ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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二十八話 興が乗らん

 

 

《二時の方角に高熱源反応!! ゲイズチェイサです!!》

《総員、戦闘準備! ハッチ開放。ゲイズチェイサ部隊発進後、艦砲射撃に移る!》

 

 

 コックピットで待機していたウィザードは、慣れない操縦系統を確認しながら、メインモニターを見据えた。

 

 

《ウィザード大尉、機体の調子はどうですか?》

「動かしていないから何とも言えないが。君考案の機体なら、何の心配もいらない」

 

 

 アスカからの通信に朗らかに答え、背中のプラグを電気信号増幅コネクタにつなぐ。

 試験運用も無しに動かすのは、はっきり言って危険とも言えるが、ウィザードのアスカに対する信頼は凄まじい。以前の”ヴァリアンス”といい、彼女のセンスは卓越している。

 

 

《進路クリア。”アマクサ”、発進どうぞ!!》

 

 

 三つのランプが点灯し種を横目に、ウィザードは声を張り上げた。

 

 

「ミスター・ウィザード、”アマクサ”発進する!!」

 

 

 カタパルトにより射出された黒きゲイズチェイサは、バレルロールと共に物凄いスピードに達しながら宙域を突き進んでいった。

 

 

「素晴らしい出力だ。操作性も申し分ない」

 

 

 だが問題は、武装だ。

 遠近複合兵装 ”クロワノトキサダ”。十字架を彷彿とさせる、ブレードともライフルともとれるその兵装は様々な武器が一緒くたになったものだという。

 

 その中に、”ノーヴェ”の使用していたスティングも含まれている。

 

 正直、扱えるかどうか怪しい。”ノーヴェ”も、レギオンの特殊なOSのおかげで使えているようなものであろう。

 

 

《ミハイル・バジーナ、”サウザンド”出る!》

《アスカ・カナタ、”アストラル”行きます!》

《アズチ・グレード、”グラドスケルト”発進する!》

 

 

 次々とパイロットが”ハンドレッド”から発っていく。この光景こそ、ロボットアニメの醍醐味と言える。しかしながら、見ている分にはワクワクするものの、実際に体験してみると、緊迫感が尋常ではない。

 

 

「ミハイル大尉、新武装はどうか?」

《ゲイズチェイサに当てるのは至難の業だ。敵艦を見つけ次第撃ってはみるけど、敵に悟られないようにしてほしい》

「承知した。全機心得ておいてくれ」

 

 並走する”サウザンド”の背には、見慣れない武器がマウントされている。

 機体の二倍以上の砲身を持つ大型ビーム砲――”メガ・クレナイカノン”。極めて高い威力を誇る通称《破隻砲》とも呼ばれる。これから敵の本拠地を叩くことになる場合、有利に立ち回ることができる。

 

「敵機接近!! 総数、十五!! 全機、フルブラスト!!」

《フルブラストって何……?》

 

 

 ”アマクサ”の抜刀に応じて、全機戦闘態勢に入った。

 総数はこちらが上回ってはいる。

 だが、敵機がこれだけで終わるとは思えない。

 

 

 敵の機体は”ペインレント”。それが示すのは、相手は同じ地球人であるということだ。

 

 

 ”クロワノトキサダ”のセイヴァーを展開し、向かってきた”ペインレント”の凶刃を防ぐ。

 眩い紅の輝きに目を狂わされながら、一時的に距離をとった。

 

 

「必殺!! ウィザード・スティング!!」

 

 

 弧を描いた”クロワノトキサダ”から放たれたのは、三基のドローン兵器。

 三門のビーム砲を装備したそれは、量子通信によりまるで独立稼働するように宙を疾走する。

 

 鮮やかな光線の包囲網を形成し、ビームで”ペインレント”を串刺しにした。

 

 本体に戻ったスティングの威力に、ウィザードは震える。

 

 

「これほどの物とは。だが、使い過ぎは厳禁だな」

 

 

 こればかりに頼っていると、簡単に戦術を読まれ対策されてしまう。スティングは容易に対策できるものではないとはいえ、これも例外ではあるまい。

 

 ”クロワノトキサダ”に内蔵されたビームライフルを照射し、弾幕を張りながら、戦線から少し後退する。

 

 敵の総数が思った以上に多い。初めは十五だけだったが、次々と出撃してきているようだ。

 

