ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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四十四話 ならばそれは、世界の声だ!

 

 

「ボクはっ……ボクは……!」

 

 漂う死骸を、光の失われた瞳で眺めるアスカ。

 何も残っていない戦場で一人、彼女は絶望に打ちひしがれていた。

 

 ——それが平和、それが平等だろうが!!

 

 何が平和なのか、何が平等なのか。

 今の彼女は、確立したはずの信念が揺らぎつつあった。だって、世界にはまだこんなにも残酷な真実が眠っていた。知らず知らずのうちに、世界では醜い所業が行われていた。

 

「しっかりしろっ……! ボクは決めたんじゃないのか……! ボクは……!」

 

 あの仮面の顔が浮かんでは消えてゆく。

 共に誓ったはず。自分の信じるもののために戦うと。だが、こんな世界で何を信じればいい? こんな戦いの果てに、この世界に何が残る? 仮にそれが平和だとして、真なる平和と言えるのか?

 

 

 "アストラル"の中で蹲るアスカは、急接近してくる熱源に反応し、即座に機体を動かした。

 

 激突する光刃。眩く煌めく粒子が爆ぜては、嘲笑うように消えてゆく。

 

《生きていたか、小娘》

「ノーベル……!」

 

 無線から漏れでる邪悪な声音に、アスカは怒りを顕にする。

 "エレムルス"——四対のカメラセンサが不気味に輝き、その眼光が彼女の憎悪を逆撫でする。

 

「アンタみたいな、アンタみたいな人がいるから!! この世界は!!」

《だから何だと言うのだ。勝てると思うな、小娘ェっ!!》

 

 歪めに歪められた運命が、戻ろうとしていた。

 運命はどれほど迂回しようと、最終的な収束地点に戻ろうとする。定められた運命から、世界は逃れることができない。

 

 アスカ・カナタはアレックス・ノーベルとの激闘の末、その精神を崩壊させ、廃人同然の存在となる。

 それが『反逆機兵レギオン』という世界の中に定められた、一つの運命に過ぎないのだ。

 

「アンタを……殺す……!!」

《よく言う。今更!!》

 

 "エレムルス"の鉤爪は、彼女の双刃にも勝る破壊力を秘めていた。その機体はまさに巨神とも言える。

 幾度も刃を交えるが、次第に押されていくのは"アストラル"の方になり、鉤爪の描く凄惨たる軌跡が宙に色濃く残されていった。

 

「アンタみたいに、戦争をゲームのようにする奴らがいるから! この世界はいつまで経ってもよくならない!」

《戯言を。宇宙を郷とする者共がいる限り、世界は停滞するままだ》

「その考えが!! その考えが悲しみを生む!!」

 

 "ロイン・アストラル"の蹴りが炸裂。

 四つ目の巨人はそれを難なく回避し、掌部ライフルを連射した。

 

《言っても分からぬ愚か者めが》

 

 高出力なクレナイ粒子の塊。

 それを掠め、体勢を崩した"アストラル"に巨人の追撃が襲いかかった。

 

 寸前で回避するも間に合わず、腰部をえぐり取られる。

 血潮のように舞う鉄片とオイル。

 

 それでもアスカは、闘志を失わない。

 果てしない、自分までも焼き尽くしてしまいそうな憎悪とともに。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 三機で一斉にアスカへの援護に向かう最中、"ウロボロス"で戦闘中のアズチを見かけた。

 

 彼らと遭遇した時、ちょうど戦闘が終えられた様子であったが、"ウロボロス"にはかなりの損耗が伺えた。

 携えている武装は、"サウザンド"から引き継いだメガ・クレナイカノン。

 

《無事だったか》

「当然だと言わせてもらおう」

《いちいち鬱陶しい言い方を》

 

 彼が最終決戦(自称)まで生き残っていることに、ウィザードは感動を覚えていた。

 しかしながら、油断はできない。世界には決められた運命に向かう性質がある。彼が戦場で命を落とす、という運命があるとしたら、世界が全力でそちらに傾いていくかもしれない。

 

《准尉、アスカちゃんの援護に行ってあげてください。彼女は今孤立状態だ》

《分かりました。少尉も無理をなさらず》

 

 "ウロボロス"が旋回しようとした時、その場にいたゲイズチェイサの熱源レーダーが唸る。

 

《この反応はっ……もう一機いたのか!》

 

 "エフェクト"のカメラアイを通じてリアムが見たのは、宇宙を駆る巨神("ティターン")の姿であった。

 

《ダイア、あなたも行きなさい》

「言わずもがなだ」

 

 二人揃っていれば"ティターン"一機敵ではないはずだ。ウィザードは彼らを完全に信用して、アズチとともに戦線を離脱する。

 

 

《仮面の》

「なんだ、グレード准尉」

 

 個人通信で、アズチが語りかけてくる。

 

