ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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二十七話 ワンマンアーミー、たった一人の軍隊

 

 

《ねーアリアー。宇宙に上がるまでどのくらーい?》

「そうねぇ。あともうちょっと時間がかかるかしら」

 

 

 鬱蒼とした木々が生い茂る森林地帯。その自然の恵みにあやかって、ファウストら《モードレッド》は宇宙に上がる手筈を整えていた。

 

 三機のレギオンは最後に積む。最後まで敵に襲われない保証はないから、最初に積んでしまったらシャトルと一緒に落とされかねない。すぐに防衛にかかれるよう、三人の〈スピーラー〉はコックピット内で待機中だ。

 

 地上部隊のネオアーク・ヴォーテクスから放つスペースシャトルを、宇宙部隊に全て引き取ってもらうという手筈だ。

 

 地上部隊は然程数が多くない。まだ《プライムテラーズ》に属していた頃、先の”ティターン”戦に駆り出された兵士は、その半数にあたる数。宇宙のほうが影を潜めやすい。ゲイズチェイサやその他兵器を蓄えるのも、無論そちらのほうが最適だった。

 

 

 ”バハムート”、”ノーヴェ”、”マサムネ”も当然宇宙に上げる。このレギオンを地球側から引き離せたのが唯一の救いだ。やつらが作ったものとはいえ、レギオンの力は並のゲイズチェイサでは太刀打ちできないものだからだ。

 

 

「”マサムネ”にも武装がもう少し増えるそうよ。よかったわね、イガク」

《刀一本じゃあんまりだからな》

 

 

 レギオンの力はその豊富な武装のみならず、武装の相互量子通信による連携稼働が最大の魅力だ。

 ”マサムネ”は試験運転用の意味合いがあったが、もうここまで来たら出し惜しみはできない。大太刀の出力向上、そして更に大太刀を活かすことのできる中遠距離対応の射撃兵装も用意される。

 

 

「ん……?」

 

 

 突然、彼らの機体の目の前に一機の”ヴァグ”が降りてきた。”ヴァグ”のような機体は早急に積み込まなければならないはずだが。

 

 

《悪いなお三方。そちらのご主人サマから頼み事をされてな。今、機体に本当に味方が乗ってるか確かめてるんだ》

「ファウスト様が……?」

《サブモニターじゃ信用できねぇんですかい?》

《勘弁してくれ。言われた事も出来ない戦争だけのバカだと烙印押されちまうよ》

 

 

 アリアはため息混じりに答える。

 

 

「コックピットを開きます。ご確認を」

《すまねぇな》

 

 

 ハッチを開くと、向こうの”ヴァグ”から見慣れないパイロットがコックピットから姿を現す。

 確かにパイロットスーツは《モードレッド》の一員だが、女のように長い焦げ茶色の髪に、アリアはどうも見覚えがなかった。

 

 

 伸ばした”ヴァグ”の手のひらの上に乗り、不敵な笑みを浮かべる。

 

 ”マサムネ”と”ノーヴェ”もハッチが開かれ、二人が姿を現す。

 

 

「どうです!? 俺ら味方でしょう!?」

「あぁ、そうだな。まぁこんな状況だから大目に見てくれや」

「ファウスト様も酷いなぁ。アルバ様にメロメロで、アタシ達のことなんか気にしてくれないや」

 

 

 イガクとマーチは何の疑いもなく話しかけていたが、アリアだけは、その男を訝しげな目で見つめていた。

 

 

「その機体のパイロット、どうしたの」

「その機体の――あぁ、こいつの持ち主ってことか」

 

 

 その男に異変が起こる。

 気さくな男だと思われていた奴の表情は、瞬く間に、悪魔のような微笑みへと姿を変えた。

 

 

 

「奴さん死んだよ」

 

 

 

 炸裂。

 

 鉛玉の発射を意味するその音が聞こえた次の瞬間には、警戒して立ち上がったマーチの胸に穴が空いていた。

 

 

「ぐ……ぇっ……」

「俺が殺した。こんな風にな」

 

 