 

 飛行形態の”アストラル”が乱入し、変形と同時に腕部セイヴァーで二機を同時に斬り裂く。

 再び飛行形態へ変形。ビームマシンガンの高速照射で敵を翻弄しながら、前線を掻き乱していった。

 

 

 アズチ率いる”グラドスケルト”部隊は、不慣れな機体ながらも善戦しているようだ。

 チェインテイルを使いこなし、連携しながら敵機を着実に落としていく。

 

 

「ミハイル大尉、敵艦が見え次第発射態勢に入ってくれ」

《発射にはラグがある。あまり期待しすぎないでね》

 

 

 サブモニターに映るミハイルは歯噛みする。

 迷いを持ったまま宇宙に出た彼女に、この戦場で戦えるのか。

 

 敵機のどこに、()()()()()()()()()()が乗っているのか知れない。

 

 この宇宙のどこから、自分を恨む、自分が傷つけてしまった者が殺しに来るのか知れない。

 

 だがその迷いを振り切らぬ限り、彼女に良い未来はない。

 

 迷いに迷い、決意した頃には、状況はとっくに最悪な状態になっているのだから。

 

 

 

 ミハイル・バジーナ、もといミラ・ヴァルーツは戦いの末精神を崩壊したアスカを見て、地球の人類――否、この世界全てに巣食う人類を恨むことになる。

 

 そうして彼女はミラ・ヴァルーツとして再び現れ、地球外生命体を率い、全人類に対してどちらかが滅びる絶滅戦争を仕掛ける。

 

 それが劇場版の『アルバ・チルドレン』のシナリオだ。

 

 

(……だが、そう簡単に振り切れるものではない)

 

 

 

 

 レバーを握る手に、いつも以上に力が入っている。

 逆にペダルを踏む足には、普段に比べ力が入っておらず、うまく踏めない時が多々ある。

 

 

(こんなことでは、駄目だ……!!)

 

 

 自分は今日ここで死ぬのではないかという錯覚さえ起こす。

 事実、こんなにも覚束ない操縦で戦っていけるほど、歴戦の猛者が蔓延るこの戦場は甘くはない。

 

 

 モニターを埋め尽くす”ペインレント”のバイザーを見据え、ミハイルは二手遅れて攻撃を繰り出す。

 

 されど、攻撃は敵のほうが断然早く、コックピット目掛けて蹴りを入れられた。

 

 

 アラートを響かせ、コックピットは彼女の心情を投影するかの如く激しく揺れる。

 

 

「このっ……!!」

 

 

 ビームブーメランで応戦するが簡単に避けられ、その後がむしゃらにビームライフルを乱射したが、敵を退けるのが精一杯だった。

 

 

《大尉!!》

 

 

 アズチの繰る”グラドスケルト”が援護に駆けつけ、チェインテイルによる牽制の後、ビームサブマシンガンで蜂の巣にした。

 

 爆散し、クレナイ粒子を撒き散らす敵機を瞳に収め、奥歯に力を入れ込む。

 

 

《大尉は無茶をなさらず。敵艦はまだ見えません》

「……ありがとう」

 

 

 自身の責務すら果たせないようでは、それこそ面目が立たなくなる。

 

 

 

 

「リアム少尉、機体は万全ですか」

 

 

 格納庫に聳え立つは、”ヴァリアンス”とも”グラドスケルト”とも違う機体。

 

 空を写したかのような蒼い装甲と腹部と腰部にそれぞれ赤と黄色の装甲があしらわれている。(ワイバーン)の翼膜を思わせる背部のウィングユニットに、三本の角かのような頭部。

 

 

 ”ウロボロス”。地球軍が彼のデータを基に作ろうとしていた量産機。”ヴァリアンス”の開発により量産計画は破棄された。その最中生産された試験用が彼のもとに届いたのだ。

 

 

「慣らし運転はしました。あとは――」

 

 

 操縦桿を握り、リアムはぽつりと呟く。

 

 

「今の僕に、人を殺せるかどうかです」

 

 

 震える手を抑え、リアムは”ウロボロス”をカタパルトデッキに乗せた。

 味方はもう戦闘に突入している。躊躇すれば、間違いなく死ぬ。

 

 

 リアムは大きく息を吸い、人生最後の一声だという気持ちで呟いた。

 

