ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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三十一話 そんな道理、私の無理でこじ開ける!①

 

 

 《ユミル》からそう遠くない宙域に、《ラウンズ》の艦隊が続々と集結しつつあった。

 

 最新鋭の宇宙戦艦と、それありったけ収容されたゲイズチェイサがいるときた。

 

 テロリスト風情なら、《ラウンズ》の全戦力をもってすれば対応できると思っているのだろうが、それは違う。

 

 

 ”ハンドレッド”は、連盟のコロニーを破壊できるほどのパワーを秘めた破壊兵器を、敵が有しているという事実を目の当たりにしている。

 

 残念ながら、あれを破壊するには至れていないのもまた事実。

 

 少なくとも、下手をすれば何十隻も沈むような攻撃をしてくる兵器が、向こうには一つ以上存在しているということだ。

 

 

 パイロットが格納庫で待機する発令が出され、ウィザード含む全パイロットは、緊迫感に身を委ねていた。

 

 

「”レーヴァテイン”……ですか」

「あくまでも小型だけれど、それでも、理論上は宇宙基地一つ落とせるだけの破壊力がある。油断していると艦隊一つ余裕で吹き飛ぶ」

 

 

 ミハイルは自分が見たままの事を、リアムにそのまま告げた。

 

 ”レーヴァテイン”。それはかつて〈ヘヴンダウン戦争〉にて、追い詰められたアーク連邦が使用した人類史に残る破壊兵器。

 地球から一瞬のうちに生命を消すことができるその兵器の矛先が、あろうことか、アーク連邦が守るべき宇宙の民にも向けられた。

 

 

 リアムはそんな光景を目の当たりにし、”レギオン”とともに、()()()()を見せた。

 

 

 あの奇跡は、ウィザードの脳裏に今でもよく焼き付いている。

 

 

「リアム・ソナタ」

 

 

 彼は名を呼んだ。かつての英雄の名を。

 

 

「……私は、君の真似事で奇跡を起こした……もっとも、少女を泣かせてしまうような、奇跡とはほど遠い無謀な行為だったのだが」

 

 

 唐突な語り部に、リアムは首をかしげる。

 

 

「私は君が起こした奇跡を見た。あれこそ、今の世界に必要な物だと、そうは思わんか」

「……貴方は、あの戦場にいたんですか」

 

 

 〈ヘヴンダウン戦争〉の最終盤”エクスノア攻防戦”。ファーストシーズンのラストを飾る最終決戦だ。

 記憶を取り戻し、自分のやるべきことを見定めた、ウィザードにとって転換点となる日。

 

 

 だがリアムは、どういう訳か()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()らしい。

 

 

(彼にはお見通しか。私も、()()()()()()()()は近いようだ)

 

 

 ウィザードには懸念があった。

 それは、この先の展開だ。

 

 

 ミハイル・バジーナ――もとい、ミラ・ヴァルーツが《ラウンズ》の存在を全世界に明かすべく公開演説を行う。

 宇宙人類に降伏を呼びかけ、世界平和を願う、彼女からすれば複雑な心境で臨まざるを得ない演説だ。

 

 そこで問題になるのが、この時点で死亡し、存在しないはずのアズチ・グレート。

 

 信頼し、背中を預けてきた人の正体がかつてアーク連邦で何百人もの地球軍兵を殺した《煉獄の凶星》だと知れば――どうなるか想像はつく。

 

 

 彼女の演説の意義は、宇宙人類への降伏を促すこともそうだが、何より《ラウンズ》の存在を確固な物として演出することにある。

 

 

(さて……私は次に何をすべきか)

 

 

 

 ◇

 

 

 

《アスカ・カナタ、”アストラル”行きます!》

 

 

 

 ”アストラル”とともに発進した”アマクサ”。

 

 他の艦隊からも、続々とゲイズチェイサが発進している。

 ”ヴァリアンス”、”グラドスケルト”、さらには旧式の”ウィルペイン”まで引っ張り出してきて、かなりの構えだ。

 

 

 《ユミル》周辺には、敵艦の姿は見えない。

 おそらく、先程の戦闘を鑑みるに、相手をするのは地球の人間――《プライムテラーズ》になるだろう。

 

 アークの残党《モードレッド》は、その軍事力の乏しさ故に、こちらが争っているところを漁夫の利することしか頭にないはずだ。

 

 

《……あんな物があるから、戦争が終わらないんだ……!!》

 

 

 アスカは苦汁を口に含ませるよう、鈍く歯噛みをする。

 彼女の言う通り、兵器が存在する限り戦争というものは起こる。

 だが、兵器がなくなったところで人同士が和解できるかどうか――ウィザードには甚だ疑問だ。

 