 疑似血液を散らしながら倒れたマーチを見て、アリアは叫ぶ。

 

 

「機体に乗れっ!!」

 

 

 イガクはそう言う前にコックピットに乗り込んでいた。

 

 拳銃を引き抜き、構えた。

 その頃には男の姿はなく、”ノーヴェ”のコックピットに飛び移っていた。

 

 

(何だ……あの身体能力)

「来な嬢ちゃん――いいや、カワイイお人形ちゃんよぉ」

 

 

 アリアはすぐさま拳銃を放つ。マーチを殺してもいい――だが誤射を恐れず撃っても、その男に当たることは叶わなかった。

 

 

「クソがっ……!!」

 

 

 男はマーチを連れ、”ノーヴェ”に乗り込んだ。あえて殺さず、半殺しにしたのは、バイオメトリクス認証を突破するためか。

 

 

 早急に”バハムート”に乗り込む判断をしたアリア。真っ先に起動し、”マサムネ”と共に空へ舞い上がった。

 

 

「ファウスト様、敵襲です!! 味方の中に潜り込まれて――」

 

 

 鳴り響くアラート。

 刹那、モニターを覆い尽くすは味方であったはずの”ノーヴェ”が、殺意を剥き出しにしながら斬りかかってくる光景であった。

 

 

「クソッ……手練れか!」

《慣れねぇとちと扱いづらいが、武装さえ分かればあとは何とかなるってなぁっ!!》

 

 

 二本のセイヴァーを引き抜いた”ノーヴェ”。

 凄まじい猛攻で”バハムート”を切り裂かんと刃を振るった。

 

 モニターを眩く突き刺す赫耀の煌めきが網膜を破らんと、火花のように散っていく。

 

 大型セイヴァーで受け止めるにも、後に限界が来ることは分かりきっていた。

 

 

「テメェっ……!! あのクソ野郎の差し金かっ!?」

《お前らはそもそも信用されてなかったんだとよ!!》

「ふざけんなっ!」

《同情するぜ、可哀想になぁっ!!》

 

 

 アリアは激情を募らせる。

 

 

「地球人風情がぁぁっ!!」

 

 

 大型ビーム砲による射撃も、”ノーヴェ”は軽々回避した。

 マーチの繰るそれとは、操縦の練度が桁違いだった。

 

 

《もうちっと遊ばせてくれよォッ!!》

 

 

 ”ノーヴェ”は一時距離を置き、両腕を広げた。

 

 

《翔べよォッ!! スティングゥッ!!》

 

 

 増幅スラスターに設けられたスティングが、一気に解放され、視界の外へ消えた。

 ビーム攻撃に備える矢先、”ノーヴェ”は先ほど以上のスピードで斬りかかる。

 

 

《レギオン、こいつぁとんでもねぇ兵器だ! 戦争のし甲斐がある!》

 

 

 ”ノーヴェ”の最大の機体特性――スティング放出後の機動力の向上、それを一瞬のうちに理解し使いこなすだけの技量。

 

 九つのスラスターから蒼炎を噴き出し、さながらその軌道が九尾を思わせるようだ。

 

 

 本当に地球人なのか?

 

 

 

 ”ノーヴェ”のキックにより、防戦一方だった”バハムート”はついに体勢を崩す。

 コンマ一秒も刻まれぬうちに、スティングによって味方機をレーザーで串刺しにし、爆炎と黒煙を辺り一帯にばら撒いた。

 

 

《生かしておいてやるよ!! 戦場が楽しくなりそうだからなァ!!》

 

 

 その言葉を機に通信はノイズに包まれ、”ノーヴェ”の反応は消え失せた。

 

 

「クソ野郎が……」

 

 

 アリアはヘルメットを脱ぎ捨て、苦汁を表情を浮かべる。

 

 

 

 

 ”ノーヴェ”の操縦にはイマイチ慣れない。

 バイオマスターシステムは従来通りだが、やはり大層な名前があるだけあってOSが独特だ。とはいえ武装と連携コマンドだけである程度の扱い方はわかる。

 独立稼働するドローン、スティングが主力のように見えてこの機体の真髄はスティング射出後の増幅スラスター。忽然と変化する機動力で翻弄しながら、ついでにスティングを差し込む、パワーとトリッキーさ両方を兼ね備えた機体と見えた。