 

「リアム・ソナタ。”ウロボロス”、行きます」

 

 

 カタパルトに乗り、放たれる”ウロボロス”。

 ウィングユニットを展開し、推力を向上。凄まじいスピードで宙域を貫くように突き進んでいき、戦闘区域へ向かうのだった。

 

 

 

 戦闘は激化の一途を辿っていた。

 テロリストが保有する機体とは思えぬほど、”ウィルペイン”は強力な機体であった。

 

 連盟の最新鋭機”グラドスケルト”と張り合っているのは、その機体性能だけが理由ではない。

 

 まずは先の大戦を生き残った歴戦のパイロット揃いであるという点もあるが、その数は決して多いとは言えない。

 

 

 《プライムテラーズ》は、かつてアーク連邦が保有していたアルバ・クローンの()()()()を有している。

 クローンの細胞一つで一個体を作るという凶気の産物を、アーク連邦の行いを忌避していた地球人である奴らが保持しているのだ。

 

 

(彼女(ミラ)には言わないほうが良い。こればかりは、知らぬが仏というものだ)

 

 

 ”アストラル”が二機の”ウィルペイン”に押されている最中、猛スピードで通過していく機体があった。

 蒼き龍を思わせる機体”ウロボロス”。セカンドシーズンにおけるリアムの乗機、と彼は認識していた。

 

 

《リアムさん……!?》

《アスカちゃん、後ろにも目をつけるんだ》

 

 

 無理難題を押し付けながら、リアムは”ウロボロス”を駆り、新しい機体にも関わらず難なく敵を撃墜していく。

 

 七年間戦場に出ていないとは思えない活躍っぷりだ。流石は〈アルカナ〉といったところだろうか。

 

 

「ソナタ少尉、カナタ少尉。ここは任せたぞ」

《はいっ!!》

 

 

 そう言い残し、別の戦闘への援護に向かおうとした時だった。

 

 

 ――頭に電流、どころか稲妻が走ったような嫌悪感を伴う衝撃が襲いかかった。

 

 

「なんだ……!?」

 

 

 戸惑う間もなく、けたたましい警告音がコックピットに響き渡る。

 

 熱源反応の方向へセイヴァーを構えながら振り返れば、一機のゲイズチェイサが激しい奇襲を仕掛けてくる。

 一手遅れていれば、確実に痛手をもらっていた。

 

 

「なっ……”ノーヴェ”……!?」

 

 

 赤き眼を尖らせる緋色のゲイズチェイサ。それは間違いなく、幾度も刃を交えてきた”ノーヴェ”だった。

 

 拮抗するも、なかなか振り切れず、眩い閃光に網膜がやられかける。

 

 これまでの奴と圧倒的に違うのは()()()()という点。

 

 地球軍とは縁を切った奴らが乱入してくるにしても、”マサムネ”、”バハムート”も共に出撃するはずだが。

 

 

「なんだ……この妙な感覚は……っ!!」

 

 

 吐き気を催すような嫌悪感もありながら、だが同時に共感に近い感覚をも覚える摩訶不思議な感情が、ウィザードの中で渦巻いていた。

 

 

《てめぇナニモンだ!? まさか、噂に聞く〈アルカナ〉ってやつかぁっ!?》

 

 

 敵機の通信から聞こえてきたのは、従来の”ノーヴェ”のパイロットとは思えない野性味あふれる声だ。

 

 

「何……!? 貴様こそ――」

 

 

 対となるセイヴァーを構えた”ノーヴェ”を、ようやく振り切ったとき、ウィザードは言葉を詰まらせた。

 

 この共感にも近い感覚。

 自分が〈アルカナ〉か、とも疑ったが、そうではない。だが、あの機体に乗り込む者には明らかに()()のようなシンパシーを感じた。

 

 

 ――いるわ。もう一人、本来あるべき流れから淘汰された者が。

 

 

(私と同じ、”転生者”なのか……!?)