 

「敵機確認!! 相当な数だ!!」

 

 

 現れたのはかなりの数を誇る《プライムテラーズ》の編隊。

 最新鋭機の”サーティペイン”、”ペインレント”、寄せ集めの”スケアリー”まで用意し、あちらも総力戦の様子である。

 

 

 敵機と味方機が徐々に戦闘に突入していき、四方八方でビームが舞い、爆炎が宝玉のような煌めきを成す空間が誕生する。

 

 気が狂いそうになる忙しない戦場でも、アスカとウィザードは精神を保ち、ゲイズチェイサを駆る。

 ウィザードはともかく、戦場に入ってまだ間もないアスカからすれば、この状況はおかしくなっても否定できない。

 

 本来の彼女は精神がずたずたになり、この忙しない戦場ですら何も感じなくなるのだが――今の彼女は違う。

 自らの固い意志の元、自分の信じる道を貫き通すべく、覚悟を持って戦場に身を投じている。

 

 

 悲惨な結末を迎えるはずだった彼女が、ここまでの大躍進を遂げることができたのだ。

 

 できることなら、余計な歪を生み出さず、強欲に、全てを良い方向へと持っていきたい。

 

 

 その為に邪魔な物は、果たしてこの世界を歪め続ける()()なのか。

 それとも、()()()()()()()()()()()()()()なのか。

 

 

 

 

「ねぇ、貴方は蝶のはばたきに踊らされたことはある?」

 

 

 

 突然、視界が真っ白に包まれた。

 撃墜された――そんな最悪の事態が頭を過ったが、聞こえてくる声からその予想はすぐに裏切られる。

 

 

 あの少女が、まるで水中かのようにふわふわと浮遊し、彼の前に現れたのだ。

 

 

 

「蝶の羽ばたき……だと」

「一羽の蝶がひらひらと翅をはばたかせた。そのはばたき()()()()()()、その先に巻き起こる大厄災は存在しなかった……貴方はそんな経験ない?」

「言ってる意味がわからんな――バタフライ・エフェクト。なぜその話が今と結びつく」

 

 

 

 彼の頬を、一羽の蝶が通り抜けた。

 それは蒼き流星のような蝶。

 

 その蝶は、光の先に舞い散る真っ赤な花弁を追うように、ひらひらと漂うばかりであった。

 

 

 

「あの時、リアム・ソナタがあの兵器に乗り込んでいなければ。

あの時、ミラ・ヴァルーツが彼の手を取っていれば。

あの時、アスカ・カナタが何も喪っていなければ。

あの時――」

 

 

 

 少女はウィザードを見据え、不敵な笑みを浮かべた。それはこちらを嘲るような、心胆が凍りつくような表情。

 

 あぁ――とウィザードは察する。

 

 自分自身の行動だけで、この世界は変わったわけではない。

 

 

 本来あるべき流れから外れたイレギュラー、その存在()()()()()、この世界を歪める要因なのだと。

 

 

 

 

 微睡みの空間は消え、宇宙空間が視界に飛び込んでくる。

 そこに現れたのは――。

 

 

《チョイサァァッ!!》

 

 

 双刃構えし緋色のゲイズチェイサ――”ノーヴェ”。

 光刃を受け止めた箇所から、溢れんばかりの血飛沫にも似た粒子が飛び散る。

 

 

 ――ウィザードの知るはずのない機体”レギオン・リガド”の存在、それはすなわち、ファーストシーズンの最終回で何らかの改変があったということの裏付け。

 

 

 記憶の回帰には、むろん個人差があるだろう。

 

 

 

「貴様も私も、この世を歪めるイレギュラーというわけだ!!」

《ヘェ!! お前さんにもあの”カミサマ”がいるのか!! そいつぁ、運命感じるなァッ!!》

 

 

 あの時、自分が記憶を取り戻した裏で、この男は既に記憶を獲得し、自分の思うがままに――イレギュラーとしての行動を全うしていたということだ。

 

 それが巡り巡って、あの日大破し、以降使えなくなるはずの”レギオン”の存続につながった。そう考えるのが妥当だ。

 

 

 ”アマクサ”と”ノーヴェ”の剣は、幾度も鍔迫り合いを紡いでいき、鮮やかな残光を宇宙に残していく。

 

 

《飛べよォッ!! スティング!!》

 

 

 舞い踊るように放たれたスティング。

 

 されどそれは、こちらを翻弄するように飛び回るだけで、何かから気を逸らすかのようであった。

 

