ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
長い間本編の投稿ができず、誠に申し訳ありませんでした。
最終章は必ずいつもどおりのペースで投稿することを誓います。
"ヴィンテージ改"、"エフェクト二型"の完成をもってして、〈ラウンズ〉の活動は再開されそうになっていた。
とはいえ、この二機は寄せ集めの急造品。旧型よりも基礎スペックが上がっただけで、中身はほとんど"ヴァリアンス"である。
とはいえ、この戦場では機体スペックではなく、パイロットの腕が物を言う。あの二人なら、この機体で十分であろうと、ウィザードは確信していた。
激闘の起因となったユビキタスブレインは、動乱の中、ユミルから運び出され、とある場所へと一時的に避難させられている。
そのある場所とは――【アークデブリ戦域】である。
ヘブンダウン戦争の最終決戦の地。【エクスノア】の残骸が残留する中域を、誰もがそう呼称する。
可能な限りもっとも近く、早期に避難させられる場所としては、皮肉なことにそこしかなかったようだ。
無論、こんな展開は原作にはない。
原作では先の戦闘で
"ユミル"での戦闘で、アスカは精神を崩壊させながらアレックスを倒す。ミハイルはかつて愛したファウストをその手で殺め、世界に絶望する。リアムは強大な敵に難なく打ち勝ちながらも、それだけでは救えない人々がいる現実を知る。
誰も彼も幸せにはなれないエンディングが、今、この宇宙から消えたのだ。
(私の役割は終わったも同然……否)
そう、彼の元来の目的は既に達成された。
リアム•ソナタに出会う、そして、この世界の結末を変える。だが彼の頭を過るのは、どこからともなく湧いてくるあの少女の言葉だ。
――どれだけのイレギュラーがあろうと、運命は一つの場所に収束する。
高次元生命体のお言葉に狂いはないか、はたまた、人間の基準で理解しようとしてはいけないのか。
いずれにしても答えは明白ではない。ゆえに、ウィザードは進むことができずにいた。
強化ガラスの先に写る暗闇の海。宇宙とは広い。どれだけ泳いでも、次々のその黒い水は湧き出てくる。
いつしかアスカは言った「この広い宇宙には、別の生命が存在している」……かもしれない、と。
実際、宇宙すらも超越する高次元の生命体とウィザードは出会った。ならば、今更宇宙人など出てきてもおかしくはないであろう。
「ウィザードさん、お時間いいですか」
アルバの声が聞こえ、ウィザードは宙で踵を返す。
いつもの白いワンピースにエプロンを身に着けた彼女は、すっかりこの船の母として馴染んでいるようだ。
彼女の傍らには、まるで彼女の妹かのような少女がくっついている。アルバ•クローン……あの"バヴィロン"に乗っていたクローンの生き残りを、とうとう連れ歩くようになってしまったようだ。
「あまり連れ歩くでない。見つかると厄介なことになる」
「すいません……でも、この子が貴方にお礼が言いたいって言うものでして」
ひょこ、と顔を覗かせたアルバ•クローンに視線を合わせると、気恥ずかしそうに顔を引っ込ませた。小動物を見ている気分だ。
「あ、ありが……とうございました。私のことを、守ってくれて」
「君を守ってくれたのは彼女さ。私は彼女の手伝いをしたまでだ」
アルバ•クローンの顔が明るくなり、すぐに沈む。
何か思うところがあるのか、口をもごもごさせて黙り込んでしまう。
対等に話すべく、ウィザードは姿勢を低くして応対する。
「あっ、あの……! ファウスト様を、たすけてあげて、ください」
「……ファウスト様?」
知らないなどありえないが、ここはあえて知らないフリを貫かねばならなかった。
「ファウスト•シューベル。かつてのアーク連邦貴族の末裔です。あの人は今、残党を集めて、元いた組織でクーデターを起こし、戦局を混乱させています」
「ほう、あの青いゲイズチェイサの部隊がそうなのか」
アルバはこく、と頷く。
ウィザードはクローンの彼女に向き直り、純粋な疑問を投げかける。
