ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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四十一話 そんなことをしてみろ、我々は世界の鼻摘み者だ

 

「"ハンドレッド"が危険だ……早く戻るぞ」

 

 

 ウィザードの言葉とは裏腹に、戦場は彼らを安々と離してはくれなかった。

 

 "アマクサ"と"アストラル"を包囲する、おびただしい数の敵機。

 最新鋭機の"ペインレント"だけではなく、旧型の"ウィルペイン"、試験機であるはずの"サーティペイン"まで見えた。数の埋め合わせをしているのが見てとれるが、それ故に恐ろしい。数は戦場において暴力となる。加えて、おそらく乗っているのはクローン兵士たち。気の抜けない戦いであることに誤りはない。

 

《まだこんなことを……!!》

 

 彼女の声音に怒りが滲む。

 "アストラル"は双剣を引き抜き、交戦に突入した。

 

《まだ戦争がしたいのか、あなた達は!!》

 

 すかさずハルバードへと変形させ、敵機を薙ぎ倒すように斬っていく。

 飛散する鉄塊、爆ぜる爆炎。その全てが、ウィザードには血しぶきのように感じられた。

 

 思わず手が伸びそうになる。

 それ以上進んではならない。

 茨の道が目の前には広がっている。

 

 なのに言葉には出ない。彼は全てを知っている。だが、それを伝える術はない。ここに来て、その制約が凄まじい足枷に感じるようになるとは思ってもみなかった。

 

 ――違うっ!!

 

「私はこうではない。私は吹っ切れた!! とうとう首輪無しでは抑えの効かないじゃじゃ馬になったのだ!!」

 

 光線が行き交う中、"アマクサ"は直立し、ありもしない天に向けて剣を突き立てた。

 

《大尉!?》

《ふふ、馬鹿》

 

 それを狙った"ペインレント"の斬撃を、宙返りするように躱す。"クロワノトキサダ"を振り回し、スティングを従えるかのように解き放つ。

 

「ウィザード•スティングは伊達じゃない!!」

 

 一斉に放たれた三筋のビームが、三機のゲイズチェイサの頭を撃ち抜いた。

 爆散し、その焔に塗れながら、"アマクサ"は敵陣に突っ込んでいく。

 光線をバリア代わりにばら撒き、近づいてきた相手をセイヴァーで無力化。

 

 そんな中、ミハイルの嘆息が聞こえる。

 

《リアムと同じ、甘ちゃんね》

「彼の意思は、私の意思!!」

 

 どうせ奴らは、クローンを捨てる気で出撃させている。回収されず、戦力に返り咲くことはないだろう。また、既に何度も複製され、劣化が始まっている。短い命なら、最期は灼かれて死ぬのではなく、穏やかに死ぬべきだという、勝手な彼の意見を彼女らに押し付けたまで。 

 

「ミラ、君は少年のところへ」

《リアムね》

「早く行け!!」

 

 ミハイルはため息まじりでも、素直に機体を方向転換し、リアムが一人で抑えている戦場へと駆けていった。

 

 ここまで来て、死なせてたまるか。原作でそうであろうとなかろうと、誰一人として。

 

 

 

 順調に敵数を減らしていたところで、新たな熱源をレーダーが捉えた。

 

「来たか、《モードレッド》!!」

 

 ウィザードの声に呼応するよう、あらぬ方向から飛んできた一対のビームが"ペインレント"を貫いた。

 

 暗闇から出るは、蒼き装甲の"ヴァヴィロン"。

 少数精鋭、といったところか。数は少ないが、"ペインレント"の物量を技量で上回っていた。

 

 その中に、懐かしい影が見えた。

 紫苑の竜王"バハムート"と、翡翠の武者"マサムネ"。

 "マサムネ"の方に至っては、見慣れない武装を携えていた。腕部に備えられた大型の砲筒。中からはおぞましく鋭い杭が今や今やと飛び出しそうになりながら眠っていた。

 

「ほう、"LGAX-47 フォーカスパイラー"。なかなか粋な武装! では参る!」

《生きてやがったか、キザ仮面野郎!》

「私をキザと言ったか!? こっちのセリフだ!!」

《いい加減、堕ちろやぁぁあッ!!》

 

 "マサムネ"の重い斬撃が、彼の剣と剣戟を交わす。

 一筋の軌跡が空を斬った後、幾多もの軌道が交差するように生まれ、鮮やかな乱気流を描いた。

 