 

 

 驚愕と納得が入り混じり、頬が痺れる。

 ――否、それだけが理由ではない。この拒絶反応にも似た身体の暴走は。

 

 今、彼は目の前の機体をズタズタに引き裂きたい気持ちで一杯だった。

 まるで、冷酷な()()()()()()()()()()()()()()を思い出したかのように。

 

 

《切り裂いてやろうか、細切れにしてやろうか!? ハハッ!! ()()()()()()()()()()()()()()()()!!》

 

 

 ノイズ混じりの声を聞き、ウィザードは確信した。

 

 

 吐き気を催す邪悪を体現するような言葉。

 

 

 彼が死ぬ前――つまりは前世にて、警察官として自分が追っていた()()()()()()()()()()()と一致した。

 

 

有明(ありあけ)真純(ますみ)……!!」

《……こいつぁ驚いたな。その名前を知ってる奴がいるとは》

 

 

 ”ノーヴェ”は一度攻撃の手を止めた。

 苛烈なる戦場で、その二機はほぼ棒立ちの状態で向き合った。

 

 ウィザードの中に、火が灯る。

 

 忘れもしない。

 有明真純は、これまで生きてきた中で最低最悪の人間――いや、最低最悪の生物だ。

 

 日本全国を渡り歩き、ある時は整形で、ある時は人を操り、あらゆる手を使って逃亡しながら、合計で()()()()()を手に掛けたうえに、各地で強盗や強姦、放火、あらゆる犯罪に手を染めた。

 

 

 日本中が恐怖していた。

 だが、奴を信仰する者たちの妨害により捜査は難航。

 

 ウィザードは――合旗勇気は、全力でこの男を逮捕しようと奮闘し、やっとの思いで逮捕までこぎつけた。

 

 

 しかし、逮捕して奴の死刑が執行されると決まった数日後。

 真純の悪手に掛けられた女性に刺殺され、合旗勇気としての人生に幕を下ろした。

 

 

 未練はないはずだった。

 日本を恐怖に陥れた極悪犯を逮捕できて、一つの国を救ったヒーローになったつもりで死に絶えたのだから。

 

 

 

 気がつけば、激情に駆られるがままゲイズチェイサを動かしていた。

 背面まで視野の広がるコックピットにも関わらず、彼の視界に映るのは緋色の機体ただ一つのみ。

 

 

《そう来なくっちゃなァッ!!》

 

 

 鍔迫り合う光刃が煉獄の粉塵を撒き散らす。

 互いの刃で滑るような拮抗をした後に、”アマクサ”は凄まじい二連撃を叩き込むが、なおも防がれる。

 

 ライフルを放つも、”ノーヴェ”は滑らかな動きで回避し、追撃の斬撃を叩き込む。

 紅蓮の焔を成すかのような鮮やかな斬撃の跡は、”アマクサ”の振るう刃による残光で悉く上書きされていっては、更なる輝きを織り成していく。

 

 端から見れば、その動きは点滅して見えるほど激しく、互いに引くことを知らぬ戦いだった。

 

 

《いいな、いいな!! 楽しいなぁっ!! もう無抵抗の奴は殺し飽きた!! こうやって足掻いた末に殺すのが、一番楽しいってもんよ!!》

 

 

 ”ノーヴェ”の双刃が、”アマクサ”の胸部装甲を焼き切った。

 紺碧に溶けゆく金属を見据え、”アマクサ”は後退。

 

 ”クロワノトキサダ”を振るい、スティングを放射する。

 

 

「スティング……!!」

《ハッハァッ!! 翔べよォッ!! スティングゥッ!!》

 

 

 ”ノーヴェ”の九尾が包囲網を描く――と思いきや、一度ビームを放ち、”アマクサ”のスティングを牽制しただけでそれっきりビームは撃ってこなかった。

 

 宙を舞うスティングに気を取られた、それが彼の過ちであった。

 

 

 増幅スラスターを解放し、もはや目視することすら叶わなくなった”ノーヴェ”の攻撃が、”アマクサ”の左腕を軽々斬り落とす。

 

 バルカンを放ちながら後退するも、そのあまりのスピードに命中させることは疎か、退かせることすらできず、防戦一方に陥った。

 

 

《大尉!!》

 

 

 飛行形態の”アストラル”がビームを放ちながらすっ飛んでくる。

 

 

「来るな!! アスカ!!」

 

 

 これまでの彼からは想像もつかぬ、激昂を帯びた声に、”アストラル”の飛行に迷いが出た。

 

 

《ハハッ!! 落ちろォッ!!》

 

 

 そんな彼女を逃さまいと、”ノーヴェ”のスティングがトリコロールの機体を包囲した。

 