《お前にはそんなつもりはないかもしれないが……俺は、お前に助けられた気がするんだ》

 

 彼がぽそりと吐き出したその想いに、ウィザードは仮面越しに目を見開いた。

 

《ずっと暗い海の中にいた気がした。そのまま、自分でも気が付かないまま溺れてしまいそうな気がした。気持ち悪いかもしれないが、感謝している》

 

 アズチ・グレード。本来ならば、既に故人となっている彼がこの場にいて、自分に感謝を述べている。

 だが、それは決定事項ではない。運命の修正力、それには何人足りとも抗えないと、(ゲイザー)が告げた。

 世界はあの手この手で彼を殺そうとしてくる。

 

「それは、君が強かったというだけの話だ。私は関係ない」

 

 ウィザードはそう言い切る。自分は手助けをしたまでだ。運命を跳ね除けたのは、きっと彼自身の力である。

 

「まだ、仕事は残っている。ゆくぞ、私のマブダチよ!!」

《ふざけるな》

 

 

 

 ◇

 

 

 激突する双刃。

 しかし、その片割れには微弱な疲弊が見えた。

 

 "エレムルス"と"アストラル"の激闘は、終わりが見えなかった。

 正確に言えば、"エレムルス"が一歩も引く気配が無く、ただひたすらに"アストラル"が消耗する一方であったのだ。

 

「くっそ……!!」

 

 アスカはギリギリを歯噛みする。

 こんな男に敵わないとは——これでは、自分に世界の平和を語る権利など。

 

《思い知ったか、小娘。これが世界を真に鑑みる者とそうでないお前との差だ》

「黙れ! ゲス野郎!」

 

 怒りに身を任せ斬りかかる。

 しかし、反撃の一閃が"アストラル"の脇腹を穿つ。

 飛び散るオイルと飛散する鉄屑。一番近くにいた戦友の悲鳴が聞こえてくるようだった。

 

《終わりだ、羽虫が!》

 

 "エレムルス"の掌部に、真紅のエネルギーが収束していく。

 回避行動を取る"アストラル"だが、どう予測しても間に合わない。

 

 アスカが覚悟を決めた時だった。

 

 予想だにしていなかった方角からの熱源。

 刹那、目の前が紅の光線を横切った。まるで鮮血の激しい流動かのようなビーム——メガクレナイカノンの砲撃だった。

 

 

《アスカ!!》

「グレード准尉……!?」

 

 彼女は目を丸くする。

 満身創痍の"アストラル"を庇うように、"ウロボロス"が立ち塞がる。しかし、"ウロボロス"も万全な状態とは言えなかった。

 

《貴様も死にに来たか》

《この男が……!》

 

 アズチは確かな怒りを滲ませた。

 彼とて、もう分かっているのだ。自分が何を討たねばならないのか。憎しみの連鎖を断ち切ることが、自身の一番の復讐になるのだと。

 

 アスカは、どういうわけか得も言われぬ恐怖を覚えていた。

 なぜだろう。好意を寄せている人が助けが来て、力が湧いてくる筈なのに。圧倒的な何かに、命運を握られているかなのような。

 

 "ウロボロス"のメガクレナイカノンが爆ぜた。

 流動する紅の光線が、紺碧の宇宙を切り裂く。

 

 しかし、それは単なる威嚇射撃にしか過ぎなかった。

 "エレムルス"は難なく回避し、"ウロボロス"の頭上から強襲を仕掛けた。

 

 ぶつかり合う紅の双刃。

 唸る火花は、鮮血のそれを思わせた。

 

 "ウロボロス"は力負けし、空へと投げ出された。

 すかさず追撃を仕掛ける"エレムルス"を食い止めるよう、"アストラル"が割って入る。

 

 がたん、とコックピットがひときわ激しく傾く。

 機体の姿勢制御がうまくいかない——やられた脇腹から基盤に、制御系統がイカれてしまったのだ。

 

 ずっとずっと、共に戦ってきた。どんな逆境でも、戦友(アストラル)は堪えてくれた。

 ——今日ばかりは、限界のようだ。

 

「うわぁぁぁっ!?」

 

 姿勢が崩れたのを皮切りに、勝てるはずの"エレムルス"に力負けし、腹部に蹴りを叩き込まれた。

 大きくふっ飛ばされ、その間無防備な機体に四つ目の巨神が追撃にかかった。

 

 

 

「ウィザードスティングは伊達じゃない!!」

 

 

 

 どこからともなく、二機のビット兵器が現れる。

 交差し、光線で包囲網を生み出した。

 

 後退する"エレムルス"を尻目に、"アストラル"を"ウロボロス"が支える。

 

 舞い降りる剣——"アマクサ"のバイザーアイが、凛々しく輝いた。

 

《目障りな》

「兄上、けじめをつけに来た。いざ、参る!」

 

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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