ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。 作:聖成 家康
「ボクはっ……ボクは……!」
漂う死骸を、光の失われた瞳で眺めるアスカ。
何も残っていない戦場で一人、彼女は絶望に打ちひしがれていた。
——それが平和、それが平等だろうが!!
何が平和なのか、何が平等なのか。
今の彼女は、確立したはずの信念が揺らぎつつあった。だって、世界にはまだこんなにも残酷な真実が眠っていた。知らず知らずのうちに、世界では醜い所業が行われていた。
「しっかりしろっ……! ボクは決めたんじゃないのか……! ボクは……!」
あの仮面の顔が浮かんでは消えてゆく。
共に誓ったはず。自分の信じるもののために戦うと。だが、こんな世界で何を信じればいい? こんな戦いの果てに、この世界に何が残る? 仮にそれが平和だとして、真なる平和と言えるのか?
"アストラル"の中で蹲るアスカは、急接近してくる熱源に反応し、即座に機体を動かした。
激突する光刃。眩く煌めく粒子が爆ぜては、嘲笑うように消えてゆく。
《生きていたか、小娘》
「ノーベル……!」
無線から漏れでる邪悪な声音に、アスカは怒りを顕にする。
"エレムルス"——四対のカメラセンサが不気味に輝き、その眼光が彼女の憎悪を逆撫でする。
「アンタみたいな、アンタみたいな人がいるから!! この世界は!!」
《だから何だと言うのだ。勝てると思うな、小娘ェっ!!》
歪めに歪められた運命が、戻ろうとしていた。
運命はどれほど迂回しようと、最終的な収束地点に戻ろうとする。定められた運命から、世界は逃れることができない。
アスカ・カナタはアレックス・ノーベルとの激闘の末、その精神を崩壊させ、廃人同然の存在となる。
それが『反逆機兵レギオン』という世界の中に定められた、一つの運命に過ぎないのだ。
「アンタを……殺す……!!」
《よく言う。今更!!》
"エレムルス"の鉤爪は、彼女の双刃にも勝る破壊力を秘めていた。その機体はまさに巨神とも言える。
幾度も刃を交えるが、次第に押されていくのは"アストラル"の方になり、鉤爪の描く凄惨たる軌跡が宙に色濃く残されていった。
「アンタみたいに、戦争をゲームのようにする奴らがいるから! この世界はいつまで経ってもよくならない!」
《戯言を。宇宙を郷とする者共がいる限り、世界は停滞するままだ》
「その考えが!! その考えが悲しみを生む!!」
"ロイン・アストラル"の蹴りが炸裂。
四つ目の巨人はそれを難なく回避し、掌部ライフルを連射した。
《言っても分からぬ愚か者めが》
高出力なクレナイ粒子の塊。
それを掠め、体勢を崩した"アストラル"に巨人の追撃が襲いかかった。
寸前で回避するも間に合わず、腰部をえぐり取られる。
血潮のように舞う鉄片とオイル。
それでもアスカは、闘志を失わない。
果てしない、自分までも焼き尽くしてしまいそうな憎悪とともに。
◇
三機で一斉にアスカへの援護に向かう最中、"ウロボロス"で戦闘中のアズチを見かけた。
彼らと遭遇した時、ちょうど戦闘が終えられた様子であったが、"ウロボロス"にはかなりの損耗が伺えた。
携えている武装は、"サウザンド"から引き継いだメガ・クレナイカノン。
《無事だったか》
「当然だと言わせてもらおう」
《いちいち鬱陶しい言い方を》
彼が最終決戦(自称)まで生き残っていることに、ウィザードは感動を覚えていた。
しかしながら、油断はできない。世界には決められた運命に向かう性質がある。彼が戦場で命を落とす、という運命があるとしたら、世界が全力でそちらに傾いていくかもしれない。
《准尉、アスカちゃんの援護に行ってあげてください。彼女は今孤立状態だ》
《分かりました。少尉も無理をなさらず》
"ウロボロス"が旋回しようとした時、その場にいたゲイズチェイサの熱源レーダーが唸る。
《この反応はっ……もう一機いたのか!》
"エフェクト"のカメラアイを通じてリアムが見たのは、宇宙を駆る
《ダイア、あなたも行きなさい》
「言わずもがなだ」
二人揃っていれば"ティターン"一機敵ではないはずだ。ウィザードは彼らを完全に信用して、アズチとともに戦線を離脱する。
《仮面の》
「なんだ、グレード准尉」
個人通信で、アズチが語りかけてくる。
《お前にはそんなつもりはないかもしれないが……俺は、お前に助けられた気がするんだ》
