ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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四十五話 そうしたのは君だ!

 

「兄上、けじめをつけに来た。いざ参る!」

 

 "アマクサ"の剣が、四つ目の巨神に振るわれる。

 弾ける粒子と、赤き軌道の残穢が宇宙を汚す。

 

 激しい剣戟が繰り返されたかと思えば、辺りを旋回していたスティングによる砲撃が"エレムルス"の肩パーツをかすめる。

 

《出来損ないが、私に楯突くか!》

「私はあいにく往生際が悪いものでな。兄上、貴方と似たのだよ!」

《ほざくな!》

 

 掌部から解き放たれたエネルギーの放射を、"アマクサ"は宙返りで回避。

 反撃の一撃をビームライフルから放たれる。

 されど、"エレムルス"の腕部には、その程度の火力では傷一つつけられなかった。

 

 圧倒的な機体だ。大型のマニピュレータは、同時にシールドとしての役割を果たしていると言っても過言ではないほど重装甲

 原作でも、”アストラル”はここまで追い詰められていたのをよく覚えているが、こうまでしぶとい機体だとは思ってもみなかった。

 

 再び、高火力のビームが掌部から放たれる。

 溜めが大きい分避けやすいものの、その後の追撃が痛い。

 

 ”エレムルス”の鋭爪が受け止めんとする刃を砕くばかりの勢いで振るわれた。

 

 アレックスはゲイズチェイサの設計者としてだけでなく、パイロットとしても至高の領域に達している。

 その力を、世界のために、人類のために生かすことができなかったことが、彼の何よりの過ちであろう。

 

「兄上、道を誤った貴方を、世界の声に従い、この私が裁く!」

《人が人を裁くだと? 笑わせるな。貴様のくだらないエゴに付き合っている暇はないのだ》

 

 ここで敗北すれば、守り抜いたユビキタスブレインは奪還され、世界は完全に奴らの手の中に回る。

 そうなった世界は——おそらくは、七年前に逆戻りだろう。

 

 ここで負けるわけにはいかない

 ウィザードは垂れる汗を舐めとる。

 

「これが、緊迫の味か」

 

 

 

 ◇

 

 

 

《かえせかえせかえせ! ファウスト様をかえせえ!》

 

 

 従うがままに”ティターン”に乗せられたマーチ。

 スピーラーとして使い物にならなくなった彼女は、最後に捨て駒として派手に散ることを強いられた。

 

 今の彼女には、自我というものは存在しなかった。

 

 ——そんな破壊の巨神に乗り込む哀れな存在など、ミハイルとリアムは知る由もなかった。

 

 ”ティターン”の砲撃が二機の間を縫うように空を切り裂いた。

 何度も、何度も、鮮血の流動かと見間違える一閃が二人の視神経を突き刺した。

 

 ”エフェクト”は先の戦闘で限界が近い。”ヴィンテージ”も関節系統の悲鳴が聞こえてくるようだった。

 だが、この暴走する巨神を沈めてからでないと、仲間に顔向けできなかった。

 

 ”エフェクト”がビームライフルで牽制する。

 そこですかさず、”ヴィンテージ”の力強い一撃が叩き込まれる。

 

 重装甲に亀裂を入れるも、再び深紅の奔流が宇宙の紺碧を押し流さんと放たれた。

 

《ファウスト様をかえせ! ミラ・ヴァルーツ!》

 

 頭部の口を思わせる射出口が爆ぜる。

 火力が落ちている代わりに初速が早い射撃。

 

 一手遅れた”ヴィンテージ”の左腕が焼き払われる。

 

 「っ!!」

 

 不覚だった。

 即座にリアムがフォローに入り、煉獄の狂戦士は後退する。

 

 しかし、荒れ狂う巨神は容赦という言葉を知らない。

 何度目かという紅の奔流があたり一帯を薙ぎ払った。

 

 ”ヴィンテージ”を援護しつつ攻撃を回避するリアム。先の激闘での疲労もあるのか、次第に脳に酸素が行き届かなくなってくる。

 しかし、下手に増援は呼べない。こちら側は、ぎりぎりの防戦を繰り広げている一方であるのだ。戦力を削ぐと、今度は”ハンドレッド”が危険になる。

 

 リアムの脳裏に、彼女の姿が浮かぶ。

 

《僕は、まだ死ぬわけにはいかない……帰る場所があるんだ》

「お生憎様。私も」

 