 

 

「キレイなもんだなぁクレナイ粒子ってのは。そうだろ? お嬢ちゃん」

 

 

 背部に見える赤い粒子の煌めきを見ながら、用済みの人形に語りかける。

 

 胸を射抜かれ数分経っても死んでいないのは、流石は戦いのために造られた人形とでも言うべきか。

 掠れた呼吸をしながら、虚ろな目でコックピットの一点を見つめていた。

 

 ツインテールは子供っぽいが、身体つきはなかなか悪くない。顔立ちも造り物さながらの精巧さがある。

 

 

「もういらねぇと思ったが――こいつは案外ステキな戦利品かもしれねぇな」

 

 

 

 ◇

 

 

 

宇宙(そら)に、行くんですか」

 

 

 格納庫で待機していたウィザードに、リアムは肩を竦めながら尋ねる。

 

 

「そうだが」

「……少し怖いです」

 

 

 リアムは正直な気持ちを吐露する。

 それに少し驚いた表情をしながらも、ウィザードは彼を諭した。

 

 

「何故私に。()()()()()()()()()ミハイル大尉のほうが良いのではないか」

「僕とあの人の関係。どこまで知っているのですか」

 

 

 それは勿論全部だ。あんなことからこんなことまで、彼にはお見通し。

 だがそれを正直に言うわけにもいかず、茶化すしかなかった。

 

 

「因縁があるのだろう。見ていれば分かる」

「……ミラさんには、分かって貰えません。あの人は、何でもかんでも割り切れる人だ」

 

 

 リアムにはそう見えているようだ。

 彼女の内なる自分の秘匿は、ずいぶん上手であるらしい。無論、彼がただの()()だからかもしれないが。

 

 アルバ・クローンという、耐え難い存在に翻弄された二人。リアムはそれすらも助けようとし、道具のように扱われ、殺されるしかない末路を見て、その精神をすり減らした。

 ミラも妹と瓜二つな存在を道具として扱うしかなく、その時になれば殺めるしかなかったために、人としての感覚が薄れていった。

 

 

 ――どこが割り切れているというのだろう。

 

 

 まだ、リアムとミラは分かりあえていない。〈アルカナ〉は対話のための存在だというのに。

 

 

「少年」

「二十二ですけど」

「少年よ。分かり合うためにはカラダで付き合うのが一番だ。私と実践してみ――」

「死んでも嫌です」

 

 

 否定されても尚彼は歩み寄り、その細々した顎を指で持ち上げた。

 

 

「私は君という存在に心奪われた男だ。ゆえに、私は君を追い求める。果てしないほどに」

 

 

 恐怖で一歩も動けなくなった彼の唇を親指でなぞる。

 造形だけはいい顔が一ミリ手前に動いた瞬間、リアムは飛び跳ねながら後退した。

 

 

「っ……まだ私を拒むか」

「浮気になるんだぁっ!! キスはぁっ!!」

 

 

 柄にもなく声を荒げた。

 カメラでも持ってくれば、ミラへの良い土産になるのだが。

 

 

 そうだ。この出来事そのものを彼女に話してみよう。きっと後々面白いことが見られるに違いない。

 

 

《本艦はこれより、マスドライバーにより宇宙へ上がる。搭乗員は安全に留意して待機せよ》

 

 

 艦内にアラートが流れる。

 マスドライバーを侮ってはいけない。いくら艦内とは言え、人では到底出せぬ速度が出るのだ。

 

 

「リアム・ソナタ、私に掴まれ」

「ぜッッたい嫌です。部屋に戻りますから」

「いいや、君は長らく戦艦にも乗っていないのだろう。私が支えになってやる」

「うわぁぁっ!! 触るな気持ち悪いっ!!」

 

 

 腰に手を添えると、掴まれたカブトムシのようにジタバタし、リアムは全力で拒絶した。

 