彼がぽそりと吐き出したその想いに、ウィザードは仮面越しに目を見開いた。
《ずっと暗い海の中にいた気がした。そのまま、自分でも気が付かないまま溺れてしまいそうな気がした。気持ち悪いかもしれないが、感謝している》
アズチ・グレード。本来ならば、既に故人となっている彼がこの場にいて、自分に感謝を述べている。
だが、それは決定事項ではない。運命の修正力、それには何人足りとも抗えないと、
世界はあの手この手で彼を殺そうとしてくる。
「それは、君が強かったというだけの話だ。私は関係ない」
ウィザードはそう言い切る。自分は手助けをしたまでだ。運命を跳ね除けたのは、きっと彼自身の力である。
「まだ、仕事は残っている。ゆくぞ、私のマブダチよ!!」
《ふざけるな》
◇
激突する双刃。
しかし、その片割れには微弱な疲弊が見えた。
"エレムルス"と"アストラル"の激闘は、終わりが見えなかった。
正確に言えば、"エレムルス"が一歩も引く気配が無く、ただひたすらに"アストラル"が消耗する一方であったのだ。
「くっそ……!!」
アスカはギリギリを歯噛みする。
こんな男に敵わないとは——これでは、自分に世界の平和を語る権利など。
《思い知ったか、小娘。これが世界を真に鑑みる者とそうでないお前との差だ》
「黙れ! ゲス野郎!」
怒りに身を任せ斬りかかる。
しかし、反撃の一閃が"アストラル"の脇腹を穿つ。
飛び散るオイルと飛散する鉄屑。一番近くにいた戦友の悲鳴が聞こえてくるようだった。
《終わりだ、羽虫が!》
"エレムルス"の掌部に、真紅のエネルギーが収束していく。
回避行動を取る"アストラル"だが、どう予測しても間に合わない。
アスカが覚悟を決めた時だった。
予想だにしていなかった方角からの熱源。
刹那、目の前が紅の光線を横切った。まるで鮮血の激しい流動かのようなビーム——メガクレナイカノンの砲撃だった。
《アスカ!!》
「グレード准尉……!?」
彼女は目を丸くする。
満身創痍の"アストラル"を庇うように、"ウロボロス"が立ち塞がる。しかし、"ウロボロス"も万全な状態とは言えなかった。
《貴様も死にに来たか》
《この男が……!》
アズチは確かな怒りを滲ませた。
彼とて、もう分かっているのだ。自分が何を討たねばならないのか。憎しみの連鎖を断ち切ることが、自身の一番の復讐になるのだと。
アスカは、どういうわけか得も言われぬ恐怖を覚えていた。
なぜだろう。好意を寄せている人が助けが来て、力が湧いてくる筈なのに。圧倒的な何かに、命運を握られているかなのような。
"ウロボロス"のメガクレナイカノンが爆ぜた。
流動する紅の光線が、紺碧の宇宙を切り裂く。
しかし、それは単なる威嚇射撃にしか過ぎなかった。
"エレムルス"は難なく回避し、"ウロボロス"の頭上から強襲を仕掛けた。
ぶつかり合う紅の双刃。
唸る火花は、鮮血のそれを思わせた。
"ウロボロス"は力負けし、空へと投げ出された。
すかさず追撃を仕掛ける"エレムルス"を食い止めるよう、"アストラル"が割って入る。
がたん、とコックピットがひときわ激しく傾く。
機体の姿勢制御がうまくいかない——やられた脇腹から基盤に、制御系統がイカれてしまったのだ。
ずっとずっと、共に戦ってきた。どんな逆境でも、
——今日ばかりは、限界のようだ。
「うわぁぁぁっ!?」
姿勢が崩れたのを皮切りに、勝てるはずの"エレムルス"に力負けし、腹部に蹴りを叩き込まれた。
大きくふっ飛ばされ、その間無防備な機体に四つ目の巨神が追撃にかかった。
「ウィザードスティングは伊達じゃない!!」
どこからともなく、二機のビット兵器が現れる。
交差し、光線で包囲網を生み出した。
後退する"エレムルス"を尻目に、"アストラル"を"ウロボロス"が支える。
舞い降りる剣——"アマクサ"のバイザーアイが、凛々しく輝いた。
《目障りな》
「兄上、けじめをつけに来た。いざ、参る!」
原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?
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その旨を良しとする!!(YES)
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私は辞退させてもらう。(NO)