「ところで、なぜ私なのだ。ここには煉獄の凶星、連盟の蒼き悪魔もいるのだぞ」
「ううん、貴方がいいって
彼女の言葉に、ウィザードは喉に癌ができるかのような感覚を覚える。喉に引っかかるが、その全貌がわからぬため手の施しようがないような感覚だった。
「きゅぴーん様……とは何だ」
「この子、向こうで色々実験体にされたこともあるらしくて……あんまり、触れてあげないでください」
アルバは必死に自分ごとのように弁明した。こう表現するのもおかしな話だが。
「……そうか。分かった、努力はしよう。ただ、彼と私が相対するのは戦場であることを覚えておいてくれたまえ」
兵士として当然の台詞を残し、ウィザードはその場を去る。喉に抱える違和感は消えぬままだが、消す手段を知らない。
薄暗い廊下を泳いでいると、ふと、空き部屋に気配を感じた。ついこの間の戦闘で戦死した同胞の部屋。誰もいるはずのないが、確かに何かの気配を察知したのだ。
恐る恐る入ってみると、そこには案の定、あの少女の姿があった。
「こんばんわ、会いたいみたいだから来てあげたわよ」
いつもの白い衣服で、不敵な笑みを消さないまま、死者のベッドに腰掛けてきた。
不謹慎極まりなく、彼の逆鱗に触れるには十分の行為だったが、あいにく相手は高次元生命体だ。人間の常識を押し付けるわけにはいかない。
それにーー今の彼にはその気持ちより、欲のほうが勝っていたのだ。
「教えてほしい。君はこの世界をどれだけ知っている」
少女は首を傾げた。もっとも、表情は変わらないままのため、上辺だけの行為であろうが。
「私の知るこの世界は、所詮は限られたものだ。アニメという短い一時でしか、私はこの世界を知らない。だが君はどうだ? 宇宙を俯瞰して見れる君なら、この世界のすべてを知っているのではないか?」
「もちろん知ってるわよ」
少女は呆気なく答えた。この少女の思考は未だに読めない。いいや、もはや「少女」という肩書が正しいのすらわからなくなってくる。
「でも、それを貴方に教える義理はないし、なにより教えるなら零から百までいくから、人間程度の脳じゃ耐えられなくなるし」
「ほう……」
さすがは高次元生命。しっかりその地位は確立しているようだ。
普段ふざけ散らかすウィザードでも、今の状況下では流石に"ゲイザー"を前にして平然を装うことで精一杯であった。
「前にも言った通り。あなたは、結末を変えたつもりでしょうけど、どれだけ道が異なろうと運命は同じ地点に収束する。それがdestiny。歪めれば歪めるだけ、その後の展開は酷くなるかもしれない」
「……それはつまり?」
ウィザードは恐れを捨てて問いかける。
単純な興味もある……しかし、ここまで最善のルートを貫くことができたのだから、今更、何もかもを台無しにしたくないという思いもある。あの殺人鬼と相対したときと同じ感覚であった。
「結末は変わらない。でも、全体でみればという意味よ。貴方は今その歳でクリスマスに枕元へプレゼントが置いてあった。でも中を開けると空っぽ。考えてみれば、この歳でプレゼントなんてあるわけがないのに、一度余計な過程を挟んだせいでより酷く感じられた」
「……ほう」
ウィザードは感嘆の意を漏らした。
それはつまり、
「以前、人の精神は流体エネルギーのようなものと話したでしょう? 運命もエネルギーとして説明ができる。その世界の運命として、一定のエネルギーが定められている。流れを変えたり、観測位置を変えることはできるが、その定量を歪めることはできない」
少女は儚げな顔で天井を見つめた。
彼女の目に何が見えているのか、ヒトという下等生物には到底理解できないだろう。
「この世界と同じ、ゲイズチェイサという人型兵器が存在し、レギオンという象徴の英雄が存在する世界。私はいくつも見てきた。その別の世界線も。けれど、定められた運命はいずれも同じだった。世界から兵器が消える、抗った者たちが正義の名の元に淘汰される……それがその世界に与えられた運命なら、変えることはできない。いくら私であっても」