 彼はきっと、こうして誰かを否定するときのほうが気が楽だろう。

 その優しさあまり、敵にすら情けをかけ、敵の死をも気に病むのだから。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 無事に、”ハンドレッド”は宇宙へと飛び立つことに成功した。

 

 久々の無重力は、身体に馴染まない。

 ミハイルはそんな事を思ってしまう自分に対し、少し憎たらしい情を抱いてしまうのだった。

 

 居住スペースが重力区画で助かった、とミハイルは度々思う。船が船なら、シャワーを浴びるのすら一苦労なところもあるくらいだから。

 

 

 自分の故郷は宇宙のはずなのに、地球にいた時間が長すぎて、そうとは思えなくなってきている。

 

 ――自分はこれで良いのだろうか。

 ミラ・ヴァルーツという、呪われた出自を隠して、かつての同胞たちの血で手を染めるような戦いに身を委ね、本当に正解なのだろうか。

 

 

 シャワーから流れゆく湯が、滝のように床へ落ちる。身体に溜まった老廃物が流れていくこの瞬間だけが、自分を縛り付ける何かから解放してくれる。

 

 白く、艷やかな肌には幾つも細々した傷が残っていた。ゲイズチェイサ戦では負け知らずだった彼女。無論、この傷は戦争によるものではない。

 

 彼女の兄 グラン・ヴァルーツから受けた粛清の数々だ。気に入らないことをすればすぐに殴られ、最悪の場合には刃が肌を破り抜いた。

 

 自分は兄の傀儡になるしかなかった。

 妹を守るため、自分が囮になるしかなかった。

 

 

 突然、部屋のインターホンが鳴った。

 

 

「少し待ってくれる? シャワー中なの」

《承知した》

「げ……」

 

 

 気取ったような声音を聞き、ミハイルは顔をしかめる。

 あの男の前に薄着で出るのは死ぬほど嫌だったが、重要なことかもしれないし、羞恥に耐えるしかあるまい。

 

 

 身体を軽く拭き、部屋着用のキャミソールとショートパンツを着てからドアを開ける。思えば、軍人らしからぬ格好だった。

 

 予想通り、そこには仮面をつけた顔しか良くない男が立っていた。

 

 

「急かしたつもりはないが」

「……そう」

 

 

 羞恥よりも屈辱が勝ったミハイルは、殺意を込めた眼を彼に向けたが、無効化されたようだった。

 

 

「部屋に入れてくれないか。大切な話がある」

「何かしたら潰すから」

 

 

 下手に拒否して、狂言を見せられても困るため安々と受け入れた。

 タオルで髪を拭きながら、ドライヤーを使って乾かしていく。

 

 

「客人がいるのだが」

「女性のシャワー中に来る客人をもてなすつもりはない」

「手厳しいな」

 

 

 壁に寄りかかりながらウィザードは静かに目を閉じる。こういう時に限って紳士的なのが、余計に腹が立つ。

 

 髪を乾かし終わり、彼に尋ねた。

 

 

「要件は」

「……君の様子が気になってな」

 

 

 まだ湿気を帯びる髪をブラッシングしつつ、ウィザードに視線を向けた。

 

 自分と同じ年齢で、気兼ねなく話せると思っていたが、もはや人間を相手にしているかすら分からなくなっていたのに――ここにきて、彼に心配されるなど、笑える話だ。

 

 

「君には、私がどんなふうに見えてるの」

「触れれば壊れてしまいそうなガラス玉。リアム・ソナタと何ら変わりない」

「あの子と一緒にしないでくれる」

 

 

 興味無さげを装いながら、内心彼女は動揺する。

 

 この男は、一体何者なのだろう。

 素性とか云々の話ではなく、なぜ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()をとるのだろう。

 

 

「それで。私を慰めてくれるの」

「……そんな状態で戦えるのか、と尋ねたいだけだ」

「戦うしかないでしょう」

 

 

 髪をときつつ、毛束の隙間から視線を彼に突き刺す。

 上から、腹の立つ口ぶりだ。何があったか知りもしないくせに。

 