 

 亜高速で接近する”ノーヴェ”。その加速は、慣性制御が無ければ人が耐えられるものではないはずである。

 

 

 双刃と一刃が激突し、反発し合う。

 互いに譲らぬ攻防の未来は、何者にも読むことは不可能であった。

 

 

 スティングが幾度かビームを放てば、”アマクサ”と”ノーヴェ”は、再び激突する。

 

 

 一対一では、かなりの苦戦を強いられる相手だ。スティングによる翻弄をある意味囮のようなものにした超高速攻撃。これを一人で捌き切るなど、無茶にもほどがある。

 

 

 だが、一人では、の話だ。

 

 

「アスカっ!!」

 

 

 ウィザードの掛け声で、”アマクサ”に夢中になっていた”ノーヴェ”の背後に、漆黒の戦闘機が現れる。

 

 ゲイズスレイア形態からゲイズチェイサ形態へ勢いよく変形。

 そのまま力任せに刃を振るった。

 

 

《よくできたコンビだなァ!!》

「”ノーヴェ”……! 今日こそ倒す!」

《お前さんが上手に作ったんだろ!? そいつぁもったいねぇ話だなぁっ!!》

 

 

 ”アストラル”にスティングの凶牙が迫る。

 形成される蜘蛛の巣のような包囲網。先までの彼の戦闘スタイルとは、明らかに違う戦術だ。

 

 二対一の高速戦闘。流石に、彼はそれを真っ向面からやるつもりはないらしい。

 

 

「勝機、捉えたり!!」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「くっ!! 」

 

 

 歯噛みをしたミハイルを襲うは、大型の兵装から放たれたであろうビーム。

 掠めようになりながら、なんとか体勢を保ち、敵の姿を目視する。

 

 アスカが対峙したという機体――”エレムルス”だったか。

 敵の親玉が乗っている機体、としか聞かされていないが、それだけで恐ろしさは十分わかる。

 

 

 

《ふふふ……まさか貴様をこの手で始末できるとは》

 

 

 

 頭の中に流れる嘲笑混じりの言葉。

 

 

「アレックス・ノーベル……そうか、お前が」

《ミラ・ヴァルーツ――いいや、ミラ・フォル・ヴァルーツ。貴様に名を覚えてもらえているとは幸福だな》

「……その名で呼ぶな」

《ほう、脆弱な母の名付けた名がいらぬと?》

 

 

 彼女の脳裏に、母の姿が浮かぶ。

 酷く焼き付いて離れない、母の優しげな笑顔と懐かしい抱擁の感触。

 ――兄に父諸共殺された。あれだけ、優しかった人だったばかりに。

 

 束の間の懐古は、瞬く間に怒りに変わる。

 

 だから彼女は鬼になった。

 《煉獄の凶星》の名を背負い、仮面で無理にでも泣けないようにし、母が与えてくれたミドルネームも捨てた。

 

 ”サウザンド”と”エレムルス”は、激しい攻防をすぐさま開始した。

 

 切り結び、撃ち合う。

 頭の中で言葉を交わさずとも対話できる者同士なのに、結局、殺し合いをしてしまう。

 

 

 どうして、どうしてこうなってしまう。

 人という生き物は、人類は。

 

 

《そんなゲイズチェイサで私に勝てると思っているのか!!》

「ええい……!!」

 

 

 ”サウザンド”の関節が軋み、内部機関が悲鳴を上げているように思えてくる。

 もうついてこれていない。

 敵はあの《ノーベルダイナミクス》。テロリスト扱いされているといえど、地球や宇宙には今でも活動している部署がある。奴らはそのほんの一部に過ぎないのだろう。

 

 機体性能はこちらと同等か上か。どちらにしても、パイロットから感じるプレッシャーはただ者ではない。

 

 

 ビームブーメランで牽制し、脚刃で切り払う。

 ”エレムルス”の巨大な腕部から放たれるレーザーが”サウザンド”のビームコーティングを融解し、微かな爆発を巻き起こす。

 

 

 ”エレムルス”の腕部が変形し、三本の鉤爪を思わせるセイヴァーが露出。

 ”サウザンド”に襲い掛かり、それを受け止めた光刃を、単なる粒子へと打ち砕く。体勢を崩した”サウザンド”の中で、彼女は恐ろしいものを目にした。

 

 

「なっ……あれは……!!」

 

 

 《プライムテラーズ》の艦隊であろうもの。

 その中に、巨大な砲台を有するあの戦艦が目視できるだけで()()はあった。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()船が、五隻だ。

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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