少女は目を伏せながらこちらを見る。
ウィザードはにわかには信じ難いという曖昧な気持ちと、信じざるを得ないという確固たる意思が混同していた。
それでも、ウィザードには今更諦めるという選択肢はない。ここまで彼女らと接し、時に熱く、時に高温で接してきた彼にとって、もはや責任を放棄する選択など残されていないのだ。
「私はそれでも進む。そして変えてみせる」
「……あなたには何を言っても無駄ね」
瞬きをすると、少女の姿形がその場から消え失せた。
◇
殺伐とした空気が張り詰めるブリーフィングルーム。
この紺碧の海を背に、ここまでの空気が満ちるのは、戦いが未だ終わっていないことを暗示している。
そう、まだ終わっていない。
敵が全滅していない以上、あちらは必ず攻撃を仕掛けてくる。向こうはいつでも、こちらを見ているはずであるためだ。
「我々は、いつまでもあのような廃墟に最高級のコンピューターを放置しておくわけにはいかない。そのため、ユビキタスブレインの輸送が必要になる」
レイの言葉と共に、ホロウィンドウが浮かび上がる。
【アークデブリ戦域】からの航路が表示された。輸送先は火星の軌道衛星 "マース•イレブン"である。元より〈ラウンズ〉の軍事施設として開発された物だ。
テラフォーミングされている火星には大勢の人が暮らしている。アスカも、そこで育ってきたという。そんな地に戦いの火種を持ち込むことに、誰もが抵抗があるだろうが、誰も口にはしなかった。
「……おそらくだが敵は、【アークデブリ戦域】にそのまま攻撃を仕掛けてくると考えられる。あいにく推測されやすい隠し場所ゆえ、その可能性が極めて高い。我々はデブリに身を隠し、奴らを誘い込む形で迎え撃つ」
敵の巨大ビーム砲を見て、この作戦を立案できるのは中々肝が据わっている。だが、相手からしても、【アークデブリ戦域】ごと吹き飛ばして超貴重な代物を失うのは避けたいであろうから、妥当な判断か。
加えて、この戦いには必ず【モードレッド】も絡んでくる。味方、敵、どちらの視点から見ても厄介な不穏分子。無差別な攻撃は逆にリスクになり得る。
【アークデブリ戦域】には数多くのデブリが、火星の軌道によって留められている状態だ。
一つ一つが大きく、ゲイズチェイサはもちろん、戦艦を隠せるほどの物が数多く点在している。
しかし一度戦闘になれば、そのデブリは単なる障害物となる。単なるパイロットとしての腕以上に、地形の把握と、精密な動作が戦闘の鍵となってくる。
レイが一通り作戦を話し終えると、真剣な顔のアスカに目線を落とした。
「アスカ•カナタ少尉。君には、新たな装備が授与される」
彼女が目を丸くすると同時に、ウィザードは仮面の下で驚愕の表情を吐露する。
その驚愕には、どちらかといえば負の感情が混ざっていた。
◇
格納庫で屹立する"アストラル"。
ゲイズチェイサ形態のそれに、新たな装備が纏われていた。
背部に鋼色のウィングユニット、腕部に爪のような追加装甲が設けられ、全体的なシルエットは
頭部には鋼と赤のヘッドギアが装着され、まるで怒りに震えるかのように、ツインアイが強調されていた。
高速軌道装甲"ロイン•ユニット"を装備した、"ロインアストラル•レギオン"。
アニメファンからの通称は【暴走機体】。
アスカ•カナタはこれに乗ってから、精神的に不安定になりだした。ロイン•ユニットに何か特別な力があるわけではない。
"ロインアストラル"は、ファンにとっては暴走するアスカの象徴であるのだ。
だがウィザードがなによりも怖いのは、
本来ならこの機体は、アスカが地上で"ティターンレギオン"を撃破したあと、その功績を称えられ授与されるものである。
それが今更になって彼女の前に現れた――。
あの少女のほくそ笑む顔が、ウィザードの脳裏にじりじりと浮かび上がってきた。
原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)