 剣戟では歯が立たないと自覚したのか、"マサムネ"は後退際に新たなる武装"フォーカスパイラー"を起動。

 高圧縮され打ち出される杭を、躊躇なく"アマクサ"に向けて発射。重々しい音と耳を劈くような衝撃が、スピーカーからコックピットにまで伝わってくる。

 

 しかし、ウィザードにはその軌道は読めている。

 難なく躱し、反撃を繰り出す。

 

 ここまでの無理な機動ができるのは、彼の勘が最大限に働いたからーーすなわち、《レギオニス》が"マサムネ"のパイロットの殺気を察知して伝えてくれたからであろう。

 これまで自分の技量だと思っていたものが、他者からの手助けあってこそのものだということに、アスカが気がついたらどう思うだろうか。だが少なくともウィザードは、「感謝」が出る。

 

 しかし、相手も単純ではない。

 "マサムネ"は彼の回避先を予測し、大太刀を振るいながら突撃してきた。

 

 直撃コースだ。

 ウィザードは目の前がスローになった。じわじわと近づいてくる赤眼の落武者。ギラギラと光る大太刀の刃を見据え、彼の中に覚悟が宿る。

 

「ふんっ!!」

 

 あろうことか"アマクサ"はスラスターを急停止させ、その場で足を止めた。

 チャンスと踏んだ"マサムネ"はそのまま刃を振るった。

 

 しかし、"アマクサ"の掌部によりその刃は受け止められた。白刃止めーーゲイズチェイサでは気が狂ったとしか言いようがない行動に、"マサムネ"は機体にすら動揺が溢れ出ていた。

 

 "マサムネ"の刃は、軽々とへし折られる。

 砕けた欠片が宙に撒き散らされ、"マサムネ"の機体をギラギラと照らす。

 

「なかなかに重い得物、気に入った!!」

《貴様……! 何なんだ、何なんだよぉッ!! 貴様のせいで、貴様のせいで俺達はァッ!!》

「私は私だ!!」

 

 "マサムネ"は負けじとビームセイヴァーを引き抜き、"アマクサ"と拮抗する。

 宇宙の空間を赤々と照らす擬似結晶の刃。二機の戦闘は苛烈さを増すばかりであった。

 

「貴様達はなぜあの主君につく!?」

《主を慕う事に理由がいるか……!?》

「素晴らしい志だ! あえて言うぞ、敬意を表するとな!」

《いい加減黙れぇぇッ!!》

 

 ウィザードにペースを乱されまくるイガクは、もう我慢の限界であった。

 

 

 その最中、"バハムート"と"アストラル"が激闘を繰り広げていた。

 大型ビームセイヴァーの一撃を、残像を宇宙へ焼き付けながら回避する。

 残像を裂いた"バハムート"。大型ビーム砲でまるごと焼き払う戦法に移る。

 されどそれでも、"アストラル"を捉えることはできず、再び間合いを詰められて、光刃を引き抜くことを余儀なくされた。

 

《バッハ班長、あなただけは……!》

《アンタぐらいね、アタシを"ヒト"扱いするのはさぁ!!》

 

 "スピーラー"として産まれ、戦争の道具として生きてきた彼にとって、アスカの言い分は少し興味を惹かれるものがあった。彼女は彼を憎んでいるものの、決して人ならざるものとしては見てこないーー無論、彼女は知らないのだから当然だが、アリアにはそれが喉に引っかかる。

 

《気に入らないのよ、アンタはねぇっ!! もうアンタの知るアタシはいねぇんだよっ!!》

《それがどうした!! あなたの罪は消えない!!》

《アタシに罪も何もあるかよ!!》

 

 

 ――アタシが仕えるのは、あの人だけなんだよ!!