 ミラもそれに答えた。

 思えば、初めは贖罪のつもりだった。《煉獄の凶星》として犯した罪を精算し、どこかで死ぬつもりだった。

 だが、そんな勝ち逃げのようなこと、許されるはずがない。生きて苦しみ続ける、それが自分への一番の贖罪だ。

 

 "ヴィンテージ"のモノアイが、煌々と光る。

 残された腕でハルバードを振るい、"ティターン"の亀裂に追撃を仕掛けた。

 命中するも、刃が止まる。コックピットまでは届かない。それを実行しようにもパワーが足りないのだ。

 

《ミラさん!!》

 

 ミラの乗り込むコックピットがガタン、と揺れる。

 背後から、"エフェクト"かありったけの推力と共に機体をぶつけていた。

 

 彼の意図を理解し、"ヴィンテージ"に決死の攻撃を指示する。

 

 軋む関節系と火を吹く電気系統。

 それにも構わず、刃に力を込めた。重装甲を灼きながら突き進んでいくハルバード。"ヴィンテージ"のモノアイが、最後の灯火を煌めかせた。

 

 

 ”FORS LE B” SYSTEM STANDBY

 

 

 二機がほんの刹那、赤く輝いた。

 活性化するクレナイ粒子、アルカナの叫びに答えて、レギオニスたちが蠢き出す。

 

 爆発的なスラスターの推力が、全て刃に載せられた。

 

 そして、閃光のような斬撃が遂に装甲を穿つ。

 宙を舞う焼け焦げた重装甲の欠片。"ティターン"の脇腹が、完全にえぐり取られたかのように電気系統が剥き出しになった。

 

 しかし——倒れなかった。コックピットに届いておらず、パイロットは無事だったのだ。

 

 一秒(ワンセコンド)のフォースレヴを終えた二機は、遂に限界を迎えた。

 どれだけ操縦系をいじってもびくともしない。次第にコックピットが闇に包まれる。

 

「……ここまでね」

 

 ミラはヘルメットを脱ぎ、垂れてくる冷や汗を中に浮かばせた。

 

 覚悟を決めたつもりだったが、どういうわけか"ティターン"の方も動かなかった。

 

 

《なに、今の……ファウスト様の、ファウスト様の声が聞こえる! どこ、どこなの! ファウストさまぁっ!》

 

 

 "ティターン"は無防備になった二機を狙わずに、あろうことか彼女らを無視して明後日の方向へと飛び去って行く。

 

 ——スピーラーである彼女も、レギオニスの声を聞くことができたのだ。そしてそれは、最愛の飼い主の声をも拾うことができた。

 

 

 去っていく"ティターン"を見て、ミラは肩を落とした。

 

「動く?」

《無理ですね。よく頑張った方です》

 

 急場しのぎの機体にしては、よく保ったほうだ。

 ミラは薄ら笑いを浮かべながら、モニターに広がる紺碧の宇宙を見据えた。

 

「宇宙で産まれた私が、地球産まれの貴方に背を向けて戦場にいる……ほんの七年前じゃ考えつかなかった」

《そうですかね。僕はずっと望んでいた。宇宙と地球の人々が手を取り合うことを》

 

 遠くで繰り広げられる決戦を目蓋に描きながら、ミラは静かに呟く。

 

「若者たちが築いていかなければならない。きっと大変だけれど、乗り越えていかなければ」

《柄でもない台詞ですね》

「私もまだまだお嬢様ってことよ」

 

 

 

 ◇

 

 

 

 ゲイズチェイサ、と呼ばれる人型兵器が存在し、人類がそれを用いて戦争を行う世界、というのは何もここだけに限定されたものではない。

 無数にある。それは、この世界から分岐した世界もそうだが、この世界とは全く関係ないにも関わらず、その特徴を持った世界がいくつもある。

 

 ゲイザーたちは、そんな世界を気に入っていたのだ。

 

 少女のゲイザーは、広大な宇宙空間の中で頬杖をつきながら吐露する。

 

「なんだ、キミもヒマなのかい?」

 

 少年のゲイザーがそんな彼女に声をかける。

 彼の生きがいは面白い人間に面白いことをさせること。ちょうどいい玩具を見つけたのに、すぐに壊れてしまって暇を持て余しているのだ。

 

「あたしはまだまだ暇じゃないわ。無鉄砲な貴方と違って」

「そうかい、そりゃあ悪かった」

 

 少年のゲイザーは顔を歪める。

 

「……destiny、それは歪められないもの。質量というものは世界にもある。どれだけ上辺が変わったように見えても、本質的には変わっていない。やがて行き着く場所は同じ」