 

 一斉にビームが放たれ、その機体は貫かれる――はずだった。

 

 

 光線雨の餌食となったのは、彼女の盾になった”アマクサ”。

 残りの四肢を欠損。スラスターも破損し、一目で分かるほどに戦闘継続が不可能になる。

 

 

《仲良しこよしであの世に行きなぁぁッ!! ギャハハハッ!!》

 

 

 狂気の笑いが響く中、トドメを刺そうとする”ノーヴェ”のスティングを、狩人の矢のように飛んできたビームが的確に穿つ。

 

 

《何っ!?》

 

 

 光速で猛進してきた”ウロボロス”が、マウントされた大型兵装 ハルバードを抜刀。

 重々しい一撃を浴びせ、”ノーヴェ”の両手を封じた。

 

 鍔迫り合いに勝り、奴を吹き飛ばした末にビームライフルを乱射。

 当てずっぽうかと思われたビームは、”ノーヴェ”の要である増幅スラスターの一部を、あり得ないほど的確に射ぬく。

 

 

 勝てない、と悟ったのか”ノーヴェ”のパイロットが悪態をつきながら撤退していった。

 

 

《撤退しましょう。機体は動きますか?》

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ”ウロボロス”に担がれる形で帰艦したウィザード。

 

 キャットウォークに足を着くと、すぐ側にアスカが立っていることに気がついた。

 

 俯き気味になった彼女の顔は、青白くなり、呼吸が荒いのか肩が忙しなく上下していた。枯れた声を漏らした彼女の第一声は、謝罪だった。

 

 

「ごめんなさい……大尉……また……また、ボクは……」

 

 

 彼女が謝ることなど何も無いのに。

 また、アスカを傷つけてしまった。

 

 でも今は、他人に構っている暇にはなれなかった。

 

 

 

(ミハイル、私も同じだ。過去を振り切れてなどいない。君に、物を言う資格など無かった)

 

 

 

 

 帰艦した”ウロボロス”から降りたリアムは、その光景を横目にしながら、安堵の息を吐いた。

 また、自分の手を汚してしまった。だがこれは自分で決めたこと。昔とは違う。

 

 

「驚いた。まだそれだけ戦えるなんて」

「……あの人、らしくありませんね」

 

 

 どんよりとしたオーラを纏うウィザードを見据えながら、リアムは呟いた。

 

 

「……私も初めて見たよ、あんな姿は。ふざけていても、パイロットとしても人間としても、ある程度の芯はあったから」

 

 

 リアムは悲哀を滲ませる。彼は他人のことに関しては、ことさら、激しく共感し、その気持ちに応じて感情的になる。

 

 ミスター・ウィザード。未来を見るような、相手の心を見透かすような言動と、”気持ち悪い”の一言では済ませられない言動が目立ちはしたが、立派な人間ではあった。

 

 そんな彼が、あそこまで気分を落とすような事など。

 

 

「ミラさん……どうしても、違和感があることがあります」

「なに?」

 

 

 彼の言葉に、ミハイルはゼリー飲料を口にしながら耳を傾けた。

 

 

「相手は非正規軍なのに、あれだけの兵力があるのが、僕はどうにも気掛かりなんです。機体はともかく、人員は――」

「……アルバのクローンが、使われてるって?」

 

 

 察しのいい彼女に、リアムは沈黙させられる。断言するつもりなんてなかった。

 

 

「大体、あの子のクローンは前大戦でほとんど損失した。残っててもたかが数体程度」

「じゃあ……」

 

 

 それを聞いたリアムは、最悪の想像が頭をよぎる。

 

 

「クローンからクローンを作る技術でもなければ、説明がつかない」

 

 

 ミハイルは吐露した口を、ゼリー飲料の飲み口で蓋をする。

 言った彼女すらも心苦しかったに違いない。

 クローン、それはあまりに便利な代物ではあるが、あまりに倫理に反した技術である。

 クローン元が見知った人間な立場なら、なおさら。

 

 

「人は繰り返してしまう。同じ過ちを」

「……」

 

 

 あまりに残酷で、救いようのない現実をリアムは直視できずにいた。

 尤も、確定した事実ではないが、可能性は高いだろう。

 

 

「僕たちは、何のために戦えばいいんでしょうか」

 

 

 

 

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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