 

 近距離戦に持ち込まれては、大型の武器では分が悪い。されど、そうなったら距離を取るのがこの機体の定石。しかし、彼は携帯型のビームセイヴァーを抜刀し、"アストラル"に徹底抗戦を仕掛ける。

 

 道具としての運命から、"バハムート"をも解放されようとしていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 "ティターン"を相手取るリアムの元へ急ぐミハイルは、背後から迫る熱源を察知した。

 

 振り向きざまにビームハルバードを振るい、彼女を射抜こうとしたビームを弾き返す。《アルカナ》であっても至難の業ーーそれを易々熟せるだけの技量と余裕を持った彼女に、誰が挑もうと思うのか。

 

 "ヴィンテージ"のモノアイが捉えるは、その視線を赤きモノアイで追うゲイズチェイサーー"ハルジオン"。

 青銅の騎士は、赤き凶星を前にしても怖じ気付くことなく刃を抜いた。

 

《ミラ、もう容赦はしない》

「ダメね。後ろから奇襲する気もないんだもの」

 

 ミハイルは余裕たっぷりで彼を嘲笑した。

 ーーとはいえ、彼女も志は同じだ。

 

 ゲーテ・ヴァン・トリオンーー否、ファウストシューベル。この男は殺さなくてはならない。ヴァルーツが築いたアーク連邦の負の歴史を蘇らせ、回復に向かうはずの宇宙人類の印象に泥を塗ろうとした最低な人間。

 ミハイルは、ミラは、この男を殺して自分も死ぬつもりだった。

 

 だが、帰らないといけない場所ができてしまった。

 進むべき道を見つけてしまった。 

 そう、思ったのだ。

 

 

 無駄口を叩く暇は無く、"ハルジオン"は一気に間合いを詰めて斬りかかる。

 ハルバードの重い一撃は、同じ刃の防御によって受け流され、完全なる拮抗状態が生み出された。

 

 ギラギラと光る赤い粒子、ミラの赤い瞳に吸われて輝きを失っていく。

 

 ひしひしと感じる殺意。比喩ではなく、彼女の脳をビリビリと痺れさせる感覚が、機体越しに伝わってくる。

 《アルカナ》である彼女へこれを伝える《レギオニス》は、この()()をどう感じているのだろう。彼らにとって、争いとはどのように見えているのだろう。

 

 ーー私には、この子達と対話をする権利はないのかもしれない。

 

 生きる理由も、生きていていい場所も見つかったが、それは思い違いだったのかもしれない。

 長いこと復讐に駆られ、戦争に身を投じてきたものは、その贖罪を果たし死ぬべきなのかもしれない。

 

 せっかく見つけた物を手放すのは名残惜しいが、それが世のためなら致し方ない。

 

 ミラは深く息を吐く。

 

 

 "ヴィンテージ"の反撃が、"ハルジオン"を軽々と吹き飛ばした。

 ハルバードを回し、スラスターを吹かした"ヴィンテージ"は、赤い残像となって瞬く間に消えた。

 

 

《何……!?》

 

 

 額に冷や汗を滲ませるファウスト。

 彼女の機体を目で追えない。辛うじて視界に入るのは、赤い流れ星のような残像のみ。その様はまさに赤い彗星と評してよいだろう。

 

 彼は察する。彼女は自分を本気で殺しにかかってきている。一寸の迷いもなく、である。

 

 "ハルジオン"のモノアイが光り、スラスターを爆ぜさせた。

 しかしどうだろう。赤い彗星の高機動には、どうしても追いつくことはできない。

 

 幾度も激突しては猛烈なる一撃を防ぐのに精一杯で、押されてばかりであった。

 

《ミラ。俺は、俺はお前を許さない》

「それがどうした。なら、私を落としてみろ」

《この"ハルジオン"、見くびっては困る!!》

 

 一度停止し、再発進する寸前に放ったスティングが、交差しながら"ヴィンテージ"を追跡する。

 虎視眈々と彼女を狙う無人機だったが、"ヴィンテージ"の蹴りによって次々打ち砕かれていき、その代わりに"ヴィンテージ"のスティングが牙を剥く。

 

 糸の隙間を這うよう、"ハルジオン"は獲物を視界に捉えたまま疾走。

 包囲網を抜けた瞬間、彼女との間合いを詰めて一撃を入れる。

 

 再び拮抗状態になる二機。しかし、この状況になったことは、ミラが手加減している証拠である。

 

 

《殺してやる、お前のような女は!!》

「やってみろ、俗物」

 

 

 赤き粒子が血飛沫のように舞う中、二人の戦場に近づく影があった。

 

 

《何をしている、《煉獄の凶星》!!》

 

 

 彼女がその声に反応したとき、"ハルジオン"が鍔迫り合いに勝り、大きく吹き飛ばされる。

 しかし、"ハルジオン"は追撃することなく、新手の姿をその目に捉えていた。

 

 

「ダイア……」

《生憎、私は我慢弱く落ち着きのない男でな!!》

 

 

 

 




皆様、良いお年を

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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