「それは独り言か?」

「嫌味というのがわからないのかしら」

 

 少年の額にぴく、とシワが寄る。

 あの男を差し向けたのは何も結末を変えてやろうという意図があったわけではない——はず。単に面白いと思ってやっただけのことだ。

 

「……彼がどう抗うか。異分子である彼が、世界に定められた終着地にどう抵抗するのか、あたしは楽しみで楽しみで仕方がないの」

 

 散々あの男を唆してきた。あるときは引き止め、あるときは背中を押した。どれだけ翻弄しようと、あの男にとっては逆効果。上位存在にも屈しない、世界の運命にも屈しない。一人間風情がどこまでやれるのか、彼女は今となっては心待ちにしていたのだ。

 

「がっかりさせないでよ」

 

 

 ◇

 

 

 "エレムルス"が"アマクサ"を弾き飛ばした。

 宇宙に投げ出された"アマクサ"は即座に受け身を取り、なんとか体勢を立て直す。その反動を利用してビームライフルで弾幕を展開。お得意の追撃を封じる。

 

 それでも追撃を虎視眈々と狙う"エレムルス"の左腕部を、解き放たれた紅の奔流が掠める。

 

 あと一歩。腕を片方飛ばせれば勝機はあった。

 

「グレード准尉、なんとか誘導する。腕を確実にねらえ」

《無茶をするなよ、仮面の》

 

 手負いの"アストラル"を庇いながら、"ウロボロス"がメガクレナイカノンの次弾充填を待つ。"アストラル"のリアクターも繋ぎ、エネルギー供給を少しでも早めていた。

 

《けじめをつけるのに、子供の力を借りるのか? 聞いて呆れるな》

「ふ、私は手出しをするなと言ったのだがな」

 

 

 言っていません。

 

 

 "アマクサ"の斬撃を軽々防ぐ"エレムルス"。

 その鳩尾に渾身の蹴りを入れ、大きく蹌踉めかせた。

 

 されど、赤い一縷の閃光が"アマクサ"の胸を裂く。

 間一髪で機体を引いたのが功を奏したのか、胸部装甲に浅傷をつけるだけで済む。

 

 追撃を無茶な姿勢制御で回避。

 回し蹴りの要領でビームセイヴァーを振るうも、爪先を掠るだけに終わる。

 

 振り下ろされた剛爪。

 その矛先は確実に"アマクサ"のコックピットを捉えていた。

 

《大尉っ!!》

 

 "アストラル"が咄嗟にビームライフルを乱視する。

 ビームによる攻撃は効きもしないが、ほんの一瞬、"エレムルス"は動きを止める。

 

 その好機を、アズチは逃さなかった。

 

 解放される真紅の激流。

 寸前で避けた"エレムルス"の右腕を巻き込みながら、眩い紅を散らして宇宙を駆け抜けていく。

 

 

 光が絶える頃、隻腕となった四つ目の巨神がギラギラと眼光を顰めていた。

 片腕となった——だが、この機体には油断ならない武装がある。ようやく希望が見えてきたときに、ようやくそのことを再認知する。

 それを彼女らにも伝えなければ。初見で対応できるようなものではない。

 

「アスカ、グレード准尉、聞け——」

《大尉! 危ない!》

 

 ほんの一瞬。二人に気を向けた時、"エレムルス"が一気に間合いを詰めてきていた。

 

 四つ目の巨神が、その殺意を剥き出しにした。

 

《死ねぇい! 出来損ない!》

 

 "アストラル"が急進し、"ウロボロス"がその間に割って入ろうとする。

 運命の修復作業——というものか。このまま事が進めば、アズチが攻撃を庇って死ぬのだろう。

 させてたまるか。

 

「動くなァっ!!」

 

 ウィザードの口から、聞いたこともないような怒号が響く。二人の足を刹那止めさせるには十分だった。

 

 "エレムルス"の胸部装甲が展開。

 そこから、二対の円月が射出。

 

 ——視界が白黒になる。

 

 射出された二対の高出力ビームカッター。

 "アマクサ"のコックピットを左右から切り裂きし、電気系統を焼き切りながら、遥か彼方へと飛んでいく。

 

 口の中に鉄の味が滲む。

 もはや激痛など感じない次元の傷が、彼の脇腹に刻まれる。

 

 "アマクサ"の瞳から光が消える。

 同時にモニターが闇に包まれ、赤くなったコックピットを漆黒へと葬った。

 

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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