 彼の言う通りだ。

 多分、今の自分が戦場に出てもろくに戦えない。

 

 自分が救えなかった妹そっくりの人形たち、そして、()()()()()もいる戦場で、迷わない筈がない。

 

 

「アルバ・クローン……そして、君を縛り付ける物はあと一つや二つある。そうだろう」

 

 

 彼女の髪が荒れ狂い、ブラシが床に転がり落ちた。

 

 ウィザードは壁に叩きつけられ、その胸ぐらは、彼女の華奢な手によってしわが生まれるほど掴まれていた。

 

 

「お前に何が分かる……!! 何も知らないお前が……!! 知ったような口を聞くな……!!」

 

 

 その勢いのまま、ミハイルの拳が彼の頬を穿つ。

 彼女のベッドが血の飛沫で彩られたが、ミハイルは目もくれなかった。

 

 

「殴って気が晴れるなら幾らでもやるといい」

 

 

 鮮血を滴らせながら、彼女を横目に見つめた。その瞳から汚れも悪意も見受けられない。一途な気持ちしか汲み取れない瞳を見て、ミハイルは肩の力が抜ける。

 

 泣きたいが、涙が出てこない。

 もう人としての感情も、戦争に呑まれるうちに無くなってしまったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「……恋人――とは言い難い。あの子は、ゲーテは、私にとってただのはけ口のような物に過ぎなかった」

 

 

 ベッドに座り、ミラはホットミルクの入ったマグカップを持ちながら、淡々と話をする。

 

 無論、ウィザードには全てお見通しのことだ。

 

 セカンドシーズンの始まる前。

 アーク連邦崩壊後、彼女は一時的にその残存勢力と活動を続けていたという設定がある。

 その最中再会したのが、ヴァルーツ家と関係の深かったトリオン家のゲーテ――”レギオンMk-II”でこちらを襲撃してきた、ファウストだ。

 

 

「あの子は、きっと私の事を本気で好きになっていたと思う……でも私の意志と彼の意志は違った。それから地球に逃げるように降りてきて、《ラウンズ》に入って、忘れようとしたの」

 

 

 ファウストがアーク崩壊後も、依然として宇宙人類至上主義を貫こうとしたのに対して、その頃のミラは、それが本当に正しいことなのかどうか疑問を抱きつつあった。

 

 そんな二人が仲良しこよしでいられるはずもなく対立し、修復不能の溝ができた。

 

 

「あの時、私は確かに感じた。彼の気配を……私とリアムが惹かれ合うように、彼と私もまた」

 

 

 マグカップを置き、ミハイルは息を吐露する。

 

 

 彼女には依然として迷いがある。

 

 迷いを振り切らない限り、彼女に明るい未来はやってこない。迷いに縛られ、万全に戦うことができず、何かを失ってからようやくその力を解放する。

 

 それがアニメ本編の彼女だ。よくも悪くも、人間臭い。

 

 

「君は討てるか。彼を」

 

 

 ウィザードが聞くと、ミハイルは淡いピンクの唇に歯型をつける。

 

 

「……討つしかない」

 

 

 苦渋の末に漏らされた回答は、いかにも彼女らしいものだ。一端の軍人でありながら、一端の人間でもある事が分かる一言だった。

 

 

「この迷いを振り切る事ができるかどうかわからない……だから、あなたには――」

 

 

 赤い双眸に収まる彼の影。

 ミハイルはそれをしっかり捉えながら口を開いた。

 

 

「私の同僚で居てほしい。今の私には多分、恋人も部下もいらない」

 

 

 その正直な気持ちに、ウィザードは真正面から答えた。

 

 

「私からも頼もう。頼もしき同志よ」

 

 

 ウィザードは立ち上がり部屋を出ようとする最中、振り向きざまに言った。

 

 

「大尉。君は、絶対に迷ってはいけない。たとえ、振り切るものがどれほど大きかろうと。絶対にだ」

「……?」

 

 

 意味ありげながら、皆目見当もつかない言葉にミハイルは首を傾げることしかできなかった。

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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