ロボアニメ世界に転生したので、最高に気持ち悪い謎の仮面キャラを貫くことにする。   作:聖成 家康

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五話 私は我慢弱い

 

 アスカ・カナタを保護した”ハンドレッド”。

 彼女の出身が地球であることが判明したために、その後の監査の事も考えると、送り届けるには地球が一番の場所だった。

 

 それに、地球には今すぐにでも行かないと行けない理由が山程あった。

 〈レギオン〉三機による損害は大きく、追撃される恐れが大いにある。

 補給して迎え撃つよりは、地球(本拠地)に戻って、一度大きく態勢を立て直してからの方が堅実だ。

 

 

 ウィザードは休憩スペースにある自販機がお気に入りのスポットになっていた。

 ある程度目立たずに――本人がそう思ってるだけ――なおかつ、色々な人間を観察することができる。

 

 

「あの人またいるよ」

「あそこに居座られると飲みたいものも飲めないぜ」

 

 

 彼を厄介がるひそひそ話も、ウィザードの耳には決して届かない。

 周りが思う以上に彼は、意外と忙しいのである。

 

 

(私は本来あってはならぬ存在……それが主人公であるアスカ・カナタと接触した)

 

 

 未だ引っかかる部分ではあるが、彼が考えているのはその行為に対する後悔ではなく、また別の事であった。

 

 よくある話。パラレルワールドというものは、どんなに機微な変化でも世界が分岐する。

 例えば朝に食パンを食べていた所を、白米に変えたとする。すると、交通事故に遭うか遭わないかまで分岐する。

 これは極端な例であるが、些細な変化が世界線変動に影響するというのは本当かどうか断言はできぬものの、フィクションではよく扱われる話だ。

 

 

 アスカが本来出会わない人物と出会う――これも、その例外ではないはずである。

 

 

(どうなるかは、私にも見当がつかないな)

 

 

 ウィザードはふ、と笑い、すでに冷めきってしまったコーヒーを啜った。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 地球に向かうまでの間、暇な時間ができた。

 ウィザードは何をしようか迷っていたが、特段、することもない為に宇宙をよく見渡すことのできる部屋を訪れていた。

 

 無重力に甘え、ふんわりと移動した彼の目に入ったのは、小柄な少女の姿であった。

 

 先客としてアスカがそこにはいた。

 

 

「どうだ、宇宙(そら)は」

 

 

 そんな事を言いながら、彼女の隣に立ってみる。

 作業着から支給された衣服に身を包んだ彼女は、また違った印象を与えてくる。

 白いシャツと黒のショートパンツ。こうして見れば、年相応の可愛らしい少女だ。

 

 

「えぇと」

「ミスター・ウィザード。階級は大尉」

「あぁ……失礼しました。ウィザード大尉」

 

 

 アスカはぎこちなく敬礼をした。正規軍人ではないのだからしなくて良い、なんて事は敢えて言わなかった。

 

 

「――特に……何も。宇宙だから地球だから、とかそういうの、気にした事、ないです」

「そうか。それは良い考え方だ」

 

 

 宇宙人――そう言って宇宙にいた人々が差別されていた時代があった。〈アーク連邦〉の横暴な行為を見れば、妥当な反応ではあるが。

 宇宙だから地球だから――多少の差異はあろうが、どちらにせよ人間として何も変わらないのは、揺るぎのない事実である。

 

 

「……大尉、ボクのこと女だからって優しくしてるでしょう」

「いいや。そんな事はない」

「ウソだ」

 

 

 アスカは執拗に疑ってくる。

 女だから――女性であれば、誰もが経験する身近に潜む差別。男は皆、本能的に女性を下に見るものなのだろう。

 

 

「そうだな……女性は確かに我々男性に比べ、弱い存在ではある」

「ほら!! 女の子だからって、ボクにばっかり――」

「だが私は」

 

 

 彼女に被せるように、ウィザードはやや語気を強めて言った。

 

 

「こうも思う。人はみな、何者かから生を受け、それに感謝するように日々を生きる。その行為自体に、男も女も関係ない――むしろ、それをやりきった方こそが、真に強い人間だと」

 

 

 その言葉に圧巻されたのか、はたまた理解ができないのか、アスカは暫く硬直していた。

 

 

「大尉は、どうなんですか?」

「私は一時期血迷っていた時期があってな。死に急ぐような大馬鹿者だった。我を取り戻してからは、生き急ぐことに固執するようにしている」

「我を取り戻してって……今の大尉がですか? 逆じゃないですか?」

 

 

 半ば絶句するように言うアスカを気にも留めず、その瞳を紺碧の闇へと向けた。

 

 

 紺碧の海には、時折色々なものが紛れ込む。

 それは宇宙のゴミ――いわゆるデブリという物であったり、遥か遠く、自分たちとは違う時間を生きる恒星の光であったり、はたまた宇宙船やコロニーであったりする。

 

 三百年――いや、それ以上前。人類は初めて宇宙へ進出した。

 宇宙の恵みは、人類に革新的な進歩をもたらしたのだ。

 

 Oガイアやヒヒイロ鉱石だけではない、宇宙由来の超常的な物質や、それを用いたテクノロジーは人類を新たなステップに進めた。

 

 その瞬間にぜひとも立ち会ってみたかった、とウィザードは度々思うのだ。

 

 

「……ウィザード大尉、少し……おかしな話をしてもいいですか」

「そういった話は聞き慣れている。いいだろう」

「周りの人に聞いたら同じ言葉が返ってきますよ、きっと」

 

 

 呆れながらそう吐くアスカには躊躇いが見えたが、ウィザードの反応を受け、それを取っ払って話し始める。

 

 

「……ゲイズチェイサ開発の直接的な原因となったOガイア、エネルギー問題を一瞬で解消したヒヒイロ鉱石……ボクたちを支えているのは、宇宙由来物質ばかりですよね」

宇宙資源(アストラルギフト)か。君はそういうものに興味があるのか?」

「興味があるというか……」

 

 

 アスカは気恥ずかしそうにするが、先刻までのウィザードの言動を思い出し、馬鹿らしくなってきて取り繕うのをやめた。

 

 

「宇宙には、ボクたち以外に()()()()()がいるんじゃないかって……そんな気がしてならないんです」

 

 

 少しばかり響く声が、宇宙を映すその空間に木霊する。

 

 

「……考えるだけなら自由だ」

「ば、馬鹿にしてますか!?」

「そうではないさ」

 

 

 ただ、とウィザードは続ける。

 

 

「君は不確実な事より、これから先起こる確実な出来事に目を向けた方が良い」

 

 

 それはからかいのつもりでもあったが、どちらかと言えば警告の意のほうが強い。

 

 呑気に言っていられる状態ではない。

 相手からすると、自分たちの機体を一機奪われたも同然だ。

 この宙域内で仕掛けてきても、なんら不思議ではない。

 

 

「……君はきっと、()()に乗るつもりなのだろう?」

「え……どうしてそれを」

 

 

 心の内を見透かされた事に驚くアスカを横目に見ながら、ウィザードは部屋を出た。

 

 

 

 アスカ・カナタ。セカンドシーズンの主人公。

 彼女の歩む運命(シナリオ)は、()()()

 

 

 セカンドシーズンの結末。

 

 それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というもの。

 結末の凄惨さはアスカだけではない。

 

 ミハイルは壊れたアスカを見て、戦争に打ち込むことしかできず、手を差し伸べてやれなかった自分を酷く恨む。

 前主人公のリアムも、前大戦の傷跡が癒えないまま、また戦いに巻き込まれてしまい傷をえぐられて、物語終了後行方をくらませる。

 

 見ていた当初、あんまりだ、とまで思ったほどに。

 でも、無茶苦茶なシナリオではない。理にかなったというか、()()()()()()と頷けるようなラストではあった。

 

 

 それを歪めるべきか、否か。

 

 

 アスカと初めてまじまじと話し、彼の頭に浮かんできたのは、そんな疑念であった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ゲイズチェイサは新しく入ったのも含めて十一機。対して、敵は()()()()()”ヴァリアンス”三機分くらいの性能を持った機体が少なくとも二機……困ったわね、これは」

 

 

 ブリッジに集められたウィザードは、深刻そうな顔で戦略マップを眺めるミハイルを、じっと見つめていた。

 

 この男は〈レギオン〉のパイロットに対してはフィルターがかかる。

 彼女は元から美人であるが、彼の目には数万年に一人の乙女かのように見えていた。

 

 

「おい……お嬢と仮面って、そういう仲なのか?」

「どう見たって仮面の方が勝手に見ているだけだろう。余計な不安を抱かせるな」

 

 

 ミハイルの部下二人は、心配になって会議中にも関わらず会話をした。

 片方はスキンへッドの大男 リック、片方はメガネの好青年 ディアス。双方とも、組織内で唯一、彼女の素性を知っている者だ。

 

 

「どうしますか、艦長」

 

 

 戦略マップは、地球を中心にした様々な航路を示していた。

 火星から月基地、火星から月のコロニー、など手立てはあるが。

 

 

「敵の総数が計り知れない。報告によれば、数十機はゲイズチェイサを保有していたらしいな」

「はい……どれも急場しのぎのジャンク品には見えましたが」

 

 

 ヨハンは軍帽を深々被り、薄闇の中で思考に耽る。

 

 

「……何よりも、放棄された軍事工場で例の機体を作れるだけの技術力を有した相手という憶測だけでも恐ろしいな」

「巨大な組織がバックにいる、もしくはその組織自体が巨大であることは間違いないでしょうか」

「――余計な心配事はよそう。寿命が縮む」

 

 

 何も無ければそれまででいい。だが、もし何かあったときは?

 

 

 その不安が彼らの思考の枷になっていた。

 

 

(”マサムネ”は暫く動けないだろう。が、それでもこの有様か)

 

 

 ウィザードは少し安心していた。

 たった一つ、事実がねじ曲げられただけでは運命(シナリオ)はそう簡単には変わらないのだと。

 

 

「本部へは連絡しているのか」

「勿論だとも」

 

 彼の問いにヨハンは目線をずらさず答えた。

 

 

「ならば、月基地へ寄ろうと相応の対応はしてくれるのではないだろうか」

「……そうね。今は態勢を立て直すことを最優先にしないと……あの子には申し訳ないけど」

 

 

 それ以上意見が出ないため、月基地へ立ち寄るというのは決定事項となった。

 ヨハンは無言のまま艦内放送チャンネルを開いて、クルーに呼びかける。

 

 

「”ハンドレッド”全クルーに通達する。本艦は一度、月基地を目指し渡航することになった。未だ敵の脅威は潜んでいる。ステータス・イエローの状態で待機するように」

 

 

 会議が終わり、自室へ戻ろうとしていたウィザードを、ミハイルが引き止めた。

 

 

「ちょっと、いい?」

原作の「反逆機兵レギオン」、読んでみたい?

  • その旨を良しとする!!(YES)
  • 私は辞退させてもらう。(NO)
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