルーツ。彼女は恐らく、アーク連邦にとっては神のような存在であるはずだ。ヴァルーツの血が絶えた現代においては特に。

 

 

「アルバ様。貴女にはまだお役目がある。私と共に」

「……っ」

 

 

 彼が誰なのかまだ見当はつかないらしいが、彼の目的には気づいているようだった。

 

 

「レイさん……もう、いいです」

「アルバ……!!」

 

 

 一歩前に出るアルバを、レイは必死に制そうとするが、緋色のゲイズチェイサが動くのを見て、その手を引っ込めた。

 

 奴らは絶対にアルバは殺さない。レイは、それだけは確信できた。

 ここで下手に動き、自分諸共死ぬほうが、リアムにとっては酷い呪いとなり得る。

 

 

 そんな事を考えているうちに、アルバはゲイズチェイサの目前にまで歩み寄っていた。

 

 青年は華麗な身の熟しで地上に降りてきて、彼女をまるで姫のような扱いで抱きかかえたまま、コックピットに乗り込んだ。

 

 

 力強く拳を握りしめるレイは、飛び去っていくゲイズチェイサを、ただ睨むことしかできなかった。

 

 潜伏先がバレた理由。奴の正体。そもそも、彼女をさらった目的。

 あまりに沢山の情報が一気に襲い来たために、レイは歯噛みした。

 

 

「リアム……すまない」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「わぁ〜っ!! 貴女がヴァルーツ様でありますか〜っ!?」

 

 

 緋色のゲイズチェイサ――”ノーヴェ”に乗り込んだアルバは、青年の傍らで肩を竦めることしかできなかった。

 

 

「マーチ。あまり無礼のないように」

「ファウスト様、どこに行けばよろしいですか?」

「手筈通りで頼む」

「了解です!」

 

 

 マーチ、と呼ばれたまだ幼気のある少女は慣れた手つきでゲイズチェイサを操縦する。

 

 

(ファウスト……?)

 

 

 青年の傍らで震えていたアルバは、俯瞰から彼の顔をじっと観察した。

 

 冷淡さを思わせる端正な顔立ちながら、どこか勇ましさまで感じさせる不思議な面立ち。胸に宿った懐古感を頼りに記憶を掘り返すと、アルバははっ、とひらめいた。

 

 

()()()……くん?」

 

 

 その名を呼ぶと、彼は目を丸くした後に、すぐに柔和に細めた。

 

 

「覚えていてくださり、光栄です」

 

 

 笑った顔を見て彼女は確信できた。

 本当に小さい頃、よく一緒に遊んだことのある少年の顔が、その端正な顔立ちに重なった。

 

 ゲーテ・ヴァン・トリオン。

 もとよりアーク連邦には様々な派閥があった。トリオン家もその一つであったが、進出してきたヴァルーツを支持し、その派閥に溶け込んだのだ。

 

 

 懐かしさと嬉しさで、少し胸が熱くなる。

 もう、戦争の最中でとっくに死んでしまったと思っていたからだ。

 

 

「格好良くなったね。分からなかった」

「アルバ様も、大変お綺麗な女性になられた。お母様そっくりです」

 

 

 そう言って、彼は艷やかな彼女の髪に口づけをする。

 操縦席のマーチが、「ひゅー」と声を上げたような気がした。

 

 

「でも……私はもう、トリオン家の男でも、貴女の知るゲーテでもありません」

 

 

 アルバの口から枯れた声が漏れる。影のかかった彼の顔が、酷く恐ろしく思えたからだ。

 

 

「戦争に入ってから、私は〈アルカナ〉として才覚を見込まれ、貴女のお兄様の研究機関で過ごしていました。その時に、私はトリオン家の名を捨て『ファウスト・シューベル』へと生まれ変わりました」

 

 

 彼の目に、もうあの時のような優しい輝きはなかった。

 戦争によって狂ってしまった目と、気持ち悪ささえ覚えるような、誰かに対する殺意のみが彼には残っていた。

 

 

「私をどうするつもり……」

「言ったはずです。貴女にはお役目がある」

 

 

 途端に冷ややかになった彼の声音に、アルバは背筋を凍りつかせる。

 

 

 

宇宙(そら)に縛り付けられた我々アークの民を導く存在に、貴女はなっていただかなくてはなりません」

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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