ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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四話 身持ちが堅いな

 

 

 ”ノーヴェ”、”バハムート”には損傷を負わせることなく撤退され、唯一大破させた”マサムネ”さえも、あの状態ではパイロットも生きている可能性が高い。

 

 本来のシナリオ通りなら、主人公達は圧倒的な三機の〈レギオン〉の性能を前に、命からがら逃げ延びる。

 だが、”ガーゴイル”という異質な機体の存在により決死の逃走劇は、さながら勝利の凱旋のように成り代わった。

 

 敵となる三機はこれからも存命で、主人公となるべきアスカ・カナタも迎え入れた。結末的には変わらないが、そこに至るまでの道筋が書き変わった。

 

 

 ――だが、もういい。

 

 

 シナリオだとか運命だとか、ウィザードはそんな事は気にしないことにしたのだ。

 世界には無数の可能性、パラレルワールドが存在すると示唆されている。自身がアニメで見たあの世界が本来ならば、こちらはもしも(IF)の世界。自分は今そこに生きている。

 

 それで良いではないか。

 

 

 ウィザードはほくそ笑みながら、船内の自販機にもたれかかっていた。

 

 愛の告白(?)とも言えるとても戦場で意気揚々と言い放つべきでない言葉を、わざわざオープン回線で聞かされた《ラウンズ》の兵士達は、彼を一気に怪しむようになった。

 

 無論、そんな彼が自販機を椅子代わりに、その上不敵に笑っていたら、飲み物を飲もうにも飲むことができない。

 

 

「あの人の仮面意味あるわけ?」

「こえぇよ正直、近づけねぇ」

「ミスター・ウィザードって本名……? 直訳したら”魔導師さん”だぜ?」

 

 

 と、色々彼への不満が絶えないが、そんな物は彼の耳には届かない。ゆえに、改善など一切されない。

 

 

 ミスター・ウィザードは、そういう男だ。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 捕虜などの尋問に利用される防音室に呼び出された為に、ウィザードはミハイルと”ハンドレッド”の艦長と共に、保護という名目で招き入れたアスカ・カナタと対話を行うことに。

 

 

 赤々としたショートヘア、やや凛々しさを感じる顔立ち。小柄でやや華奢。素朴なグレーの作業着に身を包んでいる。

 

 

 艦長――ヨハンは壮年の軍人だ。深々と被った軍帽から覗く瞳は、アスカにとって畏怖の対象であっても差し支えない。

 

 

「……名前は」

「あ、アスカ・カナタ……」

「あそこで何をしていた」

 

 

 ヨハンに尋ねられ、アスカは肩を強張らせた。

 言い淀んではいたが、彼女は嘘偽りなく話す。

 

 

「……仕事です。元々は、火星の方でメカニックを募集してるって言われてて。それで」

「先に言っておくが()()()()()()では済まされないことだ。アスカ・カナタくん」

「ボクが言い訳してるって、そう言いたいんですか。あなたは」

 

 

 気迫のある彼にも、アスカは目をキリリとさせながら反論する。

 

 

「そうではない。が、一応警告しただけだ」

「誰が、あの人たちがテロリストだって分かるんですか!!」

「落ち着きたまえ。女として、お淑やかにした方が良い」

 

 

 ヨハンのその言葉を耳にした瞬間、アスカは目上の人間にも関わらず、その喉仏に噛み付く勢いで吐き捨てた。

 

 

「っ……!! 女だから、女だから!! 皆そうやって、ボクのことを!! ボクのことを女だからって舐めるんだ!! ふざけやがって!!」

 

 

 その豹変ぶりに、尋問しているヨハンではなく傍らにいたミハイルの方が驚愕しているように見えた。

 ウィザードはと言えば、あいも変わらずの仏頂面で刮目している。

 

「あの人もだ……! ボクが女で、弱いからって……なんで庇うんだ……」

 

 目尻に涙を浮かべながら、アスカは掠れた声で言う。

 

 

「艦長、代わります」

「……助かる」

 

 

 重い腰を上げたヨハンとミハイルが席を交換する。

 いよいよ、ウィザードは何故自分が呼び出されたのか甚だ疑問になってきた。

 

 ヨハンは離席していたブリッジに戻り、ミハイルとアスカ、そして仮面の男と言う余程のコミュニケーション力が無ければ会話が弾まない空間が出来上がった。

 

 

「……アスカちゃん、でいいわよね。私たちは何も、君を法的に裁こうなんて思ってないわ。確かに……君が作っていた兵器のせいで大勢人は死んだけど、君のおかげで助かった命もある」

 

 

 ミハイルは語りかけるように言う。

 見た目さえ抜きにすれば、本当の姉妹のように見えなくもなく、ウィザードは何か言いたくてしょうがなくなっていたが、ミハイルに睨まれ口と瞳を閉ざす。

 

 

「ちゃん、なんてやめてください」

「じゃあアスカでいいわね――単刀直入に言う。私たちの組織は、世間一般には絶対に知られてはいけない」

 

 

 彼女は緊迫した様子で話す。

 

 このご時世は、いわば()()()()()()()()のような雰囲気だ。

 紛争、テロ、そんな物は起こりさえはするものの、圧倒的な軍事力を持った結束連盟に即座に制圧される。

 

 軍縮が進み、民衆が争いごとを毛嫌いする世の中で、強大な武力を有し、その上実質的な独自行動権を持つ《ラウンズ》は嫌悪の対象だ。

 世に流出すれば、統一政府たる結束連盟の存亡が危ぶまれる事態になる。

 

 

「貴女は《ラウンズ》が保護し、然るべきところへ送り届けさせてもらうわ。口外しないように、暫く監査員が付くけど、今後は普通の生活ができる」

 

 

 彼女が出したのは妥当な選択肢。

 だが、アスカにとって最適であるかは別問題である。

 

 

「……隠すんですか。民衆には。あなた達の存在も、ああいう、平和を乱すような奴らがいるってことすらも……!!」

「下手に口外したほうが平和が乱れる。子供目線で世界を考えないで」

 

 

 赤い眼光がぎっ、とミハイルを睨む。

 表情だけは変わらないが、横から見ていれば顕著に、唇が微かに震えていた。

 

 ミハイル・バジーナ――その正体は、ファーストシーズンで主人公の敵として立ちはだかったミラ・ヴァルーツ。

 彼女には妹がいる。生きてはいるが、なかなか会うのが難しい状態にある。

 

 目の前にいるアスカを、会えない妹と重ねているのだろう。

 そうなると、やや動揺する気持ちも分かる。

 

 

「……ウィザード大尉はどう? 何か意見は」

「……私か――」

 

 

 話を振られ、流石の彼でも言葉を詰まらせた。

 本来ならばこのシーンは、ミハイルとアスカの一対一で進む。

 

 だが本来彼女がするべきアスカへの勧誘に、彼までも加入してしまったため、あり得ないシナリオが追加されている。

 

 

 ――いや、もうシナリオだとかは気にしないことにしたんだ。

 

 

 ウィザードは開き直り、満を持して口を開く。

 

 

「自分の心に従え、少女よ」

 

 

 その間、実に数秒程度。

 そうまで待って出た言葉がこれだと、ミハイルが固まるのは至極当然な反応だ。任せたのが間違いだった、と言わんばかりに、腑抜けてしまった表情をサングラスで誤魔化す。

 

 

 だが、アスカは彼女とは違う。

 神妙な表情で俯き、何か思いに耽っている。

 

 

 アスカ・カナタは、あの大爆発が起こった工場で家族同然の想い人と共に働いていた。

 その想い人は、爆発が起こった際、彼女を庇って死んだ。

 

 ファーストシーズンのリアムが、”哀しみの主人公”だとするならば、セカンドシーズンのアスカは”怒りの主人公”。

 感情に苦しみながらも戦うのではなく、感情に身を任せて戦う――実に対照的なキャラクター。

 

 

 アスカは固く、拳を握りしめた。

 

 

「……ボクにも、戦わせてください」

 

 

 戦う、という言葉にサングラス越しの瞳が僅かに歪んだ。

 

 

「戦う……?」

「ゲイズチェイサの操縦はできます。あの”アストラル”の使い方だって、わかります」

「けれど――」

 

 

 何か言いたげなミハイルの肩を、ウィザードが掴んで制した。

 仮面から覗く瞳は、あまりにも真っすぐで何を言いたいのか、ミハイルにはすぐ理解ができるのだった。

 

 彼の意見を、受け入れる訳ではなかったが。

 

 

「ボクは……許せない。ボクと()()()を騙して、人殺しの道具を作らせていたあいつらが……!!」

 

 

 そう言った彼女の顔は――怒りに満ちていた。とても、年端もいかぬ少女が浮かべるものとは思えない表情だった。

 

 

「……部屋を用意するから。ゆっくり休んでね。そういう気分じゃ、ないでしょうけど」

 

 

 ミハイルはそうとだけ言い残し、ウィザードと共に尋問室を出る。

 

 肩を落とすミハイルに、ウィザードは目を向けてやった。

 

 

「……笑っていいのよ」

「何故だろうか」

 

 

 とぼけるような返事をするウィザードに、呆れたように、囁くかのような声を漏らす。

 

 

「何故って……あんな子供に、一端の軍人が同情してるのよ。自分のことみたいに」

 

 

 彼女は少し、落ち込んでいた。

 自分が情けないのか、どうなのか。いずれにしても彼女の心は、ウィザードには理解はできなかった。

 

 

「心に従え、大尉。()()()がそうしたように」

 

 

 気張っただけの魔導師だと、そう思っていた男の言葉を聞いた途端、赤い瞳が黒のレンズ越しにまん丸くなる。

 

 

 ミスター・ウィザード。

 それは、彼女が知り得る事も知り得ないことも知っている者。

 

 

 励ましのつもりの言葉を残し、彼は悠々と去っていくのだった